日本にはびこる単純な戦争評論

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(左 : ライフルが似合うプーチン大統領  /  右 : 世界経済を操るユダヤ人と大富豪)

  日本には行動や言論の自由があるから、誰が何を見て何を語ろうが個人の勝手だが、ウクライナ紛争に関するテレビや新聞の報道を耳にすると、目眩がして頭が痛くなる。色々な記事によると、フジテレビは性懲りもなく、橋下徹を頻繁に登庸しているそうだ。これじゃあ、誰だって「局のプロデューサーやディレクターは、日本維新の会と裏で繋がっているのか?」と疑いたくなる。

  そうじゃなくても、テレビ局は"便利"な御用藝人を出演させているそうで、学生運動で眼球を怪我したテリー伊藤や「国際政治学者」を名乗る三浦瑠璃、「ロシア専門家」と自称する慶應義塾の広瀬陽子を招いていたし、雑誌の方も素性が怪しい佐藤優とか元外交官の東郷和彦など、ウンザリするような面々を集めていた。こんな連中の論評を聞いてしまうと、日本には"まとも"な政治学者や情報アナリストは居ないのか、と思ってしまう。

  インターネット番組には、地上波テレビよりも"マシ"なものが幾つかあるけど、虎ノ門ニュースは初心者向けの雑談番組に過ぎないから、観ていて痛々しい。今回、スポンサーのDHCはナザレンコ・アンドリー氏を招いてウクライナ情勢の解説をさせていたが、彼のロシア批判だけを聞いていても、ウクライナ政府に盤踞する悪党や紛争の根本原因を把握できない。単に「ウクライナを支援しましょう !」で終わりだ。

Ihor Kolomoyskyi  155Zelensky 6231(左  : イゴール・コロモスキー/  右 : ゼレンスキーの番組ポスター)
  歐米諸国や日本のメディアは、ゼレンスキー大統領を自由とデモクラシーの英雄みたいに持ち上げているが、彼とイゴール・コロモスキー(Ihor Kolomoyskyi)との関係を解き明かす番組はほとんどない。このユダヤ人オルガルヒが「ネオナチ」グループに資金を流し、愚連隊を正規化していることには沈黙を守っている。だいたい、「虎8」の視聴者はゼレンスキーが主演したTV番組「国民の僕(しもべ) / Sluha Nardou」のスポンサーを知っているのか?

  このコメディー番組は、「1+1(odyn plyus odyn)」が制作・放映した娯楽作品で、局のオーナーはコロモイスキーだ。彼はワーナー社やヴァイアコムみたいなメディア組織、「1+1 media group」の大株主で、2+2やTET、PlusPlus、1+1 International、 Unian-TV、Bihudi、UNIANなどを傘下に収めている。('Kolomoisky to head supervisory board of 1+1 TV channel', The Kyiv Post, December 20, 2019.) 「国民の僕」で一躍、人気者となったゼレンスキーは、コロモイスキーの支援で政界に進出する。だが、この俳優が属する「国民の僕(Sluha Nardou)」という党名は、この番組名から取ったものだ。つまり、コロモイスキーが銭を与えてゼレンスキーを育て、政界に送って権力を得ていたのである。在日ウクライナ人は決して口にしないけど、ゼレンスキーはコメディアン(道化師)からペット(飼い犬)に鞍替えしたというわけ。

  対ロシア戦であるから、歐米諸国のマスコミが躍起になって「反プーチン・キャンペーン」を展開し、「赦されざる独裁者」と宣伝するのは当然だ。敵を"悪魔化"するのは昔からよくある。皆様もご存じ、三十年戦争のような宗教対立では、敵対するグループ双方が罵り合っていた。カトリック信徒はプロテスタントの連中を蔑み、天主の教会を破壊する叛逆者、あるいはキリストの教えを歪める異端者と侮蔑した。一方、プロテスタント信徒の方も負けてはおらず、カトリック教会を異教のローマ組織、あるいは偶像崇拝の輩(やから)、聖書に基づかない偽教会と唾棄した。

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( 左 : アドルフ・ヒトラー / 中央 : フランクリン・ローズヴェルト / 右 : ウィンストン・チャーチル )

  第二次世界大戦の時も同じで、ナチスが君臨するドイツは悪魔の帝國だ。アドルフ・ヒトラーはユダヤ人をガス室で殺害した屠殺人であったし、野蛮な思想に取り憑かれた狂人、ヨーロッパを蹂躙する独裁者であった。(ただし、ガス室殺人の証拠は無い。反対尋問に基づかない雑談が証拠になっているだけ。) しかし、ドイツと対立する英米も似たり寄ったりで、フランクリン・ローズヴェルトは共産主義に惹かれたピンク・リベラルで、共和政体の原理を蹂躙した独裁的大統領。自由の擁護者を演じたウィンストン・チャーチルはもっと卑劣で、共産主義者のスターリンと手を組んだ悪徳宰相。彼は前々からユダヤ人の金貨に魅了され、同胞のイギリス人を犠牲にしてもユダヤ人を救いたかった売国奴。マルバラ公爵のお坊ちゃんは、息子や亭主を失ったイギリス人から蛇蠍(だかつ)の如く嫌われても気にしなかった。だって、裕福なユダヤ人から餌を貰っていたブルドッグなんだから。

サバイバリストの大統領

  歐米諸国と同じく、日本でもウラジミール・プーチンは侵掠の常習者、冷酷無情な殺人鬼と見なされている。(TVアニメ『デビルマン』に出てくる「魔将軍ザンニン」よりも残忍という訳だ。) しかし、本当にプーチンは理性を失った狂人なのか? 確固たる根拠は無いけれど、筆者には何となく、そう思えない。ちょっと前、ブルッキングス研究所のフィオナ・ヒル(Fiona Hill)とクリフォード・G・ガディ(Clifford G. Gaddy)が、プーチンの経歴や思想を紹介する本を出していた。その中で興味深いのは、「サバイバリスト(survivorist)」の側面をもつプーチンの分析だ。

  圧政が繰り返されるロシアの歴史は実に陰鬱で、混迷の時代は長く、度重なる侵掠なんか、ちっとも珍しくない。むしろ、膨張主義がロシア史の本質だ。凄惨な戦争は毎度の事で、日本みたいに「戦国時代」という時代区分も無い。外国では戦争状態が当たり前。「平和」というのは梅雨時の晴れ間のようなものだ。天主のヤハウェから苦しめられたヨブじゃないけれど、ロシア人は祖国がいつも神様から試練を受けていると考えている。日本の庶民だと厭になってしまうが、ロシア人はめげることなく、苦難の歴史を乗り越えてきた。モンゴル人の支配にも耐えてきた民族だから、羆(ヒグマ)の心臓か、ゴリラ並の生命力を宿しているのだろう。何しろ、真冬に水浴びをする連中だから、ロシア人というのは強靱な肉体と不屈の精神を持っているのかも知れない。

  歴代の為政者や軍人と同じく、ウラジミール・プーチンも、ロシアの国家的試練を受け容れ、逃れられない運命を認識しているようだ。言うまでもないが、ロシアの社会や政治は厳しく、力が尽きて消滅する個人や家族もいれば、不運に見舞われて廃車となる負け犬も存在する。だがその一方で、国家の保護を受けずに戦い抜き、逆境に打ち勝つ者もいるようだ。ひょっとしたら、ロシア人は天然の"サバイバリスト"なのかもしれない。つまり、最悪の状態を常に想定し、その準備を怠らない民族がロシア人。全国民とは言わないが、一般的にロシア人は経歴や年齢を問わず、サバイバリストのメンタリティーを持っている。

Grigori Rasputin_1916(左  / グリゴリー・ラスプーチン )
  日本でもグリゴリー・ラスプーチン(Grigorii E. Rasputin)の暗殺事件は有名だ。この「怪僧」は青酸カリを口にしても死ななかったし、銃弾を二発喰らっても死ななかった。しかし、額に弾丸を撃ち込まれれば即死だ。殺し屋は胸じゃなく頭を狙う。それにしてもラスプーチンは凄い。一般の日本人でも、格闘家のセルゲイ・ハリトーノフやイゴール・ボブチャンチンを思い出せば、「ロシア人って、ホントしぶといよなぁ~」と判るはず。

  話を戻す。対ドイツ戦での悲劇や戦後の貧しさ、食糧不足に悩んだレニングラード時代、そして共産党支配の国家体制を知っているプーチンは、戦争の悲惨さだけではなく、国家の安全保障にも敏感だった。特に、食糧安保に関しては現実的な考えを持っていた。2003年6月の記者会見で、プーチン大統領は次のように述べていた。

  私の両親は昔、必死で家庭菜園を守ろうとした。彼らは朝から晩まで、せっせと働き、私も作業を手伝わされたものだ。だから、食料を確保することの大切さが痛いほどわかるのさ。(フィオナ・ヒル & クリフォード・G・ガディ『プーチンの世界 「皇帝」になった工作員』濱野大道 / 千葉敏生 訳、 新潮社、2016年、pp.103-104.)

  ソ連崩壊の1991年、レニングラードで資源と食料の物々交換という仕事に当たったのは、対外関係委員会の会長を務めていたウラジミール・プーチンであった。彼は民間の仲介業者を取引相手にしたのだが、これがとんでもない間違いだった。商社から届けられたの物資は、合意された量じゃなく、ほんの一部に過ぎなかったらしい。(ロシア人は日本の商人を見倣え !) さらに、配送もいい加減で、方向違い。例えば、サンクトペテルブルクに届くはずだった食料が、何とモスクワに配達されていたのだ。あの怜悧なプーチンでも、計画が上手く行かず、ドジを踏むことすらあった。彼の大失敗は政治的なスキャンダルにまで発展したそうだが、当時のロシアは運良く暖冬だった。もし、極寒の年であったら、どうなっていたことか ! ニッコロ・マキャヴェッリなら、「運命の女神を味方に附けた奴」と評するだろう。

  こうした失敗を経験したプーチンは貴重な教訓を得たという。

(1) 大惨事が起きた時に、ロシアの生存や富、発展を担保してくれるのは天然資源である。したがって、戦略物資の備蓄は不可欠だ。
(2) 不安定で予測もできない状況においては、民間企業など当てにならない。なぜなら、普通の企業は社会に対する義務感を有していないからだ。民間企業は目先の利益だけを考える。それゆえ、国家の指導者は大権を保持すべし。一定のコントロールを行使できる権力は必要だ。

  戦時中を想定すれば解る通り、国内外の計算ミスや急変する状況はいつでも有り得るし、想定外の出来事が起こったら大変だ。やはり、緊急時に備えることは大切である。そこで、保険を確保する必要性も出てくる。2012年の大統領選挙中に、プーチンは報道機関の代表者達に、次のことを語った。

  我々の課題は、生存可能な有機体を作り上げることだと思う。つまり、生命力があり、変化し続ける世界に適応できる国家という有機体をロシアに作り上げることだ。しかし、現代世界には、この有機体の成長を妨げるあらゆる脅威が潜んでいる。こうした外部からの衝撃に備え、我々の主権を完全に保障するためには、国家が安定した発展を続け、数十年先に及ぶロシア市民の幸福を確保することが必須となる。(上掲書 p.107.)

Alexander Grigoryev 3( 左 / アレクサンドル・グリゴリエフ )
  プーチンは国家の財政基盤に関しても関心が高く、どうやら諜報員の養成課程で米国のウィリアム・キング(William R. King)とデイヴィッド・クレランド(David I. Cleland)が出版した『戦略的計画と政策(Strategic Planning and Policy)』を読んだ節がある。キングとクレランドが強調した戦略的計画の本質とは、不慮の事態や予期せぬ出来事に対する準備であった。最悪のシナリオにどう備えるのが最善なのか? 彼らは企業経営における計画を考えた。しかし、プーチンはこれを国家運営に当て嵌めた。2001年、プーチンはKGB時代の親しい同僚であるアレクサンドル・グリゴリエフ(Alexander Andreyevich Grigoryev)に戦略的備蓄のプロジェクトを任せ、彼を「国家備蓄局(ゴスレルヴ / Gosrezerv)」の長官に任命したという。

  国家備蓄はソ連時代および崩壊後にコッソリと裏で進められ、プーチン政権でさらに強化された。グリゴリエフとプーチンはエリツィン大統領を嫌っていたようで、「エリツィン時代に戦略的物資のほんどが盗まれてしまった」と嘆く。おそらく、プーチンはオリガルヒの簒奪を念頭に置いていたのだろう。2004年には大規模な備蓄を強調するためか、「国家備蓄局」は「連邦国家備蓄局(Rosrezerv)」へと改名された。

Alexei Kudrin 1(  左 / アレクセイ・クドリン )
  戦略家のプーチンは物資の備蓄だけではなく、財務の分野に関しても安全保障を考えるようになった。彼はサンクトペテルブルク時代の盟友で、経済学者のアレクセイ・クドリン(Alexei Kudrin)を財務大臣に指名した。クドリンとプーチンの目標は、国家の財務負担を減らし、世界経済が及ぼすロシアへの影響を抑えること。そして、重大な経済不況を乗り切るべく、充分な財政的備蓄を築くことである。こうすれば、ロシアは単に"生き残れる"だけじゃなく、"自立国家"として生き残ることができるのだ。確かに、国家の存続には財政的基盤が必要で、他国との経済関係に従属していれば、国家の独立なんて無い。

  これはある意味、兵営国家の発想だ。独自に行動できる軍隊、つまり自国の軍隊だけで戦争を遂行できる国家こそが独立国なのである。日本の自衛隊はいつも「米軍頼み」で、兵器や装備の点でも貧弱だ。おまけに「占領憲法」という拘束衣で雁字搦めときている。でも、国民の大半が日本の再軍備を「気違いに刃物」と思っているんだから救いようがない。とりわけ愚劣なのが、法学部で洗脳された上級国民だ。有名大学を卒業したお坊ちゃまは、自尊心の塊だから始末に困る。頭の中を覗いてみれば、真っ赤な脳味噌がぎっしり詰まっている。

  愚痴をこぼす訳じゃないけど、クルクルパーのピンク・リベラルが日本のインテリで、利権漁りを本業とするのが国会議員。衆院議員ともなれば、国家の独立を考えるはずなのに、独立の肝(きも)となる核武装には全く興味がない。(総理大臣になった岸田文雄と防衛大臣だった河野太郎が典型例。) 国家の自由と命運よりも、一票乞食相手の宴会とか運動会で忙しい。支援者の結婚式となれば祝電か出席。老人が集まる葬式となったら一大イベントで、ここぞとばかりに涙を浮かべ、同情を示しながら挨拶回り。呆れてしまうけど、これが日本の現実だ。野党の政治家はもっと酷く、「日米安保反対 !!」と叫びながら、アメリカ様に"おんぶに抱っこ"の状態である。こんな日本は一人前の独立国家じゃない。

  脱線したので話を戻す。国家が経済的な自立を失ってしまえば、主権を奪われた状態と同じくなる。たとえ、戦争で生き残っても、外部からの圧力や統制を受け続ける状態、つまり自分で自分の運命を決められない属国状態なら、生き残っていても意味は無い。ソ連崩壊後の1990年代、西側諸国はロシアが抱える債務、国際通貨基金(IMF)からの援助、世界銀行による融資への依存状態を利用し、弱体化したロシアを牛耳ろうとした。1994年、ロシアがバルト三国から撤退したのは、政府が外政問題で譲歩せざるを得ない状況に陥ったからだ。

  プーチンは大統領に就任して以来、自国産業の発展や財政問題に精力を注ぎ、ロシア経済の急成長を目指した。石油や天然ガスの輸出に加え、鉄鋼や機械への需要、製造業の育成などで、徐々にロシア経済は強くなり、国家の債務は減少した。外貨準備高も2008年半ばで6,000億ドルに増えたというから凄い。10年間せっせと外貨準備を築き上げたことで、2008年から2010年にかけての世界金融危機をも乗り越えることができた。また、ロシア政府と財務省は「予備基金」と「国民福祉基金」を設立し、堅実な財務能力を磨くことができた。プーチンは長年に亙って財務の健全化に努めてきたクドリンに感謝の意を表したという。
  
  先ほど述べた「サバイバリスト」に関しては、受動的な点と能動的な点がある。主に、"運頼み"で大惨事を切り抜けるのが、受動的なサバイバリストだとすれば、生存の確率を高めるために、適切な対策を取るのが、積極的なサバイバリストである。プーチンは苦い経験を通して実践的な知識を身につけたそうだ。インタビューを受けた時のウラジミール・プーチンは、折に触れてレニングラードで過ごした子供時代や個人的な体験を語っていたという。

  治安の悪い街で育ったプーチンは、自分の力だけを頼りにする術(すべ)を学んだらしい。学校でのウラジミール少年は問題児であったらしく、彼はソ連の少年団である「ピオネール」へ入ろうとしたが、少年団の方から断られたという。不良少年になったウラジミールは、やがて近所のガキ供と連(つる)むようになった。悪ガキの日常とくれば、犯罪か喧嘩沙汰しかない。インタビューの中でプーチンは、初めての喧嘩で得た教訓を幾つか列挙した。人生初の喧嘩に臨んだウラジミールは、情けないほどボコボコにされてしまい、みんなの前で赤っ恥をかく破目になった。しかし、彼はこの敗北で貴重な教訓を得る。プーチンは言う。

  その1 。私が悪かったということ。よく覚えていないが、私の方からイチャモンをつけ、喧嘩を吹っかけてしまった。相手は直ぐ殴ってきたけど、これは自業自得だ。
  その2 。どんな相手であっても、そういう態度を取ってはならない。誰にでも敬意を払うべし。
  その3 。どんなに自分が正しくとも、どんな状況でも、強くなければならない。そうでないとやり返せない。
  その4 。攻撃や侮辱に対しては、いつでも直ぐさま反撃できるようにしておかねばならない。直ぐにだ ! 勝ちたければどんな戦いでも、最終決戦のつもりで最後まで戦い抜くこと。引き返すことはできず、最後まで闘うこと以外の選択肢は無い、という覚悟でだ。(上掲書、pp.116-117.)

  後に諜報局員となるプーチンは、それが有名な鉄則であることをKGBで教えられたという。しかし、彼は既に少年時代の喧嘩で学んでいた。

最後まで戦い、絶対に勝利を摑む

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( 左 : 「狂人」のプーチンが率いるロシア軍 /  右 : 「操り人形」にしか見えないゼレンスキー大統領 )

  こうしたプーチンの思考様式を前提にすれば、今回、なぜプーチンがウクライナ侵攻に踏み切ったが解るだろう。NATOから攻撃されたり、バイデンから侮辱されれば、怯まずに反撃しなければならないし、たとえ不利な戦争でも戦わなくてはならない。売られた喧嘩は必ず買うのがプーチンの流儀だ。そして、いったん開戦となれば、途中で引き返すことはできない。たとえ血みどろの激戦になろうが、ロシア軍は最後まで戦い抜く。歐米諸国がロシアを破滅させるつもりなら、その前に敵を核兵器で殲滅するのがロシアの行動原理だ。

  これがプーチンの考えと開戦を決めた理由の全部とは言えないが、多少なりとも彼の決断に影響を及ぼしたんじゃないか。ジョー・バイデンの背後に控える闇組織は、東歐諸国の防衛というよりも、ロシアを戦争に引きずり出すために、わざとNATOの拡大を言い出したのかも知れない。建前上、「ロシアの脅威からウクライナを守るため」と称するが、こんなのは単なる口実で、本音はプーチン政権の打倒だろう。それゆえ、ウクライナは端っから「捨て駒」だ。可哀想だけど、ウクライナ兵の命は、どうなっても構わない「消耗品」である。

  筆者が贔屓にする在日ウクライナ人で、政治学を専攻するグレンコ・アンドリー氏は、無駄と解っていながら祖国を守ろうと必死である。3月11日、彼は日テレの「情報ライブ・ミヤネ屋」に出演し、停戦の実現に向けて具体的な案を述べていた。彼は「NATOや自由民主主義諸国が連帯して、ロシアに対応するしかないんです」と訴えていたが、肝心の米国が最初からウクライナを見放していたんだから、アンドリー氏の訴えは虚しい。内縁の亭主(ヒモ)にすがりつく、憐れなキャバレーの酌婦みたいだ。愛国心の強い在日ウクライナ人は、野蛮なロシアの侵掠を非難するが、本当に酷いのはウクライナを犠牲にして巨大な利権を得ようとする歐米の方であろう。

  プーチン政権の転覆とロシアの天然資源を狙う連中は、ウクライナ人が何人死んでもお構いなし。場合によっては、「ロシア軍の仕業」と見せかけて、無辜のウクライナ人を虐殺することだって有り得る。たぶん、CNNやBBCとグルになって、大規模な反プーチン運動を展開するんじゃないか。自分達の策略を隠蔽し、「ロシア軍の戦争犯罪」にしてしまえば、戦争の泥沼化を実現できる。それに、歐米の軍需産業は大喜びだ。共犯の石油メジャーも原油の高騰で大儲けできる。

  しかし、歐米諸国と日本の庶民は大迷惑。1バーレルが200ドルとか300ドルに跳ね上がれば、食料品や衣料、家電、燃料などの価格上昇は止めようがない。1リッターが200円とか230円を超えたら、日本の庶民は悲鳴を上げてしまうだろう。米国では1ガロン4ドル17セントの高値をつけてしまったが、カルフォルニア州ではもっと高くなったようだ。何と、1ガロン5ドル44セントに達したという。(Soumya Karlamangla and Erin Woo, 'Why California Gas Prices are Especially High', The New York Times, March 9, 2022.)

  現在の結果を目にすれば、プーチンはウクライナのNATO加盟を認め、東部二州の独立も断念すれば良かったと言える。しかし、これはロシアの國體というか民族性を考えない結果論だ。もしプーチンがウクライナとアメリカに譲歩し、隣国におけるNATOの核配備を諒解したら、プーチンは内部からの物凄い反撥を喰らって失脚するだろう。歐米の闇組織は、絶対にプーチンが譲歩せず、ウクライナ東部も断念しないと確信していたはず。バイデンが何度も繰り返し「ロシア軍が進撃してくるぞ !」と述べていたのは、彼のスポンサー達が事前に「ウクライナ紛争」を決めていたからだ。彼らは復讐心に燃え、「絶対に落とし前を付けてやる ! 俺達の利権を奪った野郎は赦せない ! あの忌々しいプーチンを倒してやるぞ !」と意気込んでいたんじゃないか?

  ユダヤ人のオリガルヒは、酔っ払いのエリツィンを利用し、資本制の自由市場へと移行したロシアを支配できた。ところが、プーチンが出てきて卓袱台(ちゃぶだい)返し。ロシアン・マフィアのボスとソックリなプーチンは、自分の領土(シマ)から異人種を叩き出し、新たな皇帝としてロシアに君臨した。一方、追い出されたユダヤ人は恨み骨髄だ。せっかく手にした富を手放す破目になったから、プーチンを殺してやりたいほど憎んでいる。プーチンはしきりに「ウクライナの非ナチ化」を叫んでいるが、本当は「ウクライナの非ユダヤ化」、あるいは「非オリガルヒ化」を臨んでいるんじゃないか? マスコミが話題にする「ネオナチ」なんて、問題の争点ではなく、単なる馬鹿の集団、つまり便利なチンピラに過ぎない。

  少年時代の経験が頭の片隅に残っていたのか、プーチンは西側の闇組織と徹底的に戦う覚悟を決めたのかも知れない。当初、日本の軍事評論家は「キエフには侵攻しないだろう」と考えていたが、プーチンは首都攻略を目論んでいた。おそらく、全力を以て「ケリ」を附けなければ、何時までもイチャモンは続く、と思っていたのだろう。つまり、歐米の黒幕どもは狡猾な暴力団と同じで、一度でもロシアが「譲歩」とか「弱い態度」を示せば、容赦なく波状攻撃を加えてくる。だから、乾坤一擲の勝負に出て、ウクライナをロシアの勢力下に入れなければならない。プーチンだって戦争のリスクを予想していたはずだ。

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(左 : プーチンを「人殺し」と呼ぶバイデン   /  右 : 反ロシアの急先鋒たるヴィクトリア・ヌーランド)

  なるほど西側の経済制裁はロシアにとって致命的となるから恐ろしい。でも、ロシアが軍事的に劣勢な立場に置かれれば、やがてプーチンの権威は失墜し、武闘派の政治家が台頭してくるだろう。ロシア人は経済的豊かさよりも、軍事的優位性の方を好む。もし、歐米諸国に屈服する「弱いロシア」になれば、さすがに独裁者のプーチンでも安泰ではない。つまり、ウクライナに譲歩しても、歐米に挑んでも、どちらの選択肢を採ってもプーチンの立場は厳しくなる。それなら、一か八かの戦争に賭けた方がいい。ヤクザだって、組の事務所に弾を撃ち込まれれば、必ずやり返す。報復しないヤクザは、仲間から馬鹿にされるし、敵対する組からも侮られる。

  とにかく、プーチンの決断にはロシア人への信頼があるのかも知れない。彼の同胞は経済的に苦しくなっても、敵を倒そうと考える。現在のロシアはどうか判らないが、昔気質のロシア人なら、「国家の独立のため」と思って困窮生活を我慢するだろう。 第二次世界大戦でもロシア人は艱難辛苦に耐え抜き、強敵のドイツ軍を相手にても最後まで奮闘した。プーチンのみならず、ロシアの軍人や政治家も、こうした列強の誇りを持っている。彼らは「どんな犠牲を払っても、ロシアは最後に勝利を摑む」と信じているんじゃないか? 「隷属状態でも豊かさと平和が一番 !」と考える日本人とは対蹠的だ。

  今回のウクライナ紛争がどうなるのか依然として判らない。もしかすると停戦合意となって、ロシア軍が撤退するかも知れないが、交渉が決裂すれば戦闘は長期化するだろう。補給が切れたロシア軍は戦闘不能になってしまうから、もしかすると敗北の結末だって有り得る。それに、たとえウクライナ政府を屈服させることが出来ても、歐米諸国による経済制裁や金融制度からの排除は続くから、ロシア経済は崩壊の危機に瀕する。それゆえ、ロシア国民がどの程度、経済的窮乏に耐えられるかが、今後の鍵となるだろう。

  一方、ウクライナ人はどっちに転んでも不幸になる。ロシアに占領されれば、物凄い粛清の嵐が巻き起こるだろう。反ロシア的な人物はシベリア送りか死刑になる。だから、ウクライナ人は観念するか、逃亡するかのどちらかしかない。仮にゲリラ戦を続けるにしても、戦場と化した祖国は焦土となり、元の生活に戻るのはほぼ不可能だ。おそらく、ドイツやフランス、ブリテン、ポーランドに逃れた避難民は戻ってこないぞ。パルチザンとしてロシア軍に抵抗するのもいいが、もし、ロシア軍が攻撃のレベルを上げたら、一般のウクライナ国民にも相当な犠牲者が出るだろう。

  もし、マスコミが言うように、プーチンが「狂人」となれば、ウクライナ西部を無人地帯にするため、放射能汚染で廃墟にすることも考えられる。仮に、原発の破壊や核兵器の使用が不可能なら、炭疽菌かウィルスをまき散らし、避難民が戻れないバイオハザード地域にしてしまえばいい。ドローンでもラジコンのセスナ機でもいいけど、上空から炭疽菌を散布すれば、キエフなどの主要都市には住めなくなる。まぁ、いくら強権的なプーチンでも、ここまで残酷な事はしないと思うが、バイデン政権が徹底的にロシアを追い詰めれば、プーチンが非常手段に訴えることも有り得る。プーチンはウクライナ人をロシア人の同胞のように考えていたから、最初から殲滅作戦を採らず、攻撃の手を緩めていたのだ。

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(左 : ロシア軍の攻撃で被害者となるウクライナ人  / 右 : ウクライナを脱出した避難民の親子 )

  日本のマスコミは絶対に解説しないが、今回の戦争でプーチンが苦戦を強いられるのは、真の敵がウクライナではないからだ。いくらウクライナ軍を攻めても、本丸は西ヨーロッパやアメリカにあるんだから、ウクライナ人を皆殺しにしても戦争は終わらない。果てしなく続くだろう。ひょっとすると、プーチンが失脚することもあるだろうが、そうなってもウクライナ人が勝利を摑むことはあるまい。たとえロシア軍を撃退できても、ボロボロになったウクライナは当分の間不幸な常態となる。

  米国の軍事アナリストは、ウクライナ軍の勝利を予想しておらず、むしろ「何時キエフが陥落するのか」という点に関心を寄せている。日本人でもウクライナ軍の形勢を不利と考えているようだ。しかし、ウクライナ人は抵抗を諦めないだろう。なぜなら、最後まで闘えば心の整理がつくからだ。たとえ、ロシア軍に屈服しても、ウクライナ人は民族のプライドだけは守ることができる。日本人も彼らに学ぶべきだ。ただし、ウクライナ人は離散(ディアスポラ)の民族になるかも知れない。特に、子持ちの若いカップルだと、歐米での明るい未来(生活)の方を選びたくなる。可哀想だけど、在日ウクライナ人も祖国に帰るより、日本に住み続けた方が幸せなのかも知れない。翻って、愛国心が強いグレンコ・アンドリーやナザレンコ・アンドリーは、何時ウクライナへ戻ってしまうのか? 



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