廃棄される白人大統領

Harriet Tubman 1












(写真/ハリエット・タブマン)

  アメリカでは多民族・多文化主義の浸透が止まらない。低賃金でコキき使える「外国人労働者」を大量に輸入しようとしている日本は、やがて西歐系アメリカ人と同じ苦しみに喘ぐだろう。異民族を導入すれば、遺伝子や日常生活が変わるだけでなく、国家の歴史も塗り替えられてしまうのだ。今のところ、日本人は日本人の過去を「日本史(国史)」として学んでいるが、将来は反日史観に加えて、外国人や混血児の偉人まで学ぶようになるかも知れない。経済界の歴史を学ぶときに、渋沢栄一や岩崎弥太郎ならいいが、ソフトバンクの孫正義やパチンコ屋(マルハン)の韓昌祐が「偉大なる経済人」じゃ嫌だ。日本人の子供には日系日本人の英雄や国士を学ばせたい。日本の庶民はまだ安心しているが、建国者の子孫が少数派になっているアメリカでは、祖先の歴史が希薄になる一方で、かつての「少数派(マイノリティー)」、つまり「有色人種」の過去が濃くなっている。

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(左: 渋沢栄一 / 岩崎弥太郎 / 韓昌祐 / 右: 孫正義)

  先月、合衆国財務省のジャク・ルー(Jacob J. Lew)長官は、新たな20ドル紙幣の肖像画に、黒人女性のハリエット・タブマン(Harriet Tubman)を採用すると発表した。現在の20ドル紙幣にはアンドリュー・ジャクソン大統領の肖像画が印刷されているので、この奴隷所有者であった白人大統領を廃棄して、黒人奴隷の逃亡を助けたアフリカ系のヒロインを据えようという訳だ。まったく、ユダヤ人の財務長官は発想が斬新というか、弱者の味方というか、生まれながらにして非アングロ・アメリカ的なのかもしれない。しかし、ユダヤ人長官のジャック・ルーには更なる野望があった。エイブラハム・リンカンの肖像画が載っている5ドル札と、アレグザンダー・ハミルトンの肖像画が載っている10ドル札にも手を加えようというのだ。

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(左: ハリエット・タブマン / 右: アンドリュー・ジャクソン大統領)

  リンカン大統領は今でも人気が高く、2012年にスティーブン・スピルバーグが『リンカン』という映画を作っているくらいだ。ちなみに、この脚本を書いたのは、ユダヤ人のトニー・クシュナー(Anthony Robert Kushner)で、以前にもスピルバーグとタッグを組んでいた。イスラエルの諜報機関であるモサドの暗殺集団を描いた映画『ミュンヘン』で、脚本を手掛けたのがクシュナーだった。彼はコロンビア大学時代、極左学生として名を馳せていたというから、筋金入りのユダヤ人左翼である。とはいっても、コロンビア大学は極左ユダヤ人の巣窟だったから驚くには値しない。また、リンカンを演じたダニエル・デイ・ルイス(Daniel Day-Lewis)もユダヤ系アメリカ人で、父親はプロテスタントのアイリス人であったが、母親がユダヤ人であったので、血統的にはユダヤ人と見なされる。英国生まれとなっているダニエルだが、母親はポーランドから英国に流れてきたユダヤ移民の家系だから、彼をイギリス系俳優と呼べるのかどうかは微妙なところだ。それにしても、ユダヤ人が書いて、撮影し、演じたワスプ(WASP)のアメリカ大統領なんてゾっとするが、これがアメリカ映画界の現実である。とにかく、リンカンを紙幣から外すと国民の抵抗があるから、彼を表に残して、裏にエレノア・ローズヴェルト夫人とマーチン・ルーサー・キング牧師、そしてマリアン・アンダーソン(Marian Anderson)を加えることにしたという。

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(左: スティーヴン・スピルバーグ / トニー・クシュナー / リンカン役のルイス / 右: ダニエル・デイ・ルイス)

  一般の日本人にとって、このアンダーソンなる黒人女性は馴染みがない。しかし、黒人史を半ば強制的に学ばされるアメリカ人には少しだけ知られており、彼女は人種差別時代のヒロインとされているのだ。1939年、「アメリカ革命の娘たち(Daughters of the American Revolution)」という有名な愛国団体が、コンスティテューション・ホール(Constitution Hall)で出演するはずだったアンダーソンに反対したので、彼女はそのホールで歌うことができなかったという。この団体にはエレノア・ローズヴェルトも属していたから、左巻きのファースト・レイディーにはショックだった。それゆえ、この禁止に腹を立てた彼女は脱退を決めたそうだ。エレノアは夫のフランクリンと同じく深紅に近いピンク社会主義者であったから、フェミニストのアイドルを求める左翼系アメリカ人は、何とかしてこの大統領夫人をお札の表紙にしたいのであろう。件(くだん)のアンダーソンは、後にリンカ記念堂の外で熱唱し、人種差別に叛旗を翻したヒロインとして脚光を浴びることになった。この程度でヒロインになるんなら、和田アキ子だって「在日鮮人差別を乗り越えて大物歌手になった」と表彰されてしまうぢゃないか。(ただし、日本人は彼女の肖像画をお札に載せることはしないけどね。)

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(左: ジャク・ルー / マリアン・アンダーソン / エレノア・ローズヴェルト / 右: アリス・ポール)

  一時的ではあるが、排除の危機にあった初代財務長官のハミルトンは、彼を主題とした人気ミュージカル「ハミルトン」によって救われたという。もしも、このミュージカルが不評で、早々にキャンセルという憂き目に遭っていたら、ハミルトンの肖像画も廃棄の対象になっていたかも知れないのだ。しかし、男社会を憎むフェミニストたちは粘り強かった。10ドル札には普通選挙権運動家の女性たちを加えるらしい。ルクレティア・モット(Lucretia Mott)、ソジョナー・トゥルース(Sjourner Truth)、エリザベス・カディー・スタントン(Elizabeth Cady Stanton)、アリス・ポール(Alice Paul)、スーザン・アンソニー(Susan B. Anthony)という女性活動家の肖像画を裏面に載せるそうだ。フェミニスト左翼の活動家が大喜びで歓迎する提案である。ジャク・ルー長官は、彼の後継者がこの決定に拒否権を行使することはないと語っていた。(Jackie Calmes, Harriet Tubman Oust Andrew Jackson in Change for $20, The New York Times, April 20, 2016)

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(左: ルクレティア・モット / ソジョナー・トゥルース / エリザベス・カディー・スタントン / 右: スーザン・アンソニー)

  ルー氏はみんなの意見を汲んでいると言っていたが、彼を支援する者は札付きの左翼どもが中心なんじゃないのか。例えば、ユダヤ人でレズビアンのエレン・デジェネレス(Ellen DeGeneres)は左翼コメディアンとして有名だし、性差別反対の活動家で女優のジーナ・デイヴィス(Geena Davis)も同類だ。人気TVドラマ「グリー」で知られてるアイリス系カトリックのジェイン・リンチ(Jane Lynch)もレズビアンだし、CBSでアンカーマンを務めていたユダヤ人のケイティー・クーリック(Katie Couric)は“リベラル派”ジャーナリストの代表格である。有名紙「ハッフィントン・ポスト」の創設者であるアリアナ・ハッフィントン(Arianna Huffington)は、風見鶏も驚くほどの思想転向者である。彼女はギリシア系アメリカ人で、本名をアドリアネ・アンナ・スタシノポウロウ(Ariadne-Anna Stasinopoulou)と云い、結婚して亭主の「ハッフィントン」姓を名乗っていたのだ。現在は離婚しているが、英国風の名前の方が響きがいいから使い続けている。彼女は保守が時代の潮流になっていた時には「保守派」を装っていたが、地位が安定するにつれ、元の「リベラル」に戻った前科がある。その豹変ぶりには豹もビックリ。まあ、テッド・ターナーと結婚して「保守」の仮面をつけたジェーン・フォンダ(Jane Fonda)と似ている。ベトナム戦争中に「ハノイ・ジェーン」と呼ばれた極左女優だから、「恥」という観念が無いのだろう。離婚してサッサと左翼に戻ったのだから、健康には良かったのかも知れない。

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(左: エレン・デジェネレス / ケイテイー・クーリック / ジェイン・リンチ / ジェイン・フォンダ/ 右: アリアナ・ハッフィントン)

黒人奴隷がアメリカの英雄になる

  それにしても、ハリエット・タブマンて何者だ? こう疑問に感じる日本人がほとんどだろう。アメリカの高校に通った日本人なら分かると思うが、アメリカの子供は多民族主義が染み込んだ歴史教科書を学んでいるから、黒人に対する罪悪感と白人史観への嫌悪にまみれている。黒人の歴史家は白人が主人公のアメリカ史を許せない。白人ばかりが脚光を浴びる米国史では、下っ端の黒人がいつも脇役になっている。だから、黒人もアメリカの歴史を構成する重要な民族にしなければならない。それゆえ、「マイノリティー」の子供にも自信をつけさせる意図もあってか、黒人なら些細な事をしただけでも“偉人”にしてしまう傾向がある。ハリエットの本名は「アラミンタ・ロス(AramintaRoss)」といって、九人兄弟の五番目として生まれ、幼い頃は「ミンティー」と呼ばれていたらしい。メリーランド州のケムブリッジで、奴隷の娘として生まれたハリエットだから、学校教育など高嶺の花であった。当然ながら文盲であり、日記や直筆の文章を残すことが出来なかった。そのため彼女の人生については不明確な部分が多く、信頼できる資料にも乏しい。そのうえ、元奴隷で黒人女性ときていれば、記録を残そうなんて人はいないだろう。そもそも、黒人奴隷同士で手紙の遣り取りなどあり得ない。ただ、よく引用されるエピソードとして、幼い頃に受けた虐待がある。彼女は所有者の主人から金属の棒で頭を打たれ、頭部に重症を負ったことから、一生涯、頭痛や発作、睡眠症に苦しんだそうだ。

  そんなミンティーも1844年になると結婚して、名前を母と同じ「ハリエット」に変えたという。ところが、その二年後に異変が起きた。彼女の主人が亡くなり、ハリエットの家族は売りに出される破目になったのだ。他者に売り飛ばされれば、ハリエットは家族と離れ離れになってしまう。つまり、奴隷市場で一人一人「バラ売り」されるということだ。これだけは嫌だということで、彼女は奴隷の逃亡を助ける「地下鉄道(Underground Railroad)」なる秘密ネットワークを利用し、必死の思いでフィラデルフィアに逃れることができた。当時、合衆国には奴隷制を維持する州と奴隷制を廃止した州に別れており、イリノイやインディアナ、ペンシルヴァニア、ニューヨークなどが「自由州」であった。極秘ルートで逃亡したハリエットであるが、そのまま大人しくしておらず、19回もメリーランド州に戻って、黒人奴隷を連れてきたそうだ。その数は水増しされて300名と伝えられていたが、どうやら70名くらいが本当の人数だったらしい。(Renee Gearhart Levy, The Truth Behind the Myth of Harriet Tubman, Maxwell School of Syrascue University) ハリエットが助けた黒人の中には、当然その両親、兄弟、親類がいたそうで、彼らはカナダやニューヨークに逃れたそうだ。実際に逃亡を助けた奴隷の数が少ないとはいえ、勇敢な行為には違いないから、ハリエットは「黒いモーセ」と讃えられている。しかし、これはちょっと大袈裟だろう。

Kate Clifford Larson(左/ケイト・クリフォード・ラーソン)
  奴隷の逃亡幇助をしたハリエットは、その噂が広まったために、お尋ね者として4万ドルの懸賞金がかけられたと云うが、タブマンの伝記を書いたケイト・クリフォード・ラーソン(Kate Clifford Larson)によれば、こんな金額の懸賞金など全く無かったそうだ。彼女の身の上話を言い伝えているうちに誇張されたものらしい。ハリエットは奴隷の逃亡を助けたばかりか、南北戦争の最中、負傷した黒人兵を介護したり、北軍に逃れてきた解放奴隷の世話もしたという。彼女の貢献はさらに軍事活動にも及んだそうだ。ハリエットは南軍の陣営に接近し、スパイ活動、つまり斥候として敵軍を偵察したらしい。といっても、単に敵地をうろついたり、のぞき見をして敵軍の情報を集め、北軍の白人将校に伝えただけだろう。つまり、同心に耳寄りな情報を伝える岡っ引き程度かそれ以下の存在である。黒人の歴史家や左翼活動家が、黒人のスパイを偉大にしたいがため、過大評価をしている虞(おそれ)があるのだ。例えば、彼女の偵察というものが、敵地のどこに綿や食糧を保管している倉庫があるのか、どれくらいの武器を敵兵が持っているのか、といった簡単な情報収集だったから、黒人の子供にだって出来るじゃないか。たぶん、黒人女がうろちょろしていても、白人たちは気にしなかったのだろう。伊賀の服部半蔵とか、日露戦争時の横川省三や沖禎介とは違うぞ。それでも、歴史上の英雄が少ない黒人たちは、何とかして南北戦争の黒い英雄を持ちたい。だから、ちょっとした功績でも、黄金のように磨き上げるのだ。こうした情熱は朝鮮人とそっくりだ。大爆笑の金日成のパルチザン伝説や、チンピラ・テロリストの金玉均礼讃を思い出せば理解できよう。

  いずれ機会があれば、アメリカの歴史教科書について論じたいが、保守派の知識人が「どのようにアメリカの子供は歴史を学ぶのか」について紹介しないのは変だ。「正論」や「WiLL」でもアメリカ批判の記事はあるが、アメリカ人の教育内容を具体的に紹介する言論人は少ない。筆者はGlencoの「The Americab Vision」とかPrentice Hallの「America」といった歴史教科書をいくつか手元に集めて読んでみたことがある。アメリカ人の歴史観を知るためには、彼らの思想的背景を知ることが重要であるからだ。我々だって、日本人の歴史観を批判するアメリカ人が、日本の歴史教科書を読んでいなかったら、アホな奴と思うだろう。アメリカの大衆は歴史を勉強しないから、映画『パール・ハーバー』で我が軍の零戦が病院を爆撃したり、看護婦を機銃掃射したりするシーンを観て、本当にあったと思っていた。日本人なら「何であのような虐殺をわさわざするんだ ! 無意味じゃないか ! 」と腹を立てて、馬鹿らしく思うだろう。だが、書物で学ばないアメリカ人は、疑いもせず日本兵が野蛮だと思っている。だが、愚かなアメリカ人を非難する前に、まず彼らに教育を授けなければならない。しかも、英語で。面倒だけどしょうがない。

Cesar Chavez 1(左/チェザー・チャヴェス)
  ハリエット・タブマンがジャクソン大統領に取って代わることは、西歐系アメリカ人の保守派にとって一大事である。これは単にお札のデザインが刷新されるだけではない。なぜなら、アングロ・アメリカの文化が徐々に破壊されているからだ。左翼活動家や反西歐主義者、文化マルキストたちは、ちょっとづづ黒人や南米系のアメリカ人を歴史教科書に加えて、別のアメリカ史を造ろうとしている。例えば、キング牧師の日を祝ったり、記念切手を発行し、博物館で遺品を展示したりと、実像を隠しながら虚像を誇張するのだ。(これについては、また別の機会で述べたい。) また、ヒスパニック系の人物を探し出して英雄に祭り上げることも忘れていない。例えば、「ユナイテド・ファーム・ワーカーズ(UFW)」を創設したチェザー・チャヴェス(Cesar Chavez)は、教科書にも取り上げられており、カルフォルニアにおける労働者の守護神になっているのだ。(America: Pathways to the Present, Prentice Hall,p.832) こんな赤いデマゴーグが教科書に載っているんだから、アメリカの教育界における左翼偏向も甚だしい。日教組教育を受けた日本人なら分かるだろうか、アメリカの左翼教科書も悪質で、西歐人の過去を削減しようと企んでいる。多民族主義者はアメリカ史をよほど憎んでいるのだろう。歴史的観光地を訪れれば、ギリシア・ローマ様式の建築物ばかりだし、豪華な会堂や図書館に入れば西歐系白人の彫像がすらりと並んでいたりするから、非西歐系のアメリカ人はそれらを羨ましく思う反面、自分たちが疎外されていると感じ、嫉妬と怨念が心の奥底から湧いてくるのだろう。それゆえ、彼らはアメリカ史の片隅をほじくって、誰でもいいから非白人の人物を“偉大”にしたいのだ。ここで不思議な事がある。ハリエットの自伝といえば、キャサリン・クリントン(Catherine Clinton)の「ハリエット・タブマン: 自由への道」(2004年)とか、ミルトン・サーネット(Milton C. Sernett)の「ハリエット・タブマン: 神話、記憶、歴史」(2007年)などが出版されているが、1990年代以前にはこれといった伝記は無かった。2000年代になって急にハリエットが歴史の表舞台に浮上してきたのだ。たぶん、多民族主義の歴史教育が盛り上がったからだろう。1980年代から中南米の移民が激増したし、黒人の地位も安定し、ぞくぞくとアフリカ研究の講座が誕生したから、「非白人の英雄発掘」が加速したのかも知れない。

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(左: 祖父と一緒のオバマ大統領 / 右: ミシェル夫人と一緒のオバマ大統領)

  建国の志士を祖先にもつアメリカ人や西歐系移民の子孫は、黒人のオバマが大統領になったことで手痛いツケを払っている。白人の中でも反米主義者や社会主義者、ピンク左翼が多過ぎて困っているのに、そのうえ非白人が高位高官になっているんじゃ、白人のアメリカが衰退するのも当然だろう。暴力革命を目指す共産主義者は居なくなったが、西歐文明を根底から破壊する文化マルキストは依然として健在である。ぶち壊すこと自体に喜びを感じる左翼は、次々と伝統文化を叩き潰そうとするから危険だ。彼らの手口は巧妙である。歴史教科書で白人の物語を削ると抵抗が大きいから、黒人やアジア人の歴史物語を増やすのだ。そうすれば相対的に白人の歴史を小さくできる。子供が学校で学ぶ知識の分量と授業時間は限られているから、黒人の歴史を増やせば、白人の過去は圧縮され、簡単な説明しかできない。例えば、「アレクサンダー・ハミルトンは陸軍大尉で財務長官でした」でお終い。ところが、白人の偉人に関しては淡白な教師でも、キング牧師になると途端に熱弁をふるうことがよくある。日本でも同じで、日教組の教師は百姓一揆とか五日市憲法、拷問された小林多喜二になるとベテラン浪曲師も真っ青になるくらい饒舌になる。ところが、明治天皇や児玉源太郎、東郷平八郎といった日本の偉人となると、涼しい顔をして素通りするのが普通で、軍神の広瀬武夫や乃木希典などは大嫌いだから触れようともしない。こんなんだから、祖国の英雄を教えてもらえない日本の子供は不幸だ。

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(左: ジョージ・ワシントン / 中央: トマス・ジェファソン / 右: アレグザンダー・ハミルトン)

  アメリカの歴史教科書は分厚いけど、授業内容はいかがわしく、日本人がアメリカの学校で学んだら、「いったい誰を教育しているのか?」と疑問に思うような授業が多い。それに、アメリカの歴史教育は矛盾をはらんでいる。例えば、ハリエット・タブマンを賞讃するということは、奴隷を持っていた白人を非難し、悪人として扱うことを意味するからだ。解放奴隷や逃亡奴隷の黒人たちは、祖先の仇を討てるからいいけど、奴隷所有者の子孫はどうなるんだ? 黒人奴隷を使って牧場を経営していた白人の子孫は、祖先が極悪人と指定されるんだから、どんな顔して墓参りをするのか? たぶん、死んでしまった曾祖父やそれ以前の先祖については知らん顔を決め込むんだろう。奴隷を所有していたジョージ・ワシントンやトマス・ジェファソンと同じ立場の白人はどうなるのか? まさか、支那人みたいに墓石に唾を吐きかけることは出来ないから、気まずい白人たちはご先祖様が居ないことにするんだろう。黒人たちがどんなに祖先を侮辱しても、現在の暮らしが幸せなら満足というのが、ほとんどの白人が持つ本音なのかも知れない。したがって、アメリカ史は自分とは関係がない他人の過去になっている。これは左翼教師の目的が達成されたということを示唆する。つまり、歴史を意識する高度な文明人を、単なる野生動物並に作り替える計画が成就したのだ。西歐人の肉体を滅ぼすには、まず精神から抹殺せよ、というのが文化マルキストのドグマ(教義)であった。

明治大帝を載せない日本の紙幣

  たしか我が国は立憲君主国であったと思うが、流通している紙幣を手にとって見てみると、国家元首の肖像画がそこには無い。一方、英国の紙幣を見てみると、5ポンド紙幣のみならず10、20、50ポンド紙幣にもエリザベス女王の肖像画が印刷されているし、1ペニー硬貨や5ペンス、10ペンス、20ペンスの硬貨にも女王の横顔が刻印されているのに気づくだろう。カナダ・ドルを銀行で購入すれば、20ドル札に女王陛下の肖像画を見ることが出来るし、オーストラリア・ドルなら5ドル札に同様の絵が載っている。また、図鑑を開いてローマ帝國のコインを調べれば、皇帝や神様の横顔を刻印した金貨や銀貨を見ることができよう。王様や皇帝は一番の有名人だから、どんな庶民でも知っているし、国家が鋳造する硬貨や印刷する紙幣にとってふさわしい人物である。日本の統治機構が発行する日本銀行券なら、その肖像画に最も相応しいのは天皇陛下のはずである。

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(左: 若き頃のエリザベス女王 / 中央: 現在のエリザベス女王 / 右: ローマ帝國の金貨)

  天皇陛下の肖像画を紙幣のデザインに用いないのは、陛下の御真影(写真)を紙幣に印刷すれば、庶民がしわくちゃにするから、陛下に対して申し訳ないとの配慮も、過去にはあったのだろう。しかし、かつては聖徳太子の一万円札があったのだから、その言い訳は通用しまい。それに、新聞に掲載される天皇陛下や皇太子殿下の御真影は、どう処分されているのか? ペットの糞を始末するために使われたりするんだから不敬だろう。しかし、お札を使う奴はいないから、新聞紙よりましである。紙幣に国家元首の肖像画が無いのは、日本政府か日銀の誰かが天皇陛下のデザインに反対したのではないか? もし、福澤諭吉や新渡戸稲造、夏目漱石、伊藤博文が生きていたら、天皇陛下を差し置いてお札の肖像画になることは畏れ多いと述べて、断固拒否していたことだろう。日本全国のみならず世界各国で流通する公的な銀行券なんだから、我々は「なぜ陛下の肖像画」を使わないのかについて知る権利がある。もし、朝鮮人や支那人に遠慮しているとしたら大問題である。昔の千円札には伊藤博文の顔が印刷されていたから、一部の朝鮮人は不愉快に思っていたらしい。韓国統監の総理大臣だったから、朝鮮人が怒る理由も分かるが、日本の紙幣だから我々の勝手である。それよりも解せないのは、二千円札のデザインである。どうして、屈辱的な「守礼門」が印刷されているのか分からない。宮澤喜一の説明によれば、小渕恵三首相の発案だったそうだが、支那人に服していた琉球の象徴を紙幣のデザインに用いるなんて噴飯物だ。本土の日本人は全く使用していないが、沖縄では未だに流通しているそうだから、沖縄の日本人は三跪九拝していた過去には無頓着なんだろう。

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(左: 明治天皇 / 中央: 昭和天皇 / 右: 東郷平八郎)

  普通の日本国民なら、紙幣のデザインに明治天皇か昭和天皇の肖像画が使われることに異論は無いはずだ。左翼学者が「民衆政治や主権在民に反する」とか言って反対するのだろうが、正常な国民はこれといって反対する理由もないから歓迎するだろう。だいたい、女の文学者だからという理由で、樋口一葉を五千円札の顔にするなんて納得できない。国語の教師や文学青年なら馴染みがあるだろうが、娯楽作品やサブカルチャーを好む大勢の庶民には天皇陛下の方が親しみと敬意がある。日本の歴史を貫く皇室伝統の重さと比べたら、文人の存在など鴻毛の如しだ。それに、天皇陛下と国民の紐帯を思い出せば、誰だって陛下の方が紙幣のデザインに相応しいと思うだろう。

  一般の日本人が一番親しみを感じるようになった天皇と言えば、まず明治大帝が挙げられる。何しろ日清日露の戦役を陛下と共に経験した日本人にとって、明治大帝の存在は格別である。敗戦の苦労を分かち合った昭和の日本人ならよく分かるだろう。昭和天皇も特別だが、ここでは明治天皇についてちょっと紹介したい。

  阪神淡路大震災や東日本大震災で被害に遭った日本国民は、天皇陛下のご訪問と慰安のお言葉を有り難く受け取ったに違いない。明治の頃も日本国民は陛下のご配慮に感動したようだ。明治天皇の侍従を務めた日野西資博子爵が、山梨県で大水害が起きた時、御思召しにより現地を慰問に訪れたそうだ。陛下はご政務がお忙しいのに、日野西が帰ってくると、さっそく彼の報告をお聞きになったという。陛下は一時間以上もその悲惨な状況に耳を傾け、罹災者(りさいしゃ)に対して深くご同情を示されたそうだ。ご報告をした日野西は、山梨県の日川村を訪れた際、志村勘兵衛という青年に出逢った事を陛下に話したという。彼の老母は水害で流されてしまったが、柿の木の上に非難して一命を取り留めたらしい。日野西がこの話を上奏している時、ふと陛下のご尊顔を仰ぎ見ると、お聞きになっていた陛下の玉眼には涙が溢れていたそうだ。龍顔(りゅうがん)を拝していた日野西も、感動のあまり声が震えてしまったという。

  志村という人物は中々立派な人物で、大水害で家や倉、田畑が全部流されてしまったのに、一戸だけ残った倉を開いて罹災者たちに食糧を分け与えたという。彼は母親を救い出すことが出来たことを不幸中の幸いと考えていたそうだ。ただ、残念なのは、天皇陛下から頂戴した書画が失われたとこだという。明治13年に陛下が山梨県を御巡幸なされた時、陛下は志村氏の家でご休憩を取られたそうで、その節に、御紋附の銀盃と反物を拝領したそうだ。しかし、水害のためそれらは流されてしまった。家や倉は努力次第で再び取り戻すことが出来るが、御拝領品だけは取り戻すことが出来ない、と彼は涙ながらに悔やんでいたそうだ。これをお聞きになった陛下は、「そうか、実に気の毒である」とおっしゃられ、「以前と同じものをやったらよかろう」とのお沙汰があり、田中宮内大臣を通して志村氏は同じ銀盃を拝受したそうだ。志村青年は夢にも思わぬ再度の恩賜(おんし)に感涙したという。(加藤玄智 編 『明治天皇聖徳餘光』 財団法人明治聖徳記念学会 昭和12年 41~42頁。)

  大東亜戦争で指揮官となった将校には、兵卒の命を粗末にする者がいたが、天皇陛下は常に我が軍の将兵を案じていらっしゃる。明治天皇は日清・日露の戦役で大勢の将校や士卒が負傷したり、病に罹ったり、戦死を遂げたことに御心を痛めていたそうである。そこで、日清戦争で没した軍人の写真や人名簿を振天府に納め、日露戦争の戦没者の写真や人名簿は建案府に納められることになったらしい。日露戦争では十数万にも及ぶ将兵が亡くなったので、陛下は戦病死者の名前が記された人名録をお手元に置かれていたそうだ。側近の者がこの人名録を持参すると、陛下は一兵卒の名前に至るまでお読み遊ばされ、総てを御覧になったという。陛下は時折、「この名前は難しいが何と読むのか」と御下問なされたり、「斉藤や中村の姓は非常に多い」といったお話もされていた。また、陛下は人名録を御覧になりながら、戦没者の親や妻子にまで思いを寄せ、将兵の一人ひとりを大切にされていたという。日露戦争で大勢の将兵が戦死したとの報告をお聞きになった時、陛下は非常に嘆かれ、「いくら戦争でも、かく沢山の兵士を殺しては国の為とはいえ、実に気の毒だ、その父兄に対しても誠に済まん」とおっしゃられたそうだ。日野西たち側近は慈悲深い陛下の御心に、いたく畏(おそ)れたという。(上掲書 44頁。)

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(左: 大久保利通 / 中央: 広瀬武夫 / 右: 乃木希典)

  敗戦後の日本では、反日主義を抱く教師や官僚が事あるごとに皇室を貶めようとしたから、現在の子供は皇室伝統についてほとんど分からない。簡単な例を挙げれば分かるだろう。もし、「11月3日は何の日か」を問われれば、「文化の日」と答えるが一般的で、「天長節」とか「明治節」、あるいは「明治天皇誕生日」と答える子供はごく稀である。4月29日だって「昭和の日」と答えるのが普通で、「昭和天皇誕生日」と答える子供は少なくなっているのが現状だ。中には「天長節って何?」と尋ねる子供だって多いだろう。こんな具合だから、大人といえども、紙幣に天皇陛下の御真影を使うという発想が出てこない。理想を言えば、高額紙幣の一万円札には明治大帝を用い、よく使う千円札には昭和天皇を、五千円札には世界的に有名な東郷平八郎元帥か、維新の功臣で大蔵卿であった大久保利通が妥当なんじゃないか。優秀な科学者である野口英世が採用されてもいいが、日本を代表する人物なら天皇陛下の方が自然である。古代ローマ人は硬貨を鋳造するにあたって、皇帝やその同伴者である神々を刻印した。後世のヨーロッパ人や日本人でさえも、それを訝しく思わないし、ローマ人が国家元首や神様を金貨のデザインに選んだ気持ちも理解できる。日本人はユダヤ教徒やイスラム教徒と違って、偶像崇拝を禁じる文化を持っていないし、君主の肖像画を好む国民性すら持っているんだから、紙幣のデザインに使ってもいいんじゃないか。左翼がかった官僚が密室で決めずに、常識的な国民が堂々と公(おおやけ)で議論すれば、天皇陛下を選ぶ者が現れてくるだろう。もしそうなれば、天皇陛下を公然と否定する連中が、匿名ではなく個人名で浮き彫りになるから好都合だ。それにつけても、アメリカでの文化撲滅は深刻である。異民族や異人種を輸入すると如何に弊害が大きくなるかが分かるし、多民族の共存は“調和”よりも“分裂”を促進すると言えるのではないか。日本人は愚かなアメリカ白人を直視すべきだ。まったく、他国の不幸を知りながら、自国をも不幸にしようとする左翼は本当に許せない。
  



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