裏切り者からのトランプ攻撃

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(左: ドナルド・トランプ / 右: ヒラリー・クリントンの支援者)

  先の大統領選挙で予測を大きくハズし、満座の席で赤恥を掻いたせいなのか、アメリカの主流メディアは悔し涙で居ても立ってもいられないのだろう。どうにかして、トランプ次期大統領を貶したい。何かケチをつけるネタはないものかと探していたところ、「あった! これだ、これ。うヒャヒャヒャぁ~、いけるぞ ! 」と大はしゃぎ。どんなネタを見つけたのかと思いきや、トランプの上級顧問になったスティーヴ・バノン(Stephen Bannon)を問題にしていたのである。つい最近、「チャンネル桜」に出演していた有本香さんが言及していたので、名前だけは知っている人もいるだろう。でも、バノンの名前をを聞いたことがない人もいると思うので、ちょっとだけ彼について紹介したい。

  選挙参謀としてドナルド・トランプの勝利に貢献した、と一躍脚光を浴びたスティーヴ・バノンは、ウエッブ・サイトで運営される「ブレイトバート・ニューズ(Breitbart News)」の代表取締役を務める人物である。このサイトは創設者のアンドリュー・ブレイトバート(Andrew Breitbart)に因んで名づけられた。以前、このブログで彼のことを紹介したので、覚えている方もいらっしゃるだろう。今は亡きブレイトバート氏は、既存の左翼偏向メディアに真っ向から刃向かう叛逆児であり、オバマが隠したい過去を録画したテープを暴露すると公言した。ところが数日後、突然の心臓発作で還らぬ人となってしまったのである。酒場からの帰り道で突如倒れたというから、もしかしたら証拠の残らない毒を酒に盛られたのでは、という噂話が立った。それくらい、彼は危険な事に首を突っ込んでいたということだ。その後、彼が“発見”したはずの録画テープはどこかに消えてしまい、遺族でさえその行方は分からないという。あれだけ自信たっぷりに公言していたので、おそらくブレイトバート氏は超弩級の映像を入手したのだろう。我々としては、闇に包まれたオバマの学生時代が明るみにされなくて非常に残念である。

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(左: アンドリュー・ブレイトバート / 右: スティーヴ・バノン)

  ABCやNBC、CNNといった極左メディアが「極右」と呼ぶブレイトバート・ニューズは、世間で思われているほど過激ではない。そりゃあ、旋毛(つむじ)まで左巻きの左翼国民が読めば、「何だ、この右翼サイトは !」と不快に思うだろうが、教養のあるアメリカ人が全体に目を通せば、「なるほどねぇ」と感心する内容である。米国の大手メディアの報道だけを鵜呑みにする日本人は、「へぇ~、極右白人が読むサイトなんだ」と勝手に想像してしまうだろうが、実際は主要メディアが敢えて触れない話題を取材しているに過ぎない。つまり、NHKや朝日新聞のように、事実をねじ曲げて伝えているのではなく、大手が無視する「不都合なニューズ」を取り上げているだけだ。日本に置き換えてみれば、岩波の『世界』や朝日の『アエラ』を愛読している“進歩的”インテリが、文藝春秋の雑誌『諸君 !』を読んで「何じゃ、この右翼雑誌は ! 軍国主義者や国粋主義者の学者ばかりじゃないか !」と驚くのに等しい。現在の高校生や大学生が、廃刊された『諸君!』や『国民新聞』を読めば、その「右翼的」内容に目を剝くだろうだろう。しかし、意外と興味を抱く者もいるはずだ。

  社会党が没落した時代に育った大学生は想像できないだろうが、昔の大卒者とか官庁の役人などは、朝日新聞を購読し、『世界』を読んで「上流知識人」を気取っていたのだ。馬鹿の一つ覚えみたいに学歴をひけらかすオッちゃんたちに限って、朝日新聞の論調を疑わず、久米宏のごとく斜(はす)に構えて政治や経済を語っていたのである。アホらしい説教を聴かされる若い者は堪ったもんじゃないが、勤めている会社の上司だったりすると辛抱して相づちを打つしかなく、早く家に帰って趣味に没頭したい気持ちを押さえて我慢していた。こういう過去を思い出せば、CBSやニューヨーク・タイムズ紙といったアメリカのメディアが伝える話を額面通り受け容れることが、如何に危険であるかが判るだろう。先頃、たまたまフジテレビの報道番組「ユア・タイム」を見ていたら、ニューズ解説をしている左翼のモーリー・ロバートソンが、バノンを右翼的白人に好まれるサイトを運営する人物と紹介していた。筆者はよくブレイトバート・ニューズを読んでいるので「右翼サイト」とは思わないが、何も知らない日本の一般視聴者が聞けば、白人の危険人物がトランプの側近になっている、という印象を持ってしまうだろう。それにしても、素直な日本の庶民って何度でも左翼に騙されてしまうから気の毒である。

  とまぁ、アメリカのメディア業界を批判しているとキリが無いのでここで止めるが、バノンを批判する敵陣の中にベン・シャピロ(Benjamin Shapiro)がいたことは注目すべき事実である。このシャピロという小僧は、といっても既に32歳の青年なのだが、バノンと同じくブレイトバート・ニューズの編集部に所属していた。つまり、バノンがトランプ陣営に加わるまで同僚だった、ということだ。毎度の事で申し訳ないが、ベン・シャピロは正統派ユダヤ教徒で、ロシア系ユダヤ人の息子である。ついでに言えば、結婚相手のモー・トレダーノはモロッコ系ユダヤ人のイスラエル国民ときているから、ベンが公私共にイスラエル支持者なのも頷けよう。彼はまだ若いのに色々な組織で経験を積んでいる。「おやっ?」と少々奇妙に感じる人もいるだろうが、それは彼が早熟の秀才だからだ。いかにもユダヤ人の神童といった感じのシャピロは、カルフォルニア大学(UCLA)に17歳で入学し、最優秀(summa cum laude)との評価をもらって20歳で卒業したという。彼は入学当時から本の構想を考えていたらしく、処女作の『洗脳されて(Brainwashed)』を卒業した時に出版したというからすごい。(実は、筆者も購入していた。) その後、23歳の時にハーヴァード・ロー・スクールに進学し2007年に卒業したという。

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(左: ベン・シャピロ   /   右: 幼少時代のシャピロ)

  シャピロは学業と同時進行で著述業にも勤しんでおり、ハリウッド業界の内幕を暴いた『プライムタイム・プロパガンダ(Primetime Propaganda)』や、左翼知識人を批判した『いじめっ子たち(Bullies)』を出版した。こうした業績を以て保守論壇で認められたシャピロは、ついにブレイトバートの編集部に迎えられたのである。新進気鋭の若手保守論客として脚光を浴びたから、色々なテレビ番組に招かれることもあった。さらに、CPACなど保守派の大会にも登場していたから、アメリカの保守派国民にはちょいと知られた人物である。ところが、今回の大統領選挙では、シャピロが支援した候補者というのがテッド・クルズであったから、トランプを推すブレイトバートの面々とひと悶着を起こす結果になったのである。

ヨーロッパの遺産を継承する極右白人たち

  そもそも、シャピロがトランプ支持者の同僚と揉めるようになったのは、ブレイトバートの編集方針が「オルタナティヴ・ライト(Alternative Right / 以下「オルタ・ライト」と略す)」側に傾いたからである。では、この「オルタ・ライト」とは何か? 簡単に言えば、「ヨーロッパ系アメリカ人が白人であることに誇りを持つ」思想と運動であり、それを主張する人々を指す。スティーヴ・バノンはこうした勢力を否定せず、暗に彼らからの支援を利用した節がある。だから、ABCやCNNなどの左翼メディアから、極右勢力やKKK(クー・クラックス・クラン)と繋がっているんじゃないのか、と騒ぎ立てたのだ。こうなればユダヤ人が経営する赤いメディアは放っておけない。バノンを標的にしたネガティヴ・キャンペーンは日増しに激化し、それに呼応して白人の右派勢力が応戦するという形になったのである。西歐的価値観を守ろうとする白人は、米国に蔓延(はびこ)る異人種を憎み、嘗てのアメリカを取り戻そうと息巻くので、当然ユダヤ人に対する敵愾心が強い。

  たまたま今回の大統領選挙では、元ルイジアナ州下院議員のデイヴィッド・デューク(David Duke)がトランプ支持を公言し、それと並行して同州の上院議員選挙に出馬したことから、左翼メディアは更に反トランプの色彩を強めたのである。特に、CNNには根っからのシオニストで、デューク氏を心底憎むウォルフ・ブリッツァー(Wolf Blitzer)がいたから、反ユダヤ主義を掲げる政治家や活動家に対しては容赦が無かった。(アメリカのメディアはデュークを報道する度に、「元KKK」のデュークと紹介していたのである。) ユダヤ人支配に警鐘を鳴らすデュークが指摘するように、ブリッツァーは強大な権力を有するイスラエル・ロビーのAIPACと昵懇である。1986年にブリッツァーが国賊のユダヤ人スパイであるジョナサン・ポラード(Jonathan Pollard)との単独インタヴューを実現できたのは、彼のユダヤ人脈によるものである。

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(左: デイヴィド・デューク / 中央: ウォルフ・ブリッツァー  /  右: ジョナサン・ポラード)

  極右白人が奉じる「オルタ・ライト」と聞けば、普通の日本人は恐怖心を覚えてしまうが、それは我々が中学や高校で左翼思考を脳幹の中枢にまで叩き込まれた上に、大学でも更なる磨きをかけられているからである。たとえ、大学に進学しなくとも、日々の生活でテレビ番組を観ているから、自然と左巻きの思考に感染しているのだ。したがって、広い世間を見渡すと、気づかない人が余りにも多いの困る。以前、ロシア専門家の瀧澤一郎(たきざわ・いちろう)先生が、大学なんかに入らなかった人の方が健全な精神を持っている、と発言していた。つまり、なまじっか東大なんかで講義を受けてしまうと、頭が真っ赤に染まってソ連礼讃となるから、ある意味、警戒心の無い若者が大学へ進学するのは危険である、と喝破していたのだ。

  まさに正論。なぜ、日本では大卒の馬鹿が多いのかと言えば、受験勉強しかしなかった高校生が、世間知らずのまま左翼教授に洗脳されて、気がつけば「健康な気違い」に仕立てられているからだ。これを疑う大学生もいるだろうが、それなら東大に盤踞していた江口朴郎、勝田守一、神立誠、宗像誠也、渡辺洋三、松島栄一、とりわけ悪名高い大河内一男や日高六郎などを調べてみるがいい。彼らが共産党の「アカハタ」で何を言っていたのか、きちんと検証すべきだ。それに、他の大学にも巣くっていた赤い教授たちを個別に調査すべきだろう。ただ、こうした非常識な大学教師を数えだしたら、何冊の名簿を作成できるか分からない。でも、彼らの論文を読むとなれば、相当な時間の浪費となるから、予め覚悟しておいた方がいいだろう。

  一般の日本人は米国の主要メディアの解説を鵜呑みにして信じてしまうが、「オルタ・ライト」を自分で調べてみれば、別段目くじらを立てる程の過激思想でもないことが分かるだろう。例えば、オルタ・ライトの提唱者たちは、アメリカを再びヨーロッパ系白人の国家に戻し、自分たちの肉体や祖先、文化、伝統、信仰、歴史を自慢できるようにすべし、と訴えているのだ。というのも、第二次世界大戦後、人種平等思想がアメリカ社会で拡大し、黒人やアジア人、さらにヒスパニック系やマグレブ系イスラム教徒までが、西歐系白人と対等になってしまったのである。元々、北米はブリテン聯合王国の植民地で、入植者達が本国の同胞と袂を分かって建国した共和国である。当然、構成員はイギリス人やスコット人を基本としており、移住者といってもフランス人やアイリス人、オランダ人、ドイツ人などが主流だった。合衆国の政治を司る議員や官僚がアングロ・サクソン系なのは当然で、地方の教会や議会でも、元イングランド臣民が多数を占めていたのである。幕末や明治に米国を訪れた日本人だって、これくらいの事は弁えており、勝海舟や福澤諭吉、高橋是清、新渡戸稲造、内村鑑三などが出逢ったアメリカ人は主に西歐系白人で、ヨーロッパ人ばかりが議事堂や礼拝堂に顔を揃えても、特別「変だなぁ」と疑問に思わなかったはずだ。

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(左: ジョージ・ワシントン  /  トマス・ジェファソン / ユリシーズ・グラント /  右: セオドア・ローズヴェルト)

  現在、アメリカ白人はおろか日本人が歴代大統領を眺めても、その変化に目を奪われるだろう。初代のジョージ・ワシントンからジョン・アダムズ、トマス・ジェファソン、エイブラハム・リンカン、ユリシーズ・グラント、セオドア・ローズヴェルトの肖像画を見れば、みんな西歐系白人であることが分かる。仮に、当時のアメリカ人に日本からの留学生が「将来は黒人大統領が誕生するだろう」と予言したら、「おい、この東洋人は頭がおかしいぞ」と皆から笑われたに違いない。もっとも敗戦前、いや1980年代に至っても、「人種平等」の理想を掲げる日本人でさえ、こんな馬鹿げた発想は無かったはずだ。日本人は現在の多民族・多文化主義を勉強する際、ケネディー大統領のリベラル政策やマーティン・ルーサー・キング牧師の公民権運動、リンドン・ジョンソン大統領の「偉大なる社会(Great Society)」にばかり注目するが、それを裏から後押ししたユダヤ人や白人マルキスト、ソ連の工作員、左翼系進歩主義者などを調べようとする者は少ない。

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(左: ジョン・F・ケネディー / 中央: マーティン・ルーサー・キング/ 右: リンドン・B・ジョンソン)

  我々は左翼メディアの社説を拝聴するのではなく、なぜオルタ・ライトの知識人たちが、リベラル派知識人に攻撃されているのかを考えねばならない。一般に「極右」と呼ばれる新保守派は、ヒスパニックの不法入国とか、黒人による南部旗(Confederate Flag)への侮辱、イスラム教徒による強姦を暴いているだけではないのだ。彼らはアングロ・サクソン系国民が築いた社会を根本的に転覆させようとする勢力や思想を抉り出しているのである。したがって、オルタ・ライト派の白人はこうした問題意識を持っているから、必然的にユダヤ人と衝突してしまうのだ。西歐人と種族的に異なるユダヤ人は、明らかにアメリカの國體(こくたい)と自らの肉体が一致しないので、いくら愛国者とか保守派を名乗っていても、心の何処かに疎外感と違和感を抱いている。その遺伝子的亀裂が、最終的には西歐系アメリカ人と袂を分かつことになるのだ。要するに、意気投合しない者同士というか、両者は生理的に反りが合わないのだろう。

ユダヤ人の泣き言

Walther Darre 1(左 / リヒャルト・ウァルター・ダレ)
  先ほど紹介したベン・シャピロは、一応「なぜブレイトバート・ニューズを去ったのか」という理由を述べている。彼が信奉する“真の”保守思想とは、制限された統治機構や天賦の権利、個人的責任感のみが国家を救うという哲学であった。(Ben Shapiro, The Breitbart alt-right just took over the GOP, The Washington Post, August 18, 2016) シャピロによれば、こうした信条は人種や民族に結びつけられたものではないという。ところが、オルタ・ライトの活動家や賛同者は、種族に基づくナショナリズムを主張していたから、ユダヤ人の血を引くシャピロは反撥していたのだ。若い世代に属する白人のナショナリストが、アングロ・サクソン人を筆頭とする西歐人の血統と国土を強調すれば、米国に住むユダヤ人がナチズムやリヒャルト・ウァルター・ダレ(Richard Walther Darré)の「血と土(Blut und Boden)」を思い出すのも無理はない。だが、西歐世界における国家というものは、多かれ少なかれゲルマン系民族の魂と絆による結晶である。ユダヤ人は認めたくないだろうが、ドイツとかフランス、オランダ、デンマーク、スウェーデン、イングランドというのは、歴史的に見てゲルマン種族が作った国家である。したがって、アメリカ合衆国というのも西歐世界の延長であり、ゲルマン部族の一派が新大陸に建てた共和国なのだ。

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(写真 / 西歐人の家族と女性)

  左翼思想を批判する保守主義者を名乗ったシャピロであるが、保守的白人の一派が従来の共和党ないし保守派知識人とは一線を画するようになると、居心地が悪くなったそうだ。オルタ・ライトの知識人たちは、臆することなく白人としての矜持を示したし、白人を糾弾する黒人や有色人種に媚びる自虐的白人に対して、敢然と立ち向かうようになったのである。彼らからすれば「白人が白人国家の主人公になって何が悪いのか?」と尋ねたいし、「白人は美しい肉体を持ち、優れた知能も有する立派な種族なんだぞ!」と誇りたい。そして、「人種混淆など間違っている。白人は有色人種と別々に暮らす権利を持っているんだ」と叫びたいし、「アメリカは西歐人が建てた国家だから、受け容れる移民はヨーロッパ人に限るべし」と言いたいのだ。フランクフルト学派のユダヤ人や過激思想の黒人から、長年に亙って逆差別を受けた白人や人種を理由とする抑圧を受けてきた若者は、リベラル派のマスメディアによる洗脳や政治家たちの説教にウンザリしていたから、遠慮無くオルタ・ライトの思想に共感し始めたのである。ブレイトバートの成功と躍進は、こうした不満を蓄積した白人層に支えられているのだ。

  ブレイトバートから追い出されたシャピロは、早速、大手リベラル派の「ワシントン・ポスト」紙に駆け込み、いかにオルタ・ライトの連中が偏見と差別に満ちた愚者なのかを嘆いていた。こうした行動を見た白人保守派は、「やっぱり、あのユダヤ小僧は俺たちの仲間じゃなかったんだ」と分かったらしい。悔し涙を浮かべるシャピロは「ワシントン・ポスト」紙だけでなく、「ナショナル・レヴュー」誌のドアも叩いて、「私は反ユダヤ主義というのは左翼たちが拵えた産物だと思っていたが、どうやら間違っていた」という反省記事を載せてもらったのである。(Ben Shapiro, Trump's Anti-Semitic Supporters, National Review, May 18, 2016) その中で、彼はオイタ・ライトのクズどもから嫌がらせメールを受け、家族までもが反ユダヤ主義の標的になってしまったと訴えかけていた。シャピロはユダヤ人を憎む白人右翼どもが、トランプ支持者の中核になっているとの愚痴をこぼし、彼らがトランプを反ユダヤ主義のリーダーに祭り上げている、と警告していたのである。おそらく、ユダヤ難民を同胞とするシャピロの目には、「排外主義」を掲げるオルタ・ライトは「心理的脅威」と映ったに違いない。

  確かに、不法移民の排除を訴えるトランプは、ヒスパニック移民やムスリム難民を毛嫌いする白人層に歓迎された。しかし、それはトランプが根っからの排外主義者だからではなく、不満を募らせる白人のサイレント・マジョリティーが大勢いることを直感で見抜き、躊躇(ためら)っている彼らを代弁したから人気を博したのである。元来、共和党は保守的な白人中流階級を基盤とするはずなのに、いつの間にか民衆党と変わらぬ半左翼の政党になってしまった。トランプはこの変化を見逃す程の愚者ではない。彼は怒れる白人の意見を掬い上げたのだ。ここにトランプの慧眼があった。金太郎飴みたいな日本の評論家は、トランプ支持者を窮乏化する白人労働者とか低学歴の下層白人と定義したが、実は祖国の変質と存亡を危惧する中流白人層がトランプを陰ながら支援していたのである。単なるネオ・ナチや天然馬鹿がトランプ旋風に浮かれていたのではない。

Richard Spencer 1Peter Brimelow 2Jared Taylor 1







(左: リチャード・スペンサー / 中央: 娘と一緒のピーター・ブリメロー / 右: ジャード・テイラー)

  騙されたくない日本人は米国の主流メディアに盲従せず、シャピロや他のユダヤ人左翼が糾弾していた、オルタ・ライトの知識人を自分の眼で確かめてみるべきだ。試しに、シャピロが批判していたオルタ・ライトの代表格であるリチャード・スペンサー(Richard Spencer)や、シャピロが白人至上主義者と呼ぶピーター・ブリメロー(Peter Brimelow)、目の敵にしている若手の保守派でブレイトバートの元同僚ミロ・ヤノポロス(Milo Yiannopoulos)、白人の利益を擁護し移民排除を訴えるジャード・テイラー(Jared Taylor)などが書いた記事や本を読んでみればいい。それから、これは筆者の推測だけど、シャピロにはスケベ心があったから、わざと保守派コラムニストのアン・コールター(Ann Coulter)を「ブラック・リスト」から外していたんじゃないか。彼はコールーターと対談したこともあり、個人的に良く知っている間柄である。コールターはヒスパニック移民の流入に反対するため『アディオス・アメリカ(¡ADIOS AMERICA !)』を書いたし、熱心なトランプ支持者なので急遽『トランプを信頼する(In Trump We Trust)』という本まで出版していたのだ。こうした言論活動を見れば、彼女がオルタ・ライト派に近いことは明らかなのに、シャピロはコールターをやり玉に上げていなかったのだ。たぶん、ブロンド美人は除外したかったのだろう。

Milo Yiannopoulos 2Ann Coulter 3Pat Buckanan 1







(左: ミロ・ヤノポロス  /  中央: アン・コールター /   右: パトリック・ブキャナン)

Samuel P Huntington 1(左 / サミュエル・ハンティントン)
  ところが、シャピロはコールターと同じタイプの論客でも、中高年の白人男性には厳しかった。彼はユダヤ人が嫌う保守派の重鎮、パトリック・ブキャナン(Patrick Buchanan)をも批判していたのだ。ブキャナンが書いた『病むアメリカ : 滅びゆく西洋』や『超大国の自殺』は日本語に翻訳されているので、本当にブキャナンは危険な人物なのか否か、自立したい日本人であれば自分の頭で判断すべきだろう。ブリメローやテイラー、ブキャナンたちはアメリカを西歐文明の国家と認識するが故に、そのアイデンティテイーを変質させる、ないし破壊する移民政策に真っ向から反対したのだ。日本でもよく知られている故・サミュエル・ハンチントン(Samuel Huntington)も晩年に『分断されるアメリカ』(日本語訳)を上梓したが、その原題は『我々は誰なのか(Who Are We?)』であった。この高名な民衆党系学者は、大量に流入するヒスパニック移民を問題とし、自国のアングロ・アメリカ的文化を守ろうと筆を執ったのである。

  だが、保守派を装うベン・シャピロには、これらの愛国的知識人が反ユダヤ主義に同調する白人優越論者に見えてしまうのだ。アメリカのアングロ・サクソン起源を容認できないシャピロは、イギリス系建国者たちの系譜に属さないと自覚しているので、西歐的アメリカを愛し、左翼分子から祖国を取り戻そうとするスティーヴ・バノンを許せない。シャピロは彼がブレイトバート・ニューズをトランプの“プラウダ(Pravda)”に変えてしまったと憤っている。(Ben Shapiro, 3 Thoughts On Steve Bannon As Ehite House ‘Chief Strategist’, The Daily Wire, November 14, 2016) ちなみに、「プラウダ」とはソ連の御用新聞で、支那の人民日報や朝鮮に媚びる朝日新聞みたいなものと思えばよい。シャピロはバノンが創設者のアンドリュー・ブレイトバートの理念を踏みにじり、オルタ・ライトの連中に売り渡してしまったのだ、と述べていた。そして涙目のシャピロは、バノンがブレイトバートを乗っ取り、その「保守主義」をヨーロッパで猖獗(しょうけつ)を極める極右ナショナリズムに変えたばかりか、人種主義や反ユダヤ主義を掲げるネオ・ナチどもと歩調を合わせている、と喚(わめ)いていた。おそらく、シャピロはオルタ・ライトの中にフランスの国民戦線(Front national)やドイツの為の選択肢(AfD)がもつ反ユダヤ主義の臭いを嗅ぎ取ったのだろう。

次回に続く。 


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