怪しい寄せ集めの金融商品

  日本人には他人の失敗を見ているのに、その過ちを真似て繰り返す癖がある。一国の経済問題は「経済の原理」だけで動いているとは限らない。そこには政治的思惑が絡んでいる場合がある。我々が嫌になるほど痛感したのが、安倍政権による消費税アップという愚行で、実行したら景気が腰砕けになると分かっていたのに、財務官僚に押しきられて安倍首相はやってしまった。その結果は予想通りで、誰もが「やらなきゃ良かったのに」と後悔している。増税に賛成した財界人やマスコミはだんまりを決め込んでいるんだからズルい。本当の所は不明だが、安倍首相は消費税アップに消極的だったが、財務省が怖くて増税派の命令に従ったのかも知れない。長期政権を維持するためなら、反日官僚や左翼議員の言うことを丸呑みし、その代わり政権を支えてもらおう、という腹だったのではないか? 左翼の要求に従えば叛逆者が少なくなるし、野党のお株を奪う事になるから、反対勢力は攻撃の材料が無くなってしまうだろう。ただし、安倍氏を支持していた保守層は裏切られた気持ちでいっぱいになり、安倍氏に対する憎しみと恨みだけが残ることになる。もっとも、彼を権力の座から引き摺り降ろしても、また同じような裏切り者か、さらなる左翼総理が現れるだけだから、一般国民も気分が暗くなる。

  保守派を裏切る安倍政権が実現しようとする、単純労働者の大量輸入は、将来必ずや日本にとっての災禍(わざわい)となるだろう。この移民政策とは一見して無関係の様に思えるが、かつて世界中を巻き込んだサブプライム・ローン問題とリーマン・ショックを見直してみれば、政治が絡んだ経済政策がいかに巨大な損害を発生させるかが分かる。でも、既に約8年くらい経っているので、現在の若者は高校生か中学生だったから、今ひとつピンとこないかもしれない。そこで、この事件を曖昧にしか覚えていない大学生のお坊ちゃんお嬢ちゃんの為にちょっとだけ説明しよう。

  世間のオッちゃんオバちゃん達が痛い目にあったリーマン・ショックは、住宅バブルの崩壊が発端であった。というのも、強欲な物が集まる金融界は、住宅ローン担保証券(mortgage-backed securities)に多額の資金を注ぎ込んでいたからだ。一昔前なら、家を買いたい人は地元の銀行に頼んでお金を貸して貰い、その銀行に月々いくらかを返済するという契約を結んでいた。ところが近年、一般人にお金を貸していた銀行が、その借用書を住宅ローン債券として「ファニーメイ(Fannie Mae)」などの住宅公社に売却するようなった。こうして、第二次住宅ローン抵当市場(secondary mortgae market)を通して債券を購入したファニーメイは、借金を背負った人々から月々の返済を受けるようになった。すると、ファニーメイは自分が持っている色々な住宅ローン債券を一まとめにして販売するようになったのはよく知られている。こうして金融商品となった債券を購入した投資家は、ローンの借り手が返済するお金の一部を毎月手にするという仕組みで満足するはずだった。

  今となっては怪しいと分かる住宅ローン担保債券だが、当時は“リスクが分散”されているから大丈夫という安全商品だった。アメリカ全体から掻き集められた住宅借金の証文で構成されているので、例えば住宅価格が東海岸で暴落しても、南部や西部で上昇していれば、全体的にはマイナスになることはあるまい、と考えられていたのだ。(Jacob S. Rugh and Douglas S. Massey, Racial Segregation and the American Foreclosure Crisis, American Socio;ogical Review, Vol. 75, 2010,pp. 631-632) しかし、これだと闇鍋みたいで恐ろしい。優良債権と不良債権がどんな割合で配合されているのか分からないし、そもそも借り主を正当に評価しているのかも分からないからだ。今では明らかとなっているが、格付け会社は意図的に評価基準を甘くし、不動産担保証券のリスクを低く見積もっていた。したがって、「トリプルA」という評価だって、もしかしたら単なる「A」かそれ以下かも知れないし、評価している会社が意図的に捏造していたことたってあり得る。昔、アメリカで証券会社のアナリストがテレビ番組に出演し、景気後退に向かっているのに「今株を買うべきです」と視聴者に勧めていたことがある。後に彼が告白していたが、雇用主から圧力を受けていたので、分かっていながら嘘をついていたそうだ。日本人は格付け会社が有名だと無条件に信用してしまうが、他人の評価は話半分に聞くべし、という常識を忘れてはならない。保険の勧誘でもそうだが、会社側がお客に不都合な情報を与えることは稀で、たいていは「お得な情報」しか伝えないものだ。

  「親方日の丸」という意識は米国でもあるらしい。問題となった「ファニーメイ」とか「フレディーマック(Freddie Mac/Federal Home Loan Mortgage Corporation)」という政府支援企業(GSE/gogernment-sponsored enterprise)は、その名の通り当初、政府機関として発足し、1960年代に民営化された組織である。半官半民の性質を持つこれらの公庫は、民間企業と比べると税制面で優遇され、役人とも癒着しているので規制が緩くなっていた。この公庫の株は安全パイということで、リスクを懸念する投資家や銀行が喜んで購入していたという。それに、投資家たちはファニーメイが危うくなれば、政府が税金を投入して救うだろうと踏んでいたからだ。実際、2008年にファニーメイとフレディーマックは政府の管理下に納まったから、この政府支援を見て多くの人が「やっぱりね」と思ったはずである。この二つの公庫はクリントン政権末期(1997年頃)からブッシュ政権の2000年代にかけて、アメリカ国内の住宅ローン債券の半分と、新築住宅ローン債券の大半を保有するまでになっていた。政治家の中でもこうした肥大化を懸念する人物はいたが、クリントン政権は批判に向き合わず、わざと問題を避けていたという。

  おかしい事」を「おかしい」と思わない時には、十中八九、何らかの裏がある。というのも、ファニーメイは民衆党の財布(piggy bank)になっていたからだ。子供が持っている「豚の貯金箱」と同じで、虎の子になっていたのである。とりわけ問題となったのは、クリントン政権で行政管理予算局の長官を務めていたフランクリン・デラノ・レインズ(Franklin Delano Raines)が、退官後にファニーメイのCEO(最高経営責任者)になったことだ。しかも、ちょっと椅子に坐っただけで直ぐ退職し、9億ドルの退職金を手にしたというから、濡れ手で粟の誹りを免れない。さらにとんでもないのは、このレインズがオバマの仲間で、選挙中のアドヴァイザーになっていたことだ。対立候補のジョン・マッケインも批判していたから、覚えている方も多いだろう。彼はオバマと同じくハーバード・ロースクール出身者で、なんとローズ奨学金(Rhoads Scholarship)をもらって、英国のオックスフォード大学に留学した経歴をもつ。つまり、クリントン大統領と同じローズ奨学生であったというわけだ。ちょっと話が逸れるけど、クリントン政権で労働長官をつとめたロバート・ライシュ(Robert Reich)や有名なロシア専門家のストローブ・タルボット(Strobe Talbot)は、クリントンと同期のローズ奨学生であった。それにしても時代の変化とは恐ろしいものだ。この奨学金制度を創設したセシル・ローズは、アングロ・サクソン人の若者を育成するため財産を使ったのに、今では黒人のレインズやユダヤ人のライシュが奨学金を得ているんだから、墓の中に眠っているローズは激怒しているんじゃないか? 大英帝国の繁栄を心から願っていたのに、今では栄光に輝くイングランドは没落し、ユダヤ人が貴族になって、有色人種までもが「アングロ・サクソン種族」と対等になっているんだから。ちなみに、『アトランティク(The Atlantic)』誌の編集長で、日本問題に詳しいジェイムズ・ファローズもローズ奨学金をもらっていたエリート学生であった。彼のような西歐人なら帝国主義者のローズ氏も満足だろう。

元兇となった人種差別是正措置

  サブプライム問題の本質というのは、支払い能力の無いマイノリティー(主に黒人やヒスパニックなどの有色人)にお金を貸すように、政府が銀行に圧力を掛けたことに原因があった。通常なら、貸し手側の民間銀行は、お金を貸し出す相手をよ~く調べて、大丈夫だと踏んでから大切なお金を貸すもんだ。ところが、有色人種の政治団体や左翼政治家たちが「人種差別はいけません」とか、「外見や民族性」を以て貸さないことは、「正義に反する。不公平だ。是正しろ !」とガミガミ言い出したので、合衆国政府は銀行に貸付基準を緩くするよう圧力を掛けたのである。こうした不条理な圧力があったので、怪しい人人物や黒人あるいはヒスパニック系のお客に貸したくないと思っていた銀行でも、「人種差別が火種になって訴えられたらどうしよう」と怯えだした。裁判で負ければ莫大な賠償金を払う破目になるから、それよりも、お上に従って有色人種と低所得者にお金を貸した方が“まし”だと考えるようになったのだ。無理が通れば道理が廃る。「人種差別を告発するぞ」という脅しが、貸付基準の緩和につながり、それを好機と捉えた裕福な投資家が、我も我もと不動産投機に走った。こうして、住宅ローン債券に投資すれば儲かる、という「美味い話」が出来上がったのである。

  思えば、低所得の有色人種にお金を貸す、という潮流ができたのはカーター政権の時だった。1977年、信用貸付と住宅市場での差別を無くす目的で、「地域再投資法(the Community Reinvestment Act/CRA)が制定されたのである。この法律は1968年の公正住宅法(the Fair Housing Act)と1974年の平等信用機会法(the Equal Credit Opportunity Act)などが基礎となって作成され、人種、性別、個人的特質によって差別してはならないという。これにより、「黒人だと返金されない場合があるし、リスクが高いからお金を貸すのは嫌だ」とか「ヒスパニックの工場労働者だから返済が滞るんじゃないか」と考える事は許されなくなったのだ。しかも、政府はCRAでもって貸付基準を下げろと圧力を掛けたものだから、銀行は今までなら拒絶していた者にまでお金を貸すようになったという。(John Carney, Here's How the Communioty Reinvestment ActLed toThe Housing Bubble Lax Lemding, Business Insider, June 27, 2009) 黒人を始めとする「マイノリティー」に優しいのがビル・クリントン大統領だ。彼は低所得の有色人種でも簡単にお金を借りられるようにしてあげたのだろう。周知の「サブプライム貸付(subprime lending)」とは、「優良な(prime)」お客さんではない、ちょっと断りたくなるような人物にお金を貸す時に用いる言葉である。これは、なにも住宅購入資金だけに限らない。自動車を購入する時にも「プライム」と「サブプライム」の月賦があるのだ。例えば、16,000ドル(約176万円)くらいのフォード車を買う時に、60ヶ月で返済する月賦にしたとする。中流階級の白人でちゃんとした定職を持っているお客なら、5パーセントの利率でひと月の返済額が302ドルとなり、利払いの合計は約2,100ドルとなる。しかし、黒人のお客だと販売店は心配になるから、利子を10パーセントないし15パーセントに設定したりする。すると、ひと月の返済額は381ドルとなり、利子の合計は約6,800ドルに増えてしまうのだ。つまり、5年間返済を続けていると、4,700ドルの差が生まれてくるから、人種や職業、経歴で不公平が存在するとになる。

  黒人やヒスパニック系の国民から支持される民衆党としては、彼らが念願の自宅を持てるようにしてやることは当然の措置である。クリントン政権で連邦住宅都市開発省(HUD)の長官を務めていたヘンリー・シスネロス(Henry Cisneros)は、従来の基準では住宅ローンを組めなかった人々に、融資が可能になるよう銀行貸付の敷居を低くしてやったという。昔テキサス州でサン・アントニオ市長を務めていたシスネロス氏は、長官を辞めた後、アメリカン・シティー・ヴィスタ(American City Vista)社を創設し、住宅建設に携わっていた。また、彼はKBホーム社の役員にもなっていて、シティー・ヴィスタ社はKBホーム社と提携していたそうだ。KBホームの取締役となったシスネロスは、同社で役員となっていたジェイムズ・ジョンソン(James A. Johnson)と組んで、低所得者層の住宅建設を進めていたという。(David Streitfeld and Gretchen Morgenson, Building Flawed American Dreams, THe New York Times, October 18, 2008) このジョンソンは有力な民衆党支持者で、以前はファニーメイでCEOを務めていた人物である。ファニーメイはKBホーム社とシティー・ヴィスタが建設した低所得者向け住宅を購入した人々のローン債権をたくさん買い上げていた。シネロス氏はカントリーワイド(Countrywide)社の取締役も務めており、同社はサブプライム・ローンを増やしていたそうだ。何か臭うと感じていた人は正解。このカントリーワイド社は、ファニーメイのお得意様だったというから呆れてしまう。もう、癒着の関係じゃないか。ちなみに、このシスネロスはヒスパニック系の政治家で、中南米移民にとても親切で思いやりがある。彼は「全米ヒスパニック指導者協議会(National Hispanic Leadership Agenda)」や「新アメリカ同盟(New American Alliance)」の創設に携わり、ヒスパニック・コミュニティーが抱える経済・社会問題に取り組んで人気取りに励んでいた。2001年、彼はメアリー・アリス夫人と共同で「アメリカン・サンライズ(American Sunrise)」という非営利団体を創設し、ヒスパニック系アメリカ人が自宅を持てるよう手助けをしたり、彼らの子供がより良い環境で生活できるよう、政治活動をしていたそうだ。黒人や南米人はいいよなぁ~。同胞の利益を堂々と推進できるんだから。もしも、白人が同じ事をしたら、一発でレイシストだ白人至上主義者だと糾弾されてしまうだろう。

  低所得者への融資を促進したのは民衆党ばかりではなかった。共和党もサブプライム・ローンの拡大に賛成で、有権者獲得のため積極的に貸付条件の緩和を求めていたのである。テキサス州知事を経て大統領になったジョージ・W・ブッシュは、ヒスパニック票が欲しくて堪らなかった。2002年の演説では、アングロ人の4分3が自宅を持っているのに、黒人やヒスパニックの半数が家を持っていないから、2010年までに550万人の自宅所有者をつくりましょう、と呼びかけていたのだ。まさか2008年にリーマンショックが起こるとは思っていなかったのだろうが、数百万人もの自宅保有者が生まれると約束していたのである。もし、一人当たり2千万円の住宅を購入するとしたら、約110兆円もの融資になってしまうが、そんな巨額な資金を銀行が貸して焦げ付いたらどうするのか? ブッシュの選挙参謀だったカール・ローヴ(Karl Rove)は、福音派キリスト教徒や保守派の票田を掘り起こして有名になったが、民衆党に流れてしまうヒスパニック票も狙っていたのだ。そう言えば、ブッシュはスペイン語でヒスパニック有権者に語りかけていた。ブッシュ陣営は、低所得者が住宅を購入したくても、頭金でつまずいてしまうなら、その障碍となる「前金制度」を取り外しましょうと提案したのである。サンタクロースを真似たブッシュの大盤振る舞いはケシカランが、その演説を聴いて拍手を送った民衆も同罪だ。しかし、中南米からやって来た惨めなヒスパニックたちが、ようやくアメリカン・ドリームが手に入ると喜んだのも理解できる。豊かな国に潜り込めたんだから、豊かな生活が実現すると思えたのであろう。ただ、このドリームが「悪夢(nightmare)」になろうとは ! 世の中はそんなに甘くなかった。

  そもそも、安月給の低所得者でも頭金無しでローンを組めるなんて、以前ではとうてい考えられなかった。でも政治に不可能はない。当初は貧乏人救済のつもりだったのかも知れないが、裕福なアメリカ人まで飛びついてきたのは予想外だったのかも知れない。ただ、月々の返済だって難しい人まで借りることができたんだから、お金を貯め込んだ富裕者が飛びついても無理はない。それに、貸した銀行だって、借金の証文を債券にしてバランス・シートから外せたんだから、どんどん貸してしまえと思ったのも当然である。しかし、こうした危険な債券を引き受けたファニーメイやフレディーマックは、格付会社と共謀してよそ者に債券を販売していたんだから、悪徳業者と言われても仕方がない。こうした金融商品は「抱き合わせ商品」と似ているが、実態はそれより酷かった。抱き合わせ商品は、良い品物を目玉にして不人気商品を「オマケ」にし、厄介な在庫を処分するけど、買い手は予め分かっているから、しょうがないと諦めがつく。しかし、サブプライム・ローンは別だ。住宅ローン債券は優良債権ですら不良債権になったし、C級ランク(tranche)の不良債権を相当混ぜていたんだから悪質である。

  無理な理屈で「持ち家所帯を増やす」という政府の方針も悪いが、それを後押ししていた連邦準備制度理事会も同罪である。FRBはお金を刷りまくって通貨供給量をことさら増やしたし、金利も低く押さえつけていたのだ。こうした事態をアメリカのお金持ちや投機家が見逃すはずがない。住宅ローンの貸付基準が緩和されたことによって、投機家たちもお金を借りやすくなってしまったのである。一軒だけしか望まない低所得者が借りやすくなったんだから、二軒三軒と多くの家を購入して、それを転売して儲けようとする裕福な白人が出てきてもおかしくはない。案の定、「サブプライム」の借り主より、「プライム」の借り主が激増したという。ローンが借りやすくなったことで、住宅需要が急増し、それによって住宅価格が上昇し、結果として住宅バブルが起こった。これは「バブル景気」を経験した日本人には良く分かる。サブプライム問題が露見し始めた2006年から2007年になると、低所得者のサブプライムより、投資家たちのプライム・ローンが返済不可能となって、焦げ付き問題となった。上昇し続けると思われていた住宅価格も下がり始め、バブルの勢いが鈍化し始めると、サブプライムよりもプライム物件の方が多く差し押さえられるようになったからである。つまり、一攫千金を狙ってバブルに浮かれた連中は、住宅を投機目的で購入し、住宅価格が上昇する方に賭ける、という博奕を行っていたのだ。アメリカでは中古住宅を購入し、リフォームを施すことで附加価値を高めて、転売するという事が珍しくない。でも、高額な住宅を用いてギャンブルを行うのは異常である。アメリカ人ってのは失敗した時のことを考えなんいだから頭がおかしい。(ちなみに、日本ではなぜか「改築」を「リノヴェーションrenovation」ではなく「リフォーム」と呼ぶから変だ。もしかしたら、どこかの工務店が間違えて呼んだのかも知れない。)

  こうした投機が加速したのも、連邦準備制度の金利操作ばかりではなく、税制優遇措置にも原因があったことを付け加えねばなるまい。おかしなものだが、借家住まいや借金無しで自宅を購入した人には、税制優遇措置が無かったという。連邦政府は住宅を借りて住むより、借金をして家を買う人を応援していたのである。例えば、ワシントンに住む自宅購入者は、5千ドルの税控除を受けることができた。しかも、投資の対象として住宅を購入すれば、さらなる控除を受けることができたのだ。これなら住宅転売で儲けようとする者は、複数の家を購入しようと考えるじゃないか。それに、奇妙な税制があった。例えば、株に50万ドルを投資して、100万ドルで売却したら、キャピタルゲイン課税が生じるが、この資金で50万ドルの住宅を購入して、100万ドルで売却した場合、キャピタルゲイン課税が無いんだから、株を買うより家を買った方が断然得である。とにかく、色々な要因がからまって住宅バブルが膨らみ、住宅需要の低下でバブルが弾け、大勢の人が損をした。住宅公社への処罰について触れると、また長くなるので省略するが、とんでもない事をやらかした公社や大企業の重役を税金で救済したのは間違っている。常識外れの金融ビジネスに手を染めた連中は、一文無しになるか牢屋へ入れられるかのどちらかにすべきだ。政府が助けないと、国家の経済が麻痺して大混乱が起こるなんて脅しをかけてくる奴らは怪しいぞ。ヤバイ事をした者は、それ相応の損害を蒙ることが大切で、「お咎め無し」で「税金による救済」というのが一番悪い。

外人労働者の輸入は危険である

  前置きが長くなって本文みたいになってしまったが、日本人は外国での失敗を見ているのに、それを教訓として学ばないから痛い目に遭うのだ。今では、サブプライム問題など誰でも理解しているし、上記で述べたことなど目新しくないだろう。それなら、経済原則を無視したお金の貸付がなぜ起こったのか、もう一度確認すべきである。厳しい貸付基準が緩くなったのは、非白人の低所得者に住宅を持たせよう、とする「政治の圧力」が原因となっていたのだ。お金の貸し借りなのに、「人種差別」とか「票田の開発」などといった政治的要因を持ち込んで、無茶な借金を増やしたんだから、経済問題は政治問題に端を発していたことになる。しかも、圧力を掛けた政治家や団体は責任を取らなかったし、紙屑のような住宅ローン債券を販売した連中も無責任であった。政府は巨額の税金で尻ぬぐいをしたのに、投機をした小金持ちの借り主たちは、低金利と返済額の軽減が与えられ、ちっとも反省をしなかったという。無謀な投資を行った者は、自己破産に追い込まれるか、私産を剝ぎ取られるかの処罰を受けねば不公平だ。異常な投機を押さえるには、失敗すれば恐ろしい顛末があると、人々に認識させることである。外国人労働者輸入の件も同じで、事によれば恐ろしい結果になるかもしれぬ、と民衆に教えなければならない。

  歐米諸国が移民導入で大失敗を犯しているというのに、我が国ではこれからその失敗を真似ようとしている。政府や財界は、老人福祉に携わる日本人が少ないから、フィリピンやタイなどから介護師を招こうとか、建設業界が人手不足に悩んでいるから、アジア人の土方を輸入して労働者不足を解消しようと目論んでいる。これだけでは後ろめたいので、外国からIT技術者も呼び込んで日本経済を活気づけようと訴えているのだ。しかし、このような外国人が本当にやって来たらどんな結果を招くのかについての議論は無い。アジア人労働者を引き入れる時には薔薇色の未来を語るが、その世界が暗黒のヘドロ状態になった時、日本国民に謝罪し責任を持って外人を送還させる政治家は絶対いないだろう。移民の導入による弊害は色々あって語り尽くせないが、その中でも我々にとって関心が高い医療福祉分野についてちょっと述べたい。

  移民賛成派の政治家は、フィリピンやタイ、インドネシアからの看護婦や介護師を受け容れて、医療福祉現場の人手不足を解消しようと訴えている。しかし、この外人輸入は日本人の看護婦や介護師の給料を下げてしまうだろう。マズいのは、そればかりではない。こうした職業の社会的ステイタスまでをも低下させる危険性がある。その一方で、廉価なアジア人を用いれば、養老院や病院などの介護施設を経営する者は、従業員の賃金を安く抑えることが出来るし、長時間労働も強制できて、反抗的職員も少なくなるから歓迎だ。しかし、日本国民にとってはマイナスの方が多い。ただでさえ、看護婦や介護師の労働条件はきついのに、アジア人との競争に曝されるから、日本人の離職率が更に高くなるだろう。そうなれば、益々アジア人労働者を輸入せねばならなくなり、日本の医療福祉現場にはアジア人が溢れる状態になる。しかも、日本人の若者はこうした職業を二級国民の職場と考えるようになり、医療や福祉の職業に就かなくなるだろう。今までは、全国どこでも日本人による日本人の為の医療と福祉であったものが、日本人看護婦がいる病院は高額所得者向けの特別高級クリニックとなり、アジア人看護婦が働く病院は、低所得者向けの下級診療所となってしまうのだ。もちろん、移民賛成派の政治家や財界人、高級官僚、新聞社・テレビ局の重役などは、日本人の医師やベテランの看護婦が勤務する病院で高度医療を受けるから安心だ。一方、移民反対派の平民は所得が低いし、地方の一般住宅地に住むから、アジア人看護婦が主流となる庶民病院に通うことになる。悪いことは重なるものだから、こうした病院に勤める医者は、多くの患者を一人で抱えて疲労困憊となるだろう。そうすれば、いくら有能な医者だってミスを犯すようになるし、良心的な医者だって、貧乏人相手の治療が嫌になってくる。移民反対論に無関心だった一般人は、きっと「なんでこうなったんだ?」と戸惑うだろう。しかし、彼らは問題の経緯を知らされても、どうすることもできない。悔し涙を流すだけだろう。それでも、彼らは「右翼」に反対していた自分が、しっぺ返しを食ったことに気づかないのだ。

  歐米先進国にとり、移民労働者は麻薬のようなものである。当初、経済的理由で多少の外人を輸入したまでは良かったが、一旦彼らを招き入れてしまうと、低賃金労働者市場が固定化し、旨味を覚えた経営者がもっと安上がりの外人を欲しくなるからだ。例えば、移民を大量に輸入した英国は、もうシャブ漬けのジャンキーのようになっている。英国では医療現場で働くスタッフの14%が外国出身者で、医者でさえ26%が外国生まれか外国で訓練された者になっているという。(Haroon Siddique, Figures show extent of NHS reliance on foreign nationals, The Guardian, 26 January 2014) 英国は海外に殖民地を持っていたから、必然的に旧植民地の人間が多く移民してくる。英国に滞在すればわかると思うが、インド人の医者が珍しくなく、インド人の医療コンサルタントまで多いから驚く。医療現場で働く約105万2000人中、約1万8400名がインド人であるそうだ。英語を喋るインド人についで多いのが、フィリピン人の看護婦や産婆、介護師で、約30万9000人中、約8千名がフィリピン出身者で占められているという。イギリス人に次いでアイリス人の看護婦が多いと言うのは分かるが、東南アジア人の他にポーランド人やナイジェリア人、ジンバブエ人、パキスタン人などかいるんだから気が滅入る。しかし、こうした外人でさえ、ブリテン国籍を取得すれば、英国人と勘定されるから、外国系の医師や看護婦は、統計に現れた数よりも多く存在するはずだ。

  外人輸入賛成論者は、いつも 健康で勤勉な低賃金労働者を想定しているが、彼らが持病や身体的欠陥を抱えているとは考えない。彼らも人間だから、日本に来てから病気に罹ったり怪我を負うこともあるだろう。また、移民導入で議論されないのは、移民労働者に伴う家族や呼び寄せ親族のことである。例えば、フィリピン人看護婦を日本に受け容れた場合、独身でも困るのだが、既婚者だと彼女の亭主や子供を日本に呼び寄せる可能性があるのだ。インドネシアやフィリピンからの看護婦や介護師は、苦労して日本語を覚えたから、滅多なことでは日本を離れようとしないだろうし、大抵の場合、一生日本で暮らす魂胆を持っている。そうなれば、一人のアジア人労働者を雇ったら、三人ないし五人の家族が来日するかも知れないし、事によれば高齢の両親を呼び寄せたうえに、日本に憧れる兄弟姉妹も呼び寄せる危険性だってあるのだ。したがって、我々は1人のアジア人を雇うと、10人のオマケが附いてくる事態を予想すべきである。ところが、雇い主の企業は賃金を低く抑えたいからアジア人を使うので、外国人労働者の家族や親族まで面倒を見る気は毛頭無い。そんなことをすれば却って割高となってしまい、何のために日本人労働者を避けたのか分からなくなるからだ。

  移民を迎える場合、一般国民は常識に戻るべきだ。企業経営者はアジア人労働者の家族が健康を損ねたらお金を出すのか? もし、彼らが重傷を負って寝たきりになったり、重病に罹って高額な透析治療を受ける破目になったら、その治療費は誰が負担するのか? 答えは明白だ。税金である。低賃金外国人が払う健康保険料など微々たるものだし、彼らは何十年と保険料を払ってきたわけではない。現在の医療制度を築いてきたのは日本人だし、素晴らしい医療設備を維持してきたのも、医療従事者を育成してきたのも日本人である。現在我々が享受している医療は、いかにも日本らしい「きめ細かな配慮」に満ちたサービスで、日本人が親子代々作り上げてきた貴重な国民的財産である。日本人がお互いを考え、同胞だから高額な掛け金を我慢して払ってきたのだ。それなのに、二・三ヶ月前にやって来た支那人でも、日本の素晴らしい医療を受けることができるなんて許せない。移民賛成派に聞きたいのは、支那やフィリピン、タイに住む日本人は、現地で同じような高度医療を受け、親切ていねいな医療スタッフに介護されるのか? 日本の病院と同じくらいの清潔な治療施設があって、日本人看護婦のように優秀で親切な看護婦がいるのか? また、使命感に燃えて献身的な医者に診てもらえるのか? このような疑問を持てば、いくらアホな日本人でも、アジア諸国で日本と同じ水準の福祉を受けることができるとは思わないだろう。

  アジアから看護婦や介護師を輸入すれば、インド人やパキスタン人の医者だって「必要な人材」として受け容れることになるだろう。アジア系移民が増えれば、言葉が通じる同胞の医者を欲しくなるし、移民を受け付ける病院が外人医師を雇うかも知れないのだ。医療現場では言葉の壁が重大な問題となる。日本人の患者だって、看護婦がフィリピン人やタイ人では心配になってくるだろう。とくに、地方だと方言の問題がある。東北弁や九州弁を喋るオッちゃんや婆さんが、ぎこちない日本語を喋るアジア人看護婦に、「あそこが痛い」とか「何か気分が悪い」とかを不器用に説明したら、両者ともフラストレーションが溜まってしまうだろうし、短気な患者は「もういいから、日本人を呼んできてちょうだい」と痺(しび)れを切らして怒鳴るだろう。こき使われるアジア人の看護婦や介護師だって、日本人の患者に意地悪をするかも知れないし、日本人看護婦は自尊心が高いから未熟なアジア人を格下に見てしまうし、同僚と対立したアジア人職員は、仲間と団結しながら働くようになるかも知れない。そればかりか、移民の患者を診察するために、病院側は医療通訳を雇わねばならなくなる。聖路加病院や国立国際医療研究センターのような大手の医療機関なら、そうした余裕もあるだろうが、財政的に苦しい地方の病院では負担が大きすぎる。実際、幾つかの病院はアラビア語やタガログ語、タイ語、モンゴル語の医療通訳を求めているのだ。支那人が増えれば、北京語や上海語、福建語を喋る看護婦や介護師が必要になるだろう。こうした通訳は警察署や裁判所、刑務所でも必要になってくるから、日本国民はこうした費用を税金で負担する破目になるのだ。

  人種混淆社会となってしまった英国では、大勢の外人の医者が実際に雇用され、一般の病院で診療に当たっている。現在ではどれくらいの比率になっているか分からぬが、ちょっと前の調査によれば、医者の3人に1人が外国出身者であったという。147ヶ国からやって来た7万3千542名の医者が存在し、全医師の37パーセントを占めていたのだ。(One in three doctors in Britain are now trained in a foreign country, Daily Mail, 3 February 2011) 最近では東歐諸国からの移民が増えたので、スラヴ系の専門家も各分野に浸透しているから、当然ハンガリーやルーマニア、ロシア出身の医者が居ても不思議ではない。以前、あるトンデモない医者が世間を騒がせたことがある。トマス・フリッツェルヴィッツというポーランド人の医者は、ぎこちない英語を喋りながら診療を行っていて問題となった。そのうえ何と、医者のくせに読み書きまで不得意だったという。こんな怪しい医者だったので、患者からの苦情も多く、医者としての技能評価も最低だったらしい。(Sarkis Zeronian, Foreign Doctors Suspended From Practice for Language Skills that Risk Patients'Health, Breitbart, 29 October 2015) しかし、こんな医者が問題発覚までの八年間、一般の病院で堂々と診察を行っていたのだ。しかも、彼は医療業界から追放されず、監視役つきで医療を続けているというから、もう呆れ果てて言葉が出ない。本人曰く、「英語の試験で低い点数を取ったが、テストの結果が正確に能力を測定しているとは思わない」そうである。あぁ~あ、こんな医者に診てもらった患者は気の毒だ。

  日本ではまだ、一般の病院がインド人や支那人の医者を雇うことはないが、英国の病院だとアジア人やアフリカ人の医者を雇うことが珍しくない。以前、ダニエル・ウバニ(Daniel Ubani)というナイジェリア人医師が問題となった。彼は外見上アフリカ人だが、出身国はドイツだという。もう目眩(めまい)がしてくる。いつからドイツ人は日本人より黒くなったんだ? 明治の頃は、お雇い外国人にエンゲルベルト・ケンペルというドイツ人医師がいたが、彼は白い肌のドイツ人であったし、有名なシーボルトも日本人より色白のドイツ人であった。ドイツは第三帝國の後遺症で、民族消滅の病に冒されているのだろう。このウバニ医師は相当な藪医者で、70歳の患者に注射をした際、薬の過剰投与を行ってしまい、重大な医療ミスを犯したそうだ。そのほかにも患者から苦情が出ていたというから、彼の腕前には怪しい点が多い。こうした一連の医療過誤により、彼は2010年に医療行為の禁止を宣言され、英国での治療を行うことが出来なくなった。それにしても、ドイツでいかなる勉強をしていたのか疑問が残る。まさか、黒人だから資格審査が甘かったという事はあるまい。しかし、医学を知らない素人の患者が、得体の知れぬ外人医師は信用できない、と考えても無理はなかろう。余談だが、歐米の白人の妊婦は、産婦人科医が黒人でも平気なのか? 庶民の女性なら諦めて診察を受けるが、高額所得者の奥方は多分、白人産婦人科医を訪れ、可能であれば女性の白人医師の診察を選択するはずだ。多民族社会になると、上流階級はお金で自分が好きな病院を選べるが、懐が寂しい庶民には選択の幅が狭くなる。場合によっては、選択肢が無いことさえあるのだ。

  移民社会における医療・福祉問題を述べると、とてつもなく長い議論になってしまうから省略するが、一つだけ確実な事がある。移民受容れに賛成した者は、その結果がどうであれ、絶対に責任を取らないということだ。移民輸入の議論ではメリットばかり主張するが、その陰に隠れた巨大なデメリットには触れようとはしないからズルい。昔、西尾幹二と石川好が労働市場の開放を討論したことがある。西尾氏は外国人労働者の輸入に反対したが、石川氏は自身の体験を踏まえて外国人労働者を入れるべし、と熱心な論陣を張っていた。彼は米国で農作業に従事した経験を踏まえて、閉鎖的な日本は門戸を開いて外人を雇うべし、と公言していたし、NHKは石川氏を巧妙に持ち上げていた。その結果はどうだったのか? 皆様が覚えているように、ピッキングが流行して自動車や自動販売機が盗まれたり、空き巣や強盗が増え、ATMが重機で強奪されるという事件が多発するようになった。偽造テレォンカードを街頭で売り捌くイラン人がいたり、と街の治安が悪くなった。しかし、外人労働者を歓迎していたマスコミは、事件が増えても他人事のように報道し、人々がマスコミの罪を追求せぬよう、外人犯罪者のみに焦点を絞っていたのだ。本当に小賢しい。とにかく賛成派は誰も謝らなかった。経済的利益ばかりを訴えていた財界人は、一般国民の社会負担に触れなかったし、彼らが儲かった裏で庶民が被害を受けたことに目を閉じていた。日本経済の活性化ではなく、治安状況の悪化を招いてしまったのだから、企業経営者やマスコミは被害者に賠償金を払うべきだ。もちろん、支払いの法的義務は無いけど、それなら再び外人を輸入することを慎むべきだろう。また、移民反対派を「右翼」とか「差別主義者」と呼んでいた国民も、外人による被害を受けたのに反省することはなかった。日本の一般人は何度でも痛い目に遭うから本当に愚かだ。





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