黒木 頼景
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孫が祖母を馬鹿にする
ドイツ人は病んでいる。というより、治療が不可能なくらい頭がおかしい。つい最近、ノルトライン・ヴェストファーレン(Nortrhein-Westfalen)州にある公共放送局、「WDR(ケルン西ドイツ放送局 / Westdeutscher Rundfunk Köln)」が“とんでもない”替え歌を披露して物議を醸した。WDRは40名弱の子供達を集め、環境問題に鈍感な老人を“揶揄”する目的で、子供にコミック・ソングを合唱させ、そのミュージック・ビデオを流したのである。
ところが、この合唱団が唄った歌詞がマズかった。歌のタイトルからして『私のお婆ちゃんは年老いたエコ豚(Meine Oma ist'ne alte Umweltsau)』というくらいだから、どんな内容なのか察しがつく。例えば、子供達は笑顔で、「私のお婆ちゃんはバイクに乗って、毎月何千リットルものガソリンを燃やすの。そして、ディスカウント・ショップの肉がたいへん安いというので、毎日カツレツを食べているのよぉ~」と唄い、サビの部分である「私のお婆ちゃんは年老いたエコ豚」と繰り返す。("Grandma is an old environmental pig : German broadcaster deletes children's song remake", Deutsche Welle, 28 December 2019.)
(左 : グレタ・トゥーンベリ / 右 : 替え歌を合唱するドイツ人の子供達 )
もう、呆れるというか、怒りが込み上げてくる替え歌だ。政治問題をよく知らない子供を使って、祖母を侮辱させるなんて、WDRの職員は一体どんな頭をしているのか? 聞くところによれば、WDRはスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)を称讃しているせしい。事実、替え歌の最後に彼女が発した「このままじゃ済まないわよ!」という決め台詞を挿入しているのだ。もう、WDRの精神構造は、典型的なリムジン・リベラルとしか言い様がない。そんなに内燃機関が嫌いなら、毎日ランニングかハイキングで通勤すればいいじゃないか。まさか、WDRの重役はヴァカンスを取っても、ジェット旅客機や列車を利用していないよねぇぇ~。エコに敏感な社長や専務は、家に帰っても電子レンジとかファン・ヒーターを使わず、自転車のペダルを漕いで、自家発電のはず。ぜひ、彼らの日常生活を披露してもらいたいものだ。
(左 / ダニー・ホレク)
この替え歌が放送されると、抗議の声が湧き上がり、放送局の前では抗議デモが起こってしまった。そして、この動画を「マズい!」と思った上層部は、即座に合唱ビデオを削除したそうだ。(当たり前。) ところが、WDRの職員、ダニー・ホレク(Danny Hollek)は反省するどころか、逆に抗議するドイツ人に悪態をついた。彼はツイッター上で、怒り狂う老婆達を「ナチの雌豚(Nazisau)」と呼んでいたのだ。("Grandma not an environmental but Nazisau : WDR employee continues to provok", MBS News, December 29, 2019.) いやぁぁ~、ドイツの放送局には、とんでもない社員がいるもんだ。SM嬢がお客に対し「この豚野郎!!」と言い放つのは、商売だから赦されるけど、謝罪側の職員が口にするなんて前代未聞だ。まぁ、日本のNHKや朝日新聞にも、似たような社員がいるからドイツ人のことを一方的に非難できないけど・・・。
おそらく、合唱企画の担当者は、面白半分でビデオの制作を考えついたんだろうが、世間の反応を見誤っていた。普通の大人なら、替え歌を作るとき、「お婆ちゃんは雌豚」じゃ「マズい!」と思うだろう。それなのに、「OK」なんて、アホじゃないか。常識で考えろ。ドイツではリベラル教育が徹底しているから、反原発とか反戦を叫ぶ活動家は今でも絶えないし、移民や難民を拒絶する同胞だと「ネオナチ」と侮蔑される。とにかく、左翼どもは偽善者だ。自分達は優雅で快適な近代生活を楽しんでいるのに、他人に対しては、「化石燃料を使うな!」とか、「環境破壊を許すな!」と宣(のたま)う。スウェーデンの小娘グレタは、外国に行って説教を垂れようとするが、飛行機を使うと非難されるので、わざわざヨットで海外旅行をしていた。ジェット旅客機だと燃料を大量に消費するからと述べていたが、あの船で航行する方がよっぽど「無駄」が多いはずだ。ヨットを手配するだけで、どれだけの費用がかかったことか。したがって、「グレタさんに見習いましょう!」と呼びかける教師は、現実を解らない碌でなしだろう。こういう教師はピラニアの水槽にダイブしろ。少しは目が覚めるはずだ。
(写真 / 孫に囲まれて幸せそうなドイツ人の祖父母 )
日本の祖父母は、「お正月に孫がやって来る !」とウキウキしているが、大切な孫が学校で何を吹き込まれているかに関心が無い。知っている事といえば、せいぜい、進学塾に通って名門校を目指していることくらいだろう。日本のお婆ちゃんは、孫をたいへん可愛がるが、もし、愛する孫娘が目の前で「ウチのお婆ちゃんは、環境問題に鈍感な雌豚なのよぉぉ~」と唄ったら、どう反応するんだ? 不機嫌になったお婆ちゃんは孫に向かって、「なんで、そんな歌を唄うの?」と尋ねるだろう。そして、無邪気な孫は「だって、先生が教えてくれたから」と答える。こうなりゃ、お婆ちゃんは早速、学校に抗議の電話だ。激怒した祖母は、「ウチの孫に何教えてるのよ ! バカ ! 責任者出しなさい !」と叱り飛ばすんじゃないか。ついでに、お爺ちゃんも参戦したりして。
日本人はドイツの惨状を「他人事」のように捉え、「日本に住む自分は別」と思っている。しかし、赤い波は着実に我が国へと押し寄せている。昔、『エコエコアザラク』というオカルト漫画があったけど、日本の学校や放送局も黒井ミサのように、「エコ・エコ」という呪文を唱えるかもしれないぞ。
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