大統領選挙は「不正」だった?

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  ジョー・バイデンが「ホワイトハウスの主人」、あるいは「養老院(介護施設)」と化した白亜館の入居者になってから、約5ヶ月が経とうとしている。しかし、彼の支持率は依然として低く、とても8千万票以上を獲得した「稀代の大統領」とは思えない。しかも、隠している痴呆症が悪化したのか、何かと物忘れが酷く、2月や3月になっても側近は記者会見を許さなかった。でも、さすがに「質疑応答無し」の蜜月期間とはいかないので、やむを得ず記者会見を開かせたが、バイデンの答えはシドロモドロ。痺れを切らした記者から普通の質問をされても、その趣旨が理解できず、豆鉄砲をくらった鳩みたいに「それ何?」と聞き返す始末。

  日本人でも呆れてしまうが、次々と大統領令にサインするバイデンは、自分が“何”に署名しているのか判らない。このお爺ちゃんは事態の把握ができず、ただ背後に控えるカマラ・ハリスから、「はい、これにサインして!」と催促されて筆を執るだけ。しかも、その「署名」すらホンモノかどうか怪しく、幾つかは「ジル夫人が代筆したんじゃないか」と思えるような「疑惑の署名」であった。とりわけ心配なのが、バイデンの独り言である。操り人形にしかみえないこの老人は、途方に暮れた表情で、「私はいったい何に署名しているんだ?」と呟いていた。

Joe Biden 62Kamala Harris 002








(左 : 痴呆症が進行するジョー・バイデン  / 右 : 大統領への昇格を待ち望むカマラ・ハリス )

  我々は外人なので“対岸の火事”を見るように楽しんでいるが、一連の報道を耳にするアメリカ国民は心配で堪らないだろう。多少なりとも“愛国心”を持ち合わせているアメリカ人なら、「おい、こいつヤバいんじゃなか?」と不安になるし、「こんな耄碌ジジイが四年間も大統領職にとどまるのか !」と天を仰いでしまうはずだ。在日米軍の将兵だって、CBSやCNNに惑わされず、インターネットで様々な情報を得ているから、「いくらなんでも、こんな奴が最高司令官なんて・・・・、そんな嘘だろう~」とぼやく。もしかすると、トランプに入れたはずの票が、ある“仕掛け”でバイデン票に移っていたかも知れないので、不満を募らせるアメリカ人は少なくない。

  こうした中、共和党系と思われる124名の退役軍人が、バイデンを批判する書簡を公開し、それを一部の保守派国民が取り上げたので、日本でも“静かな話題”となった。この公開書簡(Open Letter from Retired Generals and Admirals)を主導したのは、「Flag Officers 4 America」という団体で、主に高位高官の退役軍人で構成されているようだ。彼らは2020年の大統領選挙に強い疑念を抱き、「何らかの不正があったんじゃないか?」と怪しんでいる。合衆国憲法(Constitution)を守りたいと欲する元軍人は、民衆党による社会主義的政策に懸念を抱き、アメリカの國體(constitution)を浸蝕するマルクス主義思想に危機感を覚えている。書簡の中では「民衆党の議会と現政権のもとで、我が国は社会主義とマルキスト型の暴君政治へと左旋回している」と述べられていた。

Peter Feaver 1(左  / ピーター・フィーヴァー )
  ところが、この退役軍人達、しかも将校クラスの元高級軍人が連名で政治行動を起こした事に激しく異を唱えた学者がいた。それがデューク大学で政治学を教えるピーター・フィーヴァー(Peter Feaver)教授で、彼は「軍民関係(civil military relations)」の専門家である。フィーヴァー教授によれば、退役したとはいえ、将軍や提督クラスの軍人が大統領選挙の結果に疑問を投げかけ、その正統性に異議を唱えることは言語道断らしい。彼はジウィリアン・コントロールの原則を蔑ろにした、と署名者を批判している。フィーヴァー教授は、未だに鳴り止まない「陰謀論」に飽き飽きしているようだ。彼は「投票箱でトランプが負けたのは選挙不正によるもの」といった誤った主張を高名な政治家が堂々と表明し、退役軍人の一部もそれに同調し、「同じ神話」を信じ込んでいる、と嘆く。(Peter Feaver, "The military revolt against Joe Biden", Foreign Policy, May 12, 2021.)

  フィーヴァー教授によれば、この公開書簡はインターネットにある怪しげなサイトによく見られるもの、あるいは共和党にいる最悪な連中の戯言(たわごと)に過ぎず、党派的かつ誇張された、無茶苦茶な言いがかり(dog's breakfast)であるという。彼ら(署名した軍人)は2020年の大統領選挙が不正なもの、すなわち正統性の無い選挙とは明言していないが、それに近い見解を持っているそうだ。さらに、この退役軍人はバイデンの精神的および肉体的な状態に対しても危機感を持っている。この点については、外国人である日本人にも理解できるだろう。

  軍人の立場を弁えない署名者に怒りを覚えたフィーヴァー教授は、この書簡を“党派的”なものと見なしている。つまり、こんな書状は古参(高齢)の共和党員連中が叫ぶ愚論で、考慮に値しないものである、と。フィヴァー教授は原理原則を忘れた高齢軍人に疑問を抱き、「有権者が自由で公正な選挙でバイデンを選び、彼らが贔屓にするトランプじゃないから怒っているんじゃないか!?」、と推測した。軍民関係の専門家を自負するフィーヴァー教授は、特殊な軍人を非難する一方で、多数派の軍人を擁護している。確かに、ある種の軍人のは誤った見解を抱いているが、大多数の軍人は書簡に署名した軍人達よりも真摯で、名誉を大切にする人々である、と。要するに、『フォーリン・ポリシー』に投稿したフィーヴァー教授は、これらの軍人は合衆国憲法に忠誠を誓った人々なのに、彼らは自らの行動で自らを貶め、シヴィリアン・コントロールの原則を蹂躙している、と言いたいのだろう。

  日本では馬渕睦夫大使がYouTube番組でこの公開書簡を取り上げ、バイデン政権に対する批判が軍人の中でも起こっていると述べていた。一方、『アメリカ通信』を放送する奥山真司も、この書簡を話題にしていたが、彼はフィーヴァー教授の記事を紹介し、「とんでもない軍人が騒いでいる」と解説していた。奥山氏によると、書簡に共鳴した元軍人は、みんな高齢の白人男性ばかりであるらしい。「地政学者」を名乗る奥山氏は、軍人が政権批判を始め、軍民関係の原則を崩したら駄目だろう、という意見である。彼はこうした「80代のお爺ちゃん等」を「アホか !」と愚弄し、「軍人が自ら憲法の原則をぶち壊してどうするんだ ! こんなの有り得ない!」と叱っていたが、筆者は奥山氏に賛成できない。

  確かに、軍人が政治に容喙することは原則上、「禁止された行為」であり、立憲政治においては「御法度」である。「自分が嫌う政治家が最高司令官(大統領)になったから反対 !」というのは、軍人支配の独裁国と同じで承知できない。奥山氏は中南米の軍事独裁政権を引き合いに出し、正常で普通のアメリカ軍人は、あんな劣等国を蔑んでいるという。アメリカの軍人は政治に関わらないことを肝に銘じているから、奥山氏が知っている軍人の中には、選挙になっても中立性を守るため、敢えて投票しない軍人もいるそうだ。ただし、これはおかしな理屈で、軍人が「有権者」として特定の候補者に投票しても、シヴィリアン・コントロールの崩壊には繋がらないと筆者は思う。問題なのは、軍隊が「愛国心」や「国防」の大義名分で政治に介入し、軍人の意見で国家を動かしてしまうことだ。

  奥山氏は視聴者に向けて、「フィーヴァー教授は軍民関係専門家の中で著名な権威者ですよぉ~」と紹介し、それとなく自分の見解をみんなに刷り込もうとしているが、フィーヴァー教授の投稿記事を読めば、「なぁ~んだ、リベラル学者の原則論かよぉ~」と判るはず。しかし、大抵の日本人は専門家の“経歴”や“肩書”、学会での“評判”などに感服してしまうから、フィーヴァー教授がどんな立場で記事を書いたのか確かめない。YouTube番組をボケ~と観るだけで、一端の「知識人」や「教養人」になったつもりの一般人は、「軍民関係(civil military)」なんて勉強したこともないし、学校の先生から軍国主義や軍人支配の恐ろしさを叩き込まれ、「文民優位(civilian supremacy)」こそがデモクラシーの要諦とわめく。権威主義に凝り固まった日本人ほど、アメリカの学者にひれ伏し、「高学歴の著名人が言うことだから本当だ !」と鵜呑みにすることが多い。奥山氏のファンは「さぁ~すが、奥山先生は凄いなぁぁ~」と感心するが、彼らの中でフィーヴァー教授の『Armed Servants』(Harvard Univ. Press, 2003)を読んだ人や軍民関係論を勉強した人は、いったい何人いるんだ?

  筆者は地政学の素人だけど、奥山氏の「御意見」にひれ伏すことはない。なぜなら、学生時代にちょっとだけ軍民関係を勉強したことがあるので、デモクラシーにおける軍隊の位置づけなら理解できるし、シカゴ大学のモリス・ジャノウィッツ(Morris Janowitz)や、メリーランド大学のデイヴィッド・シーガル(David R. Segal)、ロヨラ大学のジョン・アレン・ウィリアムズ(John Allen Williams)、ノースウェスタン大学のチャールズ・モスコス(Charles Moskos)といった専門家は馴染みの学者である。一般人でも亡くなったサミュエル・ハンチントン(Samuel Huntington)は知っているだろう。彼も軍民関係の専門家で、若い頃には『The Soldier and the State』という本を書いている。この著作には日本語訳もあるので、図書館で見かけた人もいるんじゃないか。それでも、日本の大学生で軍事を勉強し、図書館で『Armed Forces and Society』といったミリタリー雑誌を読んでいる人は、相当なオタク族だけだ。普通の大学図書館だと購入すらしていないんだから、一般の日本人が目にすることは滅多にない。そう言えば、政治学者の小室直樹先生は生前、日本の大学で軍事学が欠如している惨状を嘆いていた。会津出身の元軍国少年にしたら、軍事音痴の学生を輩出する東大には嫌気が差していたんじゃないか。

Morris Janowitz 1David Segal 1John Allen Williams 2Samuel Huntington 1







(左 : モリス・ジャノウィッツ  /  デイヴィッド・シーガル / ジョン・アレン・ウィリアムズ  / 右 : サミュエル・ハンチントン )

  筆者も軍人が政治に容喙することには反対である。イスラエルを建国し、後に首相となったダビッド・ベン=グリオン(David Ben=Gurion)が述べたように、軍人(軍部)は行政府の腕に過ぎない。「シヴィリアン・コントロール(文民統制)」とか「シヴィリアン・スプレマシー(政治家の優位)」がなぜ大切なのかと言えば、それは政治家の方が大所高所からの判断を下せるからで、理論的には国家の命運を決定する立場にあるからだ。軍人は部隊の編成や派遣、兵站の手配、軍事作戦の立案から実行などに長けていれば良い。しかし、政治家は国家全体のバランスを考えねばならず、現実の経済を左右する財政や金融に通じ、微妙な駆け引きが必要とされる内政・外政に加え、国民感情への配慮とか戦争の後始末などを考慮して政治的判断を下さねばならないから、政治的責任を取らない軍人よりも大変だ。ドイツ帝国で名を馳せた参謀総長のヘルムート・モルトケと鉄血宰相と呼ばれたオットー・フォン・ビスマルクの関係を思い出せば判るだろう。

  それでは、なぜ「アホ」でもない高級軍人が現政権に叛旗を翻したのか? 簡単に言えば、「あまりにも酷すぎるから」だ。日本の庶民にもバレたように、去年の大統領選挙は稀にみる八百長選挙だった。ビックリするほど異常な事が多すぎて、「本当の出来事なのか?」と疑ってしまう程だ。まぁ、アメリカの選挙だから、多少のイカサマなら目を瞑(つむ)ってもいいけど、電子投票機器を使った組織的不正に加えて、幽霊が書いた郵送投票といったインチキが目立ちすぎたのだ。もし、「不正が無かった」のであれば、どうして民衆党は激戦州での再集計に異議を唱えるのか? ペンシルヴァニア州やミシガン州、ウィスコンシン州の民衆党員は、全ての投票用紙を揃え、一つ残らずデータを第三者機関に渡して、科学的な検査を許すべきだろう。それなのに、なぜ妨害するのか?

  例えば、アリゾナ州のマリコパ郡では共和党の要請により再集計が行われるようになったが、当初、民衆党は百人近い弁護士を投入して再検査の妨害を画策した。しかも、電子投票機器に“いかがわしい点”があるのか、必死でサーバーやデータ記録の消去に努め、意地でも見せないという態度を取っていた。日本人には信じられないけど、アリゾナ州の民衆党員は投票結果の再確認を恐れていたのか、投票機器の科学的検証を妨害したのだ。しかも、機械を審査会に引き渡す直前、「手違い」という口実で保存すべきデータを消去したというから前代未聞である。(Tom Pappert,  "Maricopa County Deleted Election Databases Before Equipment Was Delivered To Arizona Auditors", National File, May 13, 2021) 幸い、データの修復がなされたから良かったけど、不安な点は他にも色々とある。例えば、大統領選挙の時、各激戦州では不審なIT業者が奇妙なアップデートを行ったので、オリジナルのデータが全部残っているのかどうか分からない。さらに驚くのは、投票機器が検査業者によって秘密裏にルーターに接続されていたいうから、インターネットに繋がっていた可能性もあるのだ。一般国民は「まさか !」と思ってしまうけど、アメリカでは何でも起こり得る。

  もう一つの激戦州であるジョージア州は悪の巣窟で、信じられない「事件」の連続だった。例えば、投票用紙は選挙後22ヶ月間保存されねばならないのに、一部の投票用紙は選挙直後に「組織的な抹殺」に廻され、証拠隠滅にされたらしい。何と、不審な投票用紙は軍隊で使うシュレッダーにかけられ、「粉々」にされてしまったのだ。通常のシュレッダーなら細長い紙となり、時間を掛けて貼り合わせれば、オリジナルを復元できるが、紙吹雪みたいにされたら不可能である。この粉砕作業はかなり組織的で、2020年12月30日の夜10時頃、搬送業者が大量の投票用紙をトラックで運び出したというから凄い。佐川急便も真っ青だ。以前、当ブログで紹介した通り、印刷技術の専門家であるピュリッツァー氏の検査により、電子投票機器が外部と繋がっており、容易にハッキングされることが判明した。この衝撃的事実を耳にしたアメリカ国民は、共和党員じゃなくても愕然としたばずだ。

Harrison Deal & Lucy Kemp 01(左  / ハリソン・ディールと恋人のルーシー・ケンプ )
  もう一つ言えば、ケンプ州知事の娘と恋人関係にあったハリソン・ディールは、謎の交通事故で死亡した。この一件は厳密な捜査もなく有耶無耶にされてしまったけど、クルマの衝突で大爆発が起き、車体が黒焦げになるなんて前代未聞である。まるでイラクの戦場を匂わせる事故現場で、「榴弾砲でも撃ち込まれたのか?」と勘違いしそうな惨状だった。最近ではフルトン郡にある保管庫に何者かが侵入し、投票用紙が保管されている倉庫の扉が開けられたという。幸い、アラームが鳴り響いたから窃盗事件にはならなかったが、もしかすると、何からの破壊工作だったのかも知れない。(Mark Niesse, "Alarm triggers concerns about ballot security at Fulton warehouse", The Atlanta Journal-Constitution, June 1, 2021) また驚く事に、倉庫の扉は重さが75ポンドから100ポンドの鉄製であったらしいが、そこには鍵が掛かっておらず、保安官が2時間ほど留守にした隙を狙っての犯行であったという。裁判所の命令で保安官は24時間の監視を義務づけられていたが、「大丈夫だろう」と油断したため、犯人が侵入するという事態を招いてしまった。

  大統領選挙に関しては様々な疑問や問題点が見られるが、主流メディアはそれらを悉く「根拠無き陰謀論」と斥け、馬鹿にしながら否定していた。しかし、こんな選挙を目にすれば、軍人じゃなくても「おかしい、何か臭うぞ !」と思うはずだ。筆者は「軍人の公開書簡だから重要だ」とは主張しないが、彼らが立ち上がった動機については理解できる。確かに、政権に対する不満は共和党や民衆党を問わず、他の軍人や民間人にもたくさんあるから、トランプ支持者の退役軍人だけが「注目に値する」という訳じゃない。ただ、「高齢の退役軍人だから、敢えて職業軍人の立場を逸脱し、選挙の不正を訴えたんじゃないのか?」と思えてしまうのだ。

  体を張って祖国を守る軍人は、ダラ~と生きている一般人よりも、国家の命運に敏感となる。やはり、国家の背骨となる軍隊に生涯を捧げる者は、自分と国家を重ね合わせることが多いし、イカサマに対する反応も本能的に鋭い。もし、去年の大統領選挙が憲法通りに行われていたら、バイデンに反撥する退役軍人も素直に従っていただろう。しかし、2020年の選挙はあまりにも異常だ。これは異国で観察する日本人にも判る。おそらく、多くの若い士官や壮年の将校だって、舞台裏で不正が行われていたことに気づいているだろう。とりわけ、諜報機関や特殊部隊に所属する軍人なら、「国内でブラック・オペレーション(極秘作戦)かよぉ~」とぼやいたんじゃないか? 彼らは諸外国で謀略工作に携わっているから、水面下での八百長に詳しい。

  フィーヴァー教授や奥山氏は連帯署名の退役軍人を咎めるが、インチキ無しの選挙で選ばれた大統領なら、どんなに左翼的な人物でも、あるいは、憤慨するほどのリベラル政策を提案しても、「政治家の行為だからしょうがない」と諦め、沈黙を守って服従するだろう。しかし、不正選挙となれば話は別だ。老い先短い80歳前後の元軍人なら我慢できない。彼らは現役軍人とは違って、出世の野心や恩給の心配は無いから、批判されるのを覚悟で異議を表明できる。何しろ、片足を棺桶に突っ込んでいるオヤジ連中だから、「言いたいことを言って死にたい」と思ってもおかしくはない。

  奥山氏は「文民の優位」という原則があるので、不正があっても声を上げずに、軍人の名誉を守って死んで行くべきだ、と考えている。しかし、共和政の精神を考え、気骨のある軍人なら、あのバイデンに服従したまま「あの世行き」なんて“真っ平御免”だろう。死ぬ前に一矢報いて討ち死に、という選択肢だってあるはず。説明すると長くなるからここでは省略するが、軍人が政治に従属するのは、自国の制度が正常に動いていると信じているからだ。ここではジョン・トレンチャード(John Trenchard)やトマス・ゴードン(Thomas Gordon)の『Cato's Letters』、トマス・ジェファーソンの政治思想、ジェイムズ・ハリントン(James Harrington)に由来する新ハリントン主義者(Neo-Harrintonians)とか、ローマ人の統治や徳(virtù)については触れないが、共和国は常に腐敗の危機に曝されているから、誰がどのように徳を用いて共和政体を維持するのか、という問題が重要になってくる。

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(左 : 尊敬に値する建国の父祖  /  左 : 異常なほど子供を愛するジョー・バイデン )

  軍人支配は良くないが、英国や日本でも、昔は封建主義に基づく政治体制であった。イングランドでも国王が武家の棟梁みたいな元首で、ガーター騎士団の総長でもある。家臣の貴族だって、法務官だけじゃなく、軍官僚とか派遣軍司令官になっていたから、武人と役人の境目が曖昧だ。日本でも各地の大名が統治する武家社会で、行政と軍事が渾然一体となっていた。今から考えれば恐ろしい時代に見えるが、西歐や日本のデモクラシーは封建制が基盤となっていたから成功したのである。平民が寄り集まって法律を決めたからといって機能するものじゃない。(民衆政と封建制を論じたシドニー・ペインター<Sidney Painter>は注目すべき中世史家である。彼の『Feudalism and Liberty』は我々にとっても有益で、なかなか興味深い。) むしろ、デモクラシー(democracy)だと金権政治(plutocracy)に堕落する確率が高く、大富豪が黒幕となりやすいから何らかの防止策が必要だ。民衆が主体の政治制度だと、いくら腐敗が深刻になっても修正されることはなく、庶民は大切な祖国が自滅するのを見守るだけである。

  「戦略学者」を自称する奥山氏は、退役軍人の逸脱を咎め、お爺ちゃん達の愚行と笑っていたが、高齢の白人男性だかこそ、現在のアメリカに心底憤り、「一線を越える」と判っていながら署名したんじゃないか? 考えてもみよ。彼らが子供の頃のアメリカは、今とは随分違っており、意外な程“まとも”であった。ヨーロッパ系の白人が主体の「キリスト教国家」で、信仰と伝統に基づく倫理道徳が社会の根本規範となっていた。黒人や南米系の国民には不愉快な過去だろうが、どの州においても“ちゃんと”人種隔離がなされており、都会は別にして、白人女性が街中で気軽に強姦されることはほとんど無かった。路上で突然殴られる「ノックアウト・ゲーム」なんか有り得なかったし、不法入国者が堂々と福祉制度に与ることも無かった。ましてや、同性愛者が大手を振るって商店街を闊歩する事なんて論外。現在、多民族・多文化主義および政治的な圧力により、アメリカ軍の中には許認可を得たゲイやレズビアンが存在する。また、人種的配慮から黒人やヒスパニックの人材が上等な地位に配置されているから、不満に思う白人は少なくない。

  もちろん、こうした「時代の流れ」に不満だから軍人が政治に介入するというのは正当化されない。だが、ある程度の社会的地位を持つ人物が異を唱えないと、もっと酷い社会になってしまうだろう。原則上、軍人は国防に徹するべきだが、その国家が内部から腐敗したら、いったい誰が国家を修理すべきなのか? 肝心の政治家が大口献金者の子飼いとなり、外国勢力の手先になった奴もいるのだ。共和政体の国家には「核」となるべき貴族階級が欠落しているので、一旦、政治腐敗が進むと、それを阻止する人物はなかなか現れない。アメリカの場合、どんどん蛮族や異人種が流入するから、西歐系国民は危機感を覚えながらも、為す術が無い。彼らは「少数派」となり、有色人種や左翼の白人が「多数派」となる。建国の精神を引き継ぐ西歐国民は、“いつも”従う破目になるから苛立ちを隠せない。人種の坩堝と化したニューヨーク州やカルフォルニア州では、保守系の共和党員は上院議員になれず、いくら優秀な人物が出馬しても連戦連敗だ。「ヒスパニックの縄張り」と化したカルフォルニア州で、ロナルド・レーガンのような共和党員が知事に選ばれるのか?

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(左 : 米国の人種差別に抗議する黒人たち  /  右 : 2021年1月に議事堂に乱入した暴徒)

  日本でもそうだけど、アメリカの一般国民は政治に興味が無く、日々の仕事や家事で精一杯だ。国家が滅亡の道を歩んでいても、スーバーボウル(アメフトの試合)やリアリティー・ショウ(現実の生活を脚色した娯楽番組)の方が重要で、破滅の直前まで惨状に気づかない。一部の保守派国民だけが静かに崩壊するアメリカを予感している、というのが現実だ。もちろん、アメリカ合衆国が地上から消滅するという訳じゃなく、国民の質が徐々に変化し、「別の国」へと変質するから、「消えゆくアメリカ合衆国」なのである。かつて日本では保守派知識人が占領憲法の温存を嘆き、「憲法守って国滅ぶ」と述べていたが、アメリカ人も同じ運命にあるんじゃないか? 今は書簡に署名した軍人を「老害」と評し、巷で囁かれる選挙不正なんて「アホの陰謀論」と嗤っていられるが、100年後の未来になれば、別の評価になっているかも知れないぞ。


 

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