無敵の太陽

主要マスメディアでは解説されない政治問題・文化・社会現象などを論評する。固定観念では分からない問題を黒木頼景が明確に論ずる。

2017年06月

サンズ・オブ・アナーキー / Sons of Anarchy (特別編)


オリジナル9の過去

SOA 001












(写真  /  SAMCROのメンバー)

  アメリカの人気TVドラマ『サンズ・オブ・アナーキー(Sons of Anarchy)』が日本でも好評を博しているようだ。当ブログも初期にこのドラマを紹介したことがある。ところが、配給元のFOXによるホーム・ページを閲覧して驚いた。一応、ドラマの粗筋や登場人物の説明があるけど、物語の根源となる昔のエピソードが記されていないのだ。『サンズ・オブ・アナーキー』は第二世代の活躍や悲劇を描いているのだが、第一世代である「オリジナル・メンバー」を知らないとドラマの醍醐味が半減するる。たぶん、ドラマ紹介のウエッブ・ページを作成した人物は、上司から渡された資料を日本語に訳しているだけなんだろう。作品に興味の無い担当者が、しぶしぶドラマの説明をしていれば、読んでいる方だって面白くない。大企業は零細商店とは違って、適当なセールスでも大丈夫なんだろう。商店街の小売業者なら、必死になって目玉商品を宣伝し、汗だくになってお客様にご説明申し上げるのにねぇ。フォックス社で働く担当者は、殿様商売をしているんだろう。

charlie hunnam 9Clay Morrow 1(左ジャックス・テラー  / 右クレイ・モロー )
  それはさておき、シーズン1からファイナル・シーズンまでのストーリーを説明する訳にも行かないから、詳細はレンタルDVDでも観てもらうしかない。(興味がある方は当ブログのPart1Part2Part3Part 4の記事を読んでね。) ただし、大筋を言うなら、物語はカルフォルニア州にあるチャーミング(元は「レッドウッド」)が舞台となる。「サンズ・オブ・アナーキー」というバイク・クラブを構成する面々は、表向き修理工場を営むが、裏商売として銃器の密売を行い、生計を立てている。主人公のジャックス・テラーはクラブの創設者ジョン・トマス・テラー(John Thomas Teller)の息子で、当初はクラブの副総長。後に総長へと昇格する。シーズン1での総長は「オリジナル9(創設時の九名)」の最年少メンバーであったクレイ・モロー(Clarence `Clay' Morrow)である。他のメンバーを紹介すると、まず「オリジナル9」の古株で、ジョンの親友であったパイニー・ウィンストン(Piermont `Piney' Winston)を挙げねばなるまい。彼はジャックスの親友オピィ(Opie Winston)の父親である。つまり、親子二代にわたって、テラー家とウィンストン家は仲良しというわけだ。

Chibs 2Tig 4








(左: チブス  /  右: ティグ)

  主要メンバーにはジャックスの良きアドバイザーで、冷静沈着なアイリス系のチブス(Filip `Chibs' Telford)がいる。そして、チブスと雙壁をなすが、ちょっとクセのあるティグ(Alex `Tig' Trager)。ジャックスの母親のジェマ(Gemma Teller Morrow)は、男優りのゴッド・マザーといった風格で、外見的には強靱だが、内面的にはちょっと脆いところがある。彼女は若い頃、亭主であるジャックスの父親ジョンを見限り、現在の総長クレイと懇ろになり、ついには夫婦となる。野心家のクレイはジョンのバイクに細工を施し、事故死を仕組んで成功してしまうのだ。最終回にジャックスが跨がる水色のバイクは、父親の形見となった愛車のバイクである。

Gemma 2SOA Tara 3Maggie Siff 1








(左: ジェマ・テラー  / 中央と右: 「タラ」を演じたマギー・シフ )

  物語でジャックスと結婚するのは、高校生の時に恋人だったタラ・ノウルズ(Tara Knowles)である。彼女は地元を出て大学に進み、外科医となってチャーミングに戻ってはた。ところが、そのタラに惚れた変態刑事がいつも追い回すので、ジャックスはこのストーカーをタラの前で撃ち殺してしまう。ここで警察に連絡せず、二人はベッドを共にするんだから、タラの方も尋常じゃない。たぶん、恐怖心と開放感から、性的に興奮したんだろう。再会の末に結婚する二人の間には、トマスという次男が生まれた。長男のアベルは、昔付き合っていたウェンディーとの間に出来た子供である。ただし、このウェンディーは母親失格で、妊娠中にもかかわらずシャブを打っていたんだから呆れてしまう。激怒したジャックスは、麻薬中毒のウェンディーからアベルを取り上げて、自分で育ててしまうのだ。といっても、実質的には祖母のジェマが我が子のように育てていたのである。したがって、ジェマのアベルに対する愛情は半端じゃなかった。とにかく、タラは義理の息子を育てながら、ジャックスの次男を産んだことになる。

Wendy 1Tara & Thomas 2SOA Jax & Thomas 1








(左: ウェンディー  / 中央: タラと息子のトマス  /  右: アベルを抱くジャックス)

  肝心の「オリジナル9」に話を戻す。なぜ、ジョン・テラーは「サムクロウ(SAMCRO)」と呼ばれるモーターサイクル・クラブを創設したのか? それは彼がベトナム戦争に従軍した頃に遡る。時は1960年代後半。リンドン・ジョンソン政権のもと、アメリカはベトナム戦争の泥沼に陥り、徴兵された多くの若者が劣悪な戦場で命を落としていた。ジョンは合衆国陸軍第25歩兵師団に配属されていた。戦場を生き延びたジョンは地元に戻るが、世間は帰還兵に冷たく、彼は自由を求めて「ヘルズ・エンジェルズ」みたいなグループを作る。これが「SAMCRO」と呼ばれるモーターサイクル・クラブの始まりだ。(ちなみに、「SAMCRO」は「Sons of Anarchy Mortorcycle Club Redwood Origianl」の略で、ジョンたちは「チャーミング」という新しい街の名前が嫌で、昔ながらの「レッドウッド」を用いていた。) 当時のマスコミは、戦況が悪化するベトナム戦争を否定的に報道し、国内で厭戦気分を煽っていたし、徴兵を恐れる大学生は抗議活動をするか、カナダに逃れるしかなかった。国務長官になったユダヤ人のジョン・ケリーは、ベトナム反戦運動の代表格として有名だ。(元々はユダヤ風の「コーン(Cohn)」という氏族名であった。) 安全な米国に留まり、テレビ画面を通してしかベトナム戦争を知らないアメリカ国民は、村人や女子供を撃ち殺すアメリカ兵を「赤ん坊殺し」とか呼んで罵り、祖国の為に闘った軍人として尊敬しなかったという。それゆえ、こうした仕打ちに耐えられなかったジョンは、自分らしく誰にも指図されない、自由な人生を送ろうと決意したのである。

John Teller 1John Teller 2Piney 3Opie 4






(左2枚: ジョン・テラー  /  パイニー  /  右: パイニーの息子オピィ )

  ジョンがクラブを創設すると、ベトナム戦争に従軍した親友のパイニーが加わった。彼はジョンの死後、クラブの副総長となるが、それは親友の息子ジャックスが大人に成長するまでの間、クラブを守る為である。ジャックスが成長して「サムクロウ」のメンバーになると、その地位に執着することなく、副総長の席をジャックスに譲ってしまったから、本当に偉い。この禅譲により、ジャックスは誰の反対もなく、若くして副総長になれた。しかし、ドラマの中でパイニーは総裁のクレイに無惨にもショットガンで殺されてしまう。クレイは自分が犯した裏切りをパイニーに知られたため、パイニーを生かしておくわけには行かなかったのだ。

Lenny 1Lenny 3Keith McGee 1







(左: レニー・ジャノヴッツ  / 中央: レニーとジャックス /  右: キース・マッギー)

  三人目は、「ヒモ」と呼ばれたレニー・ジャノウィッツ(Lenny `The Pimp' Janowitz)である。彼もまたベトナム戦争の帰還兵で、ジョンの副官的存在であった。彼は銃器取締局(ATF)の捜査官を三人も殺してしまったため、「ストックトン州立刑務所」に投獄されてしまったのだ。ジャックスや他のクラブ・メンバーが刑務所で時折面会する、あの奇妙な老人がレニーである。彼は咽頭癌を患ったため、その声帯を失い、器具を使って喋るしかない。何ともまぁ印象的だ。このレニーは娼婦を扱う事に長けていたから、ジャックスたちがポルノ映画会社を運営してお金を稼ごうとした時、レニーに相談したのはこういう背景があったからである。この事情を知らないと、『サンズ・オブ・アナーキー』を観ていても、レニーが何者なのか判らない。

Trinity Ashby 2Maureen Ashby 1Father Kellan Ashby 1








(左: トリニティー・アシュビー  / 中央: モウリーン・チシュビー  /  右: ケラン・アシュビー神父)

  四番目はアイルランド出身のキース・マッギー(Keith McGee)である。彼は創設メンバーであるが、アイルランドのベルファストへ渡って「SAMCRO」の支部を作ることにした。ジャックスたちは銃器の仲卸をしていたが、その供給先がベルファスト支部の連中で、IRA(アイルランドのテロ組織)と繋がってているという設定だ。シーズン3で「サムクロウ」のメンバーがアイルランドに渡るエピソードがあり、ジャックスと美しいトリニティー・アッシュビー(Trinity Ashby)が、もう少しのところでベッドインする場面がある。このトリニティーはモウリーン・アシュビー(Maureen Ashby)の娘で、モウリーンはベルファスト支部の姉御といった感じの存在だ。それもそのはずで、彼女はマッギーの女房である。ベルファストの武器密売組織は、「キング」と呼ばれる大御所たちによって運営されているが、その内の一人が何とカトリックの神父ときている。日本なら驚天動地の設定だが、イギリス人の支配に喘ぐアイリス人だと、IRAに陰で協力しそうな神父がいても不思議ではない。アイルランドの悲しい歴史が分からないと、米国に移民したアイリス人の心情に共感できないし、イングランドとの軋轢も理解できないから、ちょっと勉強しておくとドラマが一層おもしろくなる。(チューダー朝とスチュアート朝のアイルランド支配やストラフォード伯爵トマス・ウェントワース、ウィリアム・ペティWilliam Pettyに関しては、別の機会で述べてみたい。 )

Sons of Anarchy Original 9













(写真  /  「オリジナル9」のメンバー)

  ドラマでは密売組織のケラン・アシュビーという神父が登場するが、彼はモウリーンの兄である。そして、驚くことにトリニティーはジョンの隠し子であった。どうやら、ジョンがベルファストに来た時、モウリーンと情事を持ってしまい、妊娠した彼女が不貞を告げずにトリニティーを産んでしまったらしい。だから、もうちょっとでジャックスは異母妹と肉体関係を持ってしてしまうところだった。まったく、親子は似るというが、息子のジャックスと同様、父親のジョンも女に目が無かったらしい。ちなみに、ジョンには子供が三人いて、トリニティーはジャックスの妹だが、彼には夭折したジョン・ウェイン・テラーという兄がいた。ドラマの設定では、1990年病気により6歳の生涯を閉じたことになっている。

Kurt Sutter 1Chico VelleneuvaWally Grazer 1Otto Moran








(左: 「ビッグ・オットー」を演じた原作者のカート・サッター  /  チコ・ヴィラヌヴァ /  ウォリー・グレイザー /  右: オットー・モラン)

  五番目はウォリー・グレイザー(Wally Grazer)で、1968年にメンバーとなった。彼は元々流れ者だったようで、1984年に東海岸へ移動し、ニュージャージー支部の総長になった。しかし、13年後、イタリア人との抗争で背中を撃たれて死亡したそうだ。六番目は、トマス・ホイットニー(Thomas `Uncle Tom' Whitney)で、ウォリーの紹介でクラブに入ったという。ところが、彼はクラブの内情をチクったので、1995年に囚人のレニーが服役中のトマスを抹殺したそうだ。七番目はチコ・ヴィラヌヴァ(Chico Villanueva)で、クラブで初のヒスパニック・メンバーである。彼はサムクロウと「マヤン(Mayan)」という南米系のバイク・クラブへの橋渡しだった。しかし、チコはマヤンたちの待ち伏せに遭って殺されてしまう。その時、チコと一緒だったのが八番目のメンバーたるオットー・モラン(Otto `Lil Killer' Moran)であった。オットーは助かるが、目を負傷する。彼は小柄だったが、大男を素手で殴り殺したことがあるという。刑務所に服役している「ビッグ・オットー(Big Otto)」ことオットー・ディラニー(Otto Delaney)とは別人である。ちなみに、この「ビッグ・オットー」を演じているのは、原作者で脚本家のカート・サッター(Kurt Sutter)である。九番目が現在の総長クレイ・モローで、ジョンが死亡した後、クラブの総長になった。彼はパイニーとマッギー、そしてジョンを殺し、最後は裏切者としてジャックスに殺されてしまうのだ。

ユダヤ人無政府主義者からのインスピレーション

Emma Goldman 2(左  /  エマ・ゴールドマン)
  タイトル自体が「アナーキー」となっているので、物語の中でも「無秩序」や「権威への反撥」に言及がある。このドラマの中で特徴的なのは、主人公のジャックスが父の形見の中から、直筆の手記を見つけ、時折暇を見つけては読みふけるというシーンだ。これは父のジョンが感じたことや学んだこと、さらにクラブや人生哲学について語り、それらを綴った随筆集みたいなものである。とりわけ、彼は束縛されない「自由」について書いたことがある。これはシーズン1、エピソード4の「SAMCRO支部の誕生(Patch Over)」で知ることができる。ある支部の設立でネヴァダ州に向かったジャックスは、亡き父が生前見たという壁の落書きを確かめるため、州境にある橋の下を訪れてみた。父親のジョンは16歳の時、エマ・ゴールドマン(Emma Goldman)からの一節が書かれた壁を見て衝撃を受けたそうだ。その壁には赤い文字で以下の抜粋が記されていた。

  アナーキズムが意味するものは、宗教的支配から人間の心をの解放することだ。財産に支配されることから人間の体を解放すること、政府の拘束と軛(くびき)から自由になることである。実際の社会的富を創り出す目的で自由に個人を集め、それに基づく社会秩序がアナーキズムなのだ。<Emma Goldman, Anarchism and Other Essays (New York : Mother Earth Publishing Association, 1911), p.68.>

  読者は「え~ぇ、また、ユダヤ人なのぉ~?」とウンザリするかも知れないが、歐米社会では共産主義者や社会主義者、無政府主義者、極左分子にユダヤ人の占める割合が非常に多い。エマ・ゴールドマンとはリトアニアから米国へやって来たユダヤ移民で、札付きの極左活動家であり、手のつけられぬフェミニストでもあった。1917年のスパイ防止法(Espionage Act)により、彼女の過激思想や扇動活動が問題視され、ついには逮捕されるという事態になった。ゴールドマンは裁判で有罪となり、国外追放の処分を受けたことでも有名だ。当時は共産主義の脅威が生々しく、国家への不服従や反軍思想は社会への挑戦と思われていた。まぁ、共産主義者の割合が飛び抜けて高いユダヤ人だから仕方ないが、無政府主義を標榜するアナーキズムは、まことにユダヤ人らしい発想である。彼らにしたら、長年自分たちをいじめてきたヨーロッパ文明とその社会秩序は憎しみの対象でしかない。よって、暴力を用いてぶっ壊していい。キリスト教徒がユダヤ教徒を迫害してきたんだから、キリスト教文化を根底から覆すことは、積年の恨みを晴らすことになる。それに、どうせ他人の国家なんだから、思う存分暴れてメチャクチャにしたってユダヤ人は困らない。西歐諸国に暮らすユダヤ人に真の保守派が居ないのはこのためである。「ネオ・コンサーヴァティヴ」は「保守」という言葉を貼り付けた左翼運動で、本質的にはイスラエルを支援するための隠れ蓑に過ぎない。

Tara & Jax 4SOA Jax & Tara 4









  実際の社会では「アナーキズム」などトンデモない考えだ。しかし、それは西部とか南部のアメリカ人が「なぜアメリカ合衆国を好きなのか」という疑問への鍵となりうる。というのも、米国へ渡ってきたヨーロッパ人、特に南歐や東歐からの移民は、その大抵が貧民、食いっぱぐれ、持て余し者、厄介者、碌でなし、能無し、半端者であった。本物の紳士や貴族は本国で必要とされる人材だ。確固とした財産や地位を持っているのに、わざわざ平民になってアメリカへ向かう理由はない。移民は祖国で辛いことばかり。上流階級に馬鹿にされたり、抑圧されたりと、屈辱的な扱いを受けてきたし、出世したくても身分秩序と民族差別が壁となる。これだから、夢を断念せざるを得ないこともばしば。それなら、嫌な過去と祖国を棄てて新天地へ、と考えても当然だ。アメリカでは実力次第で裕福になれるし、貴族や領主に平伏す必要も無い。努力を積み重ね、そこに幸運が加われば、上院議員とか高級軍人にだってなれる。歐洲の賤民にしたら、みんなが対等の自由人というのは感激に値する。他人に頼らない代わりに、自分勝手に生きることができるんだから最高だ。

Vietnam War 3Vietnam WAr 8






(写真  / ヴェトナム戦争に従軍したアメリカ兵 )

  合衆国政府から「使い捨ての駒(expendable pawn)」にされた下層白人が、国家への忠誠心に嫌気が差したり、自分の好きなように生きたいと願ってもおかしくはないだろう。ジョン・テラーの場合、「兄弟」と思えるような仲間と共にバイクを乗り回すことが無上の喜びなのだ。そして、ジョンは“真の”デモクラシーでSAMCROを維持しようと考えた。つまり、何か問題があれば、各自が自分の思うところを述べ、率直な議論の後で裁決をとる。みんなが平等だから、遠慮無く本音を語っても安心だ。米国を根底から揺るがしたベトナム戦争は、議会の討論も無いまま始められ、実際に血を流したのは発言権の無い兵卒だった。宣戦布告さえ無かったのに、米国史上最悪の戦争となってしまったんだから、彼らの怒りは治まらない。陸戦のプロでもないCIAが準軍事作戦と称して軍事顧問団を派遣し、共産主義勢力への代理戦争を本格戦争に拡大させてしまい、結局アメリカの一般国民が尻ぬぐいをした、というのがベトナム戦争の実態である。マックスウェル・テイラー将軍(Gen. Maxwell Davenport Taylor)が本音で何を考えていたのか分からないが、将軍の政治的野心や統合参謀本部との軋轢、マクナマラ国防長官の判断ミスは深刻な結果をもたらすことになった。

SOA round table 4











(写真  / SAMCROの会議)

  ゲルマン人の社会には、「バンド・オブ・ブラザーズ(Band of Brothers)」という意識が強い。戦争で生死を共にする仲間との絆を何よりも大切と考えるからだ。『サンズ・オブ・アナーキー』の中でも示されているが、クラブのメンバーは互いに命懸けで助け合い、彼らの兄弟愛は凡てのものを越えていた。クラブへの忠誠心がすべてであるから、裏切者には死刑しかない。総長のクレイがジャックスに殺されたのも、自分の利益の爲にクラブを裏切ったからである。ちょっとしたことだけど、ドラマの中には印象的なシーンがあった。何らかの事件が起こると、総長のクレイが会議室にメンバーを集め、円卓を囲む各人がクラブの問題を話し合うのだ。例えば、抗争相手との決着をどうつけるとか、あるいは銃器の密売方法をどのようにするのか、なかでも凄いのは裏切ったメンバーの処刑について賛否を問う場面である。自分の生き方は自分で決める、というのがクラブのルールになっていた。腹を割った話し合いが済むと票決を取り、メンバーは多数決の意見に従う。各メンバーが「アイ(Aye / 賛成)」あるいは「ネイ(Nay / 反対)」と口にして、総長のクレイが木槌を叩いて決定を宣言するところなど、ゲルマン人のデモクラシーを彷彿とさせるシーンで非常におもしろい。

SOA Jax & Tara 2SOA Jax & Tara 5








(写真  /  ジャックスとタラ)

  自由は経済的裏付けがあって成り立つ。ただ自由を求めて生きるなら簡単だ。乞食にもできる。しかし、好きなバイクに跨がり、愛する女と結婚し、可愛い子供を育てる、といった本当に自由な人生を送りたければ、その生活を支える金銭が必要なのだ。ドラマの中では、ギャングの抗争に危険と嫌悪を感じたタラが、夫のジャックスにクラブを棄てて、別の土地に移り、子供たちと一緒に平和な暮らしをしようと提案したことがある。しかし、その為には充分な資金がなければならない。外科医のタラは自分が何とかすると言い聞かせるが、ジャックスは「女房に頼る亭主にはならない」と言って断った。そこで、一攫千金を狙ったジャクスは、今まで避けてきた麻薬密売にも手を染めてしまうのだ。しかし、却ってトラブルが増大し、クラブを去ることすらできなくなってしまう。事態の悪化に失望したタラは、ついにジャックスとの離婚を決め、子供たちを連れて逃げようとする。最終的に、ある事が切っ掛けでタラは義母のジェマに殺されてしまう。血みどろのタラを抱きかかえるジャックスの姿が痛々しかった。

Jax & Abel 2Jax & Tara 2





(左: ジャックスと子供たち  /  右: 殺されたタラを抱きかかえるジャックス)

  日本のギャング・ドラマだと、暴力や恋愛のシーンはあるが、家計を支える苦労話とか子育ての難しさ、夫婦間のいざこざなどのストーリーはあまり見られない。『サンズ・オブ・アナーキー』は犯罪集団の悲劇と思われがちだが、随所にアメリカ社会の問題がちりばめられていているので、とても興味深い。筆者はFOX社から一銭も貰っていないけど、日本での公開前からこの作品に注目していた。FOX社の日本支店も、少しは自社製品を勉強してから宣伝してもらいたいものだ。組織が大きくなると「お役所仕事」になるのは、民間企業も同じである。スピン・アフ作品となる「オリジナル9」の制作日程は未だに不明だが、もし公開となれば再び記事を書いてみたい。
  



人気ブログランキング

「信」無くば政治は成り立たない / 西郷隆盛にあった人徳


所詮は他人のゼニ

  東京都議会選挙が近づくにつれ、築地問題で揺れる都政を小池百合子はどうするのか、といった不安や、加計問題を乗り越えた安倍晋三総理大臣の支持率が下がったぞ、といった報道で世間はマスコミに踊らされている。でも、常識的に考えれば、前川メモは単なる役人の私的文書だし、安倍総理からの「ご意向」は文部官僚の失敗を隠す言い訳に過ぎなかったことが明らかになった。こんな下らない事で国会が廻っていたのでは、ウィーン会議のワルツの方がよっぽどマジである。それでも、まだ民進党や共産党を支持する有権者がいるんだから、国民の方にも責任があるだろう。ただ、蓮舫はある意味すごい。普通なら恥ずかしくて人前に出られないのに、開き直っているのか知らないが、逆に青筋立てて怒っている。日テレの「スーパーJOCKEY」でガンバルマンズと一緒に出演していたから、コントや馬鹿騒ぎが得意なんだろうなぁ。

Renho 8Koike Uriko 9Abe shinzo 4








(左: 蓮舫  / 中央: 小池百合子 /  右: 安倍晋三)

  一方、首相から首都に目を移せば、これまたマスコミと野党の左翼踊りで時間と税金の浪費になっていた。たかだか地下水ごときで、「食の安全は確保されているのか ?」とか、「基準値を超えた汚染水で不安だ !」と騒いでいたが、誰もその地下水で魚を洗ったり、味噌汁を作る訳じゃないだろう。小池都知事は最初から事情を分かっていたはずだ。本音は、この騒擾を自分の基盤作りに利用しようと思っただけじゃないのか。彼女は何かと言えば「都民を優先します !」と民衆に媚びるが、肝心の主役は都民じゃなくて小池氏自身になっている。その証拠に「都民ファーストの会」は実質的に「百合子ファースト友の会」だし、何人当選するのか「捕らぬ狸の皮算用」で忙しい。市場の引っ越し延期で道路建設も遅れたんだけど、その損失額はどうするんだ? 豊洲移転延期に伴う損失だって、莫大な金額になっているのに、「誰がそのツケを払うのか」と考えれば恐ろしくなる。でも、所詮は「他人のゼニ」だから、小池都知事には痛くも痒くもない。最終的責任は小池氏にあるというが、何百億もの損失を彼女が贖うのか? 「ユリコ写真集」の売上げくらいじゃ、とてもカバーできないぞ。(たとえ、熟女ヌード写真集にしたって、女の肌には“賞味期限”ってものがあるんだ。どうでもいいけど、古本屋のおっちゃんは、いくらの値をつけるんだ? 世間にはマニアックな人も多いから、意外と高値がついたりして。)

Koike Uriko 1Koike Uriko 4Koike Uriko 7








  ついでに言えば、小池氏が提案した筑地跡にできる「食のワンダーランド」って何だ? 市場が豊洲に移転した後、築地をレストラン街にしようと考えているのだろうか。仮に、そうなった時いくら掛かるのか、明言を避けていたから、どうも怪しい。もしかして、豊洲移転への言い訳に使おうとしているんじゃないか。以前、彼女は選挙公約で「冒頭解散」と口にしていたが、都知事の権限で不信任決議も無しに都議会を解散できるのか? また、小池氏は選挙中に秋葉原を訪れ、「東京全体をアニメランド」にすると公言していたが、その後どうなったのか? 魔法使いサリーに扮して、「魔法使いユリー」を気取っていたが、都民をたぶらかすだけの妖術師だった、なんて冗談じゃないぞ。巷で「白塗りババア」と陰口が絶えないのは、政党を移動する渡り鳥から、風見鶏へと変身し、都政に進出したら「サギ」に生まれ変わったからじゃないのか。
 
やはり偉かった西郷隆盛

Ozaki 2(左  /  尾崎咢堂)
  こんな政治家の体たらくを見ていると、民衆政治を褒めている学者の頭を引っぱたきたくなる。現実的には無理だけど、理想的政治家を求めれば、「憲政の神様」と呼ばれた尾崎咢堂(がくどう / 行雄)を思い出す。明治の政治家には偉人が多いけど、その中でも咢堂は傑出した人物と言えるだろう。しかし、その咢堂が崇敬する西郷隆盛はもっと偉かった。憲政の神様が尊敬するくらいだから、西郷は「神様」よりも凄かったということになる。咢堂翁が物心つく頃には、この大西郷は既に有名人であった。尾崎は長じて論説を書くジャーナリストになるが、事もあろうに、朝廷の官職を辞して薩摩に帰った西郷を批判し、「西郷隆盛討つべし、薩閥討つべし」と記事を書いて、新聞に載せてしまったのだ。そんな処女論文を書いた咢堂だが、南洲に対する敬意は尋常ではなかったらしい。尾崎は「なぜ、西郷はあのように偉大だったのか」が解らなかったらしく、この謎はずうっと彼の頭にこびり付いていたそうだ。

  一般的な理解でなら、西郷の凄さは誰にでも分かっていた。咢堂はそれを「徳望」と指摘する。人々が西郷を慕ったのは、まさしくその「人柄」であり、彼独特の「人徳」である。それにしても、西郷南洲はある意味恐ろしい人間であった。まるで彼は人の魂を吸い取るように、見知らぬ者をも惹きつけ、命懸けの闘いに引き込んでしまうのだ。当時の世間には、「西郷の為なら死ねる !」とか、「西郷先生と一緒に戦えるなら、官軍でも朝敵でも構わない !」と思う人が多くいたらしい。これは嘘みたいな本当の話。ただ、いくらなんでも「朝廷に刃向かってもいい」なんて常識外れというか、怖い物知らずというか、もう狂気の沙汰である。こうした心情を持つのが、西南戦争に参加した薩摩隼人なら解るが、逢って話をしたこともなければ、写真すら見たこともない、ただ「西郷」という名前を聞いた者が、「あの人の為に命を捨てよう」と決心するんだから驚きである。

Saigo Takamori 1( 左 /  西郷隆盛)
  こういう訳で、咢堂は「なぜ多くの人が西郷に感服したのか」、その根本理由を知りたかったそうだ。ところが、ある養老院を訪問したことで、偶然にも西郷の偉大さが判ったらしい。彼は養老院の入院者を目にして、「貧富や階級の点で様々な入院者がいるものだなぁ」と思ったそうだ。そこで、養老院の幹事に彼らの特質とか共通点は何かと尋ねたらしい。突然の質問に戸惑っていた幹事だが、一つだけ気がついたことがあった。養老院にいる者は皆自分の事ばかり考えて、他人の世話は一切せぬ人であることだった。(「西郷はどこが偉かったか」 『尾崎咢堂全集』 第五巻、公論社、昭和三十年、p.487) この共通性を教えてもらった咢堂は、瞬く間に「ああ、これだ !」と西郷の偉さが理解できたという。西郷は養老院に入る人とは正反対の性格を持っていたのである。

  自分のことばかり考えている人は、すべての人に見棄てられ、元官吏であろうと、かなりの資産家であろうと養老院に送られてしまうのだ。それに反し、西郷は自分の事を考えない。いつも他人のことばかり考えている。だから、人々は西郷の為に働こうと思ったのだ。養老院に入る人は「同情の心」が無い。何ぴとに対しても同情を寄せないという共通項がある。しかるに、西郷は誰に対しても同情を寄せてしまうのだ。自分の命を棄てても「あの者を助けたい」と考えてしまうのが西郷の性格である。ゆえに、島流しになろうが、僻地に飛ばされようが、決して人に対する思いやりを忘れはしないのだ。たとえ役職で給料をもらっても、自分では使わず、周囲の者に預けて、勝手に使わせてしまう。確かに、東京で豪華に暮らす大久保利通と違って、薩摩に戻った西郷は質素な生活に甘んじていた。燦然と輝く陸軍大将だったのに、薩摩の百姓みたいな日々を送っていたんだから、黒船に乗ったアメリカ人が見れば、腰を抜かして驚くだろう。

  この敬天愛人の薩摩藩士は、何事につけても自分自身のことは考えず、終始人様のこと、国家のことを優先して生きてきたのである。普通の人間なら、裕福になりたい、旨い物を食いたい、見栄を張れる役職に就きたい、惚れ惚れするような恋人に出逢いたい、華やかな人生を送りたい、など世俗的な欲望を持っているものだ。ところが、西郷南洲ときたら、お金も要らず、名誉も要らない、地位も望まず、女も買わず、ときている。支那人から見れば、何の為に生きているのか解らない。何てったって、酒池肉林がチャイニーズ・ドリームなんだから。支那大陸では神様だってお金に弱く、賄賂漬け。支那人は地獄に預金通帳を持ち込むくらい、金銭に対しての執着心が強い。だから、支那のいわゆる「聖人」が西郷に会えば、その清らかさに目を剝いて驚くだろう。書物の中にしか存在しない聖人君子が現実の世界にいるんだからさぁ。尊敬される孔子だって、権力への「スケベ心」がある。欲の無い人間なんて「モン・プチ」を遠慮する猫より珍しい。(註 / 「モン・プチ」とは人気の生餌缶詰のこと。)

  西郷は凡ての人に向かって、己の命に代えても助けようと考えたから、その同情が西郷に向かって反射したのである。(上掲書 p. 488) 西郷なら自分の為に命を棄ててくれる、とみんなが信じていた。これなら、誰もが西郷の為に命を捧げようと思っても無理はない。西郷は徹頭徹尾、公平で無私の人であった。上下貴賤の区別無く誰とでも接し、一身を以て人を救うという“情”を持っていたから、みんなが感服した。おおよそ、人や社会を動かすのは感情である。なるほど、高位高官の人物なら庶民を動かすこともできょう。だが、それは強制を以て人の体を動かしているに過ぎない。つまり、その心を動かしている訳ではないのだ。大勢が集まる会議で討論が紛糾した時、西郷のような責任者がいてくれると非常に助かる。なぜなら、西郷による鶴の一声でみなが納得したからだ。例えば、困った人々が西郷に決断を乞うと、この偉人は「皆がヨカと思うところをすればよか」とだけ述べて、他には何も言わなかったという。「俺が正しい」とか「お前が間違っている」とか、屁理屈を並べて説得するようなケチなことはしないのだ。全責任を西郷が取る。事によれば切腹をして詫びるだろう。西郷は余りにも命を粗末にするから、却って周囲の者が罪悪感に苛まれてしまうのだ。だいいち、やましい事をしている者は、西郷の目を直視できまい。西郷みたいな豪傑は、みんなが呆気にとられている脇で、囲碁などを指して平然としているんだから肝が据わっている。このように、威厳と人徳に溢れた人物だから、みんなが「西郷どん」に敬服してしまうのだろう。

  西郷の如き人徳者と対蹠的なのが小池都知事である。確かに、小池都知事はマスコミや有権者を操るのが上手いし、旋風(ブーム)を巻き起こして大衆を思うがままに動かしている。あるいは、動かしているように見える。だが、彼女は決定的な資質に欠けているのだ。それは人徳である。現在の小池氏は時代の寵児だから、みんなが彼女の一挙手一投足に注目しているのだろう。しかし、その軽薄な熱気が冷めた時、いったい何人の側近や部下が、何名の同志や同僚が彼女と一緒に沈んでくれるのか? 西郷は月照を助けたかったが、微力ゆえ助けられなかった。だから、一緒に死ぬしかない。志を共にした月照にしてやれることは、自分の身を投げることのみ。西郷の心には、死後の憂いも、裏の計算も、一切無かった。純粋な気持ちだけ。もし、月照が逆の立場でも、西郷の為に命を棄てようと考えたはずだ。我々が何時までも二人のエピソードを語り継ぐのは、そこに我々の「心」が共振するからだろう。庶民は愚かに見えても、本物を見抜く力は持っている。

   小池氏のもとに集まる議員や新人候補者は多い。しかし、その実態は当選を求めての打算的な烏合の集である。小池氏には、たとえ選挙で勝てなくとも小池百合子と共に戦いたい、一文無しになってもいいから彼女を助けたい、ただ一緒に居るだけでいい、と思う仲間がいるのか? 何の見返りも求めず黙って死んでくれる同志が小池氏にいるとは思えない。小池氏だって、そんなことは思っていないだろう。なぜなら、誰もが利益を求めるから集まっているんだし、小池氏も自分の魅力が大衆の熱狂にあることを判っている。だから、次から次へと新鮮で刺戟的な話題を提供せねばならない。興奮するようなネタが尽きれば小池氏の没落となる。彼女が目指しているのは、小泉純一郎が演じた「改革者」という役柄だろう。既存の政治構造をぶっ壊すことで民衆の喝采を浴び、一躍スターダムにのし上がる手腕に惚れているのだ。でも、その嵐が過ぎ去った後の始末は? そんなの関係無い。小島よしおもビックリ。彼女にはそもそも関心が無い。瓦礫が散乱する政界の掃除は有権者に押しつけて、自らの任期が満了すれば、嬉々として退任だ。百合子スマイルを浮かべながら、「みなさま、ご機嫌よう。さようなら」でお終い。

乃木だったら

  咢堂は大人物の資格にも触れていた。指導的立場や高い官職にある人は、ある程度有能でなければならないが、物事の隅々にまで精通している必要は無い。具体的で細かい事務仕事は、能吏を据えて任務に当たらせれば良い。咢堂曰わく、小悧巧にして小智慧を働かす者は小使いの仕事である。(上掲書 p.493) 大臣はそんなことをすべきではない。咢堂は当時スキャンダルになった「シーメンス事件」を取り上げていた。これは海軍高官に絡む収賄事件であったが、直接的には関係の無い山本権兵衛や斉藤実までが責任を取らされて辞任。無茶苦茶だけど、内閣総辞職にまで発展したから、深刻な事件であった。伝え聞くところによると、五万円とか六万円の賄賂であったらしいが、そんな瀆職の五つや六つ、同時に起こったところで国家は何の損傷も蒙らない。どこの国でも、どの時代でも、こんな事件は起こるものだ。問題なのは、内閣の頂点に立つ者の資質である。トップが人徳を持っていないから、人々が騒ぐんだ、との見解を咢堂は持っていた。取締る立場の人間が怪しいと思われるから、人々に猜疑心が芽生えてくるのである。最高責任者が取締るべきものを取締り、悪人が悉く罰せられ、善人は必ず讃えられると世間が思えば、シーメンス事件が幾つ起こっても世間は騒がない。

Nogi 2(左  /  乃木希典)
  こうした持論を述べる咢堂は、乃木希典大将の如き総理大臣を想像してみせた。仮に、収賄事件が起きたとしよう。しかし、「これは大変だ。乃木が怪しい !」と世間が疑うだろうか? たぶん、そうならないだろう。なるほど、何万円かの賄賂が遣り取りされたかも知れぬ。だが、乃木が居る以上、必ずきちんと調べ上げ、公平な処分を下すはずだ。乃木の如き清廉の士がいれば、誰も騒がす皆が安心する。世間がざわめくのは、上に立つ者が違うタイプの人間だからである。これは西郷隆盛にも言えることで、西郷が首相ならどんな瀆職事件が起きても安泰である。「西郷どんなら不正は絶対しない」と皆が信じているからだ。西郷南洲が大金に目が眩んで不正をはたらくなんて想像できないし、小銭稼ぎのためにセコい嘘をついたり、失敗を隠すために嘘を重ねるなんて考えられない。小役人がいくら欲得づくで不正を犯しても、西郷がいれば正義が行われるに違いない。こうした絶大な信頼感が当時の世間にはあった。「信」無くば立たず。人心が離れたら「政(まつりごと)」は成り立たない。

  翻って、現在の政治家を見てみれば、どいつもこいつも怪しくて信頼できない。蓮舫が次期首相になったらどうするんだ? 「怪しい」どころ話じゃないぞ。疑惑が凝縮した闇鍋みたいで、目にするだけでも鳥肌が立つ。保守派国民から希望を託された安倍首相だって、やることなすこと裏切りの連続である。「まさか」やらないだろうと思った消費税アップを断行して、景気の失速を招いてしまったし、積極的に移民を輸入しようと謀る竹中平蔵を追放せず、この政商が口にする意見を鵜呑みにしている。周囲を見渡せば赤い菅義偉が官房長官として居坐り、支那人の下僕である二階俊博が幹事長となっている。親友の塩崎久弥は左翼崩れのアカンタレ。皇室会議のメンバーに反日分子が入っているのに知らぬ顔。雑誌『諸君!』や『正論』に潜り込んだ偽装学者の山内昌之ばかりか、極左教授として悪名高い御厨貴が、ぬけぬけと皇室破壊に勤しんでいる。保守派国民の一部は安倍氏を確信的左翼と思っているが、案外それほどでもなかったりして。究極的には単純な馬鹿というのが真相なのかも知れないぞ。本人は保守派を自認しているが、やっていることは左翼政策で、周囲に気を使いながら長期政権を目指しているうちに、左翼と変わらぬ政権になっていたという、笑えない推測も可能なのだ。

  一般国民にはアクセスできない情報や内部事情もあるので、時が経たないと本当の事は分からない。ただ、安倍氏を支持している国民に失望感が漂い、信頼感が低下たこと、そして安倍氏に代わる次期首相が見当たらないことだけは確かだ。安倍首相の裏切りに腹を立てる保守派国民がいるが、自民党にあれだけ左翼議員がひしめいているんだから、安倍氏一人が奮闘しても埒が明かないのは当然だろう。それに、安倍首相の後任が誰になっても、安倍氏と同じレベルか、それより酷くなる場合だってある。保守派国民にとって苦痛なのは、首相に担ぎたい次の神輿がいないことだ。いくら何でも、フジテレビが応援する石破茂じゃ嫌だよねぇ。じゃあ、民進党みたいに「ボロ神輿、軽くてちょっとパーがいい」では自爆と同じだ。ちょっとくらいは責任感のある総理大臣でなきゃ。

  テレビや新聞は選挙が近づけば、やれ「マニフェストだ !」、「目玉の政策は?」とはしゃぎまくるが、一般有権者には複雑怪奇な政界の仕組みや煩雑な法律のことは解らない。いくら候補者が立派な公約を掲げたって、一旦当選してしまえば公約を反故にしても構わないし、議員の日常をいちいち監視している訳じゃないから、二、三年も経てば、前回の約束破りを忘れ、再び同じ候補者に投票してしまうのだ。結局、一般国民が考慮すべきは、その人物が信頼できるかどうかの一点に尽きる。政務調査費の誤魔化しとか、支持母体への利益供与とかがあるかも知れないが、国家の根幹を揺るがすような真似はしないだろう、と信じられる議員に投票するしかないのだ。でも、悲しいことに、国家の防衛を蔑ろにする議員が普通で、真の愛国者がいない代わりに、筋金入りの左翼主義者が国会に溢れている。在任期間だけの利益しか考えぬ議員が大半で、国家の大事を考える議員が数える程しかいないんだから情けない。まぁ、政治家の質は国民の平均以下、というのが相場だから、高望みしない方が利口だ。いくら民衆政治の原理において国民に責任が無いとはいえ、日本的常識からすれば選ぶ方にたって責任はある。民衆から愛される西郷隆盛が偉大だったのは、「民衆から選ばれなかったから」という皮肉もあるから、とかく世間は難しい。デモクラシーはデモス(民衆)に任せてはならない、というのが教訓なのかも知れないね。
  


人気ブログランキング
記事検索
最新記事
アクセスカウンター

livedoor プロフィール
黒木頼景の本
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ