戦争で儲ける人々

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(左 : アフガニスタンを掌握した支配者のタリバン  /  右 : 非常時に休暇を楽しむバイデン)

  アフガニスタンはよく「侵略者の墓場」と呼ばれる。なぜなら、この地域に侵攻した軍隊はゲリラ戦の泥沼に陥り、悲惨な結果を味わいながら撤退する破目になるからだ。かつて、「柔らかい下腹部」と評されたアフガニスタンをソ連軍は蹂躙した。すると、スティンガー・ミサイルを抱えた「ムジャヒディン(Mujahideen)」に反撃され、面目丸つぶれで引き揚げることになったのだ。ロシア兵は現地のゲリラ兵に手こずったが、このアフガン人部隊は米国の支援を受けていた。一般の日本人でもシルヴェスター・スタローンのヒット作、『ランボー / 怒りのアフガン』を観たことがあるだろう。たぶん、「あの武装した山岳民族のゲリラ兵か!」と判るはずだ。映画の中では、アメリカ人と一緒に悪のロシア軍をやっつける勇士と描かれていたが、実際は昔ながらの叛乱部隊で、アジア大陸でよく見かける匪賊集団に過ぎない。でも、別の角度から見れば、アメリカの支援を受けた現地の傭兵となる。

  冷戦の終結でソ連軍と闘うムジャヒディーンの存在は薄くなったが、2001年、何ともいかがわしい「9/11テロ」が米国内で発生し、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、親爺がやり残したイラク戦争を再開することにした。所謂「テロとの戦い」という大事業で、金の匂いがプンプンする。財界の旦那衆から大統領にしてもらったジョージ・Wは、お目付役のチェイニー副大統領にド突かれながら、「勇敢な最高司令官」を演じていたが、何とも白々しい演技であった。だいたい、仲良しのオサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)とアル・カイーダ(Al-Qaeda)のチンピラどもが「犯人」なんて馬鹿げている。ジョージ・W・ブッシュは、親爺とビン・ラディン家との関係を正直に告白できるのか?

  ブッシュ家と昵懇のジェイムズ・R・バス(James R. Bath / テキサスのビジネスマン)は、あの悪名高いBCCI(Bank Commerce Credit International)を通して、サウジ・アラビア怪しい商売をしていたが、ブッシュ家はこれを弁解できないだろう。CIA長官から大統領になったポピー(Poppy)・ブッシュは、シェイク・ビン・ラディン(Sheikh bin Laden)と“いかがわしい”ビジネス関係にあったじゃないか。(Jonathan Beaty and S.C. Gwynne, The Outlaw Bank, Washington D.C.: Beard Books, 2004, p.229.を参照。) これは有名な話だけど、ジョージ・ハーバート・ブッシュは、ケネディー大統領が暗殺された1963年11月22日、テキサス州のダラスにいたのに、記者から「何をしていたのか」と質問されたのに、はっきりと答えられなかった。ほとんどのアメリカ国民が何をしていたのか覚えていたのに、優秀なポピー・ブッシュは思い出せなかったんだって。へぇ~。

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(左 : ジェイムズ・ロス  / 右 : サウジアラビアのプリンス・サルマン・ビン・アブドゥル・アジスと会談したブッシュ大統領)

  アメリカで起きる大事件というのは、いつも怪しい臭いが立ち籠めている。もしも、指名手配された連中が本当の「首謀者」で、殺戮計画を立てた「張本人」というのであれば、ちゃんとWTCの科学的捜査を命じればいいじゃないか。どうして、ブッシュ大統領は、WTCの残骸をさっさと廃棄してしまったのか? 犯行現場の物的証拠を調べないなんておかしいぞ。それに、どうしてコンクリートの粉末が降り注いだくらいで、マレー通りに駐めてあった自動車が、みんな黒焦げになるんだ? また、火災で鉄骨の柱が錆びるなんておかしいだろう。ブッシュ大統領とチェイニー副大統領は、「大量破壊兵器があるぞ !」とイチャモンをつけてイラクを攻撃したけど、肝心の破壊兵器は見つからず、「一生懸命探したんですけど、結局ありませんでした !」という言い訳でお茶を濁した。しかし、「世界秩序を乱すテロリストは赦せない !」という建前で、アフガニスタンに攻め込んだ。ところが、いつまで経ってもアフガニスタンは平和にならず、テロリストやゲリラ兵が跳梁跋扈。痺れを切らしたアメリカ人は、政府に対し「お前等、何か別の目的があるんじゃないか?」と疑いを持ち始めた。すると、こんどは白々しく、「20年もやってきたから、この辺で足を洗います !」という終了宣言だ。アフガン人の政治腐敗なんて端っから分かっていたじゃないか ! こんな弁解で落とし前がつくのか?

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(左 : ジョージ・ブッシュ大統領親子  /  右 : オサマ・ビン・ラディン)

  それはともかく、この対テロ戦争で浮かび上がってきたのは、西歐諸国で悪名高き「タリバン(Taliban)」だ。このタリバンを創設したのは、一応、アフガニスタン出身のパシュトーン人で、ソ連軍と闘ったモハンマド・オマール(Mohammed Omar)と言われている。彼の副官はアブドゥル・ガニー・バラダル(Abudul Ghani Baradar Akhund)。「タリバン」というのは、元々イスラム教を学ぶ信徒を意味したようだが、首領のオマール師は、かつてムジャヒディーンに属していたという。国際情勢に疎い日本人にとって、パキスタンやアフガニスタンで起こる事変なんか、太陽系の外で起こる恒星の爆発と同じで、未知の領域である。パキスタンの政情や内乱は、歐米諸国の報道機関を通してのみ伝わる噂話ていど。その他の事柄は複雑怪奇で全く解らない。

Mohammad Omar 122( 左 / モハンマド・オマール )
  そもそも、日本の外務省だって、どんなアラブ人やアフガン人がムジャヒディーンにいたのか判らないし、何を目的としているのかさえも、てんで解らない。キャリア官僚が口にする「情報収集」なんて、CNNの報道を日本語に訳しただけの“まがい物”だ。ムジャヒディーンからタリバンへ流れたゲリラ兵が誰なのかも判らないし、内部の権力構造なんて悉く謎である。だいたい、ゲリラ兵の活動資金は誰が賄っているのか? たとえ「ムスリム」の名を冠した集団であっても、裏からイスラエルの資金が流れている場合もあるし、もしかすると、歐米のユダヤ人組織が操っている偽旗組織かもしれないのだ。もっと勘ぐれば、軍需産業と金融業界の大物が黒幕というシナリオも考えられる。そもそも、中東アジアで火種をバラ撒き、団扇で煽って大火にするのが「いつもの遣り口」で、火消し役になるのがアメリカの軍隊だ。消防士が放火魔というのは、世界政治にも当て嵌まる。ただし、放火魔と違うのは、何億ドルもの巨額な資金を動かし、何兆ドルもの利益を得ている点だ。

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(左 : ムジャヒディーンのアフガン兵  / 右 : タリバンのアフガン兵 )

Mujahideen in-Afghanistan 33(左  /  スティンガー・ミサイルで応戦するムジャヒディーンのゲリラ兵)
  戦争は儲かる。学校で「平和教」を刷り込まれた日本人には想像できないが、外国で起きる紛争は鰻の蒲焼きよりも香ばしく、ロイヤルゼリーの蜂蜜よりも甘いビジネスだ。広島・長崎の原爆ネタで食っている左翼や、反戦活動に勤しむ大学生には理解できまい。合衆国政府が惜しみなく使う公金(戦費)は、イラク人やアフガン人に渡ることはないのだ。何億ドルもの紙幣は、戦車や装甲車を生産する軍事産業、燃料を提供するエネルギー会社、軍事施設を建設するゼネコン、兵器産業に投資をする金融業者、紛争やテロを事前に知るヘッジファンド、ピンハネを要求する政治家などに流れて行く。戦争で実際に起こるのは、国富の“消失”ではなく“移動”である。

  ここでは省略するが、どうしてバイデンは今頃になって「アフガニスタンからの撤退」を決めたのか? この先どうなるか予想は出来ないけど、何らかの「計画」に基づいた行動なんじゃないか? つまり、アメリカのエスタブリッシュメントは、わざとタリバンにアフガニスタンを支配させて、世界政治を動かそうと目論んでいるのかも知れないぞ。ホワイトハウスはアフガニスタン政府の腐敗や無能力に見切りを付けた、と述べているが、本当はタリバン政権の恐怖を復活させ、世間の注目を国内問題から逸らす目的があるんじゃないか?

  このヤラセ撤退は、裏で北京政府を助ける策略なのかも知れない。中東アジアの資源を支那に与えて、支那軍を強力にしてから、用意した戦争に導く、というシナリオだってあるのだ。つまり、米国の「敵」が弱いと大規模な戦争にならないから、適当に強くしてから叩くのが一番。もうそろそろ、血なまぐさい戦争をしないと軍需産業は儲からないし、ハリウッド映画のネタも尽きてしまうので、新たな熱戦が必要になってくる。アジア地域での軍事衝突が起これば、色々な軋轢が発生するが、こうした厄介な事は、いずれ辞任するボケ老人に押しつけて、しまえばいい。不都合な痕跡は闇に葬る。これがパトロン連中の常套手段だ。まぁ、そのために痴呆症のバイデンを大統領にしたんだから、この老人は憐れな「使い捨ての消耗品」に過ぎない。

  令和の高校生や大学生にとったら「昔話」になってしまうけど、アメリカの政界も財界と回転扉で繋がっており、経済界の大物が閣僚になったり、閣僚を辞めた者がビジネス街に戻ったりする。例えば、ニクソン政権で財務長官を務め、レーガン政権で国務長官になったジョージ・シュルツ(George P. Shultz)は、大手建設会社の「ベクテル(Bechtel)」で社長を務めていた。ブッシュ政権で副大統領になったデック・チェイニー(Richard B. Cheney)も、財界と政界を股に掛ける大物だ。彼はフォード大統領の首席補佐官を務めた後、ワイオミング州選出の下院議員になり、ジョージ・H・W・ブッシュが大統領になると、その政権で国防長官になった。しかし、政界を離れていた1995年から2000年まで、チェイニーは石油掘削機の大手販売会社である「ハリバートン(Halliburton)」の経営者になっていた。女房のリン・チェイニー(Lynne Ann Cheney)夫人は、1994年から2001年までロッキード社の重役だったから、軍事産業のインサイダーとしか言い様がない。

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(左 : ジョージ・シュルツ   / デック・チェイニー  / リン・チェイニー  / 右 : 共和党員から「裏切者」と糾弾されたリズ・チェイニー下院議員  )

  確かに、「ハリバートン」の主要な事業はエネルギー部門なんだけど、この多国籍企業は軍事関連の仕事にも携わっていた。例えば、海外に展開するアメリカ軍のケイタリング・サービスから基地の建設にまで係わっていた、というから凄い。合衆国政府が海外に建設する基地というのは、アメリカ社会の縮図というか複製で、レストランや病院はもちろんのこと、ゲーム機やビリヤード場を備えたレクリエーション施設、アメリカと同じ品揃えのスーパーマーケット、チェーン店のスターバックスやバーガーキング、ケンタッキー・フライド・チキン、さらに映画館まである。つまり、ショッピングモールがセットになった軍事複合施設という訳だ。これに加えて、トラックや装甲車などを修理する整備工場とか、スペア・パーツを保管する倉庫まであるんだから、こうした事業を請け負うゼネコンには巨大な利益が転がり込んでくる。だから、建設会社や軍需産業の重役達は平和な時代が続くとイライラし、「もう5年間も平穏かぁ~、そろそろ戦争でも始めなきゃなぁ~」とボヤく。すると、仲間の愚痴を聞きつけた闇組織が動き出し、「よし、わかった ! いっちょう、テロ事件で仕掛けるか!」と張り切る。

  9/11テロを利用する合衆国政府は、2001年から2021年までアフガニスタンで戦争を続けていたが、この間に使った公金は、何と、2兆2,610億ドルであったらしい。(Ronn Blitzer and Thomas Barrabi, ‘US spent nearly $2.3 T on Afghanistan over 20-year conflict that ends with Taliban back in charge’, Fox News, August 16, 2021.) これはブラウン大学の「Costs of War Project」が算出した数字であるが、そこには国防総省が作戦に使った予算9,330億ドル、軍事基地の建設関連で消費された4430億ドル、退役兵や傷痍兵の治療に使われた2960億ドル、国務省にあてがわれた590億ドル、戦時国債の利子を支払うための5300億ドルが含まれているそうだ。アフガニスタン再建特別監査長官(SIGAR)によれば、連邦議会はアフガニスタンの治安を守るために886億ドルもの予算をつけたという。

  さすがに、アメリカの一般国民も「billion(10億)」じゃなく、「trillion(1兆)」という単位を耳にすれば、「そんな金額、想像もつかない !」と驚く。大半の人は実感が湧かないから、ただ唖然とするしかないが、それと同時に、「何で、そんなに使うんだ !」と腹が立ってくる。(イギリス人が「trillion」と聞けば、ブリテン式に10の18乗、つまり「100京」と思ってしまうが、最近ではアメリカ流の単位で考えるようになったという。) 合衆国政府が使った戦費は、あまりにも桁違いなので、一般国民には理解しがたいが、1日の費用で換算すると、毎日毎日、約3億ドル使ったことになるそうだ。納税で苦労するアメリカ国民が聞けば、「ふざけんじゃねえぞ!」と言いたくなる。 温厚なアメリカ人でも堪忍袋の緒が切れてしまうが、4千万人のアフガン国民1人当たりに5万ドルを与えたことになるらしい。(Christopher Helman & Hank Tucker, ‘The War In Afghanistan Cost America $300 Million Per Day For 20 Years, With Big Bills Yet To Come’, Forbes, August 16, 2021. )

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(左 : アメリカの援助を受けたアフガニスタンの民衆   /  右 : 「一人前の軍人」を気取っているアフガン兵 )

  アメリカ軍の士官は現地のアフガン人を訓練し、対テロ部隊を養成したと報じられているが、実際のアフガン兵は使い物にならず、数を揃えただけの張り子の虎である。訓練に当たったアメリカ人は命令だから仕方なく教育にあたったが、「こんな低脳どもに軍事訓練を施したって、時間と費用の無駄じゃないか!」というのが彼らの本音らしい。募集に応じたアフガン人は、アメリカ軍から戦闘服や武器をもらって“いっちょ前”の戦士気取りだが、「捨て駒」くらいの価値しかない。そもそも、千年前と変わらぬ生活をしている山岳民族に、近代戦の装備を扱うなんて無理だし、現地兵が実際の戦闘でどれだけ機能的に動けるかどうかも分からないから、アメリカ人の教育係は匙を投げてしまうのだ。

  他方、アメリカの庶民は所得税や住宅ローンの支払いだけでなく、子供の教育費や光熱費の上昇でも青息吐息。そのうえ、健康保険料の値上げと医療福祉の高騰があるから、丈夫な人でも立ち眩みとなる。「小さな政府」を求めるリバタリアンや保守的な常識人なら、「どうして政府はアフガン人を助けているんだ ! 先ず、俺達を優先的に救うべきなんじゃないか!」と叫んでしまう。主流メディアの人気キャスターや御用学者は、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」を馬鹿にしたが、「アメリカ第一主義」は沈黙する庶民の本音である。

地下資源を争奪するアメリカ

  今や、日本の地上波テレビは、カルト宗教と変わらぬ宣伝機関と化している。製薬会社の配下となった民放は、「ウイルスの脅威」を煽りまくり、未承認のワクチンを国民に勧める。その一方で、愚民化政策にも熱心で、表面的な海外ニュースを垂れ流すだけで、肝心な分析や裏話は一切無し。朝昼晩と毎日、NHKやフジテレビをボケ~と見ている日本人には、アフガニスタンの情勢なんか、これっぽっちも解らない。「専門家」と称する大学教授が登場しても、形式通りの説明をするだけで、後はバイデン政権にケチをつけて終わりだ。米軍撤退の真相なんてどうでもいい。マスコミが詳しく追求するのは、藝人の色恋沙汰かスポンサー企業の新製品だけである。

  建前上、合衆国政府がアフガニスタンやイラクに軍隊を派遣するのは、「テロリストの悪党を殲滅するため」となっているが、真の狙いは利権の確保と銭儲けである。(日本の学者は滅多に口にしないけど、アフガニスタンは阿片の産地で、諜報機関のワルどもは、ケシの実やコカインの密売を黙認する代わりに、「見返り」をもらっているかも知れないのだ。なぜなら、自分達で勝手に使える「へそくり」が欲しいから。) 荒寥とした大地が広がり、貧乏人が住むだけのアフガニスタンには、信じられないくらい貴重な天然資源が眠っている。アフガニスタンの天然資源を調べる「U.S. Geological Survey's Afghanistan project」のジャック・メドリン(Jack Medlin)氏によると、「アフガニスタンは鉱物資源が非常に豊富」であるそうだ。少なくとも、24種類の鉱物は世界トップクラスであるらしい。(Cahrles Q. Choi, "$ 1 Trillion Trove of Rare Minerals Revealed Under Afghanistan", Live Science, September 4, 2014.)

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(左 : 貴重な鉱物資源   /  右 : 鉱山で働くアフガン人 )

  例えば、アフガニスタンの大地からはランタン(lanthanum)、セリウム(cerium)、ネオジミウム(neodymium)、アルミニウム(alminum)、リチウム(lithium)、カーボナタイト(carbonatite)、金、銀、鉛、水銀が採れるという。「ランタン」は、セラミック・コンデンサや光学レンズ、ニッケル・水素蓄電池などに使われる素材である。(一般的に言われる「コンデンサ(蓄電器)」は「キャパシター(capacitor)」のことで、「コンデンサ」はドイツ語の「kondensator」から由来していると思われる。「濃縮」よりも「蓄積」の方が実態をよく表しているから、筆者は「capacitor」の方を用いている。) 「セリウム」はガラスの研磨剤やハードディスクの基板だけじゃなく、医薬品や触媒などにも使われるそうだ。「ネオジミウム」は一般人にも馴染みが深く、磁石やスピーカー、光学素材に用いられている。電気自動車の生産には、「リチウム」が欠かせないから、この稀少金属を持っている国は列強の標的になりやすい。 

  また、アメリカ国務省はアフガニスタン再建のために「通商・安定化部局(Task Force for Business and Stability Operations)」を設立し、同国の天然資源を調べたところ、アフガニスタンの鉱物資源は9千80億ドルもの価値があると判った。しかし、アフガニスタン政府の見積もりは異なっており、その価値は3兆ドルにもなるそうだ。さらに、歐米のビジネスマンや地政学者には承知の事実なんだけど、アフガニスタンにはルビーやサファイアといった宝石がザクザク採れる。(Gary W. Bowersox, Eugene E. Foord, Brendan M. Laur, James E. Shigley, and Christopher P. Smith, "Ruby and Sapphire from Jegdalek, Afghanistan, Gems & Gemology, Vol. XXXVI, 2000.を参照。) 日本人の政治学者は、フジテレビが放映する『One Piece(ワンピース)』を観て喜んでいるが、アフガニスタンを侵掠したロシア人や、「正義」を掲げて進軍したアメリカ人は、リアルな「宝探し」をしていたのだ。日本の大学生は「ルフィー」や「ナミ」程度の海賊しか知らないが、NYのウォール街には海賊よりも強欲な豪商がいるんだぞ。

ruby 1Sapphire2(左 : ルビー  / 右 : サファイア )
  ちなみに、宝石好きの女性には常識なんだけど、ルビーの名称はラテン語の「rubeus」、サファイアの名称は「saphirus」から由来し、両方とも「鋼玉(corundum / コランダム)」が原石となっている。コランダムが酸化クロムを含むと赤くなり、その赤色が鮮やかな「ピジョン・ブラッド(鳩の血)」になると高値が付く。もし、コランダムに鉄やチタンが含まれると青のサファイアになるという。コランダムは含む物質によって、ピンクや黄色、紫色になったりする。ルビーやサファイアは加熱処理で色を鮮やかにする場合もあるという。

  中央アジアと言えば、もう一つ忘れてはならないのが、石油と天然ガスだ。アフガニスタンの隣国であるトルクメニスタンには天然ガスが豊富で、世界第六位の生産高を誇っている。ちなみに、第1位はロシアで、2位はペルシア(所謂「イラン」)、3位はカタール、4位はサウジ・アラビア、アメリカは第5位となっている。トルクメニスタンの「ダウレタバッド(Dauletabad)」には、大きなガス田があって、ここのパイプラインがアフガニスタンのカンダハール(Qandahar)を通って、パキスタンのクェッタ(Quetta)やムルタン(Multan)へと伸びている。そして、このパイプラインはインドに到達するんだが、別のパイプラインはトルクメニスタンから支那へ伸びており、ウズベクスタンとカザフスタンを経由している。北京政府は「一帯一路」という策略を展開しているが、支那人はアジア大陸の天然資源をも狙っていたのだ。

国民を見棄てた大統領

Aschraf Ghani 001( 左  /  アシュラフ・ガニー)
  アメリカ軍の将兵は、大金を使ってアフガン人を助けていたが、肝心のアフガン人は碌でなしの政治家や腐敗議員によって支配されていた。その代表例が、大統領でありながら、一目散に逃亡したアシュラフ・ガニー(Ashraf Ghani)である。カブール(Kabul)にあるロシア大使館によれば、庶民を見棄てたガニー大統領は、4台のクルマとヘリコプター1機に、ありったけの現金を詰め込んで、祖国からさっさと脱出したそうだ。("Russia says Afghan president fled with cars and helicopter full of cash", Reuters, August 16, 2021.) もう、情けないというか卑劣というか、一国の指導者が大金を抱えてトンズラなんて、普通じゃ考えられない。じゃあ、タリバンに支配された一般国民はどうなるんだ? タリバンの首領であるムラー・アブドゥル・ガニー・バラダー(Mullah Abdul Ghani Baradar)は、大統領官邸で王様気分だけど、イスラム教の誡律を強化されたら、一般女性は堪ったもんじゃないだろう。どの女性も「ブルカ」を身に纏って街中を歩く破目になるはずだ。 『スターウォーズ』に出てくる惑星「タトゥーン(Tatooine)」や「ジャクー(Jakku)」、「ナブー(Naboo)」でさえ、「ブルカ姿の群れ」なんて見かけないのに、現実のアフガニスタンでは異様な光景が至る所で観られる。

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(左 : ムラー・アブドゥル・ガニー・バラダー  /  右 : 「ブルカ着用」を義務づけられたアフガン女性 )

  形式上、アシュラフ・ガニーは「財務相」上がりの「大統領」となっていたが、この男は国際金融業者の飼い犬だった。つまり、アメリカに仕えるアフガン人の買弁というわけ。以前、彼は世界銀行(World Bank)のアナリストをしていたが、人生の大半を過ごしていたのはアメリカで、何と、1964年から2009年までアメリカ国籍を持っていたのだ。ガニーはオレゴン州の高校に通い、ベイルート(レバノン)にある「アメリカン大学」へと進んだが、そこを卒業すると直ちに「帰国」し、NYにあるコロンビア大学に入った。彼はここで博士号(PhD)を取得し、学者の道を歩むことになる。このアフガン系アメリカ人人はカルフォルニア大学のバークレー校やジョンズ・ホプキンス大学で教鞭を執ったが、もう一つの特技を身につけたかったのか、ビジネスの勉強にも励んでいた。

  普通のアフガン人とは違うアシュラフ・ガニーは、娶る女性も違っていた。ガニー夫人となったルラ・サダー(Rula Saadah)はレバノン人で、イスラム教徒じゃなくてキリスト教徒。彼女は夫と同じくアメリカン大学で学んだことがあり、卒業後、偶然にもコロンビア大学へ留学し、そこで未来の夫であるアシュラフと出逢う。結婚した二人には息子と娘が生まれているが、彼らもアフガン国籍じゃなく、アメリカ国籍を持つ。息子のタリク・ガニー(Tarek Ghani)は学者の道を選び、「ブルッキングス研究所」の研究員となったり、「International Crisis Group」の「Future of Conflict Program」に参加するエコノミストになっていた。

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(左 :  ルラ・サダー   /  中央 : タリク・ガニー / 右 : マリアム・ガニー )

  娘のマリアム・ガニー(Mariam Ghani)は、ヴィジュアル・アーティストになったそうで、NYのブルックリンに居を構えて快適な人生を歩んでいる。アメリカ生まれのアフガン人だから、父親の祖国には興味が無いようで、アメリカ人の記者が尋ねてきてもノー・コメント。不愉快な質問には答えたくなかったそうだ。(Tamar Lapin, "Exiled Afghan president's daughter living artist life in NYC while women dread return of Taliban overseas", New York Post, August 17, 2021.) マリアムを見ていると、「生まれてくる家庭によって人生は違ってくるんだなぁ~」ということが、しみじみ分かる。この道楽娘は気楽だけど、父親に見棄てられたアフガン女性はどうなるんだ? おそらく、彼女達はタリバンの恐怖政治に怯えて暮らすに違いない。大統領の娘は異教徒の国に生まれて、“都会の生活”を楽しんでいるんだから、神様は何とも不平等な世の中を創ったものだ。

アフガン人の通訳が移民となる

  アメリカ国内には戦争で儲ける商売人や政治家が跋扈する一方で、政府の暴挙により多大な被害を蒙る一般国民が存在する。民衆党や共和党の連中は、シンクタンクの御用学者とグルになって、イラクやアフガニスタン、ソマリア、ボスニアなどに米軍を派遣するが、陸軍や海兵隊の兵卒は“消耗品”のように扱われている。アクション映画に感化されて入隊した白人兵は、遠く離れた異国で命を失い、かろうじて助かった者でも、手足や目玉を失うか、大やけどで病院送り。RPG(榴弾砲)の爆風で負傷した兵卒は、体の至る所に金属片が刺さってしまい、手術をしても取れない場合がある。ブート・キャンプで健康だった白人青年も、イラクやアフガニスタンに派遣されると、「使い捨ての駒」になって命を失う。そうじゃなくても、戦友が次々と「挽肉」になる場面を目にするから、戦死の前に自殺を考えてしまうそうだ。たとえ、奇蹟的に生き残った兵卒でも、精神はボロボロになり、PTSD(心的外傷後ストレス障碍)に苦しんだりする。中には重態で還ってくる者もいるから、その家族は戦々恐々だ。まさか、自分の息子が「片輪のダルマ」になるなんて想像したくない。

  政治の失策が起きると、その尻拭きはいつも庶民に廻ってくる。忌々しいのは「人権派」と呼ばれるリベラル議員で、彼らは自国の白人兵に冷たいが、アフガン人の難民になると非常に親切。「タリバンが君臨する国家は厭だろう」ということで、「難民の皆さん、アメリカへいらっしゃい !」とばかりに、不気味な容姿の異邦人を出迎える。アフガニスタンから逃げ出す難民の群れは、サイゴン陥落時のベトナム人と一緒だ。敵対勢力の侵攻に怯えた原住民は、アメリカ人に縋ってヘリコプターに乗ろうとするが、定員オーバーで払い落とされる。置いてきぼりにされたベトナム人やアフガン人は、絶望の淵に突き落とされ、諦めの境地に辿り着く。

  一般の日本人はアフガン難民を受け容れる米国を目にして、訳が解らず「どうして?」と不思議がるが、アメリカの国務省は「特別移民ビザ(Special Immigrant Visa / SIV)」という制度を準備していたから、ドンドン異邦人を引き入れている。このカラクリは以下の通り。

  アメリカ人というのは一般的に英語以外の言葉を話さない。(スペイン語を母語とするヒスパニック系国民や南米移民、あるいは北京語とか福建語を話す支那移民は別。) したがって、外国で戦うアメリカ兵には英語を理解する現地人が必要だ。そこで、アフガニスタンに駐留するアメリカ兵には、多少なりとも英語を話すパシュトゥーン人(Pashtun)やタジク人、ウズベク人などが紹介され、部隊に追随する通訳となっている。アフガニスタンには他にも様々な民族がいて、ペルシア語系の言語を話すハザラ人(Hazara)とかバローチ人(Baloch)、チュルク系民族のキルギス人などもいる。だから、彼らの身に危険が及べば、「御褒美」というか「保険」みたいな形で、米国への避難が可能となるのだ。

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(写真  /  アメリカ兵の通訳を務める現地のアフガン人)

  撤退すると決める前、アフガニスタンには約2千500名くらいしかアメリカ兵は駐留していなかった。しかし、アフガン人の「通訳」は約2万人もいたのだ。アメリカ人じゃなくても、「どうして2千名の軍人に対し、2万人の通訳が必要なんだ?」と怪訝に思うだろう。実は、答えというのは簡単で、問題はオバマ政権にあった。バラク・フセイン・オバマが大統領の時、アフガニスタンには約10万人のアメリカ兵がいたという。これだけの軍人がいれば、現地を案内する通訳が増えるのも当然で、アメリカ兵2名につき、1名のアフガン人通訳がいたそうだ。(David Greenfeld, "Saving Afghan Interpreters is a Scam That Would Bring 100,000 Afghans to U.S.", Front Page Magazine, July 23, 2021.)  まぁ、歩兵部隊は現地の民衆を相手にするから当然なのかも知れない。

  既に、恐ろしい事態は始まっているようで、2007年から2017年の間に、7万人くらいのアフガン人が入国したそうだ。最終的に、いったい何人のアフガン難民が流入してくるか判らないけど、アフガン情勢に詳しいダニエル・グリーンフェルドによれば、10万人規模の難民になるらしい。なぜなら、「避難民」としてやって来るのは、米軍の通訳ばかりでないからだ。つまり、通訳の家族も一緒にやってくるというわけ。これなら避難民の数が増大してしまうのも当然だ。例えば、2016年、58名のアフガン通訳は、165名の家族を伴って米国にやって来た。人道主義に基づいた「SIV」の乱発は恐ろしく、4千283名の政府職員には、1万100名の家族がいたそうで、この家族がセットになって米国へ渡ってくるんだから、移民反対派のアメリカ人は顔面蒼白となる。

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(写真  /  近隣諸国やアメリカへ逃れようとするアフガン難民)

  だいたい、10万人のSIV移民といっても、実際のビザ申請者は3万1千名くらいで、残りの6万9千名はその家族である。アジア大陸の家族意識は西歐人のものとは大違いで、1名の通訳といっても、その家族には子供や両親のみならず、兄弟姉妹、伯父叔母、従兄弟まで含まれてしまうのだ。それゆえ、一緒に避難する「同伴者」が、10名ないし20名に膨らんでも不思議じゃない。しかし、この内情を西歐系アメリカ人が知ったら大騒ぎとなるだろう。もし、自宅の隣にアフガン難民が引っ越してきたら、英語も解らない老人や少年、居候みたいな髭面の青年、ベールを被った正体不明の女性が近所をうろつくことになる。アジア移民が大勢住み着いた地域には、必ず民族料理の素材を扱う食料品店やエスニック料理店、特殊な衣服を扱う雑貨店、移民が集う理髪店や酒場などが出現するからだ。

  こうなったら、昔ながらのコミュニティーは崩壊し、変質した故郷は元に戻らない。所得の高い中流白人は自宅を売却して、アジア人がいない郊外へと逃げ出す。しかし、低所得の白人や母子家庭、住宅ローンを抱える中堅サラリーマン、引っ越し費用を捻出できない老夫婦などは、アジアン・コミュニティーを嫌っていても、じっと我慢するしかない。白人兵が大量に死んで、大勢のアフガン人が「アメリカ国民」になるんだから、穏健なアメリカ人でもKKKに入りたくなるじゃないか。ところが、こうしたアジア難民を引きずり込んだ政治家や高級官僚は、不愉快な外人が寄りつかない要塞に住んでいる。すなわち、彼らは高い城壁と警備員に守られた高級住宅地に住んでいる。そして、彼らの子供達が通う学校も、貧乏移民が入れない難関校である。後進国で育った子供には、卓越した学力なんて皆無。そもそも、高額な授業料と教材費が要求される名門私立なんて無理、論外、夢のまた夢である。こうした学校は、在米アフリカン・スクールのような「アメリカン・スクール」じゃないぞ。

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(左 : 色人が激増したアメリカ  /  右 : 「人種的多様性」を称讃するアメリカ人)

  脳天気な日本人は、テレビ局の報道を眺めて、「アフガニスタンって、何処にあるのぉ~?」と訊いてしまうレベル。やがて日本にもアジア難民が押し寄せてくるのに、大河ドラマやアイドル番組を観て喜んでいる。難民問題とくれば、NHKやTBSの得意分野で、両局は昔から難民の受け容れに積極的だ。「可哀想な人々を助けましょう !」というプロパガンダを展開するくせに、そこで働く社員は絶対に外人を受け容れない。NHKの論説委員なんかは、「日本は人道主義で後れを取っている ! 日本も歐米諸国並みに難民を受け容れるべきです !」と叱りつけるけど、経営陣のうち、いったい何名がアジア難民を引き取っているんだ? もし、どうしても難民を受け容れたいのであれば、先ず、渋谷のスタジオで寝泊まりさせるか、NHK職員の自宅に招けばいいじゃないか。どうして一般国民に「難民を受け容れろ !」と説教するのか? アフガン難民はアメリカではなく、隣国のタジキスタンやトルクメニスタン、あるいはパキスタンに移住すべきだ。自国の不幸をネタにして豊かなアメリカに引っ越そうなんて図々しい。日本人も温情を棄てて冷徹になるべきだ。精神的に弱い民族は、身勝手な異民族に征服されてしまうだろう。支那人の侵掠を受けても目覚めない日本人は、自分の子供や孫の寝顔を見てから意見を述べるべきだ。

  

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