名曲をカヴァーする素人ミュージシャン

  今回はお正月の特別企画なので、従来の記事を期待する読者は、この回を飛ばしてください。通常記事は同日に掲載しているので、そちらを御覧いただけれは幸いです。

Gabriela Guncikova 001  プロのミュージシャンが流すMTVは既に誰もが知っているので、筆者が改めて紹介するまでもない。しかし、外国には素人なのに「プロ並」の実力を持つ素人がいる。そうした内の一人が、チェコ人のガブリエラ・グンチコヴァ(Gabriela Gnncikova)だ。彼女は元々アイドル発掘番組「Cesko Slovenska Super Star」出身で、その歌唱力が評価され、同番組の人気出場者になった。チェコで人気者となったガブリエラは、プロの道に進むことを選び、レコード会社の「Universal Music Group」と契約を交わすと、2011年にファースト・アルバム『Dvoji Tvar』を発売し、続いて2013年には、セカンド・アルバム『Celkem Jina』を発表した。個人的にはカヴァー曲の方が好きなんだけど、ガブリエラ自身はオリジナルの曲を熱心に歌っている。2016年には「Rock Meets Classical」に出演し、ホワイトスネークの「Here I Go Again」を熱唱したから、日本人でも知っている人がいるんじゃないか。ドイツのロック・バンド「゜ライマル・フィアー(Primal Fear)」のマット・シナーも出演していたから、日本のファンも知っているはずだ。

  今回紹介するのは、007の映画で主題歌となったアデル(Adele)の『スカイフォール』で、彼女は日本でも有名だ。筆者はアデルのライブを聴いてみたが、歌唱力ではガブリエラの方が「上」と思っている。もちろん、これは筆者の勝手な感想だから、反論する人も多いと思うが、声の張りや伸びの点を考慮すれば、断然ガブリエラの方が優れている。でも、大半の人にはオリジナルの方がいいよねぇ~。ただ、試しに聞き比べてほしいだけ。

  
 


  次に紹介するのは、往年の人気バンド「ハート (Heart)」が1970年代に発表した「バラクーダ(Barracuda)」のカヴァー。ガブリエラは、この名曲を見事に唄っているから、とても素人には思えない。やはり、プロになる素質があったのだろう。




  二番目に紹介するのは、キエフ出身のダリア・ザリツカヤ(Daria Zaritskaya)というウクライナ人女性。彼女の声は素晴らしく、歌唱力の点ではプロ並だ。彼女は仲良しバンドを伴い、スキッド・ローのヒット曲「Youth Gone Wild」をカヴァーしている。スキッド・ロー(Skid Row)は昔、4度くらい来日したことがあるから、彼らのライヴに駆けつけた人とっては懐かしい曲になるはずだ。とりわけ、ヴォーカルのセバスチャン・バック(Sebastian Bach)は金髪で長身のハンサム青年だったから、熱狂的な女性ファンが多かった。彼はソロになってからも、何度か来日していたから、根強いファンがいたのだろう。

 
 

 次は、ロシア人のマリーナ・アンドリエンコ(Marina Andrienko)という若い女性で、結構ギターが上手い。彼女はスラッシュ(Slash)のヒット曲「アナスタシア」を見事に弾いている。「アナスタシア」にはスラッシュが得意とするフレーズがちりばめられており、ギターを弾く人ならリフとソロの部分に注目するはずだ。アメリカ人やイギリス人は、こういった曲を作る才能がある。日本人ミュージシャンだと、ちょっと無理かも知れない。やはり、子供時代にアニメ・ソングを聴いて育ってしまうと、どうしてもその曲風が染みついてしまうからだ。幼少期にブルーズやロックを聴いて育った西歐人だと、軽快なロックン・ロールや味のあるブルーズを作ることができるから、日本人ミュージシャンは羨ましく思ってしまうことがある。
 
 

 マリーナがカヴァーするもう一つの曲は、英国の人気バンド「ミューズ(Muse)」の『Easily』だ。たぶん、日本でも「ミューズ」は結構知られているんじゃないか。ヴォーカル兼ギターリストのマシュー・ベラミー(Matthew James Bellamy)が作る曲は、独特の世界観を醸し出しており、聴く人によって好き嫌いがはっきりする。ちなみに、彼の父親は英国のバンド「トルネイドーズ(The Tolnados)」でギターを弾いていた。親子二代のミュージシャンは結構いて、スティング(Sting / Gordon M. T. Sumner)の息子ジョー・サムナー(Joe Sumner)は、「Fiction Plane」というバンドを組み、ベースを弾いている。筆者はYouTubeで『Two Sisters』という曲を聴いたことがあるけど、ジョーの歌を耳にして驚いた。親子だから当然なんだろうけど、スティングの声とそっくり。ラジオで聴いた人はスティングの新曲と間違うんじゃないか。世界中で絶大な人気を誇る「アイアン・メイデン」のリーダー、スティーヴ・ハリス(Steve Harris)にもローレン(Lauren Harris)という娘がいて、彼女もミュージシャンとなっている。オヤジの七光りという一面もあるが、一応独自のアルバムを出している。ただし、両者とも世界的に有名という訳じゃない。
 
 

 四番目はローラ・コックス(Laura Cox)というフランス人女性だ。筆者が彼女を初めて知ったのは、2008年くらいの頃で、当時はまだギターの腕がイマチイだった。素人だから仕方ないが、ギター・ソロの弾き方が未熟なので、微笑ましく思えるが、練習を重ねた結果、だいぶ上手くなった。それに従い、段々と動画の視聴者も急速に増えたようだ。たぶん、ユーチューブの再生回数が激増したから、プロになれたのかも知れない。彼女は自前のバンドを結成し、オリジナルの曲を作ってライヴ活動をしている。おそらく、ある程度の固定ファンが附いているのだろう。

  今回、ローラがカヴァーした曲は、『The Boy who wouldn't Hoe Corn』という昔からある有名なブルーグラスの古典的ナンバー。様々なミュージシャンが独自の編曲で唄っているから、アメリカでは多くの人が知っている。「ブルーグラス(Bluegrass)」というのは、日本人には馴染みの薄い音楽のジャンルで、我が国の市場ではほとんど人気が無い。でも、アメリカの南部や西部だと、開拓時代を偲ばせるメロディーということで、庶民の間で根強い人気を保っている。確かに、東京とか大阪、名古屋、神戸で聴くと「場違い」な気がするけど、米国のテネシー州やケンタッキー州、ミシシッピー州に赴き、現地のスコット・アイリス系白人と一緒に唄えば、中々乙なものである。例えば、キャンプファイアーの時、焚き火を囲んでみんなで合唱すれば結構楽しい。

Veerle Baetens 3( 左 / ヴェルル・バーテンス )
  ついでに言うと、この曲は『オーバー・ザ・ブルースカイ(The Broken  Circle Breakdown)』という映画の中で用いられ、主演女優のヴェルル・バーテンス(Veerle Baetens)が唄っている。日本ではベルギー人女優のバーテンスは無名に近いが、演技力は折り紙附きである。ヨーロッパの映画界では受賞経験もあるので、多少なりとも知られた存在である。彼女が演じた「エリーズ」は全身に刺青を彫った女性なんだけど、亭主と娘を持ってバンド活動をするというミュージシャン。この映画で印象的なのは、病気の娘を介護するエリーズの姿だ。こういうシーンを観ていると、目から熱い涙がこぼれ落ち、胸がギュと締めつけられる。映画の中で彼女が唄う『Wayfaring Stranger』は様々な歌手がカヴァーしているが、バーテンスが唄うヴァージョンは秀逸だ。こういった歌は日本人向きじゃなく、スローで退屈な曲に思われがちだけど、アメリカでは“クラッシック”となっているので、今でも人気が高い。


 
 
  ここからはプロのミュージシャンを紹介します。

  ドイツ人歌手の「ニーナ(Nena)」と言えば、1983年にヒットした『99Luftballons』を思い出す人も多いだろう。この曲は世界的にヒットし、日本でも小林克也の『ベスト・ヒットUSA』で取り上げられたことがある。1980年代、彼女のバンドはもう一つのヒット曲を発表しており、それが『Irgendwie, Irgendo, Irgendwann』という曲である。2002年頃、イギリス人歌手のキム・ワイルドがこれに目を附け、『Anyplace, Anywhere, Anytime』という題でカヴァーした。もちろん、キムはドイツ語じゃなく英語で唄っている。しかし、ニーナとデュエットする時は、ニーナがドイツ語で唄い、キムが英語で交代に唄うことになっていた。この曲は如何にも1980年代といった雰囲気で、もう30年以上も経つのか、と思えてくるから妙に感慨深い。

  

  リンダ・カーター(Lynda Carter)は改めて紹介するまでもなく、元祖ワンダー・ウーマン。1970年代、『ワンダー・ウーマン』は絶大な人気を博したTVドラマだが、この印象が強すぎたのか、リンダはこれ以降、特に目立った出演作は無い。脚本に恵まれなかったのか、どれもパっとしない映画やドラマばかりで、有名なのは『マペット・ショー』に出演したくらい。これといった映画のオファーも無かったので、彼女は音楽や美容の分野で活動していた。

  しばらくリンダの姿を見ていなかった日本人が、久しぶりに彼女の顔を目にしたのは、BBCI(Bank of Credit and Commerce International)のスキャンダルが起きた時だ。この「BCCI」は怪しい経営実態や外国での非合法活動を指摘され、その取引業務が取りだたされ裁判沙汰となった。この時、マスコミに現れたのが、ケネディー政権で補佐官を務め、ジョンソン政権で国防長官に就任したクラーク・クリフォード(Clark McAdams Clifford)だ。彼は「スーパー・ロイヤー(Super Lawyer)」の異名を持つ人物で、ジャクリーン・ケネディー夫人などは、「彼を財務長官にしたら大変ね」と茶化していたくらい。ちなみに、クリフォード長官の時に副長官をとつとめていたのが、後にレーガン政権で核戦略を担当するポール・ニッチェ(Paul Nitze)である。あまり知られていないけど、彼は終戦後来日し、胡散臭い近衛文麿を尋問したことがある。でも、更なる尋問をしようと予定していたら、近衛が突然「自殺」してしまったので頓挫した。ニッチェは近衛がどのように大東亜戦争に関与したのか突き止めようとしたが、結局解らずじまい。こんな事もあったから、周囲の者が近衛を抹殺したくなるなるのも分かる。大学の歴史学者は「自殺」と信じているが、筆者は近衛が「暗殺」されたと思っている。根拠はいずれ述べたい。

Lynda Carter 33Robert Altman 3Clark Clifford 1Paul Nitze 1








(左 : リンダ・カーター  / ロバート・アルトマン / クラーク・クリフォード / 右 : ポール・ニッチェ )

  話を戻す。どうしてBCCIの裁判にリンダが現れたかと言えば、クリフォードの相棒がロバート・アルトマン(Robert Altman)だったからだ。このアルトマンはユダヤ人で、共同事務所の辣腕弁護士。リンダは以前、芸能プロダクションの社長であるロン・サミュエルズ(Ron Samuels)と結婚していたが、1982年に離婚してしまった。その後、彼女はアルトマンと出逢い、再婚して二人の子供、息子のジェイムズと娘のジェシカをもうけた。BCCIはCIAと繋がっていると噂され、資金洗浄などの違法活動もさることながら、イラン・コントラ事件にも関与していたらしい。CIAは昵懇の民間企業を使ってゲリラ討伐や極秘作戦を実行するから、あながち根拠泣き推測とは思えないんじゃないか。

  それはともかく、リンダ・カーターが唄う『Stay With Me』はテンポが良く、ラスベガスで披露されるような歌謡曲だ。1970年代から80年代にかけて、このような歌番組は結構多くて、現在の我々が観るとアメリカのショウビズ界でどんな曲が好まれいたのかがよく判る。かつて、日本でも歌手を招いてライヴ演奏させるという番組があったから、懐かしい人も多いんじゃないか。
  



  つぎに紹介したいのは、キャット・パワー(Cat Power)だ。この「キャット・パワー」という名は、元々ショウン・マーシャル(Charlyn Marie “Chan” Marshall)の藝名で、後にバンド名にもなった。由来は彼女が駆け出しの頃に遡る。コンサートが始まる前、バンド・メンバーのマーク・ムーアが「名前が無いぞ。何かないのか?」と叫んだので、ショウンは近くにいた老人の帽子に目を附け、そこに書いてある「Cat Diesel Power's」という印字に興味を惹かれた。彼女はこの名称を自分の藝名にしたそうだ。何とも奇妙な藝名だが、元家出少女だから、多少感覚がおかしくても不思議じゃない。

  ショウン・マーシャルはハスキー・ヴォイスが売り物だ。彼女の曲を聞くと、「やはりニューヨークは独特な雰囲気をもつ大都会なんだなぁ~」と思えてくる。ここで紹介する『ニューヨーク(New York)』という曲は、2008年にリリースされたアルバム、『Jukebox』に収められたナンバーで、ブルーズとジャズが絶妙に混じり合った名曲である。米国のナイト・クラブに行くと、こういった曲を披露するミュージシャンは意外と多く、固定ファンも少なくない。ただ、日本の高校生や大学生にとったら、つまらなく退屈なだけだろう。たぶん、40歳代後半の日本人なら、多少理解できるんじゃないか。興味が無い人でも、彼女の曲を聴けば、アメリカ人がどのような音楽を好むのか解るだろう。(日本だと、「キッャト・パワー」はどれくらいの知名度なのか不明だ。 「AKB」というアイドル・グループが流行る時代なので、全くの無名という可能性もある。)

 

  最後に紹介したいのは、マッチボックス・トゥエンティー(Matchbox Twenty)で、ヴォーカルを担当するロブ・トーマス(Rob Thomas)は、カルロス・サンタナのバンドにゲスト参加して『Smooth』を唄っていたから、今だと彼を知っている日本人も多いだろう。ところが、『ディジーズ(Disease)』が発表された2002年頃は、日本での認知度は極端に低かった。当時、米軍放送局のラジオ「AFN(元のFEN)」でよく流れていたが、地上波の音楽番組ではあまり紹介されなかったんじゃないか。 でも、アメリカ本土では人気が高く、ロブ・トーマスは色々なバラエティー番組にも出ていた。令和の高校生や大学生は、どんな媒体で洋楽の情報を手に入れるのか、本当に謎である。インターネットを調べるといっても、何らかのサイトがあるはずで、筆者は時代遅れの日本人なので、音楽雑誌の『Burn』や『rockin' on』、『Player』、『Young Guitar』くらいしか知らない。20代の若者が何を読んで、どんなサイトで情報を集めているのか興味がある。

  とにかく、『Disease』はキャッチーな曲なので、既に知っている人もいるだろうが、初めて聴く人にも評価される曲だと思う。クルマを運転している時、ラジオからこの曲が流れると、つい一緒に唄いたくなるから、アメリカ人がマッチボックス・トゥエンティーを評価する気持ちは判る。でもまぁ、音楽の趣味は十人十色だから、「つまらない !」と却下する人もいれば、「結構いいじゃん !」と賛成する人もいるだろう。

  

  今回は筆者の身勝手な趣味のブログなので、「黒木、何やってんだよぉ」と不満を持つ人もいると思うが、筆者は本来ロック音楽が専門なので御免なさい。元々、当ブログは音楽と漫画をテーマに書くつもりで始めたから、こうした内容が本来の趣旨である。それが、ひょんな事から政治や歴史のブログになってしまった。本音を言えば、ハード・ロックを特集したかったのだが、あまりにもマニアックになってしまうので、普通の音楽動画を取り上げることにした。不評でなければ、また別の機会に紹介したい。最後に、つまらない紹介記事になってしまいましたが、お正月ということで、どうかご容赦ください。