無敵の太陽

主要マスメディアでは解説されない政治問題・文化・社会現象などを論評する。固定観念では分からない問題を黒木頼景が明確に論ずる。

2017年06月

国政と地方政治は別もの / 何度でも騙される有権者

教科書に載せて全日本人に知らせたい現代史 支那人の卑史 朝鮮人の痴史
黒木 頼景
成甲書房

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大した事件じゃないのに騒ぐマスコミ

  選挙が近づくとマスコミが蠢(うごめ)く。不偏不党を謳っているが、心の底では「民進党頑張れ !」とか、「共産党、躍進 !」と叫んでいるに違いない。でも、現実はそう甘くはない。フジテレビの視聴率と同じく、いつも底辺を這いつくばっている。それでも、何とかしたい。だから、鵜の目鷹の目で、どこかに与党を攻撃する材料はないかと捜しているのだろう。そんな時、絶好のスキャンダルを見つけたから小躍りして喜んだ。豊田真由子・衆院議員の罵声や稲田朋美防衛大臣の失言など、蜂の巣を突いたように大騒ぎ。でも、その実態は、毎度お馴染みの空騒ぎ。六月の蠅なのに、妙に五月蠅(うるさ)い。

  このところ、偶然にも女性の政治家が世間の話題になっている。稲田大臣は自衛隊の名を用いて選挙応援をしたようで、野党とマスコミに叩かれた。確かに失言だろうが、目くじらを立てて怒るほどのものではなかろう。これくらいのミスで辞任騒ぎなら、どうして自衛隊を国防軍にしない政治家を許しているのか? 拉致被害者を奪還できないのも、我が国が正式な軍隊と圧倒的な兵器を持たないからである。もし、北鮮人がアメリカ国民を拉致したら一巻の終わりである。いくら邪悪な金日成でもそんな真似はしないだろう。もし、米国が本気になれば、一瞬で北鮮軍を殲滅できる。でも、我が国は何十年もかけて「お話し」を続け、いつか望みを叶えてくれるさ、と涼しい顔で過ごしてきた。これで解決しようとしているんだから、「馬鹿」を通り抜けて「ボケ」になっている。大臣が口を滑らせた一言の「誤り」で辞任要求と金切り声を上げるなら、先ず以てマスコミ各社は半世紀にも亙って再軍備に反対した自社の責任を取れ。拉致被害者家族が次々と亡くなって、「どうしてこのような結果になったのかしら?」なんて社説を掲げたら赦さないぞ。

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( 左: 稲田朋美 / 右: 豊田真由子 )

  週刊新潮によって暴露された豊田議員の罵詈雑言は、「お茶の間感覚」で言えば面白い。だが、「それがどうした?」と訊きたくなる。彼女が秘書に浴びせた侮辱は、雇用関係においてのトラブルで、世間の生活には関係が無い。暴行事件なら警察が調べ、判事が処罰を下すだろう。ところがマスコミは、安倍首相と豊田議員を“どうしても”絡めたい。自分の秘書をいたぶる悪徳議員と彼女を選挙で応援した安倍氏を無理やり結びつけたい、という下心が見え見えだ。何処の党首だって新人議員の応援演説くらいするじゃないか。たいして親しくもない候補者でも、同じ政党に属しているという理由だけでべた褒めはおかしいけど、それも政治だ。誰でも分かっている。候補者がどんな性癖なのか、どんな私生活なのか、どんな交友関係を持っているのか、なんて一々調べる訳じゃないだろう。候補者をよく知る地元民だって、本当の姿を知らないんだから。ましてや義理で応援に駆けつける党首が知っている訳がない。それなら訊きたいが、あれだけ犯罪者を輩出したNHKだが、会長は一人一人の社員がどんな私生活を送っていたのか知っていたのか? TBSの社長は全社員の性生活や夫婦生活、上司と部下の人間関係を把握していたのか? 謝罪会見を行う重役たちは、「俺のセイじゃないよなぁ」と心で呟きながら、“仕方なく”頭を下げているはずだ。

  豊田議員がどの様な「裏の顔」をもっていても、ちゃんと立法活動をしていれば、我々には被害が及ばないはずだ。あの音声公開は、侮辱された秘書が自らの恨みを晴らすための仕返しだろう。テレ朝は議員の「人格」云々とほざいているが、朝日新聞から派遣され、「ニュース・ステーション」でデカイ顔(ツラ)をしていた、“あの”菅沼栄一郎はどうなんだ? 議員の資質を問うなら、先ずどの様な国家観を持っていて、国益とは具体的に「何」と考えているのかを取材すべきだろう。それなのに重箱の隅をつつくような「あら探し」と、うんざりするようなスキャンダル報道ばかりでは、宣伝工作機関と呼ばれても反論できまい。財務官僚と学校経営者との土地取引や、文科省の役人が勝手に作った文書について、何週間も報道する価値があったのか? 一般有権者にとっては何の利益も得られず、ただ税金を無駄にされただけだ。しかし、マスコミにとっては与党攻撃に便利な「弾丸」となっていた。これらのゴタゴタを自民党に結びつけて、「都民ファースト」が大勝すれば、また特番が作れると計算しているんだろう。また、防戦一方の自民党議員も情けない。積極的な景気対策とか、軍備増強、兵器開発の解禁を目玉にすれば、よっぽと実りある政治となるだろう。よくデフレ解消を議論にしているが、国家プロジェクトとして、ガンダムや宇宙戦艦ヤマトでもいい、とにかく画期的な兵器開発をすれば、絶好の景気刺戟策になるし、科学技術の進歩・発展に繋がるから「お得」だ。

  票数計算に長けた小池百合子・都知事は、選挙中に豊洲問題が炎上するのを避けるため、早めに移転の決定を表明し、火消しを図ったから何とも狡賢い。調査機関の予測を信じるなら、「都民ファーストの会」は自民党の予想を上回る議席数を獲得するだろう。選挙の鍵となるのは、マスコミ報道やイメージ作戦に踊らされる都民がどの程度存在し、その内の何パーセントが投票所に足を運ぶかである。テレビ・キャスターを務めていた小池氏は、民衆の「気紛れ」に敏感だから、支援者を鼓舞するような話題や演技を考えているだろう。特に、女の武器は「見かけ」だから、小池氏はそれを最大限に利用するはずだ。

Susuda 1(左  /  薄田泣菫 )

  昔、薄田泣菫(すすきだ・きゅうきん)がうまいことを言っていた。神様の数多い作品の中で、「女」が一番の傑作であるらしく、泣菫も異論が無かったという。「女の美しさ」を「傑作」と呼ばないのは盲目(めくら)であるらしい。(今の大学生には薄田泣菫は人気が無いようだ。「それ誰?」と訊く人が多い。村上春樹の本を買うくらいなら、泣菫のコラム集の方がよっぽど楽しいし、遙かに価値がある。)

  泣菫は西洋の新聞に載っていた三面記事に注目した。ある夫婦が結婚後、4、5年が経ち、お互いの顔すら見るのも厭になり、修復できぬほど心が離れてしまったそうだ。それなら、いっそのこと別れようじゃないか、ということで離婚の手続きを進めるため、弁護士を交えた話し合いを持とうとした。ところが、その会合の日が運命を狂わせることになる。その日に限って女房は素晴らしく着飾ってきた。身動きする度に絹摺れの音がして、体からは香水の薫りが漂っている。亭主は目眩がするほど見とれていたそうだ。

  旦那 「見違えるほど美しいじゃないか、どうしたんだね」
  奥方 「いいえね、あなたとお別れすれば、独り身になるんで、嫁入口を探しに往ったんですわ」
  旦那 「怖ろしく早い手回しだな。良いのが見つかったのだろう」と吐き捨てるように言った。
  奥方 「もうご存じなの、あなたにも宜しくって言っていたわ」
      そう口にすると、女はちょっと笑ってみせた。

 すると、どうしたことか、亭主は細君の手を摑んで、弁護士の家を飛び出した。三十分後には写真館に入って、夫婦鳩のように肩を並べて、じゃれあっていたそうだ。泣菫は謹んで世の女性たちに告げた。「男は皆こうしたものだ」、と。(薄田泣菫 『茶話』 上巻、冨山房百科文庫、1983年、pp.58-59) お昼御飯の後にソープ・オペラを観ながら羊羹やどら焼きを食べている中年婦人は、よぉ~く碩学の忠告を聞いておくべきだ。「デザートは別腹」なんて安心していると、二段、三段腹になって靴紐が結べなくなるぞ。しかし、多分それは杞憂で、大半の女性は体型や美貌を保つために、大金を投入しているから大丈夫だろう。亭主のお小遣いを削減しても、化粧品をケチる人は少ないから、日本人女性は一般的に綺麗だ。小池都知事だって「白塗りババァ」と揶揄されても、テレビ映りを重要視しているから、美容には人一倍気を使っているはずだ。でも、スッピンになったら誰だか判らない、という現実があったりして。まさか、北川景子みたいな美人が、化粧を取ったら「白鵬みたい !」なんてことはないよねぇ。

Kitagawa Keiko 3Hakuho 2(左: 北川景子  / 右: 白鵬 )

  泣菫の話を参考にすると、大衆とは駄目亭主みたいなもので、ちゃんと給料(税金)を稼いでくるが、女房(政治家)に飽きっぽい。最初は惚れて憧れるが、数年経つと刺戟がなくなり、欠点ばかりが目に付くようになる。感謝よりも愚痴が多くなってしまうのが特徴だ。中高年夫婦でも、毎日食事を作ってもらっているのに、「母さん、今日のご飯はちょっとねぇ」と渋い顔をしたり、「えぇ~、今日はおかずがこれなのぉ」と文句を垂れる。奥方からすれば「じぁ、あなたが毎日作ってみなさいよ !」と反論したくなるだろう。「洗濯と掃除をするだけで午前中はあっと言う間に終わっちゃうんだから」と苦労を語り、「それに、子供たちが帰ってくる前に買い物を済ませて、夕飯の準備なんだから」と憤る。こんな毎日でエクスサイズにエステ通いじゃ大変だ。「自分にご褒美」と高価な洋服を買うのも分かる。でも、ペットの犬より亭主の方を大切にしなきゃ。何もセクシーなブラジャーを身につけろ、とは言わないが、ちょっとくらい亭主を「男」に奮い立たせるだけのサービスをすべきだ。

Koike Uriko 5(左  / 小池百合子 )

  その点、小池氏は独身でも大衆を「ときめかせる」手管に長けている。政策の内容や費用の問題よりも、人目に触れる衣装や化粧に重点を置いている。とりわけ、「何を喋るか」ではなく「どんな風に喋るか」に気を配っているのだ。どうせ大衆は詳しい法律や政策を理解できない。それよりも、世間の視聴者は、羽織っているジャケットはどのデザイナーの服なのかとか、パンツ姿よりスカート姿の方がいいとか、襟元のスカーフの色は赤なのかグリーンなのか、といった点に注目しがちだ。あとは、政敵となる「悪者」を拵えて、抵抗勢力に闘いを挑むジャンヌ・ダルクを演じればいい。世間のオっちゃんやオバちゃんは、こうした“勇ましい”姿を観ると、「へぇ~、女だてらにすごいねぇ」と感心するから、彼女が推薦する候補者に一票入れたくなる。思い起こせば、日本新党がキラキラしていた新党ブーム、郵政選挙でみんなが熱狂した小泉劇場、「政権交代」というスローガンだけで誕生した民主党政権、と得体の知れない空気で日本国民は酷い目に遭ってきた。

Edmund Burke 1(左  / エドマンド・バーク )

  平均的な有権者には、議員の手腕や政策の結果を判断できる能力は無いから、時が経てば何度でも騙される。そもそも、国政と地方政治とは別なのに、マスコミは一色単にして与党を攻撃したがる。そもそも、両者の混同はおかしい。国会議員は各地の行政区から選出されるが、その代議士は地元の為じゃなく「国家」の為に尽くす政治家であるべきだ。英国の哲人エドマンド・バークはかつてブリストル演説で述べていた。かいつまんで言うと、議会という場所は、各種の利益団体から派遣される使節の集まりではない。この議会は国民全員の利害を代表する審議会である。確かに、代議士は地方から選出されるが、一旦選出されれば、もはやブリストルの成員ではなく、議会の成員となるのだ。もし、選挙区の有権者が地元の利益を求め、それが他の地域の利益と反するならば、その要求に従うべきではない。(Francis Canavan, ed., Select Works of Edmund Burke, Miscellaneous Writings , Indianapolis :  Liberty Fund, 1999, pp.11-12.)

  今でも国政選挙になると、宣伝カーに乗った候補者が、「地元のために頑張りまぁ~す」と大声で叫んでいる。しかし、地元のために奔走するのは県会議員くらいでいいんじゃないか。国会議員は「日本国の大事」、例えば国防や外政、防諜組織の確立、金融財政、税制、憲法議論などを優先すべきで、特定業者に公共事業を与えるとか、地元の幼稚園を増やそうとか、交付税を鷲摑みにするなんて、二次的な仕事じゃないか。学校建設に関して総理大臣の「口利き」が、“あった”とか“なかった”とかは「どうでもいい事」だ。都議会選挙だって東京都の問題に集中すべきなのに、「小池都知事は国政に復帰するのか」とか「自民党との連立はあるのか」なんて下世話な次元の勘ぐりである。 いくら東京が日本の顔だからとて、小池都知事の行政範囲は東京だ。

  「都民ファーストの会」に集まってくるのは、新人候補や鞍替え議員、他党からの逃亡議員、公明党などで、「自分の生活第一主義者」の連中である。民進党にいたら落選するから、と考える議員が、どんな思想や政策を持って移籍するのか分からない。どうせ、曖昧な公約を掲げて新鮮さだけをアピールするつもりなんだろう。ハワイで波乗りでもすれば箔がつくと思っている三流のサーファーと同じだ。実際の海でなら、大波に呑み込まれて溺れ死ぬだけだが、政界だと議席にしがみついて結構、スイスイと泳ぐ奴がいるから頭にくる。そう言えば、小池氏も色々な政党を渡って出世魚になった。彼女は派閥の親分に色目を使い、大臣の地位を手に入れてきたんじゃないのか。妖艶な元キャスターは、「誰と寝たっていいじゃない」とばかりに、細川護煕、小沢一郎、小泉純一郎、石破茂と添い寝をしてきた。しかし、跨がった男に力量が無かったのか、小池氏は女性初の首相になれなかった。だからといって、都知事で気分転換という態度じゃ困る。

Ichikawa 1Yamaguchi 1Matsuko 1Umezawa 1







(左: 市川沙耶  /  山口恵梨子 / マツコデラックス  /  右: 梅沢富美男)

  そう言えば運命の神様は女だから、もしかすると嫉妬されたのかも知れない。だが、小池氏は昔の男たちを眺めて、「私の方から振ったのよ」と言うかもね。漢字では男二人が女を挟むと「嬲る」で、「うるさく付きまとう」という意味らしいが、女二人に挟まれた男はどうなるのかなぁ。「女」+「男」+「女」で「あっさり捨てられる」という意味だったりして。理想的には将棋界のえりりん(山口恵梨子・女流二段)と市川沙耶に挟まれることなんだけど、現実にはマツコデラックスと梅沢富美男なんだよねぇ。おっと、両方とも男だった。



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サンズ・オブ・アナーキー / Sons of Anarchy (特別編)


オリジナル9の過去

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(写真  /  SAMCROのメンバー)

  アメリカの人気TVドラマ『サンズ・オブ・アナーキー(Sons of Anarchy)』が日本でも好評を博しているようだ。当ブログも初期にこのドラマを紹介したことがある。ところが、配給元のFOXによるホーム・ページを閲覧して驚いた。一応、ドラマの粗筋や登場人物の説明があるけど、物語の根源となる昔のエピソードが記されていないのだ。『サンズ・オブ・アナーキー』は第二世代の活躍や悲劇を描いているのだが、第一世代である「オリジナル・メンバー」を知らないとドラマの醍醐味が半減するる。たぶん、ドラマ紹介のウエッブ・ページを作成した人物は、上司から渡された資料を日本語に訳しているだけなんだろう。作品に興味の無い担当者が、しぶしぶドラマの説明をしていれば、読んでいる方だって面白くない。大企業は零細商店とは違って、適当なセールスでも大丈夫なんだろう。商店街の小売業者なら、必死になって目玉商品を宣伝し、汗だくになってお客様にご説明申し上げるのにねぇ。フォックス社で働く担当者は、殿様商売をしているんだろう。

charlie hunnam 9Clay Morrow 1(左ジャックス・テラー  / 右クレイ・モロー )
  それはさておき、シーズン1からファイナル・シーズンまでのストーリーを説明する訳にも行かないから、詳細はレンタルDVDでも観てもらうしかない。(興味がある方は当ブログのPart1Part2Part3Part 4の記事を読んでね。) ただし、大筋を言うなら、物語はカルフォルニア州にあるチャーミング(元は「レッドウッド」)が舞台となる。「サンズ・オブ・アナーキー」というバイク・クラブを構成する面々は、表向き修理工場を営むが、裏商売として銃器の密売を行い、生計を立てている。主人公のジャックス・テラーはクラブの創設者ジョン・トマス・テラー(John Thomas Teller)の息子で、当初はクラブの副総長。後に総長へと昇格する。シーズン1での総長は「オリジナル9(創設時の九名)」の最年少メンバーであったクレイ・モロー(Clarence `Clay' Morrow)である。他のメンバーを紹介すると、まず「オリジナル9」の古株で、ジョンの親友であったパイニー・ウィンストン(Piermont `Piney' Winston)を挙げねばなるまい。彼はジャックスの親友オピィ(Opie Winston)の父親である。つまり、親子二代にわたって、テラー家とウィンストン家は仲良しというわけだ。

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(左: チブス  /  右: ティグ)

  主要メンバーにはジャックスの良きアドバイザーで、冷静沈着なアイリス系のチブス(Filip `Chibs' Telford)がいる。そして、チブスと雙壁をなすが、ちょっとクセのあるティグ(Alex `Tig' Trager)。ジャックスの母親のジェマ(Gemma Teller Morrow)は、男優りのゴッド・マザーといった風格で、外見的には強靱だが、内面的にはちょっと脆いところがある。彼女は若い頃、亭主であるジャックスの父親ジョンを見限り、現在の総長クレイと懇ろになり、ついには夫婦となる。野心家のクレイはジョンのバイクに細工を施し、事故死を仕組んで成功してしまうのだ。最終回にジャックスが跨がる水色のバイクは、父親の形見となった愛車のバイクである。

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(左: ジェマ・テラー  / 中央と右: 「タラ」を演じたマギー・シフ )

  物語でジャックスと結婚するのは、高校生の時に恋人だったタラ・ノウルズ(Tara Knowles)である。彼女は地元を出て大学に進み、外科医となってチャーミングに戻ってはた。ところが、そのタラに惚れた変態刑事がいつも追い回すので、ジャックスはこのストーカーをタラの前で撃ち殺してしまう。ここで警察に連絡せず、二人はベッドを共にするんだから、タラの方も尋常じゃない。たぶん、恐怖心と開放感から、性的に興奮したんだろう。再会の末に結婚する二人の間には、トマスという次男が生まれた。長男のアベルは、昔付き合っていたウェンディーとの間に出来た子供である。ただし、このウェンディーは母親失格で、妊娠中にもかかわらずシャブを打っていたんだから呆れてしまう。激怒したジャックスは、麻薬中毒のウェンディーからアベルを取り上げて、自分で育ててしまうのだ。といっても、実質的には祖母のジェマが我が子のように育てていたのである。したがって、ジェマのアベルに対する愛情は半端じゃなかった。とにかく、タラは義理の息子を育てながら、ジャックスの次男を産んだことになる。

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(左: ウェンディー  / 中央: タラと息子のトマス  /  右: アベルを抱くジャックス)

  肝心の「オリジナル9」に話を戻す。なぜ、ジョン・テラーは「サムクロウ(SAMCRO)」と呼ばれるモーターサイクル・クラブを創設したのか? それは彼がベトナム戦争に従軍した頃に遡る。時は1960年代後半。リンドン・ジョンソン政権のもと、アメリカはベトナム戦争の泥沼に陥り、徴兵された多くの若者が劣悪な戦場で命を落としていた。ジョンは合衆国陸軍第25歩兵師団に配属されていた。戦場を生き延びたジョンは地元に戻るが、世間は帰還兵に冷たく、彼は自由を求めて「ヘルズ・エンジェルズ」みたいなグループを作る。これが「SAMCRO」と呼ばれるモーターサイクル・クラブの始まりだ。(ちなみに、「SAMCRO」は「Sons of Anarchy Mortorcycle Club Redwood Origianl」の略で、ジョンたちは「チャーミング」という新しい街の名前が嫌で、昔ながらの「レッドウッド」を用いていた。) 当時のマスコミは、戦況が悪化するベトナム戦争を否定的に報道し、国内で厭戦気分を煽っていたし、徴兵を恐れる大学生は抗議活動をするか、カナダに逃れるしかなかった。国務長官になったユダヤ人のジョン・ケリーは、ベトナム反戦運動の代表格として有名だ。(元々はユダヤ風の「コーン(Cohn)」という氏族名であった。) 安全な米国に留まり、テレビ画面を通してしかベトナム戦争を知らないアメリカ国民は、村人や女子供を撃ち殺すアメリカ兵を「赤ん坊殺し」とか呼んで罵り、祖国の為に闘った軍人として尊敬しなかったという。それゆえ、こうした仕打ちに耐えられなかったジョンは、自分らしく誰にも指図されない、自由な人生を送ろうと決意したのである。

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(左2枚: ジョン・テラー  /  パイニー  /  右: パイニーの息子オピィ )

  ジョンがクラブを創設すると、ベトナム戦争に従軍した親友のパイニーが加わった。彼はジョンの死後、クラブの副総長となるが、それは親友の息子ジャックスが大人に成長するまでの間、クラブを守る為である。ジャックスが成長して「サムクロウ」のメンバーになると、その地位に執着することなく、副総長の席をジャックスに譲ってしまったから、本当に偉い。この禅譲により、ジャックスは誰の反対もなく、若くして副総長になれた。しかし、ドラマの中でパイニーは総裁のクレイに無惨にもショットガンで殺されてしまう。クレイは自分が犯した裏切りをパイニーに知られたため、パイニーを生かしておくわけには行かなかったのだ。

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(左: レニー・ジャノヴッツ  / 中央: レニーとジャックス /  右: キース・マッギー)

  三人目は、「ヒモ」と呼ばれたレニー・ジャノウィッツ(Lenny `The Pimp' Janowitz)である。彼もまたベトナム戦争の帰還兵で、ジョンの副官的存在であった。彼は銃器取締局(ATF)の捜査官を三人も殺してしまったため、「ストックトン州立刑務所」に投獄されてしまったのだ。ジャックスや他のクラブ・メンバーが刑務所で時折面会する、あの奇妙な老人がレニーである。彼は咽頭癌を患ったため、その声帯を失い、器具を使って喋るしかない。何ともまぁ印象的だ。このレニーは娼婦を扱う事に長けていたから、ジャックスたちがポルノ映画会社を運営してお金を稼ごうとした時、レニーに相談したのはこういう背景があったからである。この事情を知らないと、『サンズ・オブ・アナーキー』を観ていても、レニーが何者なのか判らない。

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(左: トリニティー・アシュビー  / 中央: モウリーン・チシュビー  /  右: ケラン・アシュビー神父)

  四番目はアイルランド出身のキース・マッギー(Keith McGee)である。彼は創設メンバーであるが、アイルランドのベルファストへ渡って「SAMCRO」の支部を作ることにした。ジャックスたちは銃器の仲卸をしていたが、その供給先がベルファスト支部の連中で、IRA(アイルランドのテロ組織)と繋がってているという設定だ。シーズン3で「サムクロウ」のメンバーがアイルランドに渡るエピソードがあり、ジャックスと美しいトリニティー・アッシュビー(Trinity Ashby)が、もう少しのところでベッドインする場面がある。このトリニティーはモウリーン・アシュビー(Maureen Ashby)の娘で、モウリーンはベルファスト支部の姉御といった感じの存在だ。それもそのはずで、彼女はマッギーの女房である。ベルファストの武器密売組織は、「キング」と呼ばれる大御所たちによって運営されているが、その内の一人が何とカトリックの神父ときている。日本なら驚天動地の設定だが、イギリス人の支配に喘ぐアイリス人だと、IRAに陰で協力しそうな神父がいても不思議ではない。アイルランドの悲しい歴史が分からないと、米国に移民したアイリス人の心情に共感できないし、イングランドとの軋轢も理解できないから、ちょっと勉強しておくとドラマが一層おもしろくなる。(チューダー朝とスチュアート朝のアイルランド支配やストラフォード伯爵トマス・ウェントワース、ウィリアム・ペティWilliam Pettyに関しては、別の機会で述べてみたい。 )

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(写真  /  「オリジナル9」のメンバー)

  ドラマでは密売組織のケラン・アシュビーという神父が登場するが、彼はモウリーンの兄である。そして、驚くことにトリニティーはジョンの隠し子であった。どうやら、ジョンがベルファストに来た時、モウリーンと情事を持ってしまい、妊娠した彼女が不貞を告げずにトリニティーを産んでしまったらしい。だから、もうちょっとでジャックスは異母妹と肉体関係を持ってしてしまうところだった。まったく、親子は似るというが、息子のジャックスと同様、父親のジョンも女に目が無かったらしい。ちなみに、ジョンには子供が三人いて、トリニティーはジャックスの妹だが、彼には夭折したジョン・ウェイン・テラーという兄がいた。ドラマの設定では、1990年病気により6歳の生涯を閉じたことになっている。

Kurt Sutter 1Chico VelleneuvaWally Grazer 1Otto Moran








(左: 「ビッグ・オットー」を演じた原作者のカート・サッター  /  チコ・ヴィラヌヴァ /  ウォリー・グレイザー /  右: オットー・モラン)

  五番目はウォリー・グレイザー(Wally Grazer)で、1968年にメンバーとなった。彼は元々流れ者だったようで、1984年に東海岸へ移動し、ニュージャージー支部の総長になった。しかし、13年後、イタリア人との抗争で背中を撃たれて死亡したそうだ。六番目は、トマス・ホイットニー(Thomas `Uncle Tom' Whitney)で、ウォリーの紹介でクラブに入ったという。ところが、彼はクラブの内情をチクったので、1995年に囚人のレニーが服役中のトマスを抹殺したそうだ。七番目はチコ・ヴィラヌヴァ(Chico Villanueva)で、クラブで初のヒスパニック・メンバーである。彼はサムクロウと「マヤン(Mayan)」という南米系のバイク・クラブへの橋渡しだった。しかし、チコはマヤンたちの待ち伏せに遭って殺されてしまう。その時、チコと一緒だったのが八番目のメンバーたるオットー・モラン(Otto `Lil Killer' Moran)であった。オットーは助かるが、目を負傷する。彼は小柄だったが、大男を素手で殴り殺したことがあるという。刑務所に服役している「ビッグ・オットー(Big Otto)」ことオットー・ディラニー(Otto Delaney)とは別人である。ちなみに、この「ビッグ・オットー」を演じているのは、原作者で脚本家のカート・サッター(Kurt Sutter)である。九番目が現在の総長クレイ・モローで、ジョンが死亡した後、クラブの総長になった。彼はパイニーとマッギー、そしてジョンを殺し、最後は裏切者としてジャックスに殺されてしまうのだ。

ユダヤ人無政府主義者からのインスピレーション

Emma Goldman 2(左  /  エマ・ゴールドマン)
  タイトル自体が「アナーキー」となっているので、物語の中でも「無秩序」や「権威への反撥」に言及がある。このドラマの中で特徴的なのは、主人公のジャックスが父の形見の中から、直筆の手記を見つけ、時折暇を見つけては読みふけるというシーンだ。これは父のジョンが感じたことや学んだこと、さらにクラブや人生哲学について語り、それらを綴った随筆集みたいなものである。とりわけ、彼は束縛されない「自由」について書いたことがある。これはシーズン1、エピソード4の「SAMCRO支部の誕生(Patch Over)」で知ることができる。ある支部の設立でネヴァダ州に向かったジャックスは、亡き父が生前見たという壁の落書きを確かめるため、州境にある橋の下を訪れてみた。父親のジョンは16歳の時、エマ・ゴールドマン(Emma Goldman)からの一節が書かれた壁を見て衝撃を受けたそうだ。その壁には赤い文字で以下の抜粋が記されていた。

  アナーキズムが意味するものは、宗教的支配から人間の心をの解放することだ。財産に支配されることから人間の体を解放すること、政府の拘束と軛(くびき)から自由になることである。実際の社会的富を創り出す目的で自由に個人を集め、それに基づく社会秩序がアナーキズムなのだ。<Emma Goldman, Anarchism and Other Essays (New York : Mother Earth Publishing Association, 1911), p.68.>

  読者は「え~ぇ、また、ユダヤ人なのぉ~?」とウンザリするかも知れないが、歐米社会では共産主義者や社会主義者、無政府主義者、極左分子にユダヤ人の占める割合が非常に多い。エマ・ゴールドマンとはリトアニアから米国へやって来たユダヤ移民で、札付きの極左活動家であり、手のつけられぬフェミニストでもあった。1917年のスパイ防止法(Espionage Act)により、彼女の過激思想や扇動活動が問題視され、ついには逮捕されるという事態になった。ゴールドマンは裁判で有罪となり、国外追放の処分を受けたことでも有名だ。当時は共産主義の脅威が生々しく、国家への不服従や反軍思想は社会への挑戦と思われていた。まぁ、共産主義者の割合が飛び抜けて高いユダヤ人だから仕方ないが、無政府主義を標榜するアナーキズムは、まことにユダヤ人らしい発想である。彼らにしたら、長年自分たちをいじめてきたヨーロッパ文明とその社会秩序は憎しみの対象でしかない。よって、暴力を用いてぶっ壊していい。キリスト教徒がユダヤ教徒を迫害してきたんだから、キリスト教文化を根底から覆すことは、積年の恨みを晴らすことになる。それに、どうせ他人の国家なんだから、思う存分暴れてメチャクチャにしたってユダヤ人は困らない。西歐諸国に暮らすユダヤ人に真の保守派が居ないのはこのためである。「ネオ・コンサーヴァティヴ」は「保守」という言葉を貼り付けた左翼運動で、本質的にはイスラエルを支援するための隠れ蓑に過ぎない。

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  実際の社会では「アナーキズム」などトンデモない考えだ。しかし、それは西部とか南部のアメリカ人が「なぜアメリカ合衆国を好きなのか」という疑問への鍵となりうる。というのも、米国へ渡ってきたヨーロッパ人、特に南歐や東歐からの移民は、その大抵が貧民、食いっぱぐれ、持て余し者、厄介者、碌でなし、能無し、半端者であった。本物の紳士や貴族は本国で必要とされる人材だ。確固とした財産や地位を持っているのに、わざわざ平民になってアメリカへ向かう理由はない。移民は祖国で辛いことばかり。上流階級に馬鹿にされたり、抑圧されたりと、屈辱的な扱いを受けてきたし、出世したくても身分秩序と民族差別が壁となる。これだから、夢を断念せざるを得ないこともばしば。それなら、嫌な過去と祖国を棄てて新天地へ、と考えても当然だ。アメリカでは実力次第で裕福になれるし、貴族や領主に平伏す必要も無い。努力を積み重ね、そこに幸運が加われば、上院議員とか高級軍人にだってなれる。歐洲の賤民にしたら、みんなが対等の自由人というのは感激に値する。他人に頼らない代わりに、自分勝手に生きることができるんだから最高だ。

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(写真  / ヴェトナム戦争に従軍したアメリカ兵 )

  合衆国政府から「使い捨ての駒(expendable pawn)」にされた下層白人が、国家への忠誠心に嫌気が差したり、自分の好きなように生きたいと願ってもおかしくはないだろう。ジョン・テラーの場合、「兄弟」と思えるような仲間と共にバイクを乗り回すことが無上の喜びなのだ。そして、ジョンは“真の”デモクラシーでSAMCROを維持しようと考えた。つまり、何か問題があれば、各自が自分の思うところを述べ、率直な議論の後で裁決をとる。みんなが平等だから、遠慮無く本音を語っても安心だ。米国を根底から揺るがしたベトナム戦争は、議会の討論も無いまま始められ、実際に血を流したのは発言権の無い兵卒だった。宣戦布告さえ無かったのに、米国史上最悪の戦争となってしまったんだから、彼らの怒りは治まらない。陸戦のプロでもないCIAが準軍事作戦と称して軍事顧問団を派遣し、共産主義勢力への代理戦争を本格戦争に拡大させてしまい、結局アメリカの一般国民が尻ぬぐいをした、というのがベトナム戦争の実態である。マックスウェル・テイラー将軍(Gen. Maxwell Davenport Taylor)が本音で何を考えていたのか分からないが、将軍の政治的野心や統合参謀本部との軋轢、マクナマラ国防長官の判断ミスは深刻な結果をもたらすことになった。

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(写真  / SAMCROの会議)

  ゲルマン人の社会には、「バンド・オブ・ブラザーズ(Band of Brothers)」という意識が強い。戦争で生死を共にする仲間との絆を何よりも大切と考えるからだ。『サンズ・オブ・アナーキー』の中でも示されているが、クラブのメンバーは互いに命懸けで助け合い、彼らの兄弟愛は凡てのものを越えていた。クラブへの忠誠心がすべてであるから、裏切者には死刑しかない。総長のクレイがジャックスに殺されたのも、自分の利益の爲にクラブを裏切ったからである。ちょっとしたことだけど、ドラマの中には印象的なシーンがあった。何らかの事件が起こると、総長のクレイが会議室にメンバーを集め、円卓を囲む各人がクラブの問題を話し合うのだ。例えば、抗争相手との決着をどうつけるとか、あるいは銃器の密売方法をどのようにするのか、なかでも凄いのは裏切ったメンバーの処刑について賛否を問う場面である。自分の生き方は自分で決める、というのがクラブのルールになっていた。腹を割った話し合いが済むと票決を取り、メンバーは多数決の意見に従う。各メンバーが「アイ(Aye / 賛成)」あるいは「ネイ(Nay / 反対)」と口にして、総長のクレイが木槌を叩いて決定を宣言するところなど、ゲルマン人のデモクラシーを彷彿とさせるシーンで非常におもしろい。

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(写真  /  ジャックスとタラ)

  自由は経済的裏付けがあって成り立つ。ただ自由を求めて生きるなら簡単だ。乞食にもできる。しかし、好きなバイクに跨がり、愛する女と結婚し、可愛い子供を育てる、といった本当に自由な人生を送りたければ、その生活を支える金銭が必要なのだ。ドラマの中では、ギャングの抗争に危険と嫌悪を感じたタラが、夫のジャックスにクラブを棄てて、別の土地に移り、子供たちと一緒に平和な暮らしをしようと提案したことがある。しかし、その為には充分な資金がなければならない。外科医のタラは自分が何とかすると言い聞かせるが、ジャックスは「女房に頼る亭主にはならない」と言って断った。そこで、一攫千金を狙ったジャクスは、今まで避けてきた麻薬密売にも手を染めてしまうのだ。しかし、却ってトラブルが増大し、クラブを去ることすらできなくなってしまう。事態の悪化に失望したタラは、ついにジャックスとの離婚を決め、子供たちを連れて逃げようとする。最終的に、ある事が切っ掛けでタラは義母のジェマに殺されてしまう。血みどろのタラを抱きかかえるジャックスの姿が痛々しかった。

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(左: ジャックスと子供たち  /  右: 殺されたタラを抱きかかえるジャックス)

  日本のギャング・ドラマだと、暴力や恋愛のシーンはあるが、家計を支える苦労話とか子育ての難しさ、夫婦間のいざこざなどのストーリーはあまり見られない。『サンズ・オブ・アナーキー』は犯罪集団の悲劇と思われがちだが、随所にアメリカ社会の問題がちりばめられていているので、とても興味深い。筆者はFOX社から一銭も貰っていないけど、日本での公開前からこの作品に注目していた。FOX社の日本支店も、少しは自社製品を勉強してから宣伝してもらいたいものだ。組織が大きくなると「お役所仕事」になるのは、民間企業も同じである。スピン・アフ作品となる「オリジナル9」の制作日程は未だに不明だが、もし公開となれば再び記事を書いてみたい。
  



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