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眩しかった初代のボンド・ガール

Ian Fleming 2Sean Connery 2Pierce Brosnan 2Daniel Craig 1







(左: イアン・フレミング / ショーン・コネリー / ピアース・ブロスナン / 右: ダニエル・クレイグ)

  海外の報道によれば、『007 / スペクター』を以てダニエル・クレイグがジェイムズ・ボンドを演ずる最後の出演作になると噂されていたが、クレイグ氏は前言を翻し、次回の007映画に出演するようだ。彼がジェイムズ・ボンドを演じるシリーズは、ハード・ボイルドに戻った作品なので世間の評価が高い。やはり、殺しのライセンスを持つ007はタフガイじゃなきゃ。スパイ用の小道具に頼る諜報員じゃ、ジェイソン・ボーンにお株を奪われて、長年のファンから文句が出てしまう。近頃の映画はCGが多くなったぶん、何となく嘘くささが増したので、役者が実際に肉体を使った挌闘シーンの方がいい。

  イアン・フレミング原作の007シリーズには、様々な悪党が現れたけど、不思議なことにユダヤ人の大富豪とかユダヤ人グローバリスト、紛争を創り出すイスラエルのスパイなどが悪役になったことがないのだ。アフリカ人やアラブ人、ドイツ人、ロシア人などが敵になっているのに、一番手強いユダヤ人がボンドの敵役になったことがないんだから、世界を舞台にして活躍するスパイ物語にしては変だ。イングランド国内のテロ事件にだってユダヤ人が絡んでいるかも知れないのに、アジアやアフリカ、アメリカでユダヤ人の悪者が出てこないなんて現実離れしているじゃないか。でも、ユダヤ人に触れることができない映画界の裏の方が、面白いリアリティーに豊んでいるから皮肉なものである。そう言えば、9/11テロに触れたTVドラマや映画はたくさんあるのに、イスラエルやアメリカのユダヤ人が裏で糸を引いていたなんていう脚本が一切無いのは不可解である。もともとフィクションなんだからユダヤ人の黒幕を描いたっていいはずだが、そんなことをしたらリアル過ぎてフィクションにならないのだろう。やはり、本当に「ヤバイ」ことは映像にできないんだろうなぁ。


Ursula Andress 1Ursula Andress 2007 Halle BerryUrsula Andress 7








(左二枚: ウルスラ・アンドレス / ハル・ベリー / 右: ウルスラとショーン・コネリー )

  日本でも007シリーズのファンは数多く存在するが、やはり第一作目の「007 / ドクター・ノオ」は印象的だ。未だに、ジェイムズ・ボンド役はショーン・コネリーが一番と考えているファンが多い。特に年配のファンなら思い出が詰まっていて、劇場で観たコネリーが脳裡に焼き付いているのだろう。筆者が初めて観たのは子供の頃で、テレビで放送されたものであったが、初代ボンド・ガールを務めたウルスラ・アンドレス(Ursula Andress)が印象的だった。海の中から現れた水着の美女だったから、その衝撃は今でも鮮やかな記憶に残っている。ちなみに、彼女はドイツ系スイス人の女優だったから、英語にドイツ訛りが強かったそうで、モニカ・“ニッキー”・ヴァン・デア・ザイル(Monica Nikki van der Zyl)という声優が、「ハニー・ライダー」役のアンドレスに代わってセリフを喋っていたそうだ。彼女は他のボンド・ガールの声も手掛けていて、「サンダーボール作戦」ではドミノ役のクラウディン・アウガーの声を担当しており、「黄金銃を持つ男」のフランソワ・デリー、「ロシアより愛を込めて」のユニス・ゲイソン、「ムーンレイカー」のコリーヌ・クレリーの声もニッキーの声だったという。ピアース・ブロスナン主演の「ダイ・アナザー・ディ」では、黒人女優のハル・ベリーがアンドレスを彷彿させる水着のシーンを見せている。多民族主義に染まった結果と言えばそれまでだが、人種の構成が激変した歐米の姿を示しているので、「時代は随分と変わったなぁ」と実感させる映画である。

Nikki van der Zyl 2007 Claudine Auger 1007 Corinne Clery 2007 Eunice Gayson








(左: 声優のニッキー・ヴァン・デア・ザイル /クラウディン・アウガー/ コリーヌ・クレリー/ 右: ユニス・ゲイソン)

ボンド映画にもユダヤ人がいっぱい

  ショーン・コネリー主演の007で最も重要なのは、第1作目の「ドクター・ノオ」であろう。この役を演じたのは、カナダ出身のユダヤ人男優ジョセフ・ワイズマン(Joseph Wiseman)である。この強引で冷酷な犯罪者は、物凄い怪力を発揮する黒い義手を持っていた。しかも、ドクター・ジュリアス・ノオはドイツ人のメソディスト宣教師が、支那人の女性に産ませた混血児という設定なのだ。望まれない子供として生まれたノオは、支那人の叔母に育てられ、成人すると上海に向かい、秘密結社的暴力団の「堂Ttong)」に属するようになった。一端のギャングになったノオはアメリカに渡って、現地の「協勝堂(Hip Sing Tong)」という支那人マフィアのメンバーになったという。さらなる野心を抱いたノオは、ジャマイカ諸島にある「クラブ・キー(Crab Key)」という島を購入し、野鳥などの糞を肥料とするビジネスを始めるが、これは表の商売で、裏稼業は国際犯罪組織のボスである。ドクター・ノオはジャマイカ人やキューバ人の手下を使って、アメリカの兵器をソ連に売り渡すべく、米国製ミサイル発射の邪魔をして奪取しようと企む。ここでジェイムズ・ボンドの登場というのが007のストーリーである。

 No007 Quarrel 2







(左: 「ドクター・ノオ」を演じるジョセフ・ワイズマン  /  右: ボンドと一緒のジョン・キッツミラー)

  第一作目の「ドクター・ノウ」には、「人種的配慮」が少なかったから、今から観ると非難が湧き起こりそうな場面が多い。まず、気がつくのはCIA局員とボンドに協力していた黒人の「クォーレル(Quarrel)」である。ケイマン諸島出身という設定になっている、この黒い部下はジョン・キッツミラー(John Kitzmiller)という男優が演じていた。小説では現地特有の方言を話す黒人であったが、映画だとマズいのか、この設定は削除されている。その他の登場人物で興味深いのは、ドクター・ノオに仕えていた写真家でスパイのマルゲリト・ルウォーズ(Marguerite LeWars)であろう。女優のアナベル・チャンAnnabel Chung)が演じていたが、このジャマイカ人を演じる女優は色黒にして、東洋人の雰囲気を醸し出すため、テープを貼って目尻をやや釣り上げていた。ボンドがベッドを共にする女性の「ミス・タロ(Miss Taro)」も、東洋人という設定で、釣り上がった目をもつ支那人秘書であった。こちらはケニア生まれの英国人女優ゼナ・マーシャル(Zena Marshall)が演じている。彼女は役柄を演じるに当たり、監督のテレンス・ヤング(Terence Young)に、どんな感じの支那人秘書なのかを尋ねたという。すると、彼は「ミス・タロは支那人なんだけど、君は支那人を演じなくていいんだよ。ミス・タロは国籍にとらわれない大西洋のどこかに住む人間なんだから」と言われたそうだ。マーシャルは「何よ、それ?」と聞き返したが、ヤング監督は「男性が想像する女性だから、現実には存在しないんだ」と答えたらしい。つまり、西歐人が頭の中で漠然と思い描く支那人のイメージなんだろう。(ちなみに、ヤング監督は上海生まれのアイリス系ブリテン人である。)

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(左: アナベル・チャン /  中央: ゼナ ・マーシャル  /  右: テレンス・ヤング)

  映画制作の裏方にはユダヤ人が多い。「ドクター・ノオ」はアルバート・ブロッコリー(Albert R. “Cubby” Broccoli)というイタリア系アメリカ人とハリー・ザルツマン(Harry Saltzman)というカナダ出身のユダヤ人が、共同でプロデューサーを務めていた。でも、ブロッコリーの方が主導権をとっていたらしい。この二人を最初に引き合わせた人物は、ウォルフ・マンコウッツ(Wolf Mankowitz)という英国のユダヤ人である。毎度の事で申し訳ないが、このユダヤ人作家はマルキストでMI5(英国の防諜機関)の監視対象になっていた。(Cahal Milmo, Suspected of being a Soviet spy : the man who created Dr. No, The Independent, 26 August 2010) 彼の父親はロシアからのユダヤ人亡命者で、第二次世界大戦の頃、ウォルフはケンブリッジ大学で英文学を勉強していたが、在学中にマルクス主義に傾倒したという。しかも、彼が結婚した妻のアン(Ann)は、ケンブリッジ大学に在籍していたとき、れっきとした共産党員だった。だが、マンコヴッツはロンドンのピカデリーに陶磁器を扱う骨董店を営んだり、映画の脚本を手掛ける小説家となったので、徐々に共産主義運動から遠ざかっていったらしい。こうした訳で、MI5は次第に関心を失っていていたそうだ。

Albert Broccoli 1Harry SaltzmanWolf Mankowitz 1








(左: アルバート・ブロッコリー / 中央: ハリー・ザルツマン/ 右: ウォルフ・マンコヴッツ)

  007シリーズには彼の他にもユダヤ人が絡んでいて、脚本家のリチャード・メイバウム(Richard Maibaum)もそうだ。彼は「ドクター・ノオ」の他に、12作品の007映画を手掛けていた。もう一人重要な地位にいたのが、ケン・アダム(Ken Adam)というユダヤ人デザイナーである。彼はベルリンに生まれたが、1930年代にナチスが台頭したので、英国に逃れてきたという。彼は映画で使われる部屋などの装飾やデザインを担当したらしい。もう一人のユダヤ人は、クリス・ブラックウェル(Chris Blackwell)だ。彼はアイリス人の父親とユダヤ人の母親との間に生まれた混血児である。注目すべきは彼の母親ブランチ・リンド・ブラックウェル(Balnche Lindo Blackwell)で、彼女の家族はセファラディー系(スペイン・イベリア出身のユダヤ人)で、ジャマイカで権力を誇っていた21家族の内の一つであった。かつて、こうしたユダヤ人入植者たちは黒人奴隷を使ってサトウキビを栽培したり、ラム酒を製造して儲けていたという。件(くだん)のクリスはブリテン生まれだが、育ったのはジャマイカである。彼は007原作者のイアン・フレミング(Ian Fleming)に仕えていたから、映画のロケ地をジャマイカにする際、大いに役だったと思うが、フレミングとさらに親しかったのは母親の方だった。実は、彼の母ブランチはフレミングの愛人で、彼女はジャマイカに宏大な土地を所有していたのだ。肉体的に親密だったので、その一部をフレミングに売却してあげたという。彼女の祖先であるアレグザンダーは、奴隷を扱(こ)き使って相当儲けたらしいから、その所有地をブランチは相続していたのである。ちなみに、クリスは「アイランド・レコード」社を創業し、人気レゲー・ミュージシャンのボブ・マレー(Bob Marley)を世に出したことで知られている。

Richard Maibaum 1Ken Adam 2Ken Adam 1







(左: リチャード・メイバウム /中央: 007撮影当時のケン・アダム /: 右晩年のケン・アダム )

  ショーン・コネリーが007シリーズを去って、三代目ボンドになったロジャー・ムアーは、感じのいいイギリス紳士である。彼が出演した「死ぬのは奴らだ(Live and Let Die)」でも、カリブ海諸島がロケ地に使われ、黒人のキャラクターが登場していた。本作品ではサン・モニクの独裁者たるドクター・カナンガことミスター・ビッグ(Mr. Big)が登場する。黒人男優のヤフェット・コトー(Yaphet Kotto)が演じるミスター・ビッグは、原作ではハイチ生まれのフランス人と黒人との混血児という設定になっていた。しかし映画を見る限り、アフリカ系黒人となっている。この独裁者は、ニューヨークのハーレムやルイジナナのニューオリンズで麻薬を撒き散らす犯罪者で、全米に麻薬中毒患者を増やそうと謀る極悪人、という設定だったからすごい。こんなキャラクター設定ではリアル過ぎるから、もし現在こんな映画を作ったら、全米各地から黒人団体による非難や抗議が押し寄せてしまうだろう。

Chris Blackwell 4Blanche Lindo & Fleming 1Ian Fleming 1








(左: クリス・ブラックウェル / 中央: ブランチ・ラルド・ブラックウェルとイアン・フレミング/ 右: イアン・フレミング)

  麻薬王の黒人というだけでも危ないのに、このミスター・ビッグはブードゥー教の信者で、兇暴な性格を有しているのだ。もう、カリブ海の島々に棲息する原始的未開部族そのままの姿である。イアン・フレミングは多文化・多民族主義教育を受けた英国人でなかったから、有色人種への正直な感情を持っていたし、それをあえて隠そうとはしなかった。彼は支那人(チャイニーズ)と黒人(ニグロ)の混血児を「チグロス(Chigrose)」と呼んでいたくらいだ。彼は有色人種の知能を疑っていて、支那人や黒人に悪い奴はいるが、壮大な陰謀を企てる程の知性は無いと思っていたそうだ。フレミングの人種差別心は出版社をも困らせたようで、『死ぬのは奴らだ』を執筆した際、第五章のタイトルに「ニッガー・ヘヴン(Nigger Heaven)」、すなわち「黒ん坊の天国」と書いてしまったのだ。英国版の本には、フレミングが記した通りに印刷されていたが、翌年に出版された米国版では「第七番通り(Seventh Avenue)」に変更されてしまった。まぁ、人種問題に揺れるアメリカでの出版だと、内容に検閲がかかるということだ。アメリカでは「言論の自由」が宣伝されるが、その実現はなかなか難しいようである。

悪役のモデルとなったユダヤ人

  人種偏見に満ちていたウィンストン・チャーチルと同じく、イアン・フレミングも異人種に対して特別な感情を持っていたようだ。彼の作品に『ゴールド・フィンガー』がある。原作では、アウリック・ゴールドフィンガー(Auric Goldfinger)を裕福で狡猾な紳士と設定しているが、このキャラクターには実際のモデルがいたそうだ。ちなみに、「アウリック」は「金」を表す元素記号の「Au」から取ったものであるらしい。フレミングが描いた「ゴールドフィンガー」の元になったのは、ハンガリーから移住してきたユダヤ人建築家のアーノ・ゴールドフィンガー(Ernö Goldfinger)であった。イングランドの伝統を愛するフレミングにとったら、醜悪な現代建築を次々と手掛けるゴールドフィンガーには虫酸が走ったらしい。古き良き「ヴィクトリア朝イングランド」にそぐわない、コンクリート住宅を近所に建てたので、景観を台無しにされたフレミングは相当不愉快に思ったそうだ。さらにフレミングの怒りは燃え盛った。彼が小説を出版しようとした時、名前を使われたゴールドフィンガーは裁判に訴えるぞ、とフレミングを脅したそうだ。そこで仕方なくタイトルを「ゴールドピック(Goldpick)」に変更したが、後に交渉してゴールドフィンガーを使えるようになった。フレミングが使った「ゴールドフィンガー」の名前は、この建築家から拝借したのだが、その姿や性格はアメリカの鉄鋼王であるチャールズ・エンゲルハート(Charles W. Engelhard)からヒントを得たという。

Erno Goldfinger 1Erno Gildfinger House







(左: アーノ・ゴルドフィンガー / 右: ゴールドフィンガーの建築物)

  このエンゲルハートは、ニュージャージー州に住むカトリック信徒だったが、アーノと同じくユダヤ人であった。それにしても、ユダヤ人って彼方此方(あちこち)にいるものだ。英国に移住してきたユダヤ人には左翼が多く、見た目はヨーロッパ人みたいでも、中身は異邦人のままで、移住先のイングランドに恨みを抱いている者もいたというから驚きである。元労働党代表エド・ミリバンドの父親ラルフはマルキストのユダヤ人で、亡命先の英国をブルジョア国家として激しく憎んでいたそうだ。(それなら、さっさと英国を離れてイスラエルに移住すればいいのに、嫌いなホスト国に住み続け、現地人を憎んでいたんだから、ユダヤ人なんかを受け容れたイギリス人は愚かである。) アーノ・ゴールドフィンガーも左翼のユダヤ人だったようで、彼は英国共産党の本部をデザインしてやったという。日本人は愚かな英国人をよ~く見ておくべきだ。可哀想だから受け容れてやったのに、居候となったユダヤ人は英国をメチャクチャにしたんだから、親切にしたイギリス人は後悔しているはずだ。でも、それすら口に出せないのだから、こんにちの英国は惨めでならない。

 Engelhard 1Tom Mankiewicz 2Ralph_Miliband 1Ed Miliband 1








(左: チャールズ・エンゲルハート / トム・マンコヴィッツ / ラルフ・ミリバンド / 右: エド・ミリバンド)

Yaphet Kotto 1Edward VII(左: 「ミスター・ビッグ」役のヤフェット・コトー / 右: イングランド国王エドワード7世)
  ユダヤ人は監督だったり、脚本家、映画会社の重役とか所有者だったりするので、いくら原作者が自由な発想を持っていても、ユダヤ人の悪役は描きづらい。「死ぬのは奴らだ」の脚本を手掛けたのは、ユダヤ人のトム・マンキーウィッツ(Tom Mankiewicz)だから、黒人の悪役をつくるだけで精一杯だ。ユダヤ人は心の底で黒人を嫌っているから、アメリカ黒人や浅黒いアラブ系アフリカ人の悪党なら許してくれるのだ。でも、皮肉なことに、黒いミスター・ビッグを演じたヤフェット・コトーは、ユダヤ教徒の父を持つアメリカ黒人であった。彼の父はカメルーンのイボ族出身で、ヤフエットが言うには英国王室の血筋を引いているそうだ。というのも、エドワード7世がカメルーンを訪れた時、現地のプリンセス・ナカンデ(Nakande)と情事があって、その御落胤(ごらくいん)がコトーの祖先になっていたという。しかし、英国王室はこれを真っ向から否定し、そのような事実は存在しないと主張している。たぶん、カメルーンの一部で囁かれた噂話なんだろうが、コトーはその話を真に受けてしまったのだろう。いくら何でも、エドワード7世が黒人女と寝るなんてあり得ない。王室に憧れる白人女性が大勢いたのに、よりにもよって黒人女性を選ぶなんて想像できないだろう。米国の強姦魔だって黒人女は選ばないんだぞ。(これを示すFBIの統計は、ネット上から消されてしまった。やはり、都合の悪い公式データは闇に葬られるということだ。このデータをうっかり出したFBI職員は、こっぴどく叱られたんだろうな。)

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(左: ショーン・ビーン / トビー・スティーヴンス /  李詳旭 / 右: グスタフ・グレイヴストムーン大佐 )

  007シリーズに出てくる悪党は、ソ連のスパイというのを除けば、国際的犯罪組織のボスとか金融や武器を扱う根無し草的コスモポリタン、国籍不明のグローバリスト、精神的に病んだテロリストなど様々だ。例えば、「ゴールデン・アイ」に登場するアレック・トレヴェリアン(ショーン・ビーン/Sean Bean)は、英国の諜報員という仮の姿を持っていたが、正体はコサックの末裔という設定であった。また、「ダイ・アナザー・ディ」の悪役であるグスタフ・グレイヴス(Gustav Graves)は、最初イギリス人として現れるが、ドラマのクライマックスで遺伝子操作を施された北鮮人、ムーン大佐(Col. Moon)であることが判明する。イギリス人のグレイヴスをトビー・スティーヴンス(Toby Stephens)が演じ、ムーン大佐になったグレイヴスを朝鮮系俳優のウィル・ユン・リー(Will Yun Lee / 李詳旭)が演じていた。(ちなみに、この作品にはロジャー・ムアーの娘デボラ(Deborah Moore)がスチュワーデスとして出演していたが、気づいた人は少なかった。) 映画では、イギリス人を装っていたグレイヴスが実は朝鮮人だったと判明したけど、もし、これがユダヤ人という設定なら、もっとリアリティーが増していただろう。ジェイムズ・ボンドに対峙する悪党には、世界を股に掛ける石油王やメディア王もいたから、彼らがユダヤ人であってもおかしくはないし、国際テロリストが実はイスラエルの諜報機関(モサド)に属する工作員という設定なら、もっと現実味が出てくるだろう。おそらく、こうしたキャラクター設定を考える脚本家もいるだろうが、ユダヤ人が牛耳る映画界では実現不可能だ。

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(左: 娘のデボラ・ムアー/中央: 父親のロジャー・ムアー / 右: 映画の中のゴールドフィンガー)

ボンド・ガールは美しくなければ

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(左: ジェイン・シーモア / バーバラ・バック / タニア・ロバーツ / 右: エヴァ・グレーン)

  ユダヤ人の悪党を登場させることは無理でも、ユダヤ系女優をボンド・ガールにすることは可能であった。むしろ、積極的に実行していた節がある。例えば、「死ぬのは奴らだ」でボンド・ガールを務めたジェイン・セイモア(Jane Seymoure)は有名だ。また、「私を愛したスパイ(The Spy Who Loved Me)」ではリンゴ・スターと結婚したバーバラ・バック(Barabara Bach)がいたし、「美しき獲物たち(A View to Kill)」ではアイリス系ユダヤ人のタニア・ロバーツ(Tanya Roberts)がロジャー・ムアーと共演していた。ダニエル・クレイグのボンド・シリーズ「カジノ・ロワイヤル(Casino Royale)」だと、エヴァ・グレーン(Eva Green/英語だと「グリーン」)がボンドの恋人役になって好評だった。グレーンの母親はアルジェリアのセファルディー系ユダヤ人であるが、父親がスウェーデン系フランス人なのでフランス出身の女優になっている。こうしたユダヤ美人を見ていると、ヨーロッパ人の遺伝子が濃いことが分かる。おもしろいことに、中東アジア人に見えないところが共通点となっているから皮肉だ。まぁ、セム種族のユダヤ人観客にとったら、嬉しくもあり哀しくもありで、複雑な気持ちになってしまうだろう。

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(左: キャロル・ブーケ / ソフィー・マルソー / シーナ・イーストン / 右: デニス・リチャーズ )

  印象に残るボンド・ガールといえば、「ユア・アイズ・オンリー(For Your Eyes Only)」のキャロル・ブーケ(Carol Bouquet)だ。彼女は際立った美人女優で、化粧品のモデルにもなったから、日本でも覚えている人が多いだろう。(ちなみに、本作のテーマ曲はシーナ・イーストンが歌っていた。大ヒットTVドラマ「マイアミ・バイス」で、ソニー・クロケット<ドン・ジョンソン>の婚約者を演じていたイギリス人歌手。) 「ザ・ワールド・イズ・ノット・イナフ(The World Is Not Enough)」に登用されたソフィーマルソー(Sophie Marceau)は、むかし、恋愛映画の「ラ・ブーム」で人気となったフランス人女優だから、日本人にも馴染みがある。彼女は若い頃よく日本に来ていた。映画雑誌の『ロードショー』や『スクリーン』の読者なら覚えているだろう。ただ、同作品に出ていたデニス・リチャーズ(Denis Richards)は、最も評価の低いボンド・ガールとなってしまったので気の毒だ。ピアース・ブロスナンのボンドは結構好きなんだが、リチャーズの選択は明らかに間違いだった。

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  ボンド・ガールが切っ掛けで人気者になった女優といえば、キム・ベイシンガー(kim Basinger)を挙げることができる。まだ駆け出しの若いファッション・モデルが、ショーン・コネリーの相手役に抜擢されたんだから大出世である。「ネバー・セイ・ネバー・アゲイン」は久々に、コネリーがボンド役に挑んだ復帰作で、ティモシー・ダルトンの007シリーズと対抗する形となっていた。制作の裏方では色々と「大人の事情」が絡んだこともあって、厄介な問題に悩んでいたそうだ。ただ、この作品には刮目すべきシーンがあった。スペクターの首領ラルゴを裏切って、ボンドに惚れるドミノ役をキム・ベイシンガーが演じていたが、物語の中では、怒ったラルゴにより北アフリカの牢獄に閉じ込められてしまう。そして、ドミノは現地のアラブ系ベドウィンに、白人の奴隷として競りに掛けられてしまうのだ。アラブ系観客は不愉快だろうが、イスラム教徒たちはかつて性慾を満たすための白人奴隷を買っていたから、あながち嘘とは言えないプロットである。しかし、浅黒い遊牧民がよってたかって、金髪碧眼の白人女性を求める姿は実におぞましく、西歐人が見れば生理的および人種的嫌悪感を催すのは必定だ。もし、ドミノが黒人女性なら、ベドウィンたちは興味を示さないし、安値しか付かないので「競り」にならない。アフリカ系女性にとったら屈辱的だろうが、現実のアラブ世界では普通のことである。黒人奴隷はもっぱら畑仕事などの重労働に使っていたからだ。つまり、家畜の代役というわけ。

Kim Basinger 4Kim Basinger 007Kim Basinger 3Arabic man 1








(左3枚 / キム・ベイシンガー/ 右: ベドウィン)

  ダニエル・クレイグがボンド・シリーズに登場してからの作品は、007のクールでハードな面が重視されるようになったから嬉しい。やはり、肉体を使った挌闘シーンが迫力を増しているから、観客の反応も良くなっているのだろう。ただ、懸念されるのは、映画の制作過程で、西歐人以外の観客を意識している点だ。キャスティングにおいて不自然な配役、つまり特別な「人種的配慮」がなされている。例えば、プレイ・ボーイのジェイムズ・ボンドが、世界各国を駆け巡る中、有色人の女性と恋仲になることはしょうがない。ただ、「美しき獲物たち」に登場した黒人のグレイス・ジョーンズ(Grace Jones)や、香港を舞台とした「ザ・ワールド・イズ・ノット・イナッフ」に起用された支那人のミッシェル・ヨー(michelle Yeoh)などは、何となくボンド・ガールに相応しくない。意図的な不自然さを感じるからだ。映画界における多民族主義は、観客の知らないところで勢いを増しているから怖い。

007 Grace Jones007 Michelle YeohMonica Bellucci 3007 Tatiana Romanova








(歴代のボンドガール / 左: グレイス・ジョーンズ / ミッシェル・ヨー / モニカ・ベルッチ / 右: タティアナ・ロマノヴァ)

  将来、ジェイムズ・ボンド役を白人以外の役者が演じる可能性だってある。かつて、イドリス・エルバ(Idris Elba)が新しいボンドになるのでは、という噂が立ったし、人種混淆が激しい英国では、ラザ・ジャフリー(Raza Jaffrey)のようなインド系男優も候補者になり得る。彼は人気TVドラマの「スプークス/英国諜報機関(Spooks)」で、MI5の諜報員役を演じていたからだ。英語の発音さえ激変してしまうと言語学者が真剣に憂慮している英国では、ブリテン系俳優にこだわらない人選が検討されるから恐ろしい。もしそうなれば、TVドラマ「サンズ・オブ・アナーキー」に出演していたビリー・ブラウン(Billy Brown)みたいな黒人男優が抜擢される可能性もあるのだ。映画のシャーロック・ホームズだって、前科者として有名なロバート・ダウニー・ジュニアが演じていたんだから、ジェイムズ・ボンドだってアメリカ黒人が演じることだってあり得るだろう。そうなった時、白人ファンが反撥するだろうが、絶讃する黒人やアジア人観客もいるから、制作会社は思い切った決断を下すかも知れない。

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(左: イドリス・エルバ / ビリー・ブラウン/ ラザ・ジャフリ ー/ 右:  ロバート・ダウニーJ.)

    近い将来、スパイダーマンやバットマン、スーパーマンといったアメリカン・ヒーローも浅黒くなってしまうだろう。もし、黒人の007をイアン・フレミングが知ったら激怒するんじゃないか。英国を救うヒーローが有色人種になったら、真っ先に反対するのは原作者かもしれない。しかし、その産みの親は既に墓の中だから、お金儲けに狂った映画会社はフレミングの意志を踏みにじるだろう。これは単なる想像だけど、もしフレミングが墓場から蘇ったとしたら、真っ先に殺し屋を雇って、映画会社の重役を抹殺するはずだ。大切な原作を守るためなら、「殺しのライセンス」を云々せず、無免許のヒットマンでも許すんじゃないか。





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