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(写真/ギリシア人のモデル)

ギリシア経済の正体

  ギリシアの債務問題が歐洲で騒がれており、日本人もよく分からないが一緒になって騒いでいる。よそ様が踊っていると、一緒に踊りたくなるのが日本人。ニュース・ワイドショー番組では、知ったかぶりの経済評論家が、折線グラフや統計表を携えて、ピーチク・パーチク講義を行っていた。周りにいる藝人コンンテーターが頷(うなづ)いたり驚いたりしていたが、どれほど理解していたかは不明。巨人や阪神の選手を列挙できる藝人でも、EUの加盟国やユーロ圏を全部挙げることができる者はまずいないだろう。アイドル歌手の生年月日を暗記している者でも、クロアチアやラトビア、ブルガリアが何処にあるのか、地図上で指せる藝人は何人いるのか? クロアチアと聞いたら、ミルコ・クロコップの出身国とか黒マグロの輸出国といった知識しかないんじゃないか? 大学生でもキプロスとマルタの島を間違って覚えている人がいるくらいだ。数学で「四色問題」を習った高校生の方が、ヨーロッパ地図に馴染みがあるから、ヨーロッパの国名と場所を覚えているだろう。そういえば、筆者は高校生の時に、色鮮やかな中世の歐洲地図をよく眺めていた。江戸時代の日本と同じく、特徴のある王国がたくさんあって、勉強していて楽しい。漫画『ベルセルク』のファンなら分かってもらえると思う。地図が頭に入っていると、戦史の研究にも便利だから、地理の勉強はお勧め。

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(左: レオン・ワルラス/ジン・メイナード・ケインズ/フォン・ハイエック/右: ポール・クルーグマン)

  ギリシアの債務不履行については経済学者が散々述べているので、このブログでは改めて解説しないことにする。著名なポール・クルーグマンを始めとして、欧米のエコノミストが数多くコメントしているので、興味があるかたは彼らの解説を読まれた方がいいと思う。でも、読者から「お前は経済音痴なんだろう」と笑われるのも癪だからちょっと触れたい。筆者だって人並みにケインズやセシル・ピグー、レオン・ワルラス、ケネス・アローをちょっとは勉強したし、何と言っても、F・A・ハイエック博士の全集は筆者の愛読書だったから、シカゴ学派の話は今でも懐かしい。ついでに言えば、ポール・サミュエルソンのベストセラー『経済学』は、原書で読むことを薦めたい。特に大学生が経済の論文を英語で書く時、どう表現するのかが分かってとても便利。ギリシア経済の話をすれば、あの国は既に失業率が約26パーセントにも上っていて、ユーロ加盟国でも最悪の部類に入る。このあいだのPBS放送でも、クルーグマン博士が緊縮財政について批判していた。ギリシアはデフレで経済活動が縮小しているのに、ドイツ人が税金を巻き上げたうえに、節約を断行しろ、と迫っていた。でもさぁ、ギリシア人が従うわけないだろう。痩せた雌牛から乳を搾るようなものだ。牛乳が欲しけりゃ、牛を太らせてからにしろ。それに、怪しい奴に金を貸した方だって悪いのだ。(筆者の経験からも分かる。学生時代の友人に昼飯代を貸したことがあるが、戻ってきたのは半年後だ。友人にお金を貸したら、くれてやる気持ちで貸すのがいいと思う。ただし、商売なら別。)

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(左: アーサー・セシル・ピグー/ポール・サミュエルソン/ケネス・アロー/右: アローの親類ラリー・サマーズ)

  ギリシアの経済が低調なのは、これといった稼ぎ頭になる産業がないからだ。ギリシアの企業といって思いつくのは、まずは造船業か海運業者だろう。日本人なら、未亡人となったジャクリーン・ケネディーが再婚したアリストテレス・ソクラテス・オナシスを思いつくはずだ。海運王オナシスは大哲学者にあやかった名前を持つから印象深い。造船業者ならヘレニック造船とか、自動車まで作っているオリオンが有名だろう。しかし、ギリシアは基本的に農業国だから、利幅の広い製品を輸出していない。特産品といったらオリーヴ・オイルとかワイン、タバコが筆頭で、ちょっと食通ならギリシア・ヨーグルトを挙げる人もいるんじゃないか? 「チョバイ(Chobai)」のヨーグルトは米国でも人気商品で、米国市場で3割強のシェアがある。日本の消費者は、ダノン・ヨーグルトの方がいいのかな? 最近だとカスピ海ヨーグルトが流行っている。筆者ならグリコの「たっぷりアロエ」ヨーグルトがお勧めだが、味覚が狂ったアメリカ人にはもったいないから教えてあげない。でも、ギリシアのオレンジ・ジュースならまあまあじゃないか? 「マドラ(Madra)」のパック・ジュースは有名だ。しかし、米国ならトロピカーナのピュア・プレミアム・オレンジ・ジュースの方が断然美味しい。筆者の近所にある食料品店では売っていないので残念。果肉たっぷりのトロピカーナは売れ筋商品になりそうなのに。

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(左: チョバイの創立者/中央: アリストテレス・オナシス/右: ジャクリーン・ケネディー)

  その他、ギリシアのに産業といったら、潤滑油とかセメント業、建築資材、鉱物採掘といったところだろう。こんな程度の経済だから、良識ある日本人なら、ギリシア政府が借金問題で耳を揃えて返せるとは思えない。それに、そもそもギリシアがドラクマを捨てて、ドイツと同じユーロを使っていることが問題なのだ。ギリシア国民がベンツやBMWの輸入を増やしているなら、ドラクマ安になって価格が上昇するし、ギリシア政府も関税を上げたりするから調整機能が働き、メチャクチャな貿易赤字にならないだろう。昔、大橋巨泉の「世界まるごとハウ・マッチ」を観ていた日本人なら、ドラクマの為替相場を知っているし、ギリシアを観光で訪れた日本人なら円高・ドラクマ安で得をしたから、変動相場制を実感したはずである。それなのに、ギリシアをユーロ圏に入れてしまうなんて、EU諸国は本当にアホだ。ドラクマを捨ててユーロにしたら、債務を軽減する機能が働くなるじゃないか。ギリシア人は借金踏み倒しだって平気だし、国家の財政破綻だってしょっちゅうだから慣れている。古代アテナイの没落、コリント同盟の崩壊、コンスタンチノポリスの陥落、独立騒擾、王政と共和政の交代など、様々な危機を経験してきた民族だから、今回の債務問題なんか屁でもない。騒いでいるのは、お金が消えてしまう恐怖に駆られたドイツ人くらいだろう。日本の経済評論家は、庶民が具体的に分かるよう、経済と歴史を絡めた説明をすべきだ。ギリシアが財政破綻したって、観光資源は残っているんだから、また復活するさ。

  ギリシア人がEUの劣等生なのは理由がある。その一つに、ギリシア人は古代の遺産で喰っているからだ。これといった産業がないギリシアは、観光で外貨を稼いでいるのは有名な話。かいつまんで言えば、彼らはエジプト人と同類なのだ。プトレマイオス朝のエジプト人が引き継いだピラミッドやスフィンクスを、関係ないアラブ系イスラム教徒が外人に見せてお金を取っているでしょ。昔、イギリス人使節がオスマン・トルコのスルタンにピラミッドの意味を尋ねたことがある。しかし、イスラム教徒のスルタンには興味がなかったので、そんな疑問すら湧かなかったらしい。イスラム教徒のエジプト人は、赤の他人が建てた遺蹟を収入源にしているから呑気なもんだ。現代ギリシア人も一緒で、古代アテナイ人が建てたパルテノン神殿や大理石の彫像を公開して観光客を集めているのだ。古代人の遺産を手にしたオッさん達が、ちょいとしたトリリビアを付け加えて外国人に見せているだけだから、技術革新とか新規事業開拓なんて気は起こらない。博物館の入り口で料金を取れば飯が食えるのに、わざわざ苦労してアイデアを絞り出す必要がどこにあるのか? 銭湯の台場で、女湯をのぞきながら入浴料を取っているオッちゃんでも、他にする事といったら浴槽の掃除くらいだろう。遺産で暮らして行けるギリシア人には、付加価値の高い輸出品を作る気持ちがないのだ。それにわざわざ苦労しなくても、今まで通りの生活で満足だし、新しい生活様式はしっくりこない。ギリシア人が長時間働いても所得が低いのは、何よりも生産性が低いためであるが、それに加え、利幅が狭いサービス業に就く人々が多いからである。

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(写真/パルテノン神殿)

  ギリシアが借金を返すには、国内総生産を増やすことが一番なのだが、これが出来れば苦労はしない。ギリシアには独立当時、渋沢栄一みたいな起業家がいなかった。我が国が明治維新を成し遂げた時、大久保利通が独自の産業を育成するため、殖産興業に取り組んだことは有名である。しかし、近代経済の音頭を取ったものの、資本制と金融の実務に疎い大久保では、実際に企業を育成することはできない。一方、渋沢は地元埼玉の血洗島(ちあらいじま/現深谷市)で、蚕(かいこ)の養殖を始めとする実業を経験していたから、日本の産業を育てるノウハウを心得ていた。他にもやることがあって忙しかった渋沢は、富岡製糸場を義理の兄・尾高惇忠(おだか・じゅんちゅう)に任せて、彼は金融面でも活躍し国立第一銀行を創設し、東京証券取引所、サッポロビール、秩父セメントなど数多くの会社設立に携わったことは、有名な語り草になっている。ついでに言うと、渋沢は「論語と算盤」で知られているが、支那大陸では渋沢のような誠実な起業家は現れない。有能な犯罪者ならそこら中にいるが、国家のために産業を発展させようなんていう国士は絶対現れない。支那人なら驚くだろうが、三菱の岩崎弥太郎から、一緒になって海運業の独占を持ちかけられたのに、渋沢はそれを断った。女以外に欲がなかった渋沢は、日本の国益を第一に考えていたのだ。支那人なら「共同運輸」創設して、運賃の低料金を招くような行動は取らないだろう。論語とは孔子の願望を書き留めた書物で、支那人は誰も真剣に読まない。支那人の愛読書は「韓非子」であって、支那人なら「韓非子と詐欺師」がバイブルとなるだろう。

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(左: 渋沢栄一/中央: 岩崎弥太郎/右: 尾高惇忠)

  ギリシアだとファナリオテス(Phanariotes/Φαναριωτης)という官職の者たちが地方行政を取り仕切っていた。行政官としてのファナリオスは、海外貿易にも重要な地位を占めており、ヨーロッパの思想や商品を輸入して、一般のギリシア人に影響を与えていたらしい。ただ、彼らは貿易商人だったから、地元産業の育成とか特産品の創出、技術の蓄積といったことには不向き、と言うより関心が薄かった。だから、渋沢のように富国強兵に貢献する実業家ではない。ギリシアを支配していたトルコ人を除いたら、偉い地位に就いて私腹を肥やしていたのは、フィナリオスとギリシア正教の聖職者であった。要は庶民からお金を巻き上げる人が権威者で、国富を増やす人が支配者ではなかったのだ。上杉鷹山(うえすぎようざん)や保科正之(ほしなまさゆき)、前田利常(まえだとしつね)みたいな名君を持っていた日本人は幸せな民族である。江戸時代の大名だと、「名君」と評されたいから、藩の財政が逼迫すると自ら質素な生活をしたりする。でも、それが返って不景気を招いてしまうから皮肉なものだった。水野忠邦(みずのただくに)みたいな質素倹約型の老中より、庶民の娯楽と商売に理解のあった田沼意次(たぬまおきつぐ)の方が、よっぽど景気促進に貢献している。恋愛と贅沢の資本制を論じたヴェルナー・ゾンバルトなら、間違いなく田沼を称賛していただろう。

ギリシア民族とは何だ?

  EUに加盟しているギリシアだが、どうも西歐の一員とは思えない。古代のギリシア人はヨーロッパ人から称賛されているのに、現在のギリシア人ときたら“ぐうたら”の代名詞みたいになっている。特に第20世紀初頭の移民ブームで、アメリカに渡ったギリシア移民のイメージが悪いのだ。ドイツやオランダからの移民と違って、ギリシア移民は後進国の貧農といった人物が多く、無教養でこれと言った技術もない下層民が多い。これじゃあ、西欧系アメリカ人が馬鹿にするはずだ。(ドイツ移民は結構な比率で米国に貢献している。例えば、在米日本人だとアメリカにドイツ系の眼科医が多いことに気づくだろう。1857年にドイツ系眼科医協会が設立されたくらい、ドイツ系アメリカ人は凄かった。ほかにも色々あるがまた別の機会で紹介したい。) アメリカ社会だと、ゲルマン系国民はラテン系・スラヴ系国民より上等で、ギリシア人は南欧系民族だから社会的地位が低い。昔のアメリカだと、南欧系の科学者など滅多にいなかった。本国が後進国だったからしょうがないが、移民してきたギリシア人はほとんどが筋肉労働者で、荒くれ者もかなり混じっていたから尚更評判が良くない。オレゴンやカルフォルニアといった米国西部で働くギリシア人は、日本人や支那人と同じく、鉱山労働に就く者が実に多かった。ただ、こうした東洋人労働者と違っていたのは、労働運動で際立った行動をとるギリシア人が結構いたことだ。

  ユタ州ではレオニダス・G・スクリリス(Leonidas G. Skliris)というギリシア人がいて、「ギリシア人たちの皇帝(Czar of the Greeks)」という綽名(あだな)を持っていたという。こうした親分格は最初、東欧からの新米労働者を勧誘して徒党を組んだり、子分の給料をピンハネしたりていたが、次第にこれではいつまで経っても惨めな境遇から抜け出せないことに気づいた。そこで、ギリシア人たちは労働組合に力を入れ始めた。労働ストが起これば会社側に対し、実力行使も辞さなかった。何と言っても、ギリシア人は祖国でトルコ人とゲリラ戦を経験していたから、新天地アメリカでもその体験を活かしたという。鉱山会社がスト対策に武装警備員を導入したり、地元警察を呼んできたって、彼らはへこたれなかった。警備員らが組合仲間を包囲して兵糧攻めにしようとしたが、ギリシア人鉄砲玉が闇夜に紛れて包囲網を突破し、食糧を持ち込んだというエピソードもあった。(Dan Georgakas, The Greeks In America, Journal of the Hellenic Diasporap, Vol. 14, 1987, p.21) だが、こんなもんで驚いちゃいけない。時代はまだ西部開拓時代の雰囲気を残していた。ワイルド・ウエストの気風が濃厚だったらしい。労使対立が長引くと、ライフルやダイナマイトを用いて闘ったというから、筋金入りのゲリラ労働者だ。しかし、鉱山採掘所で起こった労使闘争だからといって、ダイナマイトを投げつける鉱夫じゃ、余りにも過激ではないか? バルカン半島は世界の火薬庫と呼ばれたが、ギリシア人は本当に火薬庫からダイナマイトを持ち出して爆発させていたのだ。まぁ、標的がトルコ人じゃなくてアメリカ人に替わっただけだから、戦闘の基本は同じだけと、文明国で行うと野蛮人と見られてしまうじゃないか。

  こんな調子だから、ギリシア移民はアメリカ人から「ヨーロッパのクズ(scum of Europe)」と呼ばれていたらしい。労働キャンプでも白人区域に入ることを禁じられ、ギリシア人労働者は有色人種の方に追いやられてしまった。白人キャンプから閉め出されたギリシア人は、少数民族地域で日本人鉱夫の隣人となり、日本人と危険な爆破作業を共にしたから、次第に仲が良くなったという。それに加えて、ギリシア人は小柄な日本人が格闘技でも特別な能力を持っていることに驚いたらしい。古代からレスリングやボクシングが盛んなギリシアでは、武藝に対する意識が高いのだろう。多分日本人はギリシア人とレスリングをするとき、相撲や柔道の技を応用したんじゃないか? また、空手や柔術はギリシア人にとって新鮮な武術だったのかもしれない。そういえば、軍神広瀬武夫がロシアに派遣された時、日本人を見くびっていたロシア人を、柔道の達人たった広瀬が投げ飛ばし、東洋人に負けたロシア人が驚愕したというエピソードもある。あの野蛮なブラジル人だって日本の柔術に目を剝いたくらいだから、当時のギリシア人も信じられなかったのではないか? とにかく、東洋人と親しくなるくらいだから、ギリシア人は当時の白人社会で疎外されていたのは確かだろう。例えば、アイダホ州では、ギリシア人が劇場に入っても白人席には坐れなかったらしい。また、カルフォルニア州では昔から住む地元アメリカ人から嫌われており、あるレストランでは窓に「純粋なアメリカ人のみ。ネズミ、ギリシア人お断り(Pure American. No Rats. No Greeks.)」という看板までぶら下がっていたという。(The Greeks In America, p.22)

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(左: ヤコブ・ファラメライヤー/中央: ギリシア人のヘア・メイク・モデル/右: 現代ギリシア人の労働者)

  借金を返せない現代ギリシアでも、自慢がいくつかある。その中でも「古代ギリシアの栄光」を継承する子孫というのが、最大の誇りである。教養を積むヨーロッパ人にとって必修なのが、古代ギリシア哲学とかギリシア美術なのは周知の事実。日本人だってプラトンやアリストテレスの哲学は必修科目になっているだろう。ギリシアの学問・藝術は水戸黄門の印籠みたいに、みんなの前で掲げて鼻高々と見せつける権威なのだ。ところが、この自慢が悲劇を引き起こしてしまうから、なんとも皮肉な話である。ギリシア彫刻を見慣れている西歐人は、目の前で見るギリシア移民が、理想的容姿を持つ古代ギリシアとは似ても似つかない猿公(エテこう)だから、彼らを馬鹿にしたのだ。確かに、ギリシア人はアテナイやコリントに住んでいたが、血統が保たれていたわけではない。ローマ軍に征服される前から、衆愚政治に陥ったギリシア諸都市には外人がたくさん住んでいたし、ローマ軍にも様々な種族が混じっていたから、ギリシア人が混血なのも当然だろう。その後だって、ビザンツ帝國になれば、オリエント地方やアフリカから異人種が流入したし、トルコ人によるコンスタンチノポリス陥落で、ギリシア人はオスマン・トルコの支配下に置かれたのである。こうなれば、もうギリシア人が混血民族になるのは当然。せいぜい宗教と言語が同じというくらい。高名なドイツ人学者のヤコブ・ファラメライヤー(Jakob Philipp Fallmerayer)は、ヘレネス人血は完全に消滅した、と喝破したのだ。人種学で有名なウィリアム・リプリー(William Z. Ripley)も、ギリシア人は混血民族と述べていた。

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(左: 女神アテネの彫像/右: 破損したパルテノン神殿)

  ヘレニズム文明を継承する子孫と公言するギリシア人でも、その容姿を他人から指摘されるとつらい。スラヴ系民族のみならず、アルバニア人やトルコ人とも混血していたから、ギリシア人の肉体がアーリア人種と違ってしまったのだ。はっきりとは分からないが、古代アテナイ人ならアーリア人に近い容貌だったのではないか、と学者は推測している。パルテノン神殿に設置されていた女神アテネの復元図を見れば、古代ギリシア人は金髪碧眼のアーリア人を理想としていたことが分かる。建築当時のパルテノン神殿は、大理石に色がついて鮮やかだった。現在はボロボロな姿になっているが、これには理由がある。オスマン帝國がヴェネチアと戦った時、非常識だけれども、トルコ人はパルテノン神殿を弾薬の倉庫代わりに使っていたのだ。そこへ運悪くヴェネチア軍の砲弾が飛んできて、神殿の火薬庫に命中して大爆発。こんな訳だからギリシア人としてはトルコ人に対して恨み骨髄なのは当然だろう。ギリシア人はヘレネスの民と自称しているが、現代ギリシア人やアメリカに渡ったギリシア移民を撮った写真を見れば、どことなくトルコ人やアラブ人に似ている者が多い。ヘンリー・プラット・フェアチャイルドによれば、ギリシア人の肉体で共通しているのは、スンぐりむっくりした体格と、膨らんだ大きな鼻が特徴的であるという。(Henry Pratt Fairchild, Greek Immigration to the United States, Yale University Press, New Haven, 1911, p.19) そう言われてみれば、我々だって思い当たる節がある。例えば、、クリントン政権で実質的な報道官を務めたジョージ・ステファノポロス(George Robert Stephanopoulos)を思い出せば、「あっ、なるほどそうだ」と納得するだろう。

  ステファノポロスはギリシア系の両親をもつ、典型的なギリシア系アメリカ人だ。秀才だった彼の父親はギリシア正教の司祭で、政治に興味を持ち始めたジョージは、1988年の大統領選挙で、マイク・デュカキス(Mike Dukakis)の陣営で働いていたそうだ。民主党候補者になったマサチューセッツ州知事のデュカキスは、移民にとって希望の星となるギリシア系国民であった。もし、大統領になっていたら、アメリカン・ドリームの体現者として称賛されていただろう。しかし、彼の大統領選は何となく“哀れさ”を感じさせるものであった。対抗馬のジョージ・H・W・ブッシュは典型的なワスプ(WASP)のアメリカ人で、イェール大学では「スカル・アンド・ボーンズ」に所属し、上院議員のプレスコットを父に持ち、第二次世界大戦ではパイロットとして闘った軍歴がある。そのうえ、イェール大学の野球選手で長身だった。背が高いブッシュと並べば、短身のデュカキスはいかにも南欧出身の劣等種族に見えてしまう。

    さらに哀しいことがある。見栄えのしないデュカキスが副大統領候補に選んだのは、テキサス州からの上院議員ロイド・ベンツェン(Lloyd Bentsen)であった。実は彼が上院議員選挙に出た時、共和党からの対抗馬は未来の大統領ジョージ・ブッシュであった。上院選挙で敗れたブッシュはその後、フォード政権でCIA長官となる。こうした因縁の二人の狭間に立つデュカキスは惨めだ。何か場違いみたい。大統領選挙で特に印象的だったのは、リベラルなデュカキスが軍事にも関心があるところを国民に示そうとして、戦車に乗ってアピールしたのだが、これが逆効果。戦車から首だけを出した姿は、まるでサンダー・バードの人形みたいだった。貴婦人のペネロープを乗せて、リムジンを運転するパーカーみたいに見えてしまい、失笑を買ったのだ。慣れないことをするとヤケドするという典型例。それより、側近の誰も止めなかった事の方が驚きだ。ついでに言えば、女優のオリンピア・デュカキス(Olympia Dukakis)は彼のいとこ。

  ステファノポロスと同じく、クリントン政権でホワイトハウス首席補佐官になったジョン・ポデスタ(John Podesta)もギリシア系である。政界で有名なギリシア系と言えば、CIA長官人なったジョージ・テネット(George Tenet)やニクソン政権で副大統領を務めたシュピロ・アグニュー(Spiro Angnew)が挙げられる。小柄で大きな鼻をしたステファノポロスや同種の顔をしたテネットを見れば、フェアチャイルドの指摘が正しいように思える。とくにステファノポロスはブロンド女優の妻アリ・ウェントワースと並ぶから、よけいヨーロッパ人離れした容姿が目立つ。その他の人物で有名なのは、歌手のポール・アンカ(Paul Anka)、ギターリストのフランク・ザッパ(Frank Zappa)、映画『ハング・オーバー』に出演したザック・ガリフィアナキス(Zach Galifianakis)、スナイパー映画の名作『山猫は眠らない(One Shot, One Kill)』に出演したビリー・ゼイン(Billy Zane)、TVドラマ『フル・ハウス』のジョン・スタモス(JohnStamos)といったところか。彼らはゲルマン系アメリカ人というより、地中海諸国でよく見かけるアラブ・トルコ系民族に近い。

  アメリカやヨーロッパでは、古代ギリシア人のアーリア的容姿があまりにも宣伝されているので、実際に現れるギリシア人とのギャップが甚だしく、ギリシア人にとっては迷惑な誤解となる。『ナショナル・ジオグラフックス』誌に、あるレポーターが書いていた。1916年頃、彼はアテネを旅したことがあった。古代ギリシア人の遺産を受け継ぐギリシア人とは、どんな人々かまだ分からなかったという。多分ホテルでの出来事だと思うが、彼はモーニング・コーヒーを運んできた給仕の名前を聞いてちょっとビックリした。なんと、その給仕は「テミストクレス」という名前を持っていたのだ。しかし、その名前と容姿が一致しなかったらしい。我々が目にする名将テミストクレスの像と、給仕の顔が違っていたからだろう。また、この雑誌記者はホメロス(Homeros)やプラクシテレス(Praxiteles)、フィディアス(Phidias)の事を思い浮かべながら、美しいギリシア女性の代名詞「ヘレン」を探すべくアテネの街を見物したそうだ。ところが、彼が目にした唯一の「ヘレン」は、アメリカ娘だったという。金髪碧眼でギリシア彫刻を偲ばせる、整った顔立ちを持つのは彼女だけだった。(E. D. Karampetsos, Nativism in Nevada: Greek Immigrants in White Pine County, Journal of the Hellenic Diaspora, Vol. 24, 1998, p.67) 異国で出逢ったアメリカ人女性が、街中で見かけた唯一の理想的ギリシア人だったとは、何とも滑稽な話である。

  歴史を勉強しないアメリカ人は、ギリシア人やローマ人について訊かれると、映画やドラマで描かれる古典時代の「アーリア的ギリシア人」や「ゲルマン系ローマ人」をすぐ思い浮かべてしまうのだ。まぁ確かに、ギリシア系アメリカ人には、ドラマ『フレンズ』で人気者となったジェニファー・アニストン(Jennifer Anniston)のような有名女優もいる。ブロンドで青い瞳を持つ彼女は、ギリシア系アメリカ人の父親ジョンを持っているが、彼女の母親ナンシーは、アングロ・スコット人とアイリス人の血統であるから、西欧系に属するとも言えそうだ。ついでに言えば、日本でも「刑事コジャック」で有名なテリー・サバラス(Telly Savalos)も、ギリシア系アメリカ人で、ジョン・アニストンと親しかったから、娘のジェニファーの代父(ゴッド・ファーザー)になったという。意外な人間関係があるものだ。話を戻せば、実際アメリカに移住してきたギリシア移民を見れば、オリンピア・デュカキスやニア・ヴァルダロス(Nia Vardalos)といった女性の方が普通であろう。ちなみに、ニアはロングラン映画『私の大げさなキリシア式ウェディング(My Big Fat Greek Wedding)』で主役を演じた女優である。この映画は低予算で作られたが、結婚式をめぐって引き起こされる、キリシア人家庭の滑稽な様子を描いたことで、意外なヒット作品となった。特定民族を描いた映画は危険だが、ギリシア人ということだったからギリギリ大丈夫だったのかも知れない。

  日本人なら、ギリシア系女性と聞けば、『CSI:マイアミ』のソフィア・ミロス(Sofia Milos/父親はイタリア系)とか、『CSI:ニューヨーク』のメリーナ・カナカレデス(Melina Kanakaredes)を思い浮かべるだろう。でも、彼女たちは例外だ。一般的に見れば、アリアナ・ハッフィントン(Arianna Huffington)くらいがせいぜい。アリアナはご存じ「ハッフィントン・ポスト」紙の創立者だが、旧姓はスタシノポロス(Stassinopoulos)といってギリシア系アメリカ人である。彼女の英語がちょっとなまっているのはそのせいだ。ただし、彼女はクセ者で、昔は共和党のニュート・ギングリッチ下院議長や大統領候補にもなったボブ・ドール上院議員を支持していたくせに、ある時を堺にクルっと転向して元に戻ってしまった。今ではバリバリのリベラル派(左翼)コメンテーターとして活躍している。時流に乗って「保守派」を演じていたが、有名になったからで安心して「左翼」に戻ったのだろう。亭主と信条を捨てたアリアナだが、別れた夫マイケルの姓は英国風で格好良いから、そのまま「ハッフィントン」を名乗っている。ギリシア移民はよく家族名をイギリス風に変えてしまうから、アリアナが「ハッフィントン」を放棄しなかったのもうなづけよう。こういう狡賢い女だから、メディア界でのし上がれたのだ。でも、アメリカでは一貫性(integrity)のない人物は信用されないから、保守と左翼の両陣営から陰で侮蔑されているに違いない。

  理想的ギリシア女性がアニストンなら、理想的ギリシア男性はブラッド・ピット(Brad Pitt)だろう。アニストンの元恋人は、映画『トロイ』でアキレスを演じ、ギリシア彫刻のような素晴らしい肉体を観衆に披露した。しかし、ピット氏はギリシア系じゃなくて、アングロ系アメリカ人だ。ちょうど、預言者モーゼを演じたクリスチャン・ベールがユダヤ人ではなく、西歐人だったようなもの。ハリウッドは歴史作品を結構リアルに描くのに、登場人物は幻想にしてしまうから不思議だ。やはり、実際のギリシア人やユダヤ人役者では、映像が暗くなって人気が出ないからだろう。英雄アキレスをアダム・サンドラーやエイドリアン・ブロディーが演じたら客から文句が出る。

    ヒロインのヘレネにはユダヤ人女優を当てるにしても、エヴァ・グリーンやメラニー・ローラン、アリシア・シルヴァーストーンを起用するならOKだ。欧米人はギリシア美術を重要視するから、理想とかけ離れた容姿を持つ、現実のギリシア人に落胆するのだ。正直に言えば、ギリシア人モデルのコスタス・マルタキス(Kostas Martakis)みたいな二枚目より、俳優のクリストス・ヴァシリポロス(Christos Vasilopoulos)みたいなゴツい奴の方が普通だし、実際にはこのタイプが多いのだ。彼が殺し屋とかゴロツキを演じると、妙に決まっているから、ドラマを見ていても違和感がない。

ギリシア・ナショナリズム

  ギリシア人に対する誤解が生じたのは、ギリシア人による行動も原因となっている。オスマン・トルコの支配から脱するためには、ギリシア人の民族意識を覚醒させ、異民族支配を打倒するイデオロギーが必要であった。これは我々日本人にも理解できる意識革命である。江戸時代には頼山陽が『日本政記』や『日本楽府』を著し大変な評判となった。とりわけ『日本外史』はベストセラーとなり、倒幕思想の先駆的業績であり、志士の多くが愛読していたくらいだ。頼山陽の歴史書は德川家にとって恐ろしく、不動の江戸幕府であっても、しょせん朝廷から地位を授けられた下部組織、という認識が勤皇の志士に浸透してしまった。異民族たるオスマン朝トルコの圧政に苦しむギリシア人にとって、何らかの精神的バック・ボーンが必要なのは明らかだった。したがって、ヘレニズムに基づく「ギリシア国学」は、まさしく民族意識復興の起爆剤である。

  トルコ人からの独立を呼びかけるには、まず彼らとギリシア人が人種的・民族的に異なるという点を強調せねばならなかった。独立革命家は何よりも、トルコ人に征服されたギリシア人が、世界に冠たる文明を築いた古代ギリシア人の子孫なのだ、という認識を鼓舞せねばならない。英雄的民族の血を引くという信念は、ローマ的ないしキリスト教的世界を超えて、直接古代人と肉体的に繋がるという見識である。ビザンツ帝国時代の有名なゲオルギオス・ゲミストス(Georgius Gemustus)は、「我々はギリシア人(ヘレネ)の血を引くものなり」とマヌエル2世に伝えていたという。(ステファン・G・クーシデス「近代ギリシアのナショナリズム」 P.F.シュガー/I.J.レデラー編『東欧のナショナリズム』 東欧史研究会 訳 刀水書房 1981年 p.473) これと同じような意識は日本人もあった。平家は一族意識が強かったし、源氏も坂東武士の自覚を持っていた。足利尊氏だって北條執権のもとで暮らす家臣に、源氏の血筋を強調したものだ。一見するとオスマン・トルコの支配は苛酷なようだが、その間接支配は慣れてくるとギリシア庶民にとってそれ程の苦痛はなかった。むしろ、徴税で肥え太るギリシア人統治者の方が圧政的であったらしい。しかし、誇り高いギリシア人にとって、やはりトルコ人の天下は嫌である。

  古代文明への憧憬や復古主義が盛んになると、古代人の理想化が始まる。古典文化の称賛者は、古代人が発見し発展させた者は、すべて高貴で精密であるという確信があった。(上掲書 p.477) これはヤコブ・ブルクハルとが指摘したように、ルネッサンス時代のヨーロッパ人と同じ現象なのだ。キリスト教文化に染められた彼らは、異教的なギリシア・ローマの文化に触れ、人間中心の古典文化に大きな衝撃を受けたという。偉大な祖先の業績を再発見したとき、心の底から感動し、魅了されるのは自然なことだ。日本人だって似たような経験がある。明治の頃は浮世絵が豊富にあり、それほど価値のある美術品だと思わなかった。しかし、現代になって、江戸時代の美術品が再評価され、二束三文で外国人に売り払ってしまったことを後悔している。漫画ファンから見ても、北斎や広重の藝術感覚はすごい。第18世紀になると、ギリシア復興や独立運動への期待もあって、国粋主義的な雰囲気も濃厚だったという。当時は改名運動が流行ったらしく、子供に「ヨアンニス(ジョン)」とか「ペトロス(ピーター)」、「コンスタンティノス」という洗礼名ではなく、ギリシア人らしい「レオニダス」や「テミストクレス」、「アリスティディス」といった古風な名前をつける親がいたらしい。現在の日本では「キラキラ・ネーム」という奇妙な名前をつける親がいるというから、日本人の精神はおかしくなったのかもしれない。ネット情報だから確実ではないが、黄熊(ぷう)、今鹿(なうしか)、男(アダム)、皇帝(シーザー)という名前を子供につける親がいるという。この他に、もっと奇抜で信じられない名前があるようだが、本当にそんな親が実在するのか疑問である。

  ギリシア人と違って、最近の日本では属国化を促進する企業が現れている。ユニクロとか楽天、ホンダでは社内言語を英語にしたそうだが、社員はフィリピン人やインド人の如き隷属民、すなわち植民地の土人並みになったというわけだ。独立を目指していたオスマン帝國内のギリシア人は、母国語運動に熱心だった。民族の伝統を維持するには、その民族固有の言語を守らねばならない。ヨハン・ゴットリープ・フィヒテがゲルマン語について述べた事を思い出してみれば分かるだろう。民族の根源から切り離された言葉を話すフランス人よりも、祖先から継承する生きた言葉を話すドイツ人の方が、永遠に朽ち果てない創造性を保っているのだ。民衆語としての「ロメイカ(Romeika)」は、古代ギリシア語や新約聖書の「コイネー(Koine)」を継承しており、同じ文字を用いていたから、外国語ではない。ロメイカは近代化と西欧的価値の担い手となる一方で、民族固有の思想や価値、感情を保存する貯水池であった。その言葉は、ギリシア民族がもつ特有な資質を守り、彼らを過去に繋ぎ止める錨(いかり/anchor)となってい。第19世紀のゲオルギス・ハジダギス(Georgios Hatzidakis)は、ホメロス時代からのギリシア語が継続しているのを強調することで、ギリシア人が持つ過去への民族的誇りを確立し、ギリシア人に未来への希望を吹き込んだのである。まぁ、ギリシアにも本居宣長のような国学者がいたということだ。

Greek Sculpture 1Greek Sculpture 5Greek Apollo 2









(左: 円盤を投げるギリシア人/中央: ボクサーのブロンズ像/右: アポロンの彫像)

  隷属に慣れた民衆と坊主に独立を訴えかけるには、外国の思想が触媒になるときがある。ヨーロッパの知識人はギリシア・ローマの古典に感銘を受けていたが、ヨーロッパに住む亡命ギリシア知識人やギリシア商人は西歐の啓蒙思想やフランス革命に衝撃を受けた。リガス・ヴェレスティンリス(Rhigas Pheraeos/ Rigas Velestinlis)は、フランス革命とナポレオンの勝利にすっかり感激し、ギリシア革命の先駆者に変貌した。(p.481) 彼はギリシア人やトルコ支配下の諸民族を糾合して「バルカン連邦」をつくるべく、叛乱を準備したという。そこで彼は同胞に、オスマンの軛(くびき)から脱するよう説くため、何冊かの本や秘密宣言をギリシアの民衆語で出版したという。血気盛んなリガスは、「バルカン連邦」だけでなく「メガリ・イデア(大理想)」を構想する先駆者でもあった。オスマン・トルコの支配に不満な民族を束ねて、革命勢力の結集を謀ったのだろう。しかし、彼は叛乱を企てた罪でウィーンで捕まり、トルコ側に引き渡されて処刑されてしまった。

  独立運動の殉教者になったリガスに続いて、もうひとり傑出したギリシア人がいる。アダマンティオス・コライス(Adamantios Korais)もナポレレオンの革命的民族主義やフランスの思想を信奉していた。彼はモンペリエやパリで医学の仕事に就いていたが、ヨーロッパのナショナリズムに感銘を受けると、医学をやめてしまい、ギリシア語の研究に没頭したのである。彼がオスマン帝國内のギリシア人に宛てたパンフレットは、同胞にフランス革命への共感や熱狂を呼び起こした。革命へと民衆を焚きつけるには、やはりこうした知識人が必要なのだ。蜂起する民衆に確固たる信念がないと、血みどろの戦闘が何を意味するのか分からなくなる。命を賭けても守りたい大義が無ければ、誰も危険な戦場で踏ん張らないだろう。コライスは教育を奨励する一方で、印刷の役割と重要性をよく理解していたという。

  愛国心だけは一人前(いっちょまえ)のギリシア人でも、経済活動となるや、とたんにダメ民族になる。そもそもドイツやフランスの政治家が、ギリシアをユーロ圏に加盟させたことが間違いだ。理想を言えば、EUはカール大帝のカロリング帝國の復活くらいに留めておけば良かった。ギリシアに加えスペインやポルトガル、イタリアも本来なら要らないはず。彼らは「ローマ共栄圏」とか「ラテン連邦」とか称して、独自の経済圏を作るべきだ。したがって、EUはゲルマン民族主体の連盟にすべきではないのか? そうすれば、均質な国民性で構成される経済圏になっていただろう。これならアメリカやロシアに対抗する国家連合となるし、強力な経済力と軍事力を発揮できる。でも、それはアメリカやブリテンのグローバリストにとって不愉快だ。うがった見方をすれば、ユーロ圏やEUを組織する時に、英米の手下がわざと問題国を加入させたとも考えられる。「分断して支配せよ(Divide and Rule)」が十八番(おはこ)の西歐人なら、誰だって考えつくことだ。アカンタレのギリシアをユーロ圏に混ぜて、ドイツ人を困らせようとする魂胆があったんじゃないか? 第一次大戦の頃からずうっと、英米はドイツ民族が結束することを邪魔してきた。それだけ、ドイツ人には潜在能力(ポテンシャル)があって、実行力も兼ね備えていたということだ。オーストリア人やオランダ人そして北欧のゲルマン諸民族を糾合した、汎ゲルマン連邦は英米にとって脅威である。案外ユーロ圏に加盟していないイギリス人が、自国のユダヤ人やアメリカのユダヤ人と組んで、ドイツ人を痛めつけているのかも知れない。

  日本人の政治家は他国に策略を仕掛ける能力を持たないから、日本の庶民は外国に干渉したり陰謀を目論む事に関心がない。しかし、外国の政治家にとって、他国の内乱を画策するのは当然だから、EUの経済問題を政治的に捉えることができる。USドルによる一極支配を維持したいアメリカ人なら、当然ユーロを蹴落とそうとするだろう。そして、ドイツが台頭しないよう、ブリテン政府と裏で協力することだってある。グローバリストのユダヤ人なら、ドイツ人は「生かさず殺さず」で、その富を搾り取ることがまず肝要だ。それにしても、仮に大ゲルマン経済圏ができたら、アメリカ合衆国を脅かすライバルになるだろう。ドイツ人の底力は日本人にも理解できる。日本人がギリシア人みたいに、再び民族意識に目覚めれば、我が国はもっと立派な国家になるだろう。もし、日本人が朝鮮人みたいなインポ民族なら、我々がナショナリストになっても、外国人は相手にしないはずだ。ところが、支那朝鮮人はもとより、アメリカ人ですら不安を感じるというから、日本人はよほど優秀な民族なのだろう。日本のナショナリズムを危険視する者は、日本のポテンシャルを充分認識しているから警戒するのだ。




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