保守派へユダヤ人の魔の手が伸びる

Marine Le Pen 7Geert Wilders 44







(左 : マリーヌ・ル・ペン   /  右 : ヘルト・ウィルダース)

  第21世紀になると、再び民族の大移動が起きた。歐米諸国には祖国の貧困や紛争を嫌うイラク人やシリア人が雪崩れ込んだ。さらに、彼らに加え、アフリカの黒人やアジア人も我先にと続々押し寄せてきた。とりわけ、左翼思想にドップリと漬かったスウェーデンは悲惨な状態だ。北歐の白人国家なのに、街には異質な容姿の外人が溢れている。日本人ならギョッとしてしまうが、マルメといった都市ではチャドルを着たムスリムや黒い“スウェーデン人”が珍しくない。こうした惨状は、ドイツやフランスでも現れている。最近では、黒いドイツ人議員まで誕生しているんだから、チュートン系ドイツ人じゃなくてもショックだ。いくらリベラル教育で洗脳されたドイツ人とはいえ、まともな国民であれば異人種との共存なんて真っ平御免である。案の定、裕福な紳士・淑女は都市部から逃げ出し、郊外の高級住宅へと“移住”した。しかし、貧乏な庶民は置いてけぼり。引っ越しの費用すら捻出できないから、「右翼」と称される候補者に投票するしかない。

  ということで、デンマークやオーストリア、ネーデルラント、ベルギーといった国家でも、同様のナショナリズムが台頭している。自国民を“第一”とする政党は、移民・難民への“優遇措置”を廃止しよ、と要求し始めた。リベラル思想が強いネーデルラントでもナショナリズムの“うねり”が勃興し、「自由党(Partij voor de Vrijheid)」のヘルト・ウィルダース(Geert Wilders)が脚光を浴びるようになった。彼はムスリム移民の流入に対して異議を唱え、難民の定住を促すEU委員会にも叛旗を翻す。主流メディアは非難囂々だが、保守派国民は密かに大歓迎。そりゃそうだ。普通の日本人だって「色黒のオランダ人」を見たらビックリするだろう。(註/ 所謂「オランダ」は連邦制度をとるネーデルラント王国の1州であるから、本来は「オランダ州」を意味する名称なんだけど、世間では「オランダ」が一般的なので、筆者もこれを使っている。ただし、国家全体を指す場合には、なるべく「ネーデルラント」を使うことにしている。)

  今は存在しないけど、昔、格闘技の「K-1」や「PRIDE」の試合を見に行った人は、アーネスト・ホースト(Ernest Hoost)やレミー・ボンヤスキー(Remy Bonjasky)を見て、「アフリカの選手かぁ~」と思ったが、リングから発せられる彼らの出身国を聞いて「えっ !」と驚愕した。ピーター・アーツ(Peter Aerts)やセーム・シュルト(Semmy Schilt)が、所謂「オランダ人」選手なのは理解できる。「でも、あの二人は・・・」と呟いた人も多かったんじゃないか。ネーデルラントの歴史を知らない日本人は、「確か・・・オランダ人って白人だよなぁ~」と困惑するが、どうして黒人がオランダ人なのか腑に落ちない。しかし、彼らが「スリナム系」と判れば、何となく納得できるだろう。

  一般の若者や格闘技ファンのオッちゃん達は、埼玉スーパー・アリーナや横浜スタジアムの場所を知っていても、中南米の地理には詳しくない。普通の大学生や高校生だと、友人や先輩から「スリナム共和国(Republiek Suriname)」と聞いてもピンと来ず、「えっ、それ何処っすか?」と真顔で訊いてくる。ある先輩と後輩の会話がとても面白い。スリナムを知らない後輩に先輩が説明する。

  先輩 : 「オメェーよぉ~、知らねえのかぁ? ガイアナ(Guyana)と仏領ギアナ(French Guiana)に挟まれた国だよ !」
  後輩 : 「ガイアナとギアナですかぁ? ・・・ちょっと分かんないっス !」
  先輩 : 「まったく、地理の授業で習わなかったのかよぉ~? ブラジルの北に小さな国があんべ ! 昔の“オランダ領ギアナ”っていう所だ。オメェー、世界地図見たことねぇのかぁ?」
  後輩 : 「あぁぁ、そこですか ! いやぁぁ~、俺、地理の授業が苦手なんで・・・。先輩、詳しいっすねぇ~。どんな国なんですかぁ?」
  先輩 : 「えっ、それは・・えぇぇとぉ~、俺もよう知らんけど !」
  後輩 : 「先輩、何でそこだけ関西弁なんすかぁ?」
  先輩 : 「えぇやん !」
  後輩 : 「んもう、先輩、すぐ誤魔化すんだからぁ~」
  先輩 : 「しょうがねぇだろ~、俺も地理の授業苦手だし(笑)・・・」

  とまぁ、一般人の会話なんか、こんな程度だろう。ちょっと呆れてしまうが、アメリカ人の大学生も似たようなものだったから、「まぁ、しょうがねぇか !」と諦めるしかない。ちなみに、PRIDEやUFCで活躍したアリスター・オーフレイム(Alister Overeem)は、スリナム系じゃなくてジャマイカ系であるそうだ。

Remy Bonjasky 2Ernest Hoost 2Alister Overeem 3








(左 : レミー・ボンヤスキー  / 中央 : アーネスト・ホースト  / 右 : アリスター・オーフレイム  )

  脱線したので話を戻す。ウィルダース党首は自由党を創設する前、やや保守派に近い「自由と民衆政の国民党(Volkspartij voor Vrijheid en Democratie / VVD)」に属していた。しかし、彼のイスラム批判は辛辣で、「ムスリムの過激派は危険だ !」と大宣伝。それゆえ、VVDの幹部からは「極右分子」と見なされ、仲間と思われたくない「厄介者」扱い。そこで、ウィルダース議員はVVDに見切りをつけ、小池百合子のように古巣を去ることに。2004年、一匹狼となったウィルダー氏は、「ウィルダース・グループ」を結成する。これが後に「自由党」と呼ばれる“極右”政党だ。自前の党を創ったことで、ウィルダース氏は遠慮なく自分の意見を発表できるようになり、彼のイスラム教批判とムスリム移民の排斥は更に激しくなった。

  ネーデルラントにおけるムスリム問題は日本にも伝えられたから、「テオ・ヴァン・ゴッホの殺害事件」を覚えている方も多いだろう。有名な画家のゴッホを祖先とし、映画監督を務めていたテオ・ヴァン・ゴッホ(Theo van Gogh)は、「服従(Submission)」という反イスラムの映画を製作したことがある。しかし、そのことでムスリムの怒りを買っていた。この映画はソマリア難民のアヤーン・ヒルシ・アリ(Ayaan Hirsi Ali)を題材にしたドラマ。当時のヨーロッパでは、イスラム教徒の野蛮性を批判した作品、ということで話題になっていた。

Theo Van Gogh 01Mohammed Bouyeri 2Ayaan Hirsi 111








(左 : テオ・ヴァン・ゴッホ  / 中央 : モハメッド・ボイエリ  / 右 : アヤーン・ヒルシ・アリ )

  しかし、特定の宗教を槍玉にあげることは、致命的な悲劇を生むことになる。2004年11月2日、自転車に乗っていたゴッホ氏は、イスラム教徒のモハメッド・ボイエリ(Mohammed Bouyeri)に拳銃で撃たれてしまった。彼は自転車から転げ落ち、そのまま道路へ倒れ込んだ。すると、暗殺者のボイエリは倒れたゴッホ氏に近づく。このテロリストは更に数発、彼の体に銃弾を撃ち込んだ。でも、暗殺はそれで終わりじゃない。激しい憎しみを抱くボイエリは、ゴッホの頭を摑み、彼の喉をナイフで切り裂いた。よくシリア人とかアラブ人のテロリストが敵を捕まえると、処刑や見せしめのために捕虜の首を切り落としたり、喉をナイフで突き刺すことがある。思わず目を背けてしまうが、首からは鮮血が吹き出し、囚人は即座に絶命。これは羊とかの生け贄を屠る時と同じだ。中東アジアのアラブ人やユダヤ人は、捕まえた異教徒を人間と思わず動物扱いするから、日本人とは違った精神構造を持っている。だいたい、ペニスの皮を切り取ることが神様との契約なんだから、お花畑の日本人には全く理解できない。

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(上写真  /  ネーデルラントに住み着くムスリム移民)

  イスラム教徒を激しく非難する事で人気を博したウィルダースであるが、その背後にはユダヤ人の影がチラついている。日本のマスコミは全く報じないが、彼は生粋のバタウィ人(Batavi / ゲルマン系民族)じゃない。父親のヨハネス(Johannes Henricus)はオランダ人らしいが、母親のマリア(Maria Anne)はインドネシア出身で、彼女の家族はアジア・ユダヤ系と伝えられている。母方の祖父であるヨハン・オーディング(Johan Ording)は、オランダ領インドネシアで金融業を営んでいたそうだ。そして、彼の妻、すなわち母方の祖母であるヨハンナ・オーディング・メイヤー(Johanna Ording-Meijer)はマレー系のユダヤ人であったという。ユダヤ人というのはヨーロッパ人にくっ附いて、北米や南米、あるいはアフリカ大陸や東南アジアの植民地へ赴き、白人のフリをして支配者層になる。彼らは銭儲けが上手いから、植民地で一財産築く者もいた。中には奴隷商人もいたけど、ユダヤ人の学者は意図的に隠している。

  祖父母の家系を知れば、なぜ孫のヘルトが妙にユダヤ人と親しかったのか、が理解できるよう。驚くことに、ウィルダースは若い頃、自発的にイスラエルへ渡航し、トマー(Tomer)にあるモシャブ(Moshav)で過ごしていたそうだ。この「トマー」というのは、ヨルダン川西岸にあるユダヤ人の入植地で、「モシャブ」とは農業を基本とした村落共同体である。左翼体質が濃厚な一部のユダヤ人は、神様から貰ったカナンの地で共産主義のコミューンを創り、資本家による搾取の無い農村で暮らしたいと思っていた。イスラエルのメディアによれば、ウィルダースはユダヤ人を移民の模範と評していたそうだ。彼は同化に励む移民に対して、「ユダヤ人を見倣え」と何度も述べ、自らを熱心なイスラエル支持者と表明していた。(Cnaan Liphshiz, "In the honeymoon over for Geer Wilders and Dutch Jews? ", The Times of Israel, 2 May 2014.)

  ちなみに、農民となったユダヤ人が集まる「キブツ(kibbutz)」は、歐米人の間でもよく知られている。カナダ出身の俳優であるセス・ローゲン(Seth Rogen)は、アングロ・サクソン系のカナダ人じゃなくて、見た目通りのユダヤ人。彼の両親であるサンディーとマーク・ローゲンはキブツで知り合ったそうだ。また、「アメリカ人女優」のデブラ・ウィンガー(Debra Winger)も種族的にはユダヤ人。彼女は若い頃、イスラエルのキブツで過ごしたことがあるという。正統派のユダヤ教を信奉する家庭に生まれたデブラは、自分の意思で「キブツ」へと向かい、18歳の時に米国へ戻ってきたそうだ。その後、デブラは女優の道を歩み、ヒット作品となった『愛と青春の旅立ち』に出演する。その他の作品としては、『アーバン・カウボーイ(Urban Cowboy)』や『ブラック・ウィドー(Black Widow)』、『背信の日々(Betrayed)』が挙げられる。

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(左 : セス・ローゲン  / 中央 : ユダヤ移民を演じるローゲン  / 右 : デブラ・ウィンガー )

  毎度の事ながら、ユダヤ人の俳優には社会主義者やピンク・リベラルが多く、豊かな資本制国家に住みながらも、貧乏な共産主義の村落を理想とするみたいだ。でも、左巻きのユダヤ人はキャピタリストが資金を流す映画で成功すると、黒塗りのリムジンを購入し、高級住宅地の豪邸に住む。ところが、その心は依然としてプロレタリアートかマルキスト。庶民を苦しめる金融業者や白人ナショナリストを批判して自己満足なんだから呆れてしまうじゃないか。それなら、さっさとアメリカを離れてイスラエルに移住すればいいのに・・・。

  脱線したので再び話を戻す。ウィルダース氏はゲルマン系の“オランダ人”に憧れているのか、生来の髪を金色に染めている。ブロンド・ヘアーにしたウィルダース氏には、「キャプテン・パラキサイド(Captain Peroxide)」なる渾名が付いているそうだ。(Thomas Moerman, "How Geert Wilders slowly transformed into on of Europe's most radical politicians", Business Insider Netherland, March 15, 2017.) (註 : 黒髪の人が金髪にする場合、先ず髪を過酸化水素<hydrogen peroxide>で漂白してから、金色に染めるという。) もしかすると、彼はインドネシアのルーツを隠したいのかも知れない。ウィルダース氏にはポールという兄がいて、ポールは『シュピーゲル』誌のインタヴューに応じたとき、「私はヘルトの意見に反対だ !」と述べていた。

  金髪のウィルダース氏を見ていると、何となくデーブ・スペクターを思い浮かべてしまうが、反ナチスのユダヤ人でも、憎いアーリア人の容姿には憧れるようで、「俺は黒髪のセム種族じゃない。ヨーロッパの白人なんだぞ !」と言いたいようだ。まぁ、ウィルダース議員は外見をゲルマン人風にしていたが、その中身は“ユダヤ人的”であった。彼は国内でのコーラン禁止を訴え、イスラム教の聖典をヒトラーの『我が闘争』に譬えていたのだ。でも、これはいくら何でも酷すぎるんじゃないか? ちなみに、彼と結婚したクリスティナ(Krisztina Marfai Arib)夫人は、ユダヤ人の血を引くハンガリーの外務官僚だった。「類は群れる」と言うけど、本当なのかも知れない。

Geert Wilders & wife Krisztina 1Paul Wilders 1









(左 : 金髪にしたウィルダース議員とクリスティナ夫人 /  右 : ポール・ウィルダース )

  兄のポール・ウィルダース氏によれば、弟のヘルトは18歳の時にイスラエルへ渡り、キブツで働いたことがあるそうだ。若い頃、ユダヤ人と一緒に過ごしたことが嬉しかったのか、帰国後のヘルトは地元のユトレヒトにトルコ人やモロッコ人が流れ込んできたので不快になった。まぁ、ゲルマン系のオランダ人だって、隣人がイラク人とかエジプト人になれば不愉快になるだろう。ムスリム移民に嫌悪感を抱いたヘルト・ウィルダースは、9/11テロが起こると、そのイスラム嫌いを益々加速させていった。

  「寛容の精神」を尊ぶネーデルラントでも、不気味な外人で治安が乱れると、さすがに「堪忍袋の緒」が切れるようだ。平穏だった国にはムスリム関連の事件が頻発し、一般国民は口には出さないがムスリム移民に敵意を燃やす。こんな政情になったから、ウィルダースに追い風が吹いたのも当然だ。しかも、2002年には政治家のピム・フォルタイン(Pim Fortuyn)が殺害されたから、さあ大変。下手人のフォルカート・ヴァン・デア・グラーフ(Volkert van der Graaf)が動機を訊かれると、フォルタインがムスリム移民をダシ(scapegoat)にして少数派を非難していたから、という言い訳だった。また、2004年には例のテオ・ヴァン・ゴッホが暗殺されている。多民族国家となったネーデルラントでは、髭面のゴロツキによる殺人が増えたけど、恐ろしい犯罪はそれだけじゃなかった。ムスリム系移民による強姦や輪姦、人身売買、傷害事件なども発生し、街中でチャドルやブルカを着た女性も増えてしまった。性犯罪を専門とする警察機構のマリク・ヴァン・オヴァーフェルト(Marijk van Overveld)やエスミー・ヒュジプス(Esmee Huijips)によれば、毎年約1,400名の女性(主に10代の少女)が誘惑され、娼婦として売買されているそうだ。こんな状態になっては、さすがに温厚なオランダ人も黙ってはいられない。腹に据えかねた庶民は、勇気を振り絞って移民反対の声を上げている。

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(左 : ピム・フォルタイン  / 中央 : フォルカート・ヴァン・デア・グラーフ / 右 : 殺害されたピム・フォルタイン )

  普通の歐米人だと、ウィルダースの激しいムスリム批判を耳にして、「あんな風に言って、大丈夫なのか?」と心配してしまうが、彼にはちゃんと有力な“ケツ持ち”が附いていた。ユダヤ人のパトロンというのは、マフィアの首領みたいなもので、黙っていてもドスが利いている。「暴言王」と呼ばれたトランプ大統領だって、背後にイスラエル・ロビーやネタニヤフ首相が控えていたから、堂々と不法移民の排斥を訴えることができたのだ。マスコミから「レイシスト」呼ばわりされたウィルダースであるが、彼はちゃんと「ユダヤ人の味方 !」という看板を掲げていた。この右翼分子は『Nieuw Israelietisch Weekblad』の取材を受けた時、「私はイスラエルに居ても、ネーデルラントに居るような気分を味わえる」と述べたそうだ。確かに、彼は17歳から19歳までイスラエルに住んでいたし、それ以降も、約40回ほどイスラエルを訪問したというから、相当な「ユダヤ贔屓」である。ウィルダースのゴマすりは磨きがかかっており、「イスラエルは中東アジアで唯一のデモクラシー」であるとベタ褒めだ。しかし、イスラエル軍によるパレスチナ人の虐殺も凄いけど・・・。

元兇には触れないナショナリスト

  移民や難民を排除したい保守派の政治家にとって、ユダヤ人を味方に附けることは財政的に必要な妥協となる。フランスの政界で注目を浴びるマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)も、ユダヤ人を敵に廻したら永遠に政権奪取はできないと悟ったのか、ユダヤ人をパトロンにして基盤を固めているようだ。「国民戦線(Front nayional)」から「国民連合(Rassemblement national)」へと改名したマリーヌ・ル・ペンには、二度の離婚経験がある。しかし、フランス人は死ぬまで恋愛を諦めない。彼女は失敗にめげず、2009年頃から同僚のルイス・アリオ(Louis Aliot)と交際し始めた。二人の関係は同棲にまで発展したが、2019年頃には愛情が冷めてしまい、ついに破局となってしまった。党の副代表にまで昇りつめたアリオは、現在、フランス南部にあるペルピニャン(Perpignan)で市長を務めている。

Louis Aliot 11Louis Aliot in Israel








(左 : マリーヌ・ル・ペンとルイス・アリオ   /  右 : イスラエルを訪問したアリオ )

  弁護士から政治家へ転職したアリオは、若い頃から国民戦線の青年部に属していたそうで、彼の両親も創成期から国民戦線の支援者であった。しかし、アリオは毛並みが違う「保守派」で、彼の父親はフランス人だが、母親のテレーズはユダヤ系フランス人となっている。テレーズの家族はアルジェリア戦争が勃発した時、フランスに戻ってきた引揚者であった。アルジェリアでは「クレミュー法令」が施行されたから、書類上の「フランス国民」になったユダヤ人はゾロゾロいる。しかし、息子のアリオはフランスのトゥールーズ生まれで、信仰の面ではカトリック教徒だ。フランスだけでなく、他のヨーロッパ諸国でもそうだが、宗教的にはキリスト教徒であっても、血統的にはユダヤ人という人物は案外多い。よく日本の大学教授は、お気に入りの知識人、とりわけ左巻きのユダヤ人が書いた下らない洋書を翻訳するけど、執筆者の血統や育ちを紹介することはほとんどない。たとえ、ユダヤ人らしき知識人でも、「フランス人」とか「ドイツ人」と紹介し、後ろ暗い過去や民族性を隠したりする。

  ユダヤ人に対する批判を取り下げ、ムスリム移民に対する攻撃に特化することは、ナショナリズムを掲げる政治家や政党にとっては非常に重要だ。政治に妥協はつきもの。これは生き延びるための“秘訣”だからしょうがない。自国民の遺伝子や伝統文化を守りたいナショナリストは、不愉快なエイリアンを全て排除したいと望むが、そこにユダヤ人を含めてしまうと、財政的に苦しくなるから、ユダヤ人の駆除には目を瞑ろうと考える。やはり、大口の政治献金を求めるなら、ユダヤ人に媚びた方がいい。実際、マリーヌ・ル・ペンが代表になると、国民戦線を擁護するメディアも現れたから、「反ユダヤ色」を消したのは正解だった。

  例えば、右派雑誌と評される『Causer』の編集長を務めるエリザベス・レヴィ(Élisabeth Lévy)によれば、国民戦線と足並みを揃えるユダヤ人もいるらしい。フランスの愛国者を気取るユダヤ人だと、「我々は国民戦線と一緒になって、共通の敵であるムスリムと闘っているのだ !」、と豪語する。( Saïd Mahrane, "Marine Le Pen fait la cour aux juifs", Le Point, 3 décmbre 2011.) ちなみに、このレヴィ編集長は『Causer』の創刊者で、アルジェリア系のユダヤ人である。元々、彼女の家族はモロッコに住むセファラディー系のユダヤ人であったが、移住先のアルジェリアが厭になったから、一家揃ってフランスへ移り住んだのだろう。アルジェリアのユダヤ人は、現地のフランス人に協力して、何らかの恩を売りつけ、「愛国心に満ちたフランス人」としてフランス本土に引き揚げてくるから、とても狡猾だ。「黒い足(ピエ・ノワール / Pieds-Noirs)」と呼ばれた引揚者については、別の機会に述べたい。日本でも有名なエコノミストのジャック・アタリ(Jacques Attali)や、ノーベル物理学賞を貰ったクロード・コーエン・タヌージ(Claude Cohen-Tannoudji)もアルジェリア出身の「黒い足」でユダヤ人。

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(左 : エリザベス・レヴィ  /  右 : パトリック・ドラヒ )

  ル・ペン党首に賛同するユダヤ人が存在すると言っても、やはり国民戦線に敵意を抱くユダヤ人の方が断然多い。例えば、2017年、大統領戦を巡ってエマニュエル・マクロンと争っていたマリーヌ・ル・ペンは、マクロンを矢鱈と支援するメディア業界、とりわけ大御所のパトリック・ドラヒ(Patrick Drahi)を非難した。このドラヒは大富豪の「フランス国民」だが、血統的にはモロッコ系のユダヤ人。カサブランカで生まれたドラヒは、ポルトガルから追放されたユダヤ人の子孫らしい。こうした背景もあってか、彼はフランス国籍のほか、モロッコ国籍にポルトガル国籍、さらにイスラエル国籍まで持っている。日系日本人では考えられない。ドラヒは一体、何処に忠誠を誓っているのか? まったく、重国籍を認めるフランス人は狂っている。カルロス・ゴーンみたいな奴がフランス各地にのさばり、商売と節税のために世界中を飛び回っているんだから。

  このドラヒは巨大な国際メディア企業の「Altice」(IT通信会社)を創設したビジネスマンで、「Altice France」の傘下には有名な「Libération」や「L'Express」、「l'Etudiant」、「BFM(大手のテレビ局)」、「RMC(ラジオ局)」がある。さらに、ドラヒは通信・携帯電話会社の「SFR」を買収した。さらに2019年、あの世界的に有名な競売会社の「サザビーズ(Sotheby's)」に目を附け、そこの大株主になってしまったのだ。多重国籍のユダヤ人がメディア王となって、庶民の精神を支配するフランス。異邦人が合法的な国民となり、どんどん財産を増やしても気にしないフランス人。ホント、フランスの國體を破壊し、廃墟に住むガリア人には治療薬が無い。『フォーブス』誌によれば、2019年の時点で、ドラヒの総資産額は94億ドルに上るそうだ。

  とにかく、大統領を目指すマリーヌ・ル・ペンは、国民戦線のユダヤ批判を封印した。おそらく、ムスリム批判だけに絞れば、マスコミからの攻撃が和らぎ、財界からも何らかの支援を貰えるかも、と考えたに違いない。その一環なのか、マリーヌの恋人になったアリオは、2011年、国民戦線の幹部で初のイスラエル訪問者となった。(Yair Ettinger, French Natioanl Front Heads to Israel to Stump for Support Ahead of Election", Haaretz, December 13, 2011.) イギリス人やアメリカ人の政治家もそうだが、当選を願うフランス人も、やはり卑屈な「イスラエル参詣(もうで)」をするみたいだ。でもさぁ、神社で合格祈願をする受験生じゃあるまいし、嘆きの壁に寄りかかって下半身を揺らしても、あっさり当選するとは限らないぞ。

  一方、ユダヤ人に好意的でない所属議員には、主流メディアやユダヤ知識人からの非難が向けられている。国民連合内部にも、同両議員を批判するユダヤ人メンバーがいて、それが経済学者から地方議員に転向したジャン・リシャール・サルザー(Jean-Richard Sulzer)だ。彼は非公式な「全国ユダヤ人協会(Cercle national juif)」の頭目を務めている。サルザーは内部に反ユダヤ主義者が蔓延(はびこ)らないよう、監視委員会(Un comité de vigilance)を設置したので、この党は世間から「ユダヤ人の国民連合(Rassemblement national juif)」と呼ばれている。

Jean Richard Sulzer 1Gilles Pennelle 01Jordan Bardella 3Jean Francois Jalkh 001







(左 : ジャン・リシャール・サルザー  / ジル・ペネル  /  ジョーダン・バルデラ /  右 : ジャン・フランソワ・ジャルク )

  サルザーのブラックリストに載った同僚議員を挙げてみると、先ず政治家に転向した元歴史学者のジル・ペネル(Gilles Pennelle)が思い浮かぶ。彼は「大地と民衆(Terre et Peuple)」を口にしたことで、サルザーの検閲に引っ掛かってしまった。これはナチスのイデオロギーである「血と土(Blut und Boden)」を連想させるから“駄目”となる。もう一人は、党の副代表を務めるジョーダン・バルデラ(Jordan Bardella)だ。彼は以前、国民戦線の重鎮であったジャン・フランソワ・ジャルク(Jean-François Jalkh)の側近を務めていた。ネオナチの臭いがするのか、バルデラはサルザーから睨まれている。何しろ、ジャルクはマリーヌの父で国民戦線の党首であったジャン・マリー・ル・ペンの盟友であったし、ガス室でのユダヤ人殺害に関して疑問を抱いていたから、ユダヤ人の敵と見なされても不思議じゃない。さらに、ジャルクはヴィシー政権を非難せず、むしろペタン元帥を称讃していたから、サルザーからすれば獅子身中の虫である。

   ここでは詳しく触れないが、歐米人や日本人の大半は、ナチスによるガス室殺人を盲目的に信じているが、そんなのはおかしい。だいたい、現場検証も科学的捜査も行われず、公式な報告書、遺体の検死も無い「虐殺物語」なんだから、信じる方が異常である。しかも、お人好しの日本人は、ドイツ人を有罪にするための心理戦や謀略活動、極秘の拷問、軍に買収された科学者などを想像していないのだ。もし、「科学的調査」にOSSの御用学者が使われたらどうするんだ? もっと怪しいのは、法廷での宣誓をしていないユダヤ人の「証言」である。こんなのは女性週刊誌が目玉にする「衝撃の事件簿」か、居酒屋での愚痴に過ぎない。スティーブン・スピルバーグの『ショアー』を観て、「ユダヤ人は可哀想だなぁ~」と憐れんでいる日本人は反省しろ ! カナダの法廷に立ったラウル・ヒルバーグ博士(Dr. Raul Hilberg)は、偽証罪を恐れるあまり、いつもの饒舌さを失い、明確な証言を避けていた。これは奇妙な光景である。物的証拠があれば、堂々と提出すればいいじゃないか ! 不思議なことに、興味深い裁判は大々的に報道されなかった。

  ジャルクも反対していたが、娘のマリーヌが父親のジャンを党から追放したのは間違いだ。確かに、ジャン・マリー・ル・ペン党首はユダヤ人に対して辛辣だった。しかし、フランス人を第一に考える愛国者なら、フランス社会を腐蝕させる異邦人に嫌悪感を抱き、彼らを排斥しようとするのは当然だ。昔のフランスは魅力的であったから、東歐や南歐ばかりじゃなく、北アフリカからも様々な人種がやって来た。ところが、第19世紀の後半くらいから、ようやく優生学が一般社会に普及し、庶民にも種族の保存や防衛といった意識が芽生え始めた。左巻きが普通の知識人は、反ユダヤ主義のルネ・マルシャル(René Martial)やジョルジュ・モコ(Georges Mauco)、ジョルジュ・モンタンドン(George Montandon)を非難するが、同化しにくい外国人や不愉快な人種を取り除こうとするのは当たり前じゃないか。

Rene Martial 01Georges Mauco 01George Montandon 01Charles Maurras 02








(左 : ルネ・マルシャル  /  ジョルジュ・モコ / ジョルジュ・モンタンドン  / 右 :  シャルル・モラレス)

  しかし、洗脳された西歐人は、こうしたフランス人を「人種差別主義者」として糾弾する。一般人は自分がどのような教育を受け、誰に精神を改造されたのか解らない。心理戦や謀略工作を学んだ軍人でも、「中学や高校で自分がどんなイデオロギーを植え付けられたのか」を検証していないのだ。少なくとも、「歴史教科書が“誰”によって書かれたのか?」くらいは確認すべきだ。西歐世界でのナショナリズムを最も憎んだのは、異質な肉体を持つユダヤ人であった。今でも、熱心にドイツやフランスの優生学と人種衛生学を糾弾するのは、ユダヤ系知識人とユダヤ人に阿(おもね)る左翼白人だ。彼らとは対照的に、ジャン・マリー・ルペンはフランス人の遺伝子プールを大切にする愛国者である。彼はマスコミから叩かれる「右翼」であるが、「アクション・フランセーズ(Action Français)」のシャルル・モーラス(Charles Maurras)や、上院議員のフランソワ・コティー(François Coty)、民族派のモーリス・バレス(Auguste-Maurice Barrès)に連なる国士だ。(註: 元々、コティーは香水会社を経営する豪商で、「フィガロ」紙を買収したことでも知られている。だが、左翼とユダヤ人の間では嫌われており、右翼の反ユダヤ主義者として悪名高い。)

Maurice Barres 02Francois Coty 2Alain DElon 882Jean Marie Le Pen as Captain








(左 : モーリス・バレス  / フランソワ・コティー  / 『若者のすべて』で軍人に扮したアラン・ドロン  /  右 : パラシュート部隊にいた頃のジャン・マリー・ル・ペン )

  ちなみに、フランスの名優アラン・ドロン(Alain Delon)は国民戦線の賛同者である。たぶん、ドロンは古き良きフランスを知っていたから、変質する祖国を心配したのだろう。あれだけ黒人やアラブ人が雪崩れ込めば、普通の国民だって危機感を抱く。“ヨーロッパらしいフランス”を懐かしむ者は、自らの利益を顧みず、国民戦線に投票するはずだ。主流メディアから批判されても、正直なアラン・ドロンは偉かった。まぁ、彼は既に名声を獲得し、それ以上の野心を求めなかったから、「本音」を語ることもできたんだろう。しかし、普通の役者なら、たとえル・ペンの支持者であっても何も語らず、リベラル気取りで黙っているだろう。そう言えば、晩年のマーロン・ブランドーも、「本音」を語る俳優だった。彼はCNNの「ラリー・キング・ライヴ」に出演した時、ハリウッドでは禁断となっているユダヤ人批判を口にしていた。日本ではあまり知られていないが、ドロン氏は前々からジャン・マリー・ル・ペンと友人関係にあったようだ。「Le Matin」というスイスの新聞社からインタヴューを受けた時、ドロン氏はあっさりと国民戦線への共感と支持を述べていた。『サムライ』という映画に出演していたアラン・ドロンは、意外にもド・ゴール主義者で、サムライの片鱗を見せていた。(アラン・ドロンはどこか暗い影を持っていたけど、「サムライ・ジャパン」のサッカー選手よりマシだぞ。)

  話を戻そう。元軍人のル・ペン氏は「フランス人のフランス」を当たり前と考えているから、人権思想や多民族主義とやらで祖国を異邦人に明け渡す売国奴に異議を唱えた。また、彼は国家に殉じる高貴な精神を理解しているから、祖国のために命を捧げた日本人に敬意を表す。ル・ペン氏は来日した際、靖國神社を訪れた。しかし、主要メディアはル・ペン氏の訪問を取り上げなかったから、ほとんどの日本人は彼の来日すら知らなかった。当時、筆者が「あれっ !」と目を丸くしたのは、元自衛官の伊藤祐靖(いとう・すけやす)中佐がル・ペン氏の警護に当たっていたからだ。参拝の映像を目にした一部の国民も、「あれっ、伊藤さんだ !」と気づいたんじゃないか。

Jean Marie Le Pen in militaryJean Marie le Pen in Yasukuni 22






(左 : 外人部隊で活躍したジャン・マリー・ル・ペン  /  右 : ル・ペン氏の左側で警護に当たる伊藤祐靖 )

  それはともかく、靖國神社に赴いたル・ペン氏は、本来のフランス人なのかも知れない。武人の伝統を誇るフランス人なら、たとえ敵国の将兵であっても、軍人に対しての敬意を忘れないものだ。でも、フランスのユダヤ人は来日したら、靖國の英霊に敬意を払うのか? ゲットーから這い出てきた賤民は、フランスの国土に家を建てても、そこに根づく人間じゃない。フランス人とはガリア人を根幹とした民族であり、たとえゲルマン人やスラヴ人の血が混ざっても、先祖代々の血を引き継ぐヨーロッパ人のことを指す。フランスの愛国者がユダヤ人を嫌うのは、異質な血に対する本能的な危機感を抱くからだ。

  フランスの混迷と衰退は、民族の根源を破壊し、異質な遺伝子をどんどん受け容れてしまったことに起因する。肉体的に変質した民族は、祖先の遺産を継承する相続人にはなれない。我々が日本文化を継承できるのは日系人であるからだ。もし、支那人や朝鮮人、フィリピン人、タイ人、インド人の遺伝子などが大量に混ざってしまえば、日本人としての意識は限りなく薄くなってしまうだろう。現在の「フランス人」と呼ばれる国民の中には、フランス人とは思えないエイリアンが多い。アフリカ人でもアラブ人でも、フランス語を喋れば「フランス人」なんて馬鹿げている。しかし、こうしたフランスを理想とするのがユダヤ人。そして、ユダヤ人の銭を貰って喜ぶのが、進歩派や中道派の政治家だ。ユダの金貨を拒否するフランス人は、「非フランス的なレイシスト」になってしまう。まさしく、時代の変化とは恐ろしい。
  


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