無敵の太陽

主要マスメディアでは解説されない政治問題・文化・社会現象などを論評する。固定観念では分からない問題を黒木頼景が明確に論ずる。

2022年12月

ウクライナは廃墟になってもいい ? / 米国メディアを支配する者 (後編)

共和党も賛成するウクライナ支援

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  かつてアメリカ社会は「自由主義の砦」と思われていた。しかし、冷戦が終わって第21世紀になると、全体主義の悪霊はアメリカに引っ越したようだ。近年のアメリカでは「GAFA」と呼ばれるビッグ・テックがメディアを席巻し、反対意見を表明することが難しくなっている。Googleが親会社となるYouTubeでは、NGワードの監視が厳しく、ちょっとでも規則に違反すれば即「配信停止」か「アカウントの凍結」となってしまう。Googleの検索エンジンも巧妙に制禦されており、不都合な情報は最初から削除されている。でも、一般の使用者はそれに気づかない。TwitterやFacebook(Meta)も同じで、FBIやCIAとツルんで言論統制だ。

  対露戦が始まったウクライナにも、西側の諜報機関や宣伝会社が入り込み、様々な情報統制を構築していた。遠い日本に住む我々は、実際に何が起こっているのか判らないから、アメリカの主流メディアが伝える「戦争報道」という材料で判断しているのが現状だ。しかし、こんな現地取材は非常に怪しく、検証せずに鵜呑みにしたら、バイデン政権や軍需産業、金融業者、エネルギー産業、各種ロビーストの思う壺だ。たとえ、PBSやニューヨーク・タイムズ紙が伝える“報道”でも、ウクライナのPR会社(宣伝情報代理店 / public relations firm)が“拵えた”偽情報なのかも知れないし、あるいは“真実と嘘をごちゃ混ぜにした”誘導操作という場合もある。

  紛争が始まる前から、ウクライナには西側のPR会社が乗り込んでいた。現地の情報に飢える歐米や日本の一般人は、西側にとって“都合のいい情報”が流されているとは思わない。NBC の「Meet the Press」やCBSの「Face the Nation」といった政治討論番組では、有名な評論家や御用学者が登場し、難しい専門用語や政治理論を交えて軍事戦略を語るから、一般国民はコロッと騙される。とりわけ、日本の庶民は軍事・外政に疎いので、まさか“世論誘導の情報”とは思わない。NHKのニュース番組を観みたり、池上彰の解説を聞けば、子供のように「そうだよねぇ~」と信じてしまう。

Nicky Reazzoni & George Blizzard(左 : ニッキー・リガゾーニ /  右 : ジョージナ・ブリザード)
  ところが、英米の戦時プロパガンダは極めて巧妙だ。密かに張り巡らされた巨大ネットワークを稼働させ、多数の違った放送局がシナリオ通りの報道を垂れ流す。特に、最近はPR会社の演出が極めて効果的だ。洗剤や化粧品を売り込むような塩梅で、政治ネタを調理する。例えば、ブリテンに拠点をもつ「PR Neywork」は、ウクライナの外務省と提携し、ロシアや戦況に関する情報を流していた。この宣伝会社は2005年、ニッキー・リガゾーニ(Nicky Regazzoni)とジョージナ・ブリザード(Georgina Blizzard)という二人の女性によって創設され、現在では380万ドルの手数料を稼ぐ会社になっている。

   ウクライナのプロパガンダ・マシーンには、PR業界の大御所たるフランシス・インガム(Francis Ingham)も深く関わっていた。彼は「Public Relations and Communications Association(PRCA)」というヨーロッパ最大の広告組合で15年間も統括ディレクターを務めた人物だ。この組織は色々な広告会社やコンサルタント会社を束ねる元締的な組織である。そして、PRCAは各企業を代表するロビイストの役割も担っているそうだ。英国で隠然たる権力を誇るインガムは、かつて保守党のアドヴァイザーを務めたこともあるから、政界のブローカーになっているのだろう。

  何しろ、老舗の保守系シンクタンクである「ボウ・グループ(The Bow Group)」で事務局長を務めていたくらいだから、ボリス・ジョンソンからの依頼だって受けていたのかも知れないぞ。辞任する前、ジョンソン首相は二度もウクライナへ赴き、ゼレンスキーに支援を約束していたから、英国の諜報機関が暗躍していてもおかしくはない。「ノルドストリーム」や「クリミア大橋」の爆破だって、MI6が手助けしていたとも考えられるのだ。だいたい、どうして橋の爆破直後に、炎上する橋を描いた巨大切手が展示されたのか? この看板を制作した業者は、どうやって事前に橋の爆破を知ることができたのか? ウクライナ政府の役人は答えるべきだ。

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(左 : 巨大な切手の前で記念写真を撮るウクライナ国民  /  右 : キエフを電撃訪問したボリス・ジョンソン首相 )

  話を戻す。今でも政府との太いパイプを有するインガムは、ブリテン政府のプロパガンダ機関と連携しているようだ。彼のような熟練の宣伝マンは、ウクライナ紛争を扇動する政治プロパガンダに打ってつけで、ロシア政府も彼をブラックリストに載せているくらい。もっとも、インガム自身は“危険人物”に列せられたことを喜んでいる。

Francis Ingham 1(左  /  フランシス・インガム)
  以前、ブリテン政府は一般国民や諸外国とのコミュニケーションを模索し、その効果を評価するために「Government Communication Service Strategy and Evaluation Council」という評議会を設置したが、インガムはここに属していた。インガムの経歴はこれだけじゃなく、彼は世界各国で広報活動を展開するPR企業の「International Communications Consultancy Organisation」で経営者を務めていたし、英国の枢密院から“お墨付き”をもらったPR機関「Chartered Institute of Public Relations」で所長を任されていた、というから本当に凄い。(Dan Cohen, 'Ukraine's Propaganda War : International PR Firms, DC Lobbyists and CIA Cutouts', Mint Press News, March 22, 2022.)

  情報鎖国の日本に住む我々には、ウクライナ紛争の実態なんて全く判らない。宣伝業界の専門誌『PR Week』が匿名の情報源から得た話によれば、ウクライナで活動する宣伝組織は150社くらいあるそうだ。巷のオッちゃんやオバちゃん達は、フジテレビの耄碌ジジイである木村太郎や、道化師まがいの学者藝人、中村逸郎・筑波大学名誉教授の話を聞いて頷いているけど、我々はロシアがどのくらいのミサイルを貯蔵し、如何なる種類の兵器を隠しているのか判らない。防衛研究所の専門家だって、歐米からもらった情報で解説しているだけ。プーチン大統領に関しては、健康不安説やクーデタ計画が云々されたけど、頭脳明晰なプーチンは、何年も前から英米の攻撃を予測し、有事に備えての軍備を整えていた。それゆえ、ロシアが易々と英米に屈服するとは思えない。

  だいたい、ゾロアスターの善悪二元論じゃあるまいし、ウクライナを「善の被害者」と規定し、ロシアを「悪の侵略者」と決めつけるのは単純すぎる。常識的に考えれば、「バイデン政権が対露戦争を仕掛けた」と判断するのが妥当だ。ところが、CNNやワシントン・ポスト紙といった主流メディアは、ウクライナ紛争を「ジハード(聖戦)」のように扱っている。だが、実質的にはウクライナを利用した「NATOの代理戦争」じゃないか !

  それにもし、ウクライナ軍が占領地を奪還したら、歐米や日本に逃れてきた避難民は帰国するのか? 日本にやって来たウクライナ人は腹を決めたようで、複雑怪奇な日本語を学んで、日本に定住しようと考えている。確かに、戦争で瓦礫と化した祖国に帰っても、明るい未来は無いから、「日本の方がマシ」と判断したのかも知れない。少なくとも、幼い子供を抱える母親は、「安全な日本」での生活を選んでしまうだろう。

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(左 : ウクライナを脱出したウクライナ人の親子  /  右 : 家族に従ってウクライナを離れる少女)

  おそらく、ネオコンの背後にいる闇組織は、どんなにウクライナが荒廃しようとも、絶対に停戦を認めず、際限なく武器や傭兵を供給して戦争の継続を強行するつもりだ。明らかに、「操り人形」たるウォロデミル・ゼレンスキーに主導権は無い。一方、ゼレンスキーにとっても安易な妥協は命取りとなる。なぜなら、もしロシアと和平を結べば、国内で積もり積もった不満が一挙に爆発し、世論の怒りはゼレンスキーに集中するだろう。それなら、建前でも「徹底抗戦」を呼びかけ、自分の延命措置を図る方が悧巧だ。ゼレンスキーは「クリミア半島も奪還する」と息巻いていたが、そんなのはほぼ不可能。出来ないと判っていても、それを口にすることで戦争指導者の面子を保っている。

  「木偶の坊」としか思えないゼレンスキーは、急遽、クリスマス前にアメリカ合衆国へ渡航した。というよりも、米国から連行されてたのかも知れない。来年の1月から議会で共和党がうるさくなるので、その前に支援金を決めてしまおう、という魂胆なんだろう。脚本通り、ゼレンスキーは連邦議会に赴き、「お涙頂戴」の演説を披露。さすが、一流のPR会社が用意しただけあって、ゼレンスキーのスピーチは洗練されていた。感動する者までいたから大したものだ。しかし、彼の背後に控えるカマラ・ハリスとナンシー・ペロシの映像は醜かった。民衆党の副大統領と下院議長は、寄せ書きが記されたウクライナ国旗を靡かせ、アメリカ国民に「正義の戦争」をアピールしたが、正常なアメリカ人であれば侮蔑の感情しか湧かないし、全体主義と化したワシントンに寒気を感じるはずだ。

  前世紀のアメリカでは、フィンランドかネーデルラントからヨーロッパ人のサンタクロースがやって来たが、今じゃ、髭面のユダヤ人が道化師のように現れ、大金をせびりに来る。これじゃあ、小学生の子供だって「What's going on ?!(どうなってんの?)」と訊きたくなるじゃないか。一家の大黒柱たる父親だって、あんな猿芝居を目にしたら税金を払うのが馬鹿らしくなる。ゼレンスキーは単なる役者にすぎない。政界に入る前、彼はSMの女王みたいな格好をして銭を稼いでいた。しかし、大統領になるとハイヒールを脱ぎ捨て、愛国心に燃えるリーダーに早変わり。しかも、このユダヤ人は、髭を生やして“男らしさ”を強調し、厳しい戦況に苦悩する“指導者”を演じていた。

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(左と中央 :  皮のレオタードを纏う藝人時代のゼレンスキー  /  右 : 大統領になったゼレンスキー )

  ゼレンスキーを迎えた連邦議会は、反露好戦の雰囲気に包まれ、まるでソ連か支那で開かれた共産党大会のような集会だった。俳優大統領のゼレンスキーが台本通りのスピーチを終えると、アメリカの代議士はスタンディング・オーヴェイション(standing ovations)を以て大絶賛。小林幸子の演歌ショーじゃあるまいし、大多数の議員が拍手喝采なんて茶番だ。国内が犯罪と分裂で滅茶苦茶なのに、ウクライナへ巨額の財政支援をプレゼントなんてふざけている。でも、上院や下院の議員どもは知らん顔。彼らはウクライナへの軍事支援や経済援助を含めた総合法案(omnibus bill)を通過させ、「総額約1兆7千億ドルの公金を使うからね !」と決めたそうだ。(Steve Holland, Dan Peleschuk and Olena Harmash, 'U.S. House approves Ukraine aid including arms after Zelenskiy visit', Reuters, December 24, 2022. / Alexandra Hutzler, Allison Pecorin, and Trish Turner, 'Senate passes $1.7T spending bill, including Ukraine aid, getting one step closer to averting shutdown', ABC News, December 23, 2022. )

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(左 : ウクライナ国旗を掲げるハリスとペロシ  /  右 : ペロシ議長に国旗を渡すゼレンスキー大統領)

  とりあえず、ウクライナやNATOには450億ドルのギフトが送られるそうだが、民衆党の支持者や一般のアメリカ国民は正気なのか? 日本のお歳暮は、海苔や鮭の切り身くらいだぞ ! まぁ、所詮「公金」は「他人の銭」だから、歌舞伎役者のように贔屓筋にバラ撒いても何ら痛くない。上院では修正案が提出されたが、賛成68票、反対29票で可決された。下院でも税金のクリスマス・プレゼントは承認されたようで、賛成225、反対201票の裁決で通過したという。

  上下両院で注目すべきは、共和党の裏切者がいたことだ。民衆党に協力した上院議員は18名もいた。  (Anna Skinner, 'Full List of Republican Senators Who Voted to Pass $1.7T Omnibus Bill,' Newsweek, December 22, 2022.) リストの中には大物議員が混じっている。

  ミッチ・マコーネル(Mitch McConnell)、ロイ・ブラント(Roy Blunt)、ジョン・ブーズマン(John Boozman)、 シェリー・カピト(Shelley Capito)、スーザン・コリンズ(Susan Collins)、ジョン・コーニン(John Cornyn)、トム・コットン(Tom Cotton)、リンゼイ・グラム(Lindsey Graham)、ジム・インフォフ(Jim Inhofe)、ジェリー・モラン(Jerry Moran)、リサ・マコウスキー(Lisa Murkowski)、ロブ・ポートマン(Rob Portman)、ミット・ロムニー(Mitt Romney)、マイク・ラウンズ(Mike Rounds)、リチャード・シェルビー(Richard Shelby)、ジョン・スーン(John Thune)、ロジャー・ウィッカー(Roger Wicker)、トッド・ヤング(Todd Young)

Mitch McConnel 1Susan Collins 2John Boozman 1Lisa Murkowski 01








(左 : ミッチ・マコーネル /   スーザン・コリンズ / ジョン・ブーズマン /   右 : リサ・マコウスキー)

  民衆党に協力した共和党の下院員は以下の9名。(Virginia Aabram, 'Here are the House Republicans who voted with Democrats on $1.7 trillion omnibus bill’, Washington Examiner, December 23, 2022.)
  
  リズ・チェイニー(Liz Cheney)、ロドニー・デイヴィス(Rodney Davis)、アダム・キンジンガー(Adam Kinzinger)、ブライアン・フィッツパトリック(Britan Fitzpatrick)、ジェイミー・ヘレーラ・ボイトラー(Jaime Herrera Beutler)、クリス・ジェイコブズ(Chris Jacobs)、ジョン・カートコ(John Katko)、スティーヴ・モマック(Steve Momack)

Liz Cheney 112Adam Kinzinger 1Jaime Herrera Beutler 1Brian Fitzpatrick 1








(左 : リズ・チェイニー  / アダム・キンジンガー  /  ジェイミー・ヘレーラ・ボイトラー  /  右 : ブライアン・フィッツパトリック)

  米国の共和党には、ちょっとだけ主流派とメディアに刃向かう議員がいたようで、ゼレンスキーの演説が終わっても拍手せず、みんなが立ち上がったのに椅子に坐ったままの議員がいたという。民衆党の支援団体である主要メディアは、「極右」の共和党員7名を忌々しく思っていたので、あたかも叛逆者のように扱っていた。椅子から立ち上がらなかった下院議員というのは次の七名だ。(James Bickerton, 'Full List of Republicans Who Sat During Zelensky's Speech', Newsweek, December 22, 2022.)

  マット・ゲーツ(Matt Gaetz)、ローレン・ボバート(Lauren Boebert)、アンドリュー・クライド(Andrew Clyde)、ダイアナ・ハーシュバーガー(Diana Harshbarger)、ウォーレン・デイヴィッドソン(Warren Davidson)、マイケル・クラウド(Michael Cloud)、ジム・ジョーダン(Jim Jordan)

Matt Gaetz 1Andrew Clyde 1Diana Harshbarger 1Michael Cloud 1








(左 : マット・ゲーツ  / アンドリュー・クライド  / ダイアナ・ハーシュバーガー  /  右 : マイケル・クラウド )

  日本のマスコミは米国のプロパガンダを和訳しているだけで、ウクライナ紛争がどんな動機で開始され、誰が利益を得ているのかを報道する気配はない。小学校の授業じゃあるまいし、「可哀想なウクライナをみんなで助けましょう」なんてアホすぎる。支援した金や武器は何処に横流し、となったのか? 以前に述べた通り、ウクライナは「使い捨ての駒」に過ぎない。バイデン政権を作った闇組織にとったら、ウクライナ人の命なんてモルモット以下。武器商人から見れば、ウクライナはハイテク兵器の見本市である。衛星画像を凝視するペンタゴンの高級将校は、「ウォー・ゲーム」の実写版に興味津々だ。しかも、色々な兵器が使用され、大勢の兵卒が死亡すれば、その実験データは膨大な量にのぼる。不謹慎と思われるが、このビッグ・データは宝の山だ。一般的に人体実験は禁止されているけど、外国であれば「OK !」となる。

戦争ビジネスで儲ける投資会社

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(左 : 「戦争難民」となったウクライナ人 /  右 : ゼレンスキーを迎えるバイデン )

  今、我々日本人は驚異的な戦争スペクタクルを体験している。というのも、信じられない「喜劇」を肉眼で見ているからだ。何しろ、ボケ老人のジョー・バイデンがアメリカの大統領で、コメディアンのゼレンスキーがウクライナの大統領なんだから、「本当に現実の世界で起こっている惨劇なのか?」と疑いたくなる。

  でも、ロシア征伐には旨い汁や甘い蜜がいっぱいだ。歐米の大資本家は、なぜロシアを攻撃するのか? どうして、プーチンを心の底から憎むのか? それは、ロシアの大地に豊富な資源が眠っているからだ。もし、頑固なプーチン政権を倒せば、歐米の国際企業はロシアの石油やガスを掠奪できるし、場合によったら「ロシアの分割」も夢じゃない。サダム・フセインを抹殺して、イラクの分割に成功したアメリカなら、ロシアの解体だって出来るだろう。

Douglas McGregor 2(左  / ダグラス・マクグレガー)
  日本では「奮闘するウクライナ軍」とか「劣勢のロシア軍」といった報道がなされているが、ウクライナにはどれくらいの傭兵が投入されているのか判らない。米国からパトリオット・ミサイルやハイマースが提供されているものの、実質的なウクライナ軍がどれくらい残っているのか疑問である。米国陸軍の元大佐であるダグラス・マクグレガー(Douglas MacGregor)は、主要メディアの願望を斥け、ウクライナの勝利に関しては懐疑的だ。

  マスコミに媚びないマクグレガー大佐は、ウクライナ陸軍を率いるヴァレリー・ザルズニー将軍(General Valery Zaluzhny)の意見を紹介していた。この将軍によると、ウクライナ軍は迫り来るロシア軍の殺戮に耐えられないそうだ。(Douglas MacGregor, 'Washington Is Prolonging Ukraine's Suffering, The American Conservative, December 20, 2022.) ザルズニー将軍は300輛の戦車や700輛の装甲車を求めていたが、本当に欲しいの実戦部隊の兵員、つまり新しい軍隊であるという。おそらく、ウクライナ軍は壊滅的ダメージを受け、ほとんど残っていないのかも知れない。実際にウクライナ軍を指揮しているのは、英米から派遣された軍事顧問団であろう。また、ハイテク兵器を扱っているのも西側の軍人か傭兵と推測できる。

  日本には傭兵部隊の情報がほとんど伝わってこないが、ウクライナ軍にはかなりの傭兵が投入されているはずだ。たとえ「ウクライナ国民」と称する戦闘員でも、外国から派遣された傭兵の場合もあるし、ゼレンスキーが気前よく国籍を与えれば、即座に「ウクライナ兵」に豹変できる。例えば、「民間軍事会社」と称する「Constellis」は、実質的には傭兵派遣会社だ。一般の日本国民、もしかすると国会議員でも、この警備会社を聞いたことがないかも知れない。だが、この会社の前身は、あの有名な「ブラックウォーター(Blackwater)」である。「ブラックウォータ」は評判が悪くなったせいか、2009年に「アカデミー(Academi)」と改名し、2011年には「トリプル・キャノピー」という警備会社に併合された。そして、この「トリプル・キャノピー(Triple Canopy)」は「コンステリス・グループ(Constellis Group)」の子会社だ。

  そして、2016年には巨大な国際企業で個人投資の顧問をする「アポロ・グローバル・マネージメント(Apollo Global Mamagement)」が「コンステリス」を10億ドルで買収した。この吸収合併には投資会社の「フォルテ・キャピタル・グループ(Forte Capital Group)」や「マンハッタン・パートナーズ(Manhattan Partners)」も加わっていた。「コンステリス」のCEOを務めていたジェイソン・デヨンカー(Jason DeYonker)は、「フォルテ・キャピタル」の創業者である。「コンステリス」の社長を務めていたのは、「マンハッタン・パートナーズ」の共同創設者であるディーン・ボサッキ(Dean Bosacki)だ。「マンハッタン・パートナーズ」を開業した時、ボサッキの相棒だったのは、「ウォルナット・グループ(Walnutr Group)」にいたパトリック・マクブライド(Patrick McBride)である。

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(左 :  ジェイソン・デヨンカ  / 中央 : ディーン・ボサッキ  / 右 : パトリック・マクブライド )

  親会社となった「アポロ・グローバル・マネージメント」を創業したのは、これまたユダヤ人の金融業者や投資家だった。創設者にしてCEOとなったレオン・ブラック(Leon David Black)は、ポーランドからやって来たユダヤ移民の息子である。元々、彼は投資会社の「ドレクセル・バーナム・ランバート(Drexel Burnham Lambert)」で企業合併を担当する筆頭マネージャーであった。

  特筆すべきは、このレオンが悪名高い「ジャンクボンドの帝王(Junk Bond King)」であるマイケル・ミルケン(Michale Robert Milken)の腹心であったことだ。悪徳ユダヤ商人の典型たるミルケンは、インサイダー取引や脱税、恐喝、詐欺など繰り返し、98件の罪状で起訴され、数件の犯罪で有罪となった。このユダヤ人には2億ドルの罰金刑が科せられ、10年の懲役刑が言い渡された。しかし、10年の「お勤め」は2年に減刑され、22ヶ月の服役で釈放となった。出所後は、図々しくも「慈善家」となって様々なイベントに参加し、「FasterCures」というシンクタンクまで作っていた。

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(左 : レオン・ブラック / 中央 : マイケル・ミルケン / 右 : ジェフリー・エプシュタイン )

  ユダヤ人というのは、意外なところで色々な人物と繋がっているものだ。大企業の経営者となったレオン・ブラックは、“節税(脱税?)”を目論む大富豪らしく、デブラ(Debra Black)夫人と共に財団を創っていた。しかし、ブラック夫妻の財団たる「Debra and Leon Black Family Foundation」には、性犯罪者のユダヤ人、あのジェフリー・エプシュタイン(Jeffrey Epstein)が絡んでいた。拘留中に「自殺」したエプシュタインは、この財団に雇われ、5千万ドルの報酬を受け取る理事になっていたのだ。

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(左 : レオン・ブラックとデブラ夫人    /   右 : ジェフリー・エプシュタインとレオン・ブラック )

  公開された資料によれば、レオンはエプシュタインに税金や資産の運営に関するアドヴァイスを受け、2012年から2017年の間に1億5千800万ドルの報酬を支払っていた。さらに、レオンはエプシュタインの財団にも貢献したそうで、1千万ドルを寄付していたというのだ。(Bob Bahr, 'Financial Titan Is Latest Epstein Casualty', The Atlanta Jewish Times, March 25, 2022.) もう呆れてしまうけど、ユダヤ人の悪党どもは、金持ちの同胞とツルんで私腹を肥やしている。

  ついでに言うと、「ドレクセル」は元々、フィラデルフィアの「ドレクセル・ファイアーストーン(Drexel Firestone)」という投資会社で、1971年に「バーナム(Burnham)」と合併して「ドレクセル・バーナム」と改名した。さらに1976年、ベルギーの「Groupe Bruxelle Lambert」と合併して「ドレクセル・バーナム・ランバート」と改名したそうだ。

  諺通り「類は群れる」のか、ユダヤ人は同胞を誘って商売に精を出す。レオン・ブラックと一緒に「アポロ」を創設したのは、「ドレクセル」で同僚だったマルク・ローワン(Marc Rowan)とジョシュア・ハリス(Joshua Harris)であった。マルクはユダヤ教の活動にも熱心で、「National Jewish Outreach Program」という団体の役員になっている。ハリスの方はデイヴィッド・ブリッツァー(David S. Blitzer)と組んで「Harris Blitzer Sports & Entertainment」というスポーツや娯楽ビジネスを手掛ける会社を作っていた。また、ハリスはアイスホッケー・チームを買収し、「ニュージャージ・デヴィルス(New Jersaey Devils)」のオーナーになっている。

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(左 : マルク・ローワン  / 中央 : ジョシュア・ハリス  /  右 : デイヴィッド・ブリッツァー )

  一般の日本人は口に出さないが、戦争というのは利潤の高い流血ビジネスだ。ちょっと不謹慎な言い方になるけど、対露戦争を仕掛けた連中は、総合格闘技団体「UFC」を傘下に収めるスポーツ・プロモーターの「Zuffa」と同じだ。「Zuffa」の創業者たるフランク・フェルティタ3世(Frank Joseph Fertitta Ⅲ)や弟のロレンツォ・フェルティタ(Lorenzo Joseph Fertitta)は、自らオクタゴン(リング)にのぼって闘うことはせず、白人や黒人、あるいは南米人の選手を闘わせて大儲けする。

Dana White & Fertitta brothers 1UFC fighting 543








(<左側>ロレンツォ・フェルティタ <中央>デーナ・ホワイト <右側>フランク・フェルティタ3世 /  右  : UFCの壮絶な試合)

       必死に闘う選手との契約や団体の運営は、社長であるデーナ・ホワイト(Dana White)に丸投げだ。「Zuffa」の重役や株主は、出資の見返りに大金を得るだけ。リング上の選手が血塗れになったり、足の骨を折っても、興行主には関係無い。チケットを買った観客も選手の生命には無頓着である。傍観者でしかない野次馬は、殴り合いの激戦と流血の死闘を望んでいるし、失神KOとなれば大興奮だ。ついでに言うと、ラスヴェガスの賭博業者も、UFCの試合をギャンブルにして大儲けしている。

  とにかく、兵器の製造や軍隊の装備に投資をすれば、膨大な利益を手にすることができるので、金融業者やヘッジファンドが軍需産業に投資をしたり、傭兵会社を買収したりするのだ。この美味しいビジネスを拡大・継続するためには、大手メディアの協力が必要なんだが、主流メディアの経営者もインナー・サークルのメンバーなので全面的に戦争を支援する。日本の知識人は「ウクライナ頑張れ !」と声援を口にしているが、一番哀れなのはウクライナ国民であろう。バイデン政権の策略がなければ、今でもウクライナ系国民とロシア系国民は、平穏に暮らしていたはずだ。ロシアの攻撃により、国内のインフラが破壊されたウクライナ国民は、冬の寒さに震えているけど、将来の不安にも震えているに違いない。

  「対岸の火事」を見ている日本人も、やがて銭をむしり取られる日が来るだろう。もしかすると、アメリカやEU議会から「ウクライナ復興支援」の要請が来るかも知れない。かつて、総理大臣になった海部俊樹は「日本は米国のATMじゃないぞ」と呟いたが、岸田総理もバイデンのATMになりそうだ。ただし、「聞く耳」を持つキッシーなら喜んで払うかもね。



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徴兵逃れの勇者 / 米国メディアを支配する者 (中編)

偽りの開戦理由

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( 左 : ベトナム戦争に徴兵されたアメリカの若者  /  右 : ベトナム戦争に反対する大学生)

  建国の父祖が目指していた理想と違い、アメリカ合衆国は“しょっちゅう”戦争ばかりしている。しかも、その動機が“謎めいた”事件に基づき、“いかがわしい”口実で開戦なんだから、一般のアメリカ国民が怪しんでも当然だ。

Walter Schweiger 1(左  / ヴァルター・シュワイガー )
  例えば、米国が第一次世界大戦に参加したのは、ルシタニア号(Lusitania)の撃沈に原因があった。1915年5月7日、1,959名を乗せたルシタニア号は、渡航先のニューヨークからリバプールに戻るべく、大西洋を航行中であった。ところが、この豪華客船はドイツの潜水艦たる「U-boat 」に発見されてしまう。「U-20」の艦長を務めていたヴァルター・シュワイガー(Walter Schweiger)は、武器を密輸する民間船舶を素通りさせず、「G Type魚雷」を発射し、著名人が乗っているルシタニア号を撃破。この兇行は英米の国民に伝わり、“警告無し”の魚雷発射は、瞬く間に「ドイツ憎し」の感情に転化した。

  確かに、ドイツ軍による“卑劣”な攻撃は深刻で、128名のアメリカ人を含む1,198名が亡くなっている。水兵でもない無辜の乗客が海に沈んで命を落とした訳だから、アメリカの世論が激昂しても当然だ。毎度の事だけど、歐米のマスコミはドイツ軍の残虐性を喧伝し、シュワイガー司令官を「赤ん坊殺し(baby killer)」と罵っていた。

  しかし、ルシタニア号には世間に知られたくない「秘密」があった。後の史書によると、この船は小銃の弾薬4,200箱、弾頭の信管3,250個、榴散弾5,000個を詰めたボックス1,248箱、750トンものライフルや機関銃を積んでいたのだ。ルシタニアの乗客は、魚雷が命中した後、二回目の爆発を耳にしたというが、おそらく積み荷の弾薬に引火したのかも知れない。

  この疑惑は1980年代の海底探査で明らかにされた。アイリス人の潜水夫を率いるイオン・マクゲリー(Eoin McGarry)は、ルシタニア号の所有者であるグレッグ・ベミス(Gregg Bemis)の依頼を受け、海底300フィートに沈むルシタニア号を調査した。すると、マクゲリーのチームは驚くべき「遺品」を発見したという。彼らは沈没船の中から「レミントン社製の弾丸カートリッジ(Remington .303 caliber bullets)」を引き揚げていたのだ。(Erin Mullally, 'Lusitania's Secret Cargo', Archaeology, Vol. 62, Number 1, January / Fevruary 2009.) 


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(左 : ルシタニア号の沈没を伝える「ニューヨーク・タイムズ」紙   /  右 : 沈没船から発見された疑惑の弾丸 )

  撃沈事件が起こった当時、ブリテン政府は「軍事用の武器・弾薬」を搭載していたとは認めず、米国からの“密輸”を否定していた。しかし、この秘密に関しては、マーセイ卿のジョン・チャールズ・ビガム(Lord Mersey / Viscount John Charles Bigham)だけでなく、海軍大臣だったウィンストン・チャーチルも知っていたはずだ。むしろ、彼らが仕組んでいた可能性の方が高い。そして、この偽装工作にはウッドロー・ウィルソン大統領も一枚噛んでいたはずだ。となれば、彼の背後には師匠である「ハウス大佐」こと、エドワード・マンデル・ハウス(Edward Mandell House)が控えていた、と考えるべきで、アメリカを参戦させるための陰謀と結論づけてもおかしくはない。

Lord Mersey 001Winston Churchill  8834234Woodrow Wilson 1Edward Mandell House 2








(左 : ジョン・チャールズ・ビガム  /  ウィンストン・チャーチル / ウッドロー・ウィルソン  / 右 : エドワード・マンデル・ハウス  )

  アメリカの対外戦争は、たいてい「八百長事件」が引き金となっている。第一次大戦でも、合衆国政府は中立を言いながら、裏で中立違反をしていた。しかも、ジェイムズ・ブライス卿(Lord James Bryce)が拵えたプロパガンダを広め、敵国ドイツを「極悪非道のケダモノ」にしていたのだ。米国のマスコミが政府とグルになるのは、いつもの通り。正義を振りかざす米国のジャーナリストは、「卑劣な攻撃によってアメリカ国民が殺された !」と宣伝し、好戦的な世論を形成しようとする。英国のマスコミも政治プロパガンダの達人で、予め「決め台詞」が用意されていた。「ルシタニア号を忘れるな(Remember the Lusitania)」とか、「正義の剣を取ってルシタニアの敵討ちだ (Take Up the sword of justice, avenge the Lusitania.)」というポスターを見れば直ぐ判る。

Lusitania propaganda poster 002Lusitania propaganda poster 003Remember Pearl Harbor poster 3Remember Pearl Harbor poster 5







(左 :「剣を取れ」と呼びかけるポスター   / 「ルシタニアを忘れるな」のチラシ  / 「パール・ハーバーを忘れるな」のポスター /  右 : 「卑劣な日本軍による奇襲」を示す宣伝ポスター)

  これって、真珠湾攻撃の時に作られた「パール・ハーバーを忘れるな(Remember Pearl Harbor)」や「パール・ハーバーの仇討ちだ(Avenge Pearl Harbor)」というスローガンの原型じゃないのか? 早くから「大衆社会」となっていたアメリカでは、政治プロパガンダの研究が進んでいた。例えば、ユダヤ人ジャーナリストのウォルター・リップマン(Walter Lippmann)は日本でも有名で、『世論』という著書は岩波文庫に収められている。

  心理戦や宣伝効果を研究したエドワード・バーネイズ(Edward Louis Bernays)も先駆的エキスパートで、第一次世界大戦が始まると合衆国政府に傭われた。彼は「広報委員会(Committee on Public Information)」に配属されたそうだ。ちなみに、バーネイズの母親アナ(Anna)は、ユダヤ人の心理学者ジクムント・フロイト(Sigismund Schlomo Freud)の妹で、エドワードはジクムントの甥に当たる。日本人は「プロパガンダ」という言葉を耳にすれば、直ぐに宣伝大臣のヨセフ・ゲッペルスを思い出してしまうが、本当に恐ろしいプロパガンディストとは、正体を隠しながら印象操作を行う宣伝係であり、諜報組織のスパイだけじゃなく、娯楽産業に潜む映画制作者も立派な工作員となり得る。

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(左 : ウォルター・リップマン  /  エドワード・バーネイズ / ジクムント・フロイト  /  右 : ヨセフ・ゲッペルス )

  歴史を振り返ってみると、アメリカ人は「防衛戦争」の名目で侵略戦争ばかりしている。第二次世界大戦は日本による真珠湾攻撃が引き金となったが、実際はフランクリン・ローズヴェルト大統領の陰謀であり、共犯者はウィンストン・チャーチル首相だ。通説と違って、アドルフ・ヒトラーはアングロ・サクソン国との戦争を望んでおらず、全面戦争を望んだのは「戦争屋(war monger)」と呼ばれたチャーチルの方であった。

  もちろん、共産主義者を利用して敗戦革命を望んだ近衛文麿や、対米戦争という博打をしたかった山本五十六も極悪人だ。こうした国賊を美化して『連合艦隊司令長官 山本五十六』という映画を連中は、単なる馬鹿なのか意図的な左翼なのか、よく分からない。映画のキャッチコピーは、「誰よりも開戦に反対した男がいた」という驚愕の一文だが、いったい誰が提案したのか、その本意を知りたい。まぁ、原作があの半藤一利というから、「歴史活劇の迷作」となっても当然だ。そもそも、「絶対に米国とは闘わない」という国防方針に背いたのが山本五十六じゃないか。

  しかも、真珠湾攻撃を南雲忠一(なぐも・ちゅういち)海軍中将に任せて、山本は広島湾に停泊中の旗艦「長門」に隠れていた。建前上、「長門」の作戦室で戦況を伝える電報を目にしていたというが、どうして自分が最前線に立って指揮をしなかったのか? ハワイの奇襲で生死を賭ける下っ端には「命懸けで闘え !」と発破を掛けていたくせに、自分は安全な戦艦の中で勇ましくしていたんだから、捨て駒にされた水平は呆れてしまうだろう。

  話を戻す。アメリカ人は「デモクラシーvsファシズム」という図式で第二次世界大戦を考えるが、共産主義国のソ連が「仲間」になっているのに、どうして全体主義国との闘いになるのか? 共産主義を蛇蠍の如く嫌うアメリカ国民やブリテン国民、そして革命を憎むイギリス貴族がソ連を手助けするなんて滑稽だ。だいたい、ヒトラーの手からポーランドを助けようとしたのに、戦争が終わってみると、スターリンの掌中に落ちていたんだから、何のために闘ったのか分からなくなる。

  ベトナム戦争も“アメリカン・デモクラシー”や“共和政体”に反する対外戦争であった。最初からジョン・F・ケネディー大統領は、米軍の介入に反対だったし、陸軍大将のアイゼンハワー元大統領もインドシナ半島での地上戦に反対であったという。しかし、ケネディー大統領が暗殺されるとリンドン・B・ジョンソンが後釜に昇進し、ベトナムへの軍事介入は本格的な戦争へと発展する。CIAが率いる軍事顧問団は1963年の時点で1万6千人もいたというから、泥沼への“錘(おもり)”みたいな存在だった。

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( 左 : ジョン・F・ケネディー大統領  /   右 : 大統領に昇格したリンドン・B・ジョンソン)

  しかし、開戦を決めるはずの議会では、ベトナム戦争を始めるべきかどうかの論争は無かった。本来、元老院で様々な点が討論され、最終的に開戦の議決となれば、執政官たる大統領に最高指揮権が授与される、というのが共和政体の原理原則だったはず。それなのに、準軍事組織を送っているうちに大々的な長期戦になってしまったんだから、アメリカ人じゃなくても驚きだ。ジョンソン政権は大勢の若者を戦地に送り、膨大な公金を浪費した。

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( 左 : 米軍の助けで脱出したベトナム難民  /  右 : 個人で逃れてきたベトナム難民 )

  共産主義のドミノ現象を食い止めるはずだった戦争は、惨憺たる結果に終わり、アメリカ社会の凋落を招くだけだった。血と汗と涙を流したアメリカ軍は、執拗なベトコンの攻勢を防ぎきれず、南ベトナムは共産主義の津波に飲み込まれる破目に。しかも不幸なことに、アメリカは戦争をする度に難民を受け容れ、国内を異質な坩堝(るつぼ)に変えてゆく。サイゴン陥落でインドシナ難民が発生すると、彼らは米国に押し寄せ、アメリカの都市部にはリトル・サイゴンが出来てしまった。

徴兵逃れの権力者

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(上写真  /  ベトナム戦争で負傷するアメリカ兵)

  繁栄と愛国心に満ちた1950年代の古き良きアメリカ社会は、怒りに燃えた反戦運動で崩れ始め、精神異常をきたした帰還兵と無惨な姿に変わり果てた負傷兵を抱えることになった。その一方で、徴兵を拒むフラワー・チルドレンは、フランクフルト学派の頽廃思想に靡き、フリーセックスとマリファナに溺れる始末。大学のキャンパスは反戦を叫ぶ学生で溢れていた。しかし、アメリカの世間にも「裏と表の世界」がある。真面目な青年はベトナムのジャングルで死んでいったが、卑怯者と金持ちは安全地帯で生き延び、やがて出世を遂げてゆく。偽善大国のアメリカには、蛇の道だけじゃなく色々な裏口・抜け道もある。

  例えば、「ハノイ・ジェーン」と呼ばれたジェーン・フォンダ(Jane Fonda)は、トム・ヘイデンやテッド・タナーと結婚し、1980年代になるとエアロビックスで稼いでいた。海軍士官のジョン・ケリー(John Kerry)は、反戦運動のヒーローになって、後に上院議員や国務長官となる。以前、当部ログで述べたように、このユダヤ人は自作自演で負傷し、「Silver Star」や「Bronze Star」「Purple Heart」といった勲章をもらっていた。ケリーが大統領選挙に出馬した時、「Swift Boat Veterans for Truth」の退役軍人達は激怒し、ケリーの軍歴に異議を唱え、彼の武勇伝を否定していたという。

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(左 : 北ベトナムを支援する ジェーン・フォンダ  /  過去を捨てて上流社会に入ったジェーン・フォンダ / 日本に留学したジェイ・ロックフェラー4世 /  右 : 反戦運動に勤しむジョン・ケリー )

  大財閥の御曹司であるジェイ・ロックフェラー4世(John Davison Rockefeller IV)は、もっと悧巧で、国際基督教大学に留学し、英語を教えながら奇妙な極東民族と付き合っていた。大富豪は様々な回避ルートを持っている。日本を去ったジェイは、ハーバード大学に戻って東洋言語と歴史を勉強し、ここを卒業すると、イェール大学で支那語を学んだそうだ。しかし、彼はベトナム戦争に従軍せず、安全な「平和部隊(Peace Corp)」に入って人道支援に勤しんでいた。

  アーカンソーの州知事から大統領になったビル・クリントンは、もっと酷い。彼は地元の人脈と大学生の身分を巧みに利用し、庶民が逃れられない徴兵を免れていた。クリントンは1964年9月8日に選抜徴兵制度(Selectiev Service System)に登録し、同年11月17日に「2-S(学生免除)」の身分を得たという。当時、大学生は卒業するまでの間、徴兵を免除されていたから、高卒で戦地へ送られる若者とは違う扱いを受けていた。まぁ、政治家や経営者といった上層階級の紳士は、自分の子供だけは可愛いから、大学生に猶予を与えることで抜け道を作っていたのだろう。お金持ちの子弟は、大学院にまで進んで修士号や博士号を取得するから、労働者階級のボンクラ供とは違った世界に住んでいる。

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(左 : 学生時代のビル・クリントン  / 中央 : ケネディー大統領と握手する若きビル・クリントン  / 右 : ウィリアム・フルブライト上院議員 )

  しかし、戦況が悪化してくると、「銀のスプーン」をくわえた御曹司にも“特権”の消滅が迫ってきた。1968年2月16日、連邦政府は大学院生に対する徴兵免除を廃止する。これにより、ジョージタウン大学を卒業したビル・クリントンは、もはや徴兵免除の対象ではなくなっていた。徴兵選考委員会は彼を「1-A(即座に兵役の対象になる者)」の身分にしていたそうだ。

  ところが、アメリカのテーミス(掟の神)は、ヤヌス(双面の神)の性質を持っていた。この女神は一般家庭の子供には厳しく、上流階級の子弟に対しては、チョコレートよりも甘くなる。徴兵の影が差し迫ったビル・クリントは、何とかしてベトナム行きを免れようとした。そこで、彼は亡き父親ロジャー・クリントン(Roger Clinton, Sr.)の兄である、伯父のレイモンド・クリントン(Raymond Garland Clinton)に助けを求めることにした。頼りにされたレイモンドは、元判事で弁護士を務めるヘンリー・ブリット(Henry Britt)に相談を持ちかけ、二人は地元で海軍の予備役を監督するトリス・エリス(Trice Ellis)に働きかけた。依怙贔屓を承諾したエリスは、ビル・クリントンに海軍予備役の身分を確保し、この弱虫が軍事訓練を受けるものと勘違いしたらしい。(David Mikkelson, 'Was Bill Clinton a Felonious Draft Dodger ?', Snopes, January 6, 2003.) 

  依頼者に便宜を図ったエリスは、大卒の若者を得たことで喜んでいたが、狡賢いビル・クリントンは他の抜け道を探していた。法の網に詳しいブリットは、ガーランド郡の徴兵委員会で議長を務めるウィリアム・S・アームストロング(William S. Armstrong)に一肌脱いでもらうことにした。ブリットの親友であるアームストロング議長は、ビル・クリントンへの招集令状を引き出しの中に閉まって、しばらくの間“そっと”していたそうだ。

Cecil Rhodes 1111( 左 / セシル・ローズ )
  口説き文句が得意なクリントンには、運命の女神も微笑んでいたようで、彼は幸運にも「ローズ奨学金(Rhodes Scholarship)」を得ることができた。セシル・ローズの名を冠した奨学金は、菊の御紋や葵の御紋よりも凄い。ローズ奨学生になればエリート街道へのキップを手にしたのも同然で、オックスフォード大学へ留学した者は、将来、様々な恩恵に与ることができる。先輩や有力者のネットワークを使えば、トントン拍子に出世間違いなし。ちなみに、オックスフォード留学組の同期には、後に労働長官となるロバート・ライシュ(Robert B. Reich)や、国務次官になるストロブ・タルボット(Nelson Strobridge Talbot Ⅲ)がいた。ロシアの専門家として有名なタルボットは、退官後、ブルッキングス研究所に天下って所長となっている。

Bill Clinton 002Robert Reich 1Strobridge Talbot 1








(左 : 知事になったビル・クリントン   /  中央 : ロバート・ライシュ /  右 : ストロブ・タルボット )

  ローズ奨学金をもらってオックスフォード大学へ留学したものの、クリントンには選抜委員会からの通知が届き、軍隊用の身体検査が要求されていた。しかし、小賢しいクリントンはアーカンソー大学の予備役制度(ROTC program)に目を附け、ベトナム派遣への召集令状を免れようと謀った。彼は地元選考委員会のウィリアム・ホーキンス(William Hawkins)に助けを求め、地元の予備役に潜り込むことができた。この時、クリントンは民衆党の上院議員(アーカンソー州の選出)であるウィリアム・フルブライト(J. William Fullbright)に仕えたリー・ウィリアムズ(Lee Williams)やユージン・ホームズ(Eugene J. Holmes)大佐の“根回しも”取り付けたそうだ。

  こうした「回避手段」を駆使しているうちに、ベトナム戦争は段々と終結に向かってしまい、楽しい日々を過ごすビル・クリントンは、とうとう派遣されることなく、安全地帯で青春を謳歌することができた。この卑怯者は英国に留学しても、それほど真剣な勉強はせず、オックスフォード大学での勉強は、ジョージタウン大学とイェール大学のと間に存在する休暇みたいなものだった。ビル・クリントンが英国留学でした事と言えば、反戦運動に参加した事やマリファナを吸った事くらい。(Olivia B. Waxman, 'Bill Clinton Said He Didn't Inhale 25 Years Ago --- But the History of U.S. Presidents and Drugs Is Much Older', Time magazine, March 29, 2017.)

  女たらしのクリントンは、留学先の英国でキャサリン・ジーヴ(Katherine Gieve)と恋仲になり、いつも通りのデートを楽しんでいたが、親友のフランク・アラー(Frank Aller)は違っていた。彼は徴兵を拒否したことで訴追され、色々と悩んだ末に自殺してしまった。せっかくローズ奨学金をもらえたのに、この青年は1971年に自ら命を絶つ。(Matthew Hoffman, 'The Bill Clinton we knew at Oxford from smoking dope, what else did he learn over,' The Independent, 11 October 1992.) 精神的に弱い者は、賢い「ズル」を考えることが出来ないんだろうなぁ~。

  一方、イェール大学で法律を学んだクリントンは、さすが世渡り上手。大統領になると急に好戦的になり、米軍をソマリアに派遣するし、ボスニアやヘルツェゴヴィナといったバルカン半島で紛争が起こればNATOをも動かす。しかし、一番ハッスルしたのは不倫である。日本でもクリントンの愛人スキャンダルは報道され、ジェニファー・フラワーズ(Gennifer Flowers)やエリザベス・グレイス・ワード(Elizabeth Grace Ward or Gracen)、サリー・パデュー(Sally Perdue)、ドリー・カイル・ブラウニング(Dolly Kyle Browning)が紹介された。(それにしても、なぜ黒人贔屓のビル・クリントンは、白人の愛人ばかりなのか? とても不思議だ。)

  ついでに言うと、ドイツ人のマリア・フェルトウェングラー(Maria Furtwängler)やカナダ人のベリンダ・ストロナッハ(Belinda Stronach)、アメリカ人のマジョリー・アームストロング・ポスト(Majorie Armstrong Post)やパトリシア・ダフ(Patricia Duff)とも肉体関係を持っていたそうだ。もう、「精力絶倫」としか言い様がない。

Gennifer Flowers 1Elizabeth Gracen 2Sally Perdue 11Dolly Kyle Browning 1








(左 : ジェニファー・フラワーズ / エリザベス・グレイス・ワード  / サリー・パデュー /  右 : ドリー・カイル・ブラウニング)

Maria FurtwanglerBelinda StronachMajorie Armstrong PostPatricia Duff








(左 :  マリア・フェルトウェングラー /  ベリンダ・ストロナッハ /  マジョリー・アームストロング・ポスト /  右 : パトリシア・ダフ )

  でも、アメリカの軍人が一番激怒したのは、ホワイトハウスに研修生のモニカ・ルインスキー(Monica Lewinsky)を連れ込み、「尺八(blow job)」行為をさせたことだ。後に、国務長官になったヒラリー夫人は、アフリカのベンガジ事件でヘマをやらかしたけど、元々彼女は「灯台もと暗し」なんだからしょうがない。才女と呼ばれるヒラリー・ロダム・クリントンは、アメリカ人を殺害したテロリストを捕まえようとしたが、ついに発見できなかった。まぁ、白亜館に住んでいて、亭主のペニスが何処にあるのか分からなかったんだから当然だ。

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(左 : モニカ・ルインスキー /  中央 : クリントン大統領とモニカ /  右 : 謝罪会見で夫を睨み付けるヒラリー夫人)

  元CIA長官のジョージ・H・W・ブッシュは、第二次世界大戦で日本海軍と戦ったが、息子のジョージはベトナム戦争に行かなかった。名門家庭の父親はこの馬鹿息子を徴兵制度から守るべく、ジョージ・ウォーカーをテキサス州の空軍に入れて身の安全を図った。この「出来損ない」は秀才が集まるハーヴァード大学でMBAを取ったが、アルコール中毒に陥って家族の厄介者になっていた。おそらく、父親の仲間がお膳立てをしたから、「テキサス・レンジャー」の所有者になれ、テキサス州の知事選に出馬できたのだろう。さらに言えば、9/11テロを企画した闇組織が、ジョージ・ウォーカーを大統領に据えたのかも知れない。

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( 左 : 軍人になった息子のジョージ・ウォーカーと父親のハーバート・ブッシュ  /  右 : 華麗なるブッシュ・ファミリー)

  ブッシュ家に仕えたディック・チェイニー(Richard Cheney)も、徴兵逃れで出世した政治家だ。国防長官や副大統領になったチェイニーは、戦争が始まる前の1962年、徴兵可能な年齢に達していたが、年齢的に若かったので徴兵されずに済んだという。1964年になると戦争が本格化となり、徴兵が拡大されたが、チェイニーは恋人のリンと結婚したばかりなので、三回目の学生猶予措置を求めた。1965年5月、ワイオミング大学を卒業したチェイニーは大学院に進んだので、四回目の猶予措置を得ることもできた。

  1965年10月になると、徴兵選考委員会は既婚者にも徴兵を拡大したが、これには「子供を持たない者」という規定があったので、妊娠中の妻を持つチェイニーは、またもや徴兵猶予を得ることができたのだ。9ヶ月後の1966年1月19日、長女のエリザベスが誕生する。この娘はやがて下院議員となり、ドナルド・トランプ大統領を攻撃する民衆党員に協力し、弾劾委員会に賛成する共和党員になっていた。

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( 左 : ディック・チェイニー / 中央 : 新婚時代のリチャードとリン・チェイニー  / 右 : 娘のエリザベス・チェイニー下院議員 )

  1966年1月、リン・チェイニーは再び妊婦となり、夫のディックは「3-Astatus」という身分を得て徴兵免除となる。家族を養うのが大変だから「除外」してくれという訳だ。選考委員会は彼の申請を承認する。それにしても、子供を作って徴兵を逃れようとするなんて卑怯じゃないか。ネオコンの代表格となったチェイニーは、イラク戦争で多くの若者を戦地に送ったが、自分自身は何度も徴兵を逃れていたなんてズルい。おそらく、リン夫人と相談して計画的な妊娠を実行したんだろう。しかし、「時」を稼いで生き延びるのは賢い方法だった。1967年1月になると、チェイニーは26歳となっており、もはや徴兵の対象ではなくなっていたのだ。(Katharine Q. Seelye, 'The 2004 Campaign : Military Service ; Cheney's Draft Deferments during the Vietnam Era Emerges as a Campaign Issue', The New York Times, May 1, 2004.)

Al Gore Jr 9991(左  /  アルバート・ゴア・ジュニア副大統領)
  「巧妙な徴兵逃れ」は副大統領になったアルバート・ゴア・ジュニア(Albert Gore, Jr.)もやっていて、彼は陸軍に志願したというが、その職務は戦闘員じゃなく、「The Castle Courier」に記事を書く戦場ジャーナリストであった。アル・ゴアは政治家になっても従軍体験を自慢していたというが、危険な銃撃戦には一度も参加したことはなく、「戦争体験」といえば、現地の兵卒と一緒に酒を飲んだり、ポーカーをしたりといった「息抜き」だけだった。(Richard A. Serrano, 'Struggle With Conscience Was Gore’s Biggest Vietnam Battle', The Los Angeles Times, October 15, 1999.)

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(左 : アルバート・ゴア・シニア  / 戦場に赴いたアル・ゴア・ジュニア /  右 : 妻となるティパーと一緒のアル・ゴア)

  テネシー州の上院議員をしていた父親のアル・ゴア・シニアが政敵から非難されないように、息子のジュニアはベトナム戦争に赴いたと言うけど、現地でやったのは、せいぜいタバコとマリファナを吸ったくらい。戦闘服だけは立派に着こなしていたゴアは、一度も負傷せず、「帰還兵」のフリをして祖国に舞い戻っていた。当時、彼はまだ大学生だったから、ハーヴァード大学に復学したが、戦争反対の声明文に署名したそうだ。こんな奴が後に「地球温暖化」を叫び、二酸化炭素排出量の問題を云々するなんて冗談じゃない。

  民衆党に支配された連邦議会は、莫大なウクライナ支援を決めてしまったが、本当に議員達はウクライナの国防を考えているのか? 民衆党や共和党の大物議員達は、「極悪非道のロシア軍からウクライナを守れ !」と叫んで、武器や資金を提供するが、本当は別の「利益」があるから応援しているんじゃないか? もし、心から支援したければ、先ず自分の子供や孫をウクライナに派遣しろ ! ベトナム戦争を「不毛な遠征」と見抜いていたエリートは、ウクライナを「第二のベトナム」と思っているはずだ。「ロシア懲罰」という聖戦の裏には、巨大な利権が渦巻いている。

  後編に続く。


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