「専門家」を騙る元警察官

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( 左 : JFK暗殺の「単独犯」とされ、裁判の前に消されてしまったリー・ハーヴェイ・オズワルド / 右 :「精神異常」の「単独犯」で有罪にされそうな山上徹也 )

  銭儲けができるYouTubeには、「文化人放送局」というバラエティー兼ニュース番組がある。このインターネット番組には、凡庸な隠居老人の加藤清隆が居坐っているが、たまにジャーナリストの山口敬之が出演するから、観ていて参考になる時もある。筆者が同番組に最も興味を抱くのは、猫組長が出演する時だ。国際金融や資金洗浄に詳しい菅原潮・元組長は、実際に大金を動かした経済ヤクザなので、とにかく話が面白いし、経済問題を解説する際の視点が鋭い。大学の講義を聴くよりも数十倍、数百倍も有益だ。

  そして、この「文化人放送局」には、別枠で時事問題を語り合う解説番組があり、山岡鉄秀が司会を務め、「愛国三銃士」なるゲスト・コメンテーターが登場する。ギャラやテーマによって出演者が変わるけど、8月17日の放送では、元国会議員の長尾敬と元陸将の山下裕貴に加え、元警察官の坂東忠信が「三銃士」となっていた。彼らが取り上げる時事ネタの中には、安倍元総理の暗殺事件が含まれており、大和西大寺駅の側にあるビルの屋上が怪しい、という話題があった。

Sanwa City 001( 左 / 三和シティー・ビル )
  誰のSNS情報なのか判らないが、殺害現場の直ぐ側にある「三和シティー・ビル」の屋上に、簡易テントみたいな布が張ってあった、というのだ。実際に何なのか判らないが、とにかく白い物体が録画に映っていた。これが誠に奇妙で、事件後、3時間経ったら撤去されてしまった、というのだ。TBSによる現場中継の録画なので、誰でもインターネットで確認できる。一部の人々にとっては相当怪しく見えたようで、「テントの下にスナイパーが隠れていたんだ !」と騒ぎ出す人もいたらしい。確かに、屋上の片隅には四角形のテントが張ってあった。しかし、そこにスナイパーが潜んでいた可能性はかなり低い。

  筆者は山口氏や山岡氏と同じく、「山上単独説」には懐疑的である。弾丸の入射角度から推測すれば、何処かに狙撃手が隠れていた、と考える方が自然だ。もしかすると、「改造拳銃」の爆音に合わせて別の弾丸が飛んできたのかも知れない。サプレッサー(消音器)附のライフルなら発射時の音は小さくなる。一般国民はこうした推測を聞けば、「そんなの陰謀論の類いだ !」と笑い飛ばしてしまうだろう。だが、真剣に弾道検査を行えば、警察側による発表の方が“いかがわしく”思えてくる。ただ、文化人放送局がこうした「謎のテント」を取り上げると、「また視聴率稼ぎのネタ何じゃないか?」といった冷やかしが現れてくるのも事実だ。なるほど、文化人放送局は刺戟的な話題を求めているんだろうが、坂東氏と山下氏の解説には納得できない。

Bandou 88821( 左 / 坂東忠信 )
  前回のブログで坂東氏の解説を批判したが、今回もまた坂東氏は“とんちんかん”な解説をしていた。筆者は「本当に殺人事件の専門家なのか?」と疑いたくなるが、坂東氏は警察の擁護に熱心だった。例えば、ビルの屋上に設置されたテントに関し、坂東氏はスナイパーの潜伏じゃなく、警察による「高所監視」じゃないのか、との推測を披露していた。現役の頃、坂東氏も要人警護のために、ビルの屋上で監視役を務めたことがあるそうだ。坂東氏曰わく、もしかすると、今回の件は奈良県警による秘密の監視体制で、「暑さを防ぐ為に警察がテントを設置したんじゃないか?」という憶測であった。

  確かに、スナイパーが目立つようなテントを張って潜伏し、射殺後にテントをしまうなんておかしい。おそらく、ビルの管理会社が何らかの用事でテントを持ってきたんじゃないか? この点で筆者は坂東しに賛成するが、奈良県警がビルの屋上に監視要員を配置していた、という点は納得できない。なぜなら、もし、奈良県警が高所監視をするくらい警護に慎重なら、安倍氏の背後にちゃんとSPを配置していたはずだ。ところが、実際は素人でも判るくらい警護体制が“お粗末”であった。たぶん、各地の警護で忙しい警察庁は、「まさか、安倍を狙う奴なんか居ないだろう」と“油断”していたのかも知れない。もし、坂東氏が言うように、警察が狙撃犯を予想していたなら、もっと安倍氏の周辺を手厚くしていたはずだ。そうでなければ、「ガラ空きの背後警備」は意図的な「手抜き」か、「もぐら(警察内部に潜むスパイ)」の仕業になってしまうだろう。

  坂東氏は「元警察官」という肩書きを使い、「銃の専門家」を装うが、彼の知識には疑問点が多い。坂東氏は警察の発表を鵜呑みにし、山上の弾丸が安倍氏の左肩を直撃し、その弾は体内で二つに割れ、右の首元から飛び出した、と述べていた。しかし、これはおかしい。もし、弾丸が喉元の右側から噴出したのであれば、傷口はもっと大きくなったはずで、鮮血もかなり吹き出したはずだ。ところが、銃撃シーンを撮した映像をよく観てみると、シャツの襟は一瞬開くが、白い襟元は赤く染まっていなかった。もし、坂東説が正しいとすれば、安倍氏の首、つまり喉元に空いた二つの孔からは、大量の血が流れ出ていたはず。ところが、奈良医大の福島教授は記者会見の席で、坂東氏とは異なった見解を述べていた。実際に安倍氏を診た福島教授は、この二つの傷口を「弾丸が入射した時の孔」と判断したが、坂東氏はどう考えているのか? なぜ、安倍氏の白いシャツ(特に襟元)は真っ赤に染まっていなかったのか?

Yamashita 1(左  / 山下裕貴 )
  坂東氏の横に坐っていた山下元陸将も「専門家」とは思えない。彼は狙撃犯の存在に懐疑的で、警察の見解を疑う山岡氏の疑問に関しても否定的な態度であった。前々から山岡氏は単独犯説に懐疑的で、「三和シティー・ビルからの狙撃もありうる」という考えであった。しかし、要人警護に詳しい山下氏は、「あんな近い距離からの狙撃なんてない。もし狙撃するとすれば、700mや1000m先からですよ !」と応えていた。しかし、この見解もおかしい。なぜ、「近距離からの狙撃」は有り得ないのか? 「普通、スナイパーは遠くのビルから撃ってくるので、直ぐ近くからの狙撃はまず無い」という固定観念の方が危険で、本当の軍事専門家なら、たとえ1%の可能性であっても、あらゆる狙撃方法を考えるべきだ。

  それに、こうした「前提」や「常識」に囚われていると、斬新な手口に気づかない場合もある。過去を振り返れば判るけど、日本人は「想定外の事件」に直面するとペンギンのように狼狽し、「まさか、こんな事になるとは・・・」と呟く。もし、真犯人が「お役所体質(実態)」の警察を見抜き、わざと近くのビルから狙撃したら、いったい警察はどう思うのか?  実際、奈良県警や警察庁の幹部は、「今さら安倍を狙う奴なんか居ねえよなぁ~」という考えだったから、安倍氏の警護が手薄になったんじゃないのか? つまり、奈良県警には「元総理への襲撃」や銃を使った「殺害テロ」なんて全く考えていなかった、という訳だ。

  一般の日本人は「肩書き」に弱い。山下氏は「元陸将」といっても、実質的には「行政組織の管理官」程度だから、実際にどうやったらあんな殺人が出来るのか、想像できないのかも知れない。もし、この元陸将が狙撃に詳しく、弾道の角度や威力にまで頭が回れば、もっと別の見解を述べていたことだろう。しかし、山下氏は戦前の軍官僚や大本営務めの参謀と同じで、軍事作戦の書類作りには長けているが、現場での殺人、つまり実際の戦闘には向かない「軍人」だ。こんな人物が自衛隊の高級将校だったなんて、本当に情けなくなる。でも、日本全体が左巻きで非現実的なんだから、山下氏だけが間抜けとは言えまい。

  文化人放送局は地上波テレビよりも遙かに“まし”なんだが、所詮、会員制の「エンターテイメント局」なので、ゲスト出演者はそれほど真剣じゃない。ここで問題なのは、「山上単独説」で押し切ろうとする警察の方針だ。本来、警察は政治に左右されず、科学的かつ論理的な捜査で真実を追究すべきなんだが、今回の事件に関しては、様々な疑問が湧いてくる。これは具体的な証拠に基づかないが、今までの経緯を考えると、幾つかの推測がどうしても頭をよぎってしまう。

 (1) 安倍警護の失態を世間の目から逸らすため、警察は意図的に統一教会の情報を流し、マスコミによる警察批判を封印しようとした。

 (2) 襲撃当時、スナイパーの存在に気づかなかったので、真犯人を取り逃がしてしまった。これでは警察の面目が丸潰れになるので、警察の上層部は「単独犯説」で押し通すことに決めた。それゆえ、下っ端の警察官は、何としても山上を有罪にすべく、あらゆる証拠を掻き集め、もし足らない証拠があれば、密かに捏造する。おそらく、検死官も検察の意向(依頼)で所見が歪められており、不本意ながらも「山上の兇弾による殺害」との検死報告書が作られた。

 (3) 福島教授も警察の圧力で当初の見解を訂正し、左肩からの銃弾で血管が破裂したという「シナリオ」に同意する。そして「心臓に孔が空いた」という見解も「不確かな判断」と発表され、以後、福島教授は沈黙を守ることになるのかも。緊急処置に係わった他の奈良医大医師も、病院の理事長と警察の圧力に負けて意見を変えるだろう。

 (4) 司法解剖で「弾丸」は発見されたが、それはライフルの銃弾であったから、「マズい !」と思った警察は、「弾丸が見つからなかった」という偽の「結果」を発表する。必要とあれば、「山上単独犯説」を支える補助的な証拠を捏造する。警察が具体的な情報を発表しないのは、単独犯説の台本作りに時間が掛かっているためだろう。どのようにしてチグハグな証拠を繋ぎ合わせれば、裁判で通用する証拠になるのかを思案中なのかも知れない。

 (5) 遺体を解剖した時のビデオは極秘扱いで、遺体からコッソリ摘出した弾丸も法廷には出さない。おそらく、弾丸を摘出した映像はカットし、巧妙に編集して普通の司法解剖のように見せかける。肝心の弾丸は狙撃された時、安倍氏の体から飛び出て、道路のどこかに落ちてしまった、という「推論」で「弾丸未確認」の言い訳にするつもりだ。しかし、これだと山上を有罪にできないから困ったことになる。

Abe assassination 4(左  /  首からの出血が少ない安倍元総理)
  筆者は日本の警察をまだ「誠実」と思っているが、一連の捜査状況やマスコミへの発表を聞いていると、何となく心配になってくる。というのも、警察だって行政機関の一つであるからだ。一旦、警察が「組織防衛」に舵を取れば、警察庁の上層部は無理なストーリー解釈でも、無茶な殺人方法でも押し通す。場合によっては、政府からの圧力にも屈服するし、何らかの取引でウヤムヤにすることだってある。もし、科学的な捜査で別の人物が殺害したとなれば、警察に対する世間の批判は物凄く強くなるので、出世と保身を優先する幹部は必死になる。

  そして、もっと恐ろしいのは、犯罪者が外国人、あるいはプロの殺し屋、つまり闇の国際的組織から派遣された傭兵の場合だ。今回の事件でも判る通り、日本の警察は外国の工作員によるテロ計画や政治組織による暗殺事件を予想していなかった。そもそも、外国で情報を集める諜報組織や、国内の治安を司る防諜組織を持っていないから、日本政府は外国からやられっぱなしだ。これだと、暗殺者が「仕事」を終えた後、直ちに「高飛び」すれば、日本の警察は追跡・逮捕できない。

  そもそも、スナイパーの可能性を否定しているくらいだから、日本の警察は下手人が「外国人」だとお手上げだ。もし、暗殺者が支那人や朝鮮人なら、堂々と大和西大寺駅から電車に乗って、関西空港かどこかの空港に向かい、そこから「観光客」としてアジアへ飛び立ってしまうだろう。地上波テレビは統一教会の話題ばかりを垂れ流し、全国紙も統一教会の票をもらった政治家と「国葬反対」のキャンペーンばかりに紙面を割く。安倍氏の殺害に関する科学的捜査なんて全く興味なし。既に事件から1ヶ月以上も過ぎたから、一般国民はこの不可解な事件を忘れているだろう。普通の日本人は日常のセックスやグルメ、スポーツ、夏休みの娯楽で頭がいっぱいだ。「平和ボケ」の国民には没落の将来しかない。




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