クリントン勝利のハズだったのに

Donald Trump 6Hillary Clinton 17







(左: ドナルド・トランプ / 右: ヒラリー・トランプ)

  「やった~、トランプが大統領になったぞ! 」と、米国のトランプ支持者は大喜び。もちろん、ドナルド・トランプ本人が一番嬉しいはずだ。直前の世論調査では「クリントン候補優勢」となっていたんだから。筆者は複雑な気持ちだ。選挙前に筆者は直感だけど、「トランプが勝つ」と予測した。ただ、選挙でお金を賭けている人には、筆者を信ぜず「ヒラリーに賭けておいてね」と書いてしまったから、「何だ、損したじゃないか !」と叱られそうで怖い。でも、筆者は競馬、競輪、パチンコを一切しない素人なので、ギャンブラーの方には自分の勘を信じて欲しかった。だって、大手マスコミが「ヒラリーが勝つ」と散々言っていたんだから、責任を持てない筆者としては、「じゃあ、ヒラリーが大統領になるんじゃないの」としか書けない。投げやりな言い方だけど、文句は民放各局に言うべきだ。それにしても、このブログで紹介した英国の富豪ジョン・マッピンはすごい。トランプに大金を賭けていたからだ。お金持ちは度胸と直感に優れている。

  他方、トランプ勝利で一番“しょげている”のは、敗者のヒラリー・クリントンであることは言うまでもない。しかし、彼女と同じくらい“がっかり”しているのは、民衆党贔屓でリベラル派の主要マスコミ(mainstream media)であろう。特に、「クリントン・ニューズ・ネットワーク」と揶揄(やゆ)されるCNNは、相当ガックリしたんじゃないか。初の女性大統領を祝うためにシャンペンやクラッカーを用意していたのに、彼女が獲得するはずのフロリダ州やノース・カロライナ州、さらにオハイオ州までトランプに奪われてしまったのだ。クリントン応援団は、民衆と共和で揺れ動く接戦州を眺めていても、内心では「青(民衆党)になるさ」とタカを括っていたんだから。ところが、蓋を開けてみるとスウィング・ステイト(接戦州)が赤色(共和党)に点滅してしまったから、もうクリントン陣営は真っ青。泣きっ面に蜂どころじゃない。「まさか !」と叫びたくなる。でも、政治の世界では「上り坂」と「下り坂」、そして「まさか」があるんだから仕方がないだろう。

偏向していたマスコミ

  投票日前、世間の一般人、大企業のお偉方、日本のマスコミ各社は、「いくらトランプが人気があるとはいえ、やっぱりヒラリーにはかなわないよな」と言っていた。現地アメリカでも、大手のマスコミは軒並みトランプ落選で、クリントン当選を信じていたのだ。例えば、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は11月6日の時点で、NBCニューズとの共同調査を発表し、クリントン支持率44%、トランプ支持率40%と述べていた。(Janet Hook, Hillary Clinton Leads Donald Trump by 4 Points in Latest Poll, The Wall Street Journal, November 6, 2016) ニューヨーク・タイムズ紙のネイト・コーン氏もヒラリー優勢を伝えていて、トランプがアリゾナ州やオハイオ州、ノース・カロライナ州、フロリダ州、ニューハンプシャー州を制しても、勝利への選挙人270名を獲得できないだろうと予想していたのだ。(Nate Cohn, Clinton Has Solid Lead in Electoral College;  Trump's Winning Map Is Unclear, The New York Times, November 5, 2016)

  政治や経済の調査・分析で有名な「ムーディーズ・アナリティックス(Moody's Analytics)」は、クリレントン候補が332名の選挙人を獲得するだろうと予測していた。(Eric Owen, Moody's Predicts YUGE Win For Clinton, The Daily Caller, November 2, 2016) 怪しげな分析をするムーディーズだから、我々は眉に唾をつけて考えねばならぬが、300人以上の選挙人獲得なんて「水増し」が多すぎやしないか。ロイターは独自の世論調査(Reuters-Ipsos States of the Nation poll)を発表していて、クリントンの勝率は95%であると謳い、少なくとも278名の選挙人を獲得するだろうと予測していた。これまた大手のロサンジェルス・タイムズ紙も歩調を合わせていて、クリントンが選挙人352名を獲得し、トランプはたった186名の獲得数に留まるだろう、との記事を載せていた。(David Lauter and Mark Z. Barabak, Our final map has Clinton winning with 352 electoral votes. Compare your picks with ours, The Los Angeles Times, November 6, 2016) 記事を書いたデイヴィッド・ラウター氏とマーク・バラバック氏は、「俺たちの予測とお前の我即を比べてみな !」と自信ありげだったが、現在の選挙結果を見て、彼らはどう思っているのか? 自分たちの調査が大はずれで、クリントン優勢を宣伝していただけ、と判明したから大慌てだろう。ちゃんと、なぜ自分たちは間違っていたのかを反省する記事を書くかどうか見物だ。たぶん、知らぬ顔を決め込んで「トランプ逆転 !」なんていう記事を書くんじゃないか。

  アメリカのジャーナリズムに「恥知らず」という言葉があるかどうか知らないが、ヒラリー圧勝を予測していたメディアは大恥を掻いたから、今後どうやって世間を誤魔化すか検討中だろう。「デイリー・コス」のデイヴッド・ニール記者は、87%の確率でクリントンが勝つと伝えていた。(David Nir, Hillary Clinton currently has 87% chance of winning the presidency, Daily Kos, November 4, 2016) 「プリンストン・エレクション・コンソーティウム(Princeton Election Consortium)」という調査機関の予測はもっと酷く、クリントン候補の勝率は99%で、選挙人312名を獲得してトランプを破るだろうと発表していたのだ。(Rachael Revesz, Survey finds Hillary Clinton has ‘more than 99% chnce’ of winning election over Donald Trump, The Independent, 6 November 2016) 「99%の勝率」ってことは、もう100%ヒラリーが勝つと言っているようなものじゃないか。いくら「トランプ氏の勝利は1%あります」と述べていたからとて、世間は「トランプが勝つかもなぁ」とは考えないだろう。競馬場の予想屋なら、それくらいの「はったり」でもいいけれど、真面目な調査会社の看板を掲げておきながら、支那人みたいな言い草はないんじゃないか。

  リベラル派メディアを批判してもしょうがないけど、左翼の御用新聞「ハッフィントン・ポスト」も同罪だった。同紙はヒラリーが98%の確率で勝つと述べていた。(Natalie Jackson, A High Probability of Hillary Clinton Winning Doesn't Mean  It Will Be A Blowout, The Huffington Post, November 4, 2016) 世界の潮流を見て左派から保守派に転向し、時期を見てまたもやリベラル派に戻ったアリアナ・ハッフィントンが創った新聞社だからしょうがないけど、日本版も出ているので、日本人でも同紙の記事を真に受ける者がいる。ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙、CNNなどで飼い慣らされた日本人は、こうした左翼記事が誰によって、いかなるイデオロギーによって書かれているかに関心が無いから、簡単に騙されてしまうのだ。

  日本のニューズ報道を見ていると、頻繁に米国の世論調査を利用しているが、どのような調査方法なのか、どんな人物に尋ねているのか、といった点が不明確なので、そのまま信用すると間違った判断を下すこととなる。例えば、有名な調査機関の「ファイブ・サーティー・エイト」は、77%から99%の確率でクリントン勝利と書いていた。(Nate Silver, The Campaign Is Almost Over, And Here's Where We Stand, FiveThirtyEight, November 5, 2016) まぁ、主幹のネイト・シルヴァーは典型的な左翼ユダヤ人だから驚くには値しないだろう。「えっ、またユダヤ人なの !」とウンザリしないでほしい。トランプ嫌いのマスコミ人には、ユダヤ人が本当に多いんだから。ネイトはブライアン・シルヴァー(Brian D. Silver)というユダヤ人の父親を持っていて、ミシガン州のイースト・ランシングで生まれたそうだ。彼の父親はミシガン州立大学の教授で、政治学を教えていたらしい。「やはり」と言ったらなんだが、母親のサリー・シルヴァー(Sally Thrun Silver)は相当な左翼で、「コミュニティー・アクティヴィスト」だったという。つまり、地元住民を駆り立てて政治活動を生業にしていたということだ。若い頃のバラク・オバマと同じタイプのデマゴーグだったのだろう。(Nate Bloom , Nate Silver, Another Bond, and Happy Ending, Interfaith Family, November 13, 2012) ユダヤ人には親子で左翼というケースが実に多い。

恥を知らない日本の御用学者

  今回の選挙予測を大きく外したアメリカ人が沢山いるのは確かだが、我が国にも予測を誤った知識人が多い。アメリカの世論調査やテレビ報道を受けて、クリントン候補が勝つと言いふらしていた有名人があちこちにいるのだ。何人かは明確に「ヒラリーが大統領になる」とまでは断言していなかったが、「やっぱりヒラリーじゃないのか」と臭わせていたんだから、ヒラリー当選派と同じだろう。例えば、NHKや朝日新聞、フジテレビが重宝する慶應義塾大学の中山俊宏(なかやま・としひろ)教授は、ヒラリー優勢と考えていたから、今日(9日)出演したフジテレビの報道番組ではしょんぼりしていた。まさかトランプが勝つなんて思っていなかったのだろう。でも、彼の政治思想は左巻きだから、その分析や考察が曇っていたんじゃないか。たぶん、自分で深く考えず、米国の左翼メディアを迂闊に信用したのかも知れない。まぁ、慶應大の教授だってこの程度だ。竹中平蔵なんかを雇うくらいだから、教授会の採用基準も左に偏っているんだろう。

  昨日のBSフジの報道番組は、大統領選挙直前ということもあって、米国政治に詳しい知識人を招いていたが、その面子を見るとうんざりする。朝鮮人御用達のテレビ局だから贅沢は言っていられないが、元外務官僚の岡本行夫、元NHKワシントン特派員の手嶋龍一、以前このブログでも紹介した左翼学者の三浦瑠璃(みうら・るり)の三人。失礼ながら、これじゃ、あんまりだ。アメリカの政治を解説してもらうのに、こんな連中しか思いつかないなんて、番組制作者の知能と教養がどの程度のものか、誰だって容易に想像できるだろう。(ただ、筆者みたいな解説者だと、抗議の電話で番組が消滅してしまうので、ある程度、制作者の苦悩は理解できる。) アメリカ通らしい岡本氏など、明言は避けつつも「クリントンが大統領になるよ」と言いふらしていたから、今頃“ばつ”が悪いんじゃないか。おそらく、都合の良い「言い訳」を考えて、自分の間抜けさを隠蔽しようとするだろう。手嶋龍一なんかNHKにポイ棄てされた中古品なのに、民放に呼ばれているところをみると、左翼仲間が仕事を与えているのかも知れない。たぶん、制作者は左翼本しか読んでいないから、「アメリカ政治なら手嶋氏だ」と閃いたのだろう。意図的な極左路線も考えられるが、案外、手嶋氏程度の人物しか思い浮かばなかった、というのが真相なのかも知れない。

  これといった資産もない筆者は単なる平民だけど、潤沢な取材費を有するマスコミが触れないアメリカ社会の一面を、色々と紹介したつもりである。つい最近、筆者はトランプ勝利を確信するヘルムート・ノーポース教授を紹介したが、日本のテレビ局は彼にコンタクトをとったことがあるのか? 各テレビ局を監視している訳でもないから筆者には分からないが、たぶん一般視聴者は知らないだろう。本当は、アメリカン大学のアラン・リクトマン(Allan Lichtman)教授も紹介したかったけど、筆者も色々と忙しいので、彼の見解について書くことは出来なかった。リクトマン教授も選挙前からトランプ勝利を確信していて、フォックス・テレビの番組に出演し、トランプが大統領になると予言していた。彼の見解は単なる占いではなく、彼は過去30年の大統領選挙を分析した結果だから、決していい加減な放言ではない。(Peter W. Stevenson, Professor who's predicted 30 years of presidential elections correctly is doubling down on a Trump win, The Washington Post, October 28, 2016)

  我が国のジャーナリストや御用学者はほとんど、「トランプは暴言王だ」とか、「あんな奴、下層白人に支持されているだけだ」と馬鹿にしていたが、現在の投票結果を目にして、「しまった ! どうしよう」と困っているはずだ。たぶん、過去の発言を誰も覚えていないことを願い、ほとぼりが冷めるまで報道番組には出ないんじゃないか。唯一、トランプ勝利を前々から断言していた木村太郎だけは、「それ見ろ! オレが言った通りじゃないか !」と自慢できるはずだ。現にフジテレビでニコニコ顔だった。左翼的思考が抜けきれない安藤優子は苦笑い。現地報告をしていた安藤氏は、素早く優勢となったトランプの会場に潜り込み、クリントンの会場には足を向けなかった。自分は景気のいいトランプ会場から現場中継を行い、格下の市川沙耶にクリントン会場の中継を任せていたんだからズルい。嫌な取材を押しつけられた市川沙耶が可哀想だ。報道の素人に「あなた、後は上手くやっといてね !」じゃ酷いだろう。本来ならプロの安藤氏が責任を持ってクリントン会場を取材すべきだ。ベテランのお局(つぼね)アナは汚いなぁ。 それにしても、我が国の「アメリカ専門家」というのは一体どんな研究をしているんだ? 偉そうに解説していた知識人は、テレビ・カメラに向かって日本国民に謝れ。




人気ブログランキングへ