元警察官の奇妙な解説

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  前回のブログに関し、ちょっとだけ補足したい。元警察官の坂東忠信が神谷宗幣の番組に出演し、山上徹也の手製銃に関する解説をしていた。しかし、筆者には坂東氏の説明がどうしても腑に落ちず、「無茶なこじつけじゃないのか」と思えてならない。そもそも、あの手製銃から発射された弾丸が、本当に安倍元総理の体を直撃し、体内の血管や筋肉を傷つけ、骨に当たって砕けたのか? そして、骨に当たった金属片が、角度を変えて首元から噴出した、という説明には納得できない。坂東氏は警察の発表を補足する形で推測を述べていたが、もし彼の意見が正しくても、鑑識の人々が首から射出した兇弾を5日後に捜索するなんて異常だ。普段は真面目な捜査をする警察が、国家規模の重大事件に直面したら、こんな馬鹿げた事をするなんて信じられない。

Brandon Herrera 288(左  / ブランドン・ヘレーラ )
  筆者は山上の手製拳銃を調べた訳じゃないので何とも言えないが、ブランドン・ヘレーラ(Brandon Herrera)という銃器の専門家(「The AK Guy ,Inc.」の経営者)が、YouTubeに流した自作動画は大変参考になった。アメリカ人のヘレーラ氏は、歐米諸国で報道された安倍氏の銃撃事件を知り、山上の銃に興味を持ったらしい。そこで、銃の製造に詳しいヘレヘラ氏は、独自に火薬や鉄パイプを買ってきて、山上の手製銃を再現してみた。

  もちろん、ヘレーラ氏は山上の銃を直接見た訳じゃない。しかし、色々な銃器を造ってきた経験から、だいたいの構造は想像できたので、ハードウェア・ショップに赴いて同じくらいのパイプを購入し、ついでに火薬も自前で製造したそうだ。弾丸には部品メーカーが使う普通のベアリングを用い、様々な大きさのベアリングを選んで鉄パイプの中に詰めた。この製造過程は彼の動画(「Testing the Pipe Gun That Killed the Japanese Prime Minister」というタイトル)で紹介されている。(しかし、彼の動画はYouTubeの規約に違反したそうで、7月30日に消されてしまった。それでも、「VK.com」や「rumble」といった動画サイトに残っていて、誰でも観ることができる。)

  ヘレーラ氏は完成したパイプ銃を手にし、野原で発射実験することにした。ただし、その銃を直接、自分で発砲するのはかなり危険なので、銃を台の上に固定し、長い電線を使って離れた位置から点火することにした。彼は銃の側にドラム缶を設置して、その背後に隠れて銃の発射実験を行うことにした。いざ、点火をしてみると、轟音を伴った爆発が起きてしまい、銃はほぼ木っ端微塵に。おそらく、ヘレーラ氏は結果を予想していたのかも知れない。危険を察知してドラム缶の陰に隠れていた方が無難である。それにしても、この爆発は凄まじく、もし彼が直接引き金を引いていたら、即死か重傷を負っていたに違いない。

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(左 : 山上の銃を再現したヘレーラ氏 /  右 : 第1回目の発射実験)

  この大爆発を目にしたヘレーラ氏は、火薬の量を減らして再度の実験に挑むことにした。そして、今回もドラム缶の陰に隠れての点火となったが、やはり凄まじい爆風となった。しかも、片方の鉄パイプが後方に飛んでしまい、栓が弾丸のようになってしまったから危険だ。もし、ヘレーラ氏が銃を握っていたら、胸や腹に大きな傷ができてしまうだろう。たとえ火薬の量を減らしても、鉄パイプ銃は火薬の威力に耐えられない。したがって、よほど頑丈な銃身にしないと、あの威力を封殺することはできないんじゃないか? 第1発目で爆発なら、第2発目の射撃なんて絶対に無理だろう。

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(上写真  /  第2回目の発射実験による爆発)

  坂東氏は趣味で鎧兜などを造っているから、山上の手製銃を得意げに解説していたが、本当に彼は銃に詳しいのか? 一般人は坂東氏を信じてしまうが、銃器に詳しいアメリカ人や日本の拳銃マニアなら、坂東氏の説明に疑問を抱いてしまうだろう。彼の推測では、山上が市販の薬莢を使い、その中に金属の弾丸を詰め、さらに、この「銃弾」を鉄パイプの中に込めて発射したという。

  しかし、この説明だと色々な疑問が湧いてくる。もし、坂東氏が言うように、山上の弾丸が90mないし100mの壁にのめり込む程の威力があったなら、それなりの火薬を用いたはずで、ヘレーラ氏の実験と同じ爆発が起こったはずだ。ところが、山上の銃は轟音を立てたものの、パイプ銃の爆発は起こらず、第2発目を発射することができた。しかも、山上の手や胴体には傷が無かった。もし、発砲の爆発が起きていれば、山上は即死か重態だ。たぶん、安倍氏よりも多量の出血で大惨事になっていたことだろう。また、市販の薬莢が隙間無く鉄パイプにフィットしたのか? この薬莢に詰め込まれた火薬の量は、一体どれくらいだったのか? もし、暴発しない程度の量で、丸い金属が100m先の建物に食い込む勢いだとしたら、山上の手製銃は結構「完成度」が高い。

  山上の手製銃を現場で押収した警察は、必ずや発射実験、すなわち銃の検証作業を行っているはずだ。何処か別の場所で殺害現場を再現し、山上の銃を数回、あるいは数十回、試し撃ちを行ったはずである。おそらく、警察庁も前回述べたゼラチン製の人形を用いて、10mmの弾丸がどのように飛び散り、人形の体内を移動したのかを確かめたはず。坂東氏が述べたように、もし山上の弾丸が体内で角度を変え、骨に当たって砕け、その破片が首から噴出したのなら、その映像をカメラに収めているに違いない。警察はインターネット界隈で駆け巡る「陰謀論」を打ち消すためにも、その実験映像を公開すべきだ。

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(左 : 現場で使われた山上の手製銃 /  右 : 警察が山上の自宅を捜索して押収した手製の銃器)

  しかし、ここで問題が一つある。誰が山上の手製銃を持って、引き金を引くのか、だ。いくら下っ端の警察官といえども、いつ大爆発を起こすか判らぬ銃を手にするなんて厭だろう。もし、火薬の量を間違えて発砲すれば、指や手首が吹っ飛ぶし、場合によっては血塗れの重傷になる。(実験で「殉職」となれば、更なるスキャンダルになるから、警察のトップは戦々恐々だ。) でも、離れた場所から引き金を引いたら再現実験にはならない。だが、パイプ銃に弾丸を詰めて、それを100mくらい飛ばすには、ある程度の火薬が必要だから、危険を承知で誰かが直接引き金を引くべきだろう。

  となると、警察組織における「責任者」が挑むしかなく、奈良県警を代表して県警本部長、あるいは警察庁の長官が「最高責任者」として「狙撃手」になるしかない。危険な実験では両名が死亡か、負傷する場合もある。それゆえ、警察のお偉方10人くらいを「予備役」として確保することも必要だ。本来なら、30回くらい試し撃ちをして平均値を出さねばならぬから、30名くらいの上級職警官を犠牲にする覚悟も必要である。なぜなら、発砲に成功しても、標的に当たるとは限らないし、当たったとしても、説明通りの弾道を描くとは限らない。もし、30回発射して、1回しか標的に当たらなかったら、それを何回か再現しなくてはならないら、場合によっては100名くらいの警官が殉職する事態になる。

 とにかく、安倍元総理が白昼、堂々と殺害されるという事件が起きたのだから、警察は厳密な科学的捜査を行うべきだ。山上による「単独犯説」で一件落着なんて赦せない。警察は面目をかけて真相を追究すべし。そして、捜査の全貌を一般国民に知らせることは無理でも、せめて国会議員にだけは具体的に幾つか報告すべきなんじゃないか。首相官邸にだけ持ち込んで終わり、なんていう幕引きは危険である。なぜなら、岸田総理や側近の者が握り潰して隠匿すれば、事件の真相は闇に葬られるからだ。捜査報告書や検証映像、司法解剖のレポートなどは、少なくとも安倍派議員の手に渡されなければならない。

Bandou 88821( 左 /  坂東忠信)
  坂東氏がブランドン・ヘレーラ氏の動画を観たかどうか判らないが、国会議員となった神谷氏は、削除された動画を坂東氏に提示し、その感想を訊くべきだ。また、坂東氏はYouTubeの文化人放送局にも度々出演しているから、山岡鉄秀や山口敬之の前で堂々と自分の意見を述べたらいい。日本の一般国民は「元警察官」という肩書きを目にすれば、即座に「銃や暗殺に詳しい」と思いがちだ。しかし、いくら射撃訓練を受けていたとしても、坂東氏は警察官として銃の訓練をしていただけで、戦争や破壊工作で銃を使う特殊部隊の軍人ではない。警官は犯人を逮捕する時に銃を使うだけである。外国の要人や犯罪者を抹殺するために訓練されたスナイパーではない。したがって、暗殺の可能性を語る専門家としては役不足である。まぁ、坂東氏も実際に山上の銃を見たわけじゃないから、推測を述べただけだろう。元警察官でも一般人と同じく、想像で語ってしまうこともある、ということだ。




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