無敵の太陽

主要マスメディアでは解説されない政治問題・文化・社会現象などを論評する。固定観念では分からない問題を黒木頼景が明確に論ずる。

映画・ドラマ評論

サンズ・オブ・アナーキー / Sons of Anarchy (特別編)


オリジナル9の過去

SOA 001












(写真  /  SAMCROのメンバー)

  アメリカの人気TVドラマ『サンズ・オブ・アナーキー(Sons of Anarchy)』が日本でも好評を博しているようだ。当ブログも初期にこのドラマを紹介したことがある。ところが、配給元のFOXによるホーム・ページを閲覧して驚いた。一応、ドラマの粗筋や登場人物の説明があるけど、物語の根源となる昔のエピソードが記されていないのだ。『サンズ・オブ・アナーキー』は第二世代の活躍や悲劇を描いているのだが、第一世代である「オリジナル・メンバー」を知らないとドラマの醍醐味が半減するる。たぶん、ドラマ紹介のウエッブ・ページを作成した人物は、上司から渡された資料を日本語に訳しているだけなんだろう。作品に興味の無い担当者が、しぶしぶドラマの説明をしていれば、読んでいる方だって面白くない。大企業は零細商店とは違って、適当なセールスでも大丈夫なんだろう。商店街の小売業者なら、必死になって目玉商品を宣伝し、汗だくになってお客様にご説明申し上げるのにねぇ。フォックス社で働く担当者は、殿様商売をしているんだろう。

charlie hunnam 9Clay Morrow 1(左ジャックス・テラー  / 右クレイ・モロー )
  それはさておき、シーズン1からファイナル・シーズンまでのストーリーを説明する訳にも行かないから、詳細はレンタルDVDでも観てもらうしかない。(興味がある方は当ブログのPart1Part2Part3Part 4の記事を読んでね。) ただし、大筋を言うなら、物語はカルフォルニア州にあるチャーミング(元は「レッドウッド」)が舞台となる。「サンズ・オブ・アナーキー」というバイク・クラブを構成する面々は、表向き修理工場を営むが、裏商売として銃器の密売を行い、生計を立てている。主人公のジャックス・テラーはクラブの創設者ジョン・トマス・テラー(John Thomas Teller)の息子で、当初はクラブの副総長。後に総長へと昇格する。シーズン1での総長は「オリジナル9(創設時の九名)」の最年少メンバーであったクレイ・モロー(Clarence `Clay' Morrow)である。他のメンバーを紹介すると、まず「オリジナル9」の古株で、ジョンの親友であったパイニー・ウィンストン(Piermont `Piney' Winston)を挙げねばなるまい。彼はジャックスの親友オピィ(Opie Winston)の父親である。つまり、親子二代にわたって、テラー家とウィンストン家は仲良しというわけだ。

Chibs 2Tig 4








(左: チブス  /  右: ティグ)

  主要メンバーにはジャックスの良きアドバイザーで、冷静沈着なアイリス系のチブス(Filip `Chibs' Telford)がいる。そして、チブスと雙壁をなすが、ちょっとクセのあるティグ(Alex `Tig' Trager)。ジャックスの母親のジェマ(Gemma Teller Morrow)は、男優りのゴッド・マザーといった風格で、外見的には強靱だが、内面的にはちょっと脆いところがある。彼女は若い頃、亭主であるジャックスの父親ジョンを見限り、現在の総長クレイと懇ろになり、ついには夫婦となる。野心家のクレイはジョンのバイクに細工を施し、事故死を仕組んで成功してしまうのだ。最終回にジャックスが跨がる水色のバイクは、父親の形見となった愛車のバイクである。

Gemma 2SOA Tara 3Maggie Siff 1








(左: ジェマ・テラー  / 中央と右: 「タラ」を演じたマギー・シフ )

  物語でジャックスと結婚するのは、高校生の時に恋人だったタラ・ノウルズ(Tara Knowles)である。彼女は地元を出て大学に進み、外科医となってチャーミングに戻ってはた。ところが、そのタラに惚れた変態刑事がいつも追い回すので、ジャックスはこのストーカーをタラの前で撃ち殺してしまう。ここで警察に連絡せず、二人はベッドを共にするんだから、タラの方も尋常じゃない。たぶん、恐怖心と開放感から、性的に興奮したんだろう。再会の末に結婚する二人の間には、トマスという次男が生まれた。長男のアベルは、昔付き合っていたウェンディーとの間に出来た子供である。ただし、このウェンディーは母親失格で、妊娠中にもかかわらずシャブを打っていたんだから呆れてしまう。激怒したジャックスは、麻薬中毒のウェンディーからアベルを取り上げて、自分で育ててしまうのだ。といっても、実質的には祖母のジェマが我が子のように育てていたのである。したがって、ジェマのアベルに対する愛情は半端じゃなかった。とにかく、タラは義理の息子を育てながら、ジャックスの次男を産んだことになる。

Wendy 1Tara & Thomas 2SOA Jax & Thomas 1








(左: ウェンディー  / 中央: タラと息子のトマス  /  右: アベルを抱くジャックス)

  肝心の「オリジナル9」に話を戻す。なぜ、ジョン・テラーは「サムクロウ(SAMCRO)」と呼ばれるモーターサイクル・クラブを創設したのか? それは彼がベトナム戦争に従軍した頃に遡る。時は1960年代後半。リンドン・ジョンソン政権のもと、アメリカはベトナム戦争の泥沼に陥り、徴兵された多くの若者が劣悪な戦場で命を落としていた。ジョンは合衆国陸軍第25歩兵師団に配属されていた。戦場を生き延びたジョンは地元に戻るが、世間は帰還兵に冷たく、彼は自由を求めて「ヘルズ・エンジェルズ」みたいなグループを作る。これが「SAMCRO」と呼ばれるモーターサイクル・クラブの始まりだ。(ちなみに、「SAMCRO」は「Sons of Anarchy Mortorcycle Club Redwood Origianl」の略で、ジョンたちは「チャーミング」という新しい街の名前が嫌で、昔ながらの「レッドウッド」を用いていた。) 当時のマスコミは、戦況が悪化するベトナム戦争を否定的に報道し、国内で厭戦気分を煽っていたし、徴兵を恐れる大学生は抗議活動をするか、カナダに逃れるしかなかった。国務長官になったユダヤ人のジョン・ケリーは、ベトナム反戦運動の代表格として有名だ。(元々はユダヤ風の「コーン(Cohn)」という氏族名であった。) 安全な米国に留まり、テレビ画面を通してしかベトナム戦争を知らないアメリカ国民は、村人や女子供を撃ち殺すアメリカ兵を「赤ん坊殺し」とか呼んで罵り、祖国の為に闘った軍人として尊敬しなかったという。それゆえ、こうした仕打ちに耐えられなかったジョンは、自分らしく誰にも指図されない、自由な人生を送ろうと決意したのである。

John Teller 1John Teller 2Piney 3Opie 4






(左2枚: ジョン・テラー  /  パイニー  /  右: パイニーの息子オピィ )

  ジョンがクラブを創設すると、ベトナム戦争に従軍した親友のパイニーが加わった。彼はジョンの死後、クラブの副総長となるが、それは親友の息子ジャックスが大人に成長するまでの間、クラブを守る為である。ジャックスが成長して「サムクロウ」のメンバーになると、その地位に執着することなく、副総長の席をジャックスに譲ってしまったから、本当に偉い。この禅譲により、ジャックスは誰の反対もなく、若くして副総長になれた。しかし、ドラマの中でパイニーは総裁のクレイに無惨にもショットガンで殺されてしまう。クレイは自分が犯した裏切りをパイニーに知られたため、パイニーを生かしておくわけには行かなかったのだ。

Lenny 1Lenny 3Keith McGee 1







(左: レニー・ジャノヴッツ  / 中央: レニーとジャックス /  右: キース・マッギー)

  三人目は、「ヒモ」と呼ばれたレニー・ジャノウィッツ(Lenny `The Pimp' Janowitz)である。彼もまたベトナム戦争の帰還兵で、ジョンの副官的存在であった。彼は銃器取締局(ATF)の捜査官を三人も殺してしまったため、「ストックトン州立刑務所」に投獄されてしまったのだ。ジャックスや他のクラブ・メンバーが刑務所で時折面会する、あの奇妙な老人がレニーである。彼は咽頭癌を患ったため、その声帯を失い、器具を使って喋るしかない。何ともまぁ印象的だ。このレニーは娼婦を扱う事に長けていたから、ジャックスたちがポルノ映画会社を運営してお金を稼ごうとした時、レニーに相談したのはこういう背景があったからである。この事情を知らないと、『サンズ・オブ・アナーキー』を観ていても、レニーが何者なのか判らない。

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(左: トリニティー・アシュビー  / 中央: モウリーン・チシュビー  /  右: ケラン・アシュビー神父)

  四番目はアイルランド出身のキース・マッギー(Keith McGee)である。彼は創設メンバーであるが、アイルランドのベルファストへ渡って「SAMCRO」の支部を作ることにした。ジャックスたちは銃器の仲卸をしていたが、その供給先がベルファスト支部の連中で、IRA(アイルランドのテロ組織)と繋がってているという設定だ。シーズン3で「サムクロウ」のメンバーがアイルランドに渡るエピソードがあり、ジャックスと美しいトリニティー・アッシュビー(Trinity Ashby)が、もう少しのところでベッドインする場面がある。このトリニティーはモウリーン・アシュビー(Maureen Ashby)の娘で、モウリーンはベルファスト支部の姉御といった感じの存在だ。それもそのはずで、彼女はマッギーの女房である。ベルファストの武器密売組織は、「キング」と呼ばれる大御所たちによって運営されているが、その内の一人が何とカトリックの神父ときている。日本なら驚天動地の設定だが、イギリス人の支配に喘ぐアイリス人だと、IRAに陰で協力しそうな神父がいても不思議ではない。アイルランドの悲しい歴史が分からないと、米国に移民したアイリス人の心情に共感できないし、イングランドとの軋轢も理解できないから、ちょっと勉強しておくとドラマが一層おもしろくなる。(チューダー朝とスチュアート朝のアイルランド支配やストラフォード伯爵トマス・ウェントワース、ウィリアム・ペティWilliam Pettyに関しては、別の機会で述べてみたい。 )

Sons of Anarchy Original 9













(写真  /  「オリジナル9」のメンバー)

  ドラマでは密売組織のケラン・アシュビーという神父が登場するが、彼はモウリーンの兄である。そして、驚くことにトリニティーはジョンの隠し子であった。どうやら、ジョンがベルファストに来た時、モウリーンと情事を持ってしまい、妊娠した彼女が不貞を告げずにトリニティーを産んでしまったらしい。だから、もうちょっとでジャックスは異母妹と肉体関係を持ってしてしまうところだった。まったく、親子は似るというが、息子のジャックスと同様、父親のジョンも女に目が無かったらしい。ちなみに、ジョンには子供が三人いて、トリニティーはジャックスの妹だが、彼には夭折したジョン・ウェイン・テラーという兄がいた。ドラマの設定では、1990年病気により6歳の生涯を閉じたことになっている。

Kurt Sutter 1Chico VelleneuvaWally Grazer 1Otto Moran








(左: 「ビッグ・オットー」を演じた原作者のカート・サッター  /  チコ・ヴィラヌヴァ /  ウォリー・グレイザー /  右: オットー・モラン)

  五番目はウォリー・グレイザー(Wally Grazer)で、1968年にメンバーとなった。彼は元々流れ者だったようで、1984年に東海岸へ移動し、ニュージャージー支部の総長になった。しかし、13年後、イタリア人との抗争で背中を撃たれて死亡したそうだ。六番目は、トマス・ホイットニー(Thomas `Uncle Tom' Whitney)で、ウォリーの紹介でクラブに入ったという。ところが、彼はクラブの内情をチクったので、1995年に囚人のレニーが服役中のトマスを抹殺したそうだ。七番目はチコ・ヴィラヌヴァ(Chico Villanueva)で、クラブで初のヒスパニック・メンバーである。彼はサムクロウと「マヤン(Mayan)」という南米系のバイク・クラブへの橋渡しだった。しかし、チコはマヤンたちの待ち伏せに遭って殺されてしまう。その時、チコと一緒だったのが八番目のメンバーたるオットー・モラン(Otto `Lil Killer' Moran)であった。オットーは助かるが、目を負傷する。彼は小柄だったが、大男を素手で殴り殺したことがあるという。刑務所に服役している「ビッグ・オットー(Big Otto)」ことオットー・ディラニー(Otto Delaney)とは別人である。ちなみに、この「ビッグ・オットー」を演じているのは、原作者で脚本家のカート・サッター(Kurt Sutter)である。九番目が現在の総長クレイ・モローで、ジョンが死亡した後、クラブの総長になった。彼はパイニーとマッギー、そしてジョンを殺し、最後は裏切者としてジャックスに殺されてしまうのだ。

ユダヤ人無政府主義者からのインスピレーション

Emma Goldman 2(左  /  エマ・ゴールドマン)
  タイトル自体が「アナーキー」となっているので、物語の中でも「無秩序」や「権威への反撥」に言及がある。このドラマの中で特徴的なのは、主人公のジャックスが父の形見の中から、直筆の手記を見つけ、時折暇を見つけては読みふけるというシーンだ。これは父のジョンが感じたことや学んだこと、さらにクラブや人生哲学について語り、それらを綴った随筆集みたいなものである。とりわけ、彼は束縛されない「自由」について書いたことがある。これはシーズン1、エピソード4の「SAMCRO支部の誕生(Patch Over)」で知ることができる。ある支部の設立でネヴァダ州に向かったジャックスは、亡き父が生前見たという壁の落書きを確かめるため、州境にある橋の下を訪れてみた。父親のジョンは16歳の時、エマ・ゴールドマン(Emma Goldman)からの一節が書かれた壁を見て衝撃を受けたそうだ。その壁には赤い文字で以下の抜粋が記されていた。

  アナーキズムが意味するものは、宗教的支配から人間の心をの解放することだ。財産に支配されることから人間の体を解放すること、政府の拘束と軛(くびき)から自由になることである。実際の社会的富を創り出す目的で自由に個人を集め、それに基づく社会秩序がアナーキズムなのだ。<Emma Goldman, Anarchism and Other Essays (New York : Mother Earth Publishing Association, 1911), p.68.>

  読者は「え~ぇ、また、ユダヤ人なのぉ~?」とウンザリするかも知れないが、歐米社会では共産主義者や社会主義者、無政府主義者、極左分子にユダヤ人の占める割合が非常に多い。エマ・ゴールドマンとはリトアニアから米国へやって来たユダヤ移民で、札付きの極左活動家であり、手のつけられぬフェミニストでもあった。1917年のスパイ防止法(Espionage Act)により、彼女の過激思想や扇動活動が問題視され、ついには逮捕されるという事態になった。ゴールドマンは裁判で有罪となり、国外追放の処分を受けたことでも有名だ。当時は共産主義の脅威が生々しく、国家への不服従や反軍思想は社会への挑戦と思われていた。まぁ、共産主義者の割合が飛び抜けて高いユダヤ人だから仕方ないが、無政府主義を標榜するアナーキズムは、まことにユダヤ人らしい発想である。彼らにしたら、長年自分たちをいじめてきたヨーロッパ文明とその社会秩序は憎しみの対象でしかない。よって、暴力を用いてぶっ壊していい。キリスト教徒がユダヤ教徒を迫害してきたんだから、キリスト教文化を根底から覆すことは、積年の恨みを晴らすことになる。それに、どうせ他人の国家なんだから、思う存分暴れてメチャクチャにしたってユダヤ人は困らない。西歐諸国に暮らすユダヤ人に真の保守派が居ないのはこのためである。「ネオ・コンサーヴァティヴ」は「保守」という言葉を貼り付けた左翼運動で、本質的にはイスラエルを支援するための隠れ蓑に過ぎない。

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  実際の社会では「アナーキズム」などトンデモない考えだ。しかし、それは西部とか南部のアメリカ人が「なぜアメリカ合衆国を好きなのか」という疑問への鍵となりうる。というのも、米国へ渡ってきたヨーロッパ人、特に南歐や東歐からの移民は、その大抵が貧民、食いっぱぐれ、持て余し者、厄介者、碌でなし、能無し、半端者であった。本物の紳士や貴族は本国で必要とされる人材だ。確固とした財産や地位を持っているのに、わざわざ平民になってアメリカへ向かう理由はない。移民は祖国で辛いことばかり。上流階級に馬鹿にされたり、抑圧されたりと、屈辱的な扱いを受けてきたし、出世したくても身分秩序と民族差別が壁となる。これだから、夢を断念せざるを得ないこともばしば。それなら、嫌な過去と祖国を棄てて新天地へ、と考えても当然だ。アメリカでは実力次第で裕福になれるし、貴族や領主に平伏す必要も無い。努力を積み重ね、そこに幸運が加われば、上院議員とか高級軍人にだってなれる。歐洲の賤民にしたら、みんなが対等の自由人というのは感激に値する。他人に頼らない代わりに、自分勝手に生きることができるんだから最高だ。

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(写真  / ヴェトナム戦争に従軍したアメリカ兵 )

  合衆国政府から「使い捨ての駒(expendable pawn)」にされた下層白人が、国家への忠誠心に嫌気が差したり、自分の好きなように生きたいと願ってもおかしくはないだろう。ジョン・テラーの場合、「兄弟」と思えるような仲間と共にバイクを乗り回すことが無上の喜びなのだ。そして、ジョンは“真の”デモクラシーでSAMCROを維持しようと考えた。つまり、何か問題があれば、各自が自分の思うところを述べ、率直な議論の後で裁決をとる。みんなが平等だから、遠慮無く本音を語っても安心だ。米国を根底から揺るがしたベトナム戦争は、議会の討論も無いまま始められ、実際に血を流したのは発言権の無い兵卒だった。宣戦布告さえ無かったのに、米国史上最悪の戦争となってしまったんだから、彼らの怒りは治まらない。陸戦のプロでもないCIAが準軍事作戦と称して軍事顧問団を派遣し、共産主義勢力への代理戦争を本格戦争に拡大させてしまい、結局アメリカの一般国民が尻ぬぐいをした、というのがベトナム戦争の実態である。マックスウェル・テイラー将軍(Gen. Maxwell Davenport Taylor)が本音で何を考えていたのか分からないが、将軍の政治的野心や統合参謀本部との軋轢、マクナマラ国防長官の判断ミスは深刻な結果をもたらすことになった。

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(写真  / SAMCROの会議)

  ゲルマン人の社会には、「バンド・オブ・ブラザーズ(Band of Brothers)」という意識が強い。戦争で生死を共にする仲間との絆を何よりも大切と考えるからだ。『サンズ・オブ・アナーキー』の中でも示されているが、クラブのメンバーは互いに命懸けで助け合い、彼らの兄弟愛は凡てのものを越えていた。クラブへの忠誠心がすべてであるから、裏切者には死刑しかない。総長のクレイがジャックスに殺されたのも、自分の利益の爲にクラブを裏切ったからである。ちょっとしたことだけど、ドラマの中には印象的なシーンがあった。何らかの事件が起こると、総長のクレイが会議室にメンバーを集め、円卓を囲む各人がクラブの問題を話し合うのだ。例えば、抗争相手との決着をどうつけるとか、あるいは銃器の密売方法をどのようにするのか、なかでも凄いのは裏切ったメンバーの処刑について賛否を問う場面である。自分の生き方は自分で決める、というのがクラブのルールになっていた。腹を割った話し合いが済むと票決を取り、メンバーは多数決の意見に従う。各メンバーが「アイ(Aye / 賛成)」あるいは「ネイ(Nay / 反対)」と口にして、総長のクレイが木槌を叩いて決定を宣言するところなど、ゲルマン人のデモクラシーを彷彿とさせるシーンで非常におもしろい。

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(写真  /  ジャックスとタラ)

  自由は経済的裏付けがあって成り立つ。ただ自由を求めて生きるなら簡単だ。乞食にもできる。しかし、好きなバイクに跨がり、愛する女と結婚し、可愛い子供を育てる、といった本当に自由な人生を送りたければ、その生活を支える金銭が必要なのだ。ドラマの中では、ギャングの抗争に危険と嫌悪を感じたタラが、夫のジャックスにクラブを棄てて、別の土地に移り、子供たちと一緒に平和な暮らしをしようと提案したことがある。しかし、その為には充分な資金がなければならない。外科医のタラは自分が何とかすると言い聞かせるが、ジャックスは「女房に頼る亭主にはならない」と言って断った。そこで、一攫千金を狙ったジャクスは、今まで避けてきた麻薬密売にも手を染めてしまうのだ。しかし、却ってトラブルが増大し、クラブを去ることすらできなくなってしまう。事態の悪化に失望したタラは、ついにジャックスとの離婚を決め、子供たちを連れて逃げようとする。最終的に、ある事が切っ掛けでタラは義母のジェマに殺されてしまう。血みどろのタラを抱きかかえるジャックスの姿が痛々しかった。

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(左: ジャックスと子供たち  /  右: 殺されたタラを抱きかかえるジャックス)

  日本のギャング・ドラマだと、暴力や恋愛のシーンはあるが、家計を支える苦労話とか子育ての難しさ、夫婦間のいざこざなどのストーリーはあまり見られない。『サンズ・オブ・アナーキー』は犯罪集団の悲劇と思われがちだが、随所にアメリカ社会の問題がちりばめられていているので、とても興味深い。筆者はFOX社から一銭も貰っていないけど、日本での公開前からこの作品に注目していた。FOX社の日本支店も、少しは自社製品を勉強してから宣伝してもらいたいものだ。組織が大きくなると「お役所仕事」になるのは、民間企業も同じである。スピン・アフ作品となる「オリジナル9」の制作日程は未だに不明だが、もし公開となれば再び記事を書いてみたい。
  



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情事の行方は行き詰まり / 浮気と家庭のアフェアー

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不倫の行方は定まらぬ

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( 写真  /  ルース・ウィルソン )

  最近では、仲の良い夫婦を見て「鴛鴦(えんおう)の契り」だなぁ、と思う人は少ない。高校生だと「聞いたことがなぁ~い」とあっさり却下されてしまうけど、熟年夫婦なら「保険金の契りよねぇ~」と笑い飛ばすだろう。(ちなみに、「鴛鴦」とは水鳥の雄と雌。) こんなことが頭に浮かんだのは、現在アメリカで放送されているTVドラマ・シリーズの『アフェアー / 情事の行方(The Affair)』を観ていたからだ。今年1月にシーズン3が終了したが、日本での放映はいつになるのか判らない。この作品は不倫をテーマにしたドラマなんだけど、ふと中学生の時に観たフランス映画の『隣の女(La Femme d'à côté)』を思い出してしまった。ストーリーは別の機会に述べたいが、これまた悲劇的な最後で、とても印象深い映画だった。日本では余りヒットしなかったけど、人気俳優のジェラル・ドパルデュー(Gérard Depardìeu)が主役を務めていたので、映画ファンの人は覚えているだろう。(当時、同級生では誰も観ていなかったので、感想を話し合う相手がいなくて寂しく思ったものである。オタク族かフランス映画ファンしか知らない作品だった。) ただ、残念なのは、共演女優のファニー・アルダン(Fanny Ardant)が筆者の好みではなかったので、他の女優だったら良かったのにと思ったものである。確かに演技力はあるんだが、カトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Denuve)級かキャロル・ブーケ(Carol Bouquet)級の美女がいいなぁ。

Gerard Deoardieu 1Catherine Deneuve 1Carol Bouquet 1








(左: 「隣の女」に出演したジェラル・ドパルドューとファニー・アルダン  / 中央: カトリーヌ・ドヌーヴ  /  右: キャロル・ブーケ )

  シーズン3はつまらなくなったけど、『アフェアー』のシーズン1と2は“まあまあ”良かった。何と言っても、主演女優のルース・ウィルソン(Ruth Wilson)が魅力的だから、浮気の相手になってもしょうがないか、と納得できる。でもさぁ、ドミニク・ウエストには贅沢すぎるんじゃないか。せめてサイモン・ベイカーくらいの色男なら分かるけど。ドラマの粗筋を話せば、主人公で不倫を犯す亭主ノア・サロウェイ(ドミニク・ウェスト)には、女房のヘレン(マウラ・ティエニー)と四人の子供(息子2人と娘2人)がいた。ノアは小説家を目指すがイマイチで、生活の為に学校教師で生計を立てている。一方、女房のヘレンは店を経営していて、夫より収入がある上に、両親が裕福ときている。大学の費用まで世話になったというから、亭主としては肩身が狭い。さらに息苦しいのは、彼女の父親ブルース・バトラーが人気作家で、母親のマーガレットは、さしずめ上流階級のマダムといった雰囲気なので、妻の両親にはどことなく引け目を感じてしまうのだ。ところが、この義父は過去に若い女と浮気をして、女房にバレたという負い目を持っている。これじゃあ、不貞を犯した父を持ち、これから犯す夫に苦しむヘレンが気の毒だ。

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(左:  ウェイトレスのアリソンとサロウェイ夫妻  /  右: サイモン・ベイカー)

  こんなサロウェイ一家は、夏休みをヘレンの両親が住んでいる豪邸で過ごすことになった。バトラー夫婦はロード・アイランド州の美しい片田舎に住んでいる。貧乏教師に過ぎないノアは義理の両親と過ごすのは嫌だけど、子供たちはお爺ちゃんとお婆ちゃんに会えるからウキウキ気分。カミさんも久しぶりの里帰りだ。気乗りしないけど、ノアは女房と子供を車に乗せて一路、義理の両親が待つ豪邸へ向かっていた。運命の女性アリソン・ロックハート(ルース・ウィルソン)に出逢う前のサロウェイ一家は、みんなが幸せで和気藹々とした、ごく普通の家族であった。

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(左: サロウェイ家の子供たち   /  右: 父親のノアと二人の娘 )

  ドラマとは関係無いけど、都市部に住むアメリカ人が観光地や郊外へ出掛ける際、距離は遠いけど交通渋滞が無いぶん、とても快適である。日本だと、みんなが同じ時期に大挙して行楽地へと押し寄せるから、高速道路で10kmとか20kmの渋滞なんて珍しくない。家族連れで困ってしまうのは、小さい子供の緊急事態だ。例えば、幼い息子が「ママ、トイレに行きたい」と言い出し、母親は「もうちょっと我慢してね。パパがパーキング・エリアに連れてってくれるから」と言い聞かせる。しかし、息子は「パパ、ガマンできない」と訴えかけたら大変だ。困惑する父親は「今、道路が混んでいるから、もうちょっとの辛抱だぞ」と励ます。

  しかし、非常事態が発生する。何となく車内が臭いのだ。母親が「あっ、もしかして」と顔を歪める。すると、息子が照れくさそうに「ウンチでちゃった」とつぶやく。臭いを嗅いだ母親は、「えっっっ~! やだぁ~、もぉ ~う、やっちゃったの~?」とあきれ顔。そこで、「あなたぁ~、そっちも窓を開けて!」と亭主に命じると、夫は「えぇぇっ! 外の空気冷たいじゃん!」と文句を垂れる。しかし、命令は絶対なので開けるしかない。渋々窓を開ける亭主は、「開けるべきか閉めるべきか、それが問題だ。ハムレット!」なんて口にする。でも、妻は「何ごちゃごちゃ言ってるの? 早く開けてよ! もぉ~う、まだハーキング・エリアに着かないのぉ?」、と息子のパンツを替えながら催促。「だって俺のせいじゃないじゃん」と言いたいが、「う~ん、あともう少し」と宥(なだ)める。責められっぱなしの旦那は、「あぁ~ぁ、せっかくの休暇なのに、長距離運転かぁ。明日は仕事なのに・・・。家で昼寝がいいなぁ」と愚痴るしかない。キッズ・ウィークなんて意味が無いぞ。

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(左 : 「アフェアー」の中心キャラクター /   右: コールとアリソン)

  横道に逸れたので元に戻す。サロウェイ一家はドライブの途中で、あるレストランに立ち寄り、そこで食事を取ることにした。ここで偶然、ノアはウェイトレスとして働くアリソンを目にする。娘のステイシーが食べ物を喉に詰まらせると、それにアリソンが気がつき、とっさの機転で吐き出させることに成功したた。娘を救ってもらったので、ノアとヘレンは彼女に感謝した。その後、バトラー家に着いたノアは散歩をし、偶然にも近くの海岸でアリソンと再開する。こうして二人は急速に惹かれ合うようになるのだ。レストランでアリソンが見せた、すらりと伸びた脚と、夜の浜辺で彼女が見せる太腿とヒップに、思わずノアは釘付けになる。ところが、彼女にはコール(ジョシュア・ジャクソン)という夫がいたのだ。しかし、二人の仲はギクシャクしていて、何となく愛情が冷めていた。というのも、二人にはガブリエルという幼い息子がいたのだが、ちよっとした事故で死なせてしまったのだ。これが原因でアリソンは自分を責め、コールが慰めても傷が癒えることはなかったという。そうした日々の中で、アリソンはノアと出逢い、禁断の肉慾へと溺れて行く。

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(左: ヘレンとヴィク医師  /  右: ノアトアリソン)

  不倫は両方の家庭を壊すことになった。ノアが浮気に走ってヘレンは絶望の淵に沈んでいる。夫への愛情も依然としてあるのに、「好きな人が出来たから」と夫に捨てられてしまったのだ。寂しさと屈辱に悩むヘレンは、大学時代の友人で、ノアの親友であるマックスと再会し、快楽のみの肉体関係を結んでしまうのだ。元々、マックスはヘレンを好きだったが、彼女はノアに惚れていたから断念していた。そこへ、ヘレンの方から近づいてきて、憧れの女性と寝ることが出来たんだから、マックスは大喜び。しかし、彼には婚約者がいたから別れる破目に。すると、ヘレンはまもなくして、医者のヴィクと親しく付き合うようになる。彼は息子マーティンの主治医だったが、二人は恋愛関係になってしまうのだ。ノアと離婚したヘレンは、自宅にヴィクを連れ込み、子供がいるのに同棲生活を始めてしまう。それでも、ヘレンはノアを諦めきれなかったから、結局二人は別れることになった。

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(左: 「ヘレン」役のマウラ・ティエニー   /  中央: 兄のコールと弟のスコット  /  右: 「コール」役のジョシュア・ジャクソン )

  一方、アリソンに捨てられた夫のコールにも不幸が訪れた。彼は家族と共に牧場を経営していたのだが、借金に喘ぎ、金銭に困ったコールはアリソンと共に麻薬の密売に加担してしまうのだ。ノアはこれを発見して自失呆然となり、直ちに止めるようアリソンに警告する。コールとスコットの兄弟はコカインを売って何とかお金を工面しようとするが、その努力も虚しく牧場を手放す結果になった。弟のスコットは自分で事業を始めて一発当てようとするが、ことごとく失敗し、ついには酒に溺れてしまうのだ。牧場を失ったコールは、生活の為にタクシーの運転手になる。しかし、不本意な仕事なので長続きはしない。妻のアリソンが居なくなった自宅を売りに出そうとするが、どうしてもできず、妻と息子との思い出が詰まった自宅に火を点けててしまうのだ。ところが、ある日アリソンが戻ってきた。恋仲になっていたノアと喧嘩して自宅に戻ってきたアリソンは、一夜だけコールとベッドを共にする。それでも、アリソンはコールとの生活に戻ることはできない。彼を嫌いではないのだが、元の夫と一緒に居ると、亡くなった息子のガブリエルを思い出してしまうからだ。

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(左: アリソンとスコット   /  右: 娘を抱くアリソンとコール )

  こうしてアリソンの夫とノアの妻は不幸になるのだが、美しくて若いアリソンを手にしたノアは、自身の体験を基にして小説を書き、これが大ヒットして一躍有名作家になっていた。情事を重ねるアリソンは、思いもよらず再び妊娠することに。これに戸惑いながらも喜ぶノア。しかし、その赤ん坊の父親はコールだった。この秘密を知っていたスコットは、アリソンを脅して「自分と寝ろ」と迫ってきた。そんな中、ロックハート家のパーティーに参加したノアとヘレンに悲劇が起きたのである。宴会で酔っ払ったノアはヘレンに車を運転しれくれと無理やり頼み、ヘレンは仕方なくハンドルを握って自宅へ帰ることにした。パーティーを抜け出したアリソンは、人気のない夜の道路をトボトボ歩き、家まで帰ることにしたのだが、彼女の後をスコットがつけていたのだ。アリソンに辿り着いたスコットは、暗い道端でスコットと口論になる。そこへノアとヘレンの車が近づいてきた。運転席のヘレンは一瞬脇見をしてしまい、何かを轢いてしまうのだ。

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(左: アリソンとノア   / 中央: 「ジュリエット」役のアイリーン・ジェイコブ  /  右: コールとアリソン )

  人を轢いてしまったヘレンは顔面蒼白になった。実は、スコットと言い争いになったアリソンが彼を道路に突き飛ばし、スコットは思わずよろけてしまい、そこにヘレンの車が追突し、スコットを轢き殺してしまったという訳。一瞬の出来事に動揺するヘレン。その時、ノアは暗闇の中にアリソンを見つけてしまう。怯えるアリソンもノアを見つめるが、ヘレンは恐怖で何も気づかない。運転を替わったノアは、そのまま現場を後にする。のちに、事件が発覚すると、法廷に立ったノアは自分が運転してスコットを轢いてしまったと嘘をつく。子供たちのためにも女房を犯人にはできないので、身代わりになったのだ。

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(左: ジュリエットとノア  /   右: コールとルイーザ)

  人気小説家が刑務所に送られ、出所してからシーズン3の物語が始まるのだが、出所した頃にはアリソンは娘ジョニーを連れて別居状態になっていた。アリソンと疎遠になったノアは、大学で文学を教えるフランス人のジュリエット(アイリーン・ジェイコブ)と出逢って親しくなり、肉体関係を結んでしまうんだから懲りない男である。一方、傷心のコールは新たな女性ルイーザ・レオン(カタリーナ・モレノ)と出逢い、恋愛関係に陥って、目出度く結婚式を挙げることになった。しかし、ルイーザには欠点があって、彼女は新郎のコールに不妊症の体であることを告げていたのである。だから、アリソンが身籠もってジョニーを出産すると、再びアリソンとの絆ができてしまい、既婚の身でありながら、元妻に想いを寄せてしまうのだ。困ったことに、一人で娘を育てる自信のないアリソンは、経済的に安定しているコールにジョニーを預けてしまい、親権まで渡してしまったのである。でも、一旦手放したものの、娘との生活を望むアリソンは面会の時間を求め、親権を譲りたくないコールや、児童福祉局のソーシャル・ワーカーに、自分が母親として適性であることをアピールしていた。ジョニーを我が子のように育てるルイーザも、彼女を手放したくないから、アリソンにキツく当たるので、両者の間には確執が起こってしまうのだ。

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(左: ホイットニーがロックハート兄弟に話しかけるシーン   /  中央と右: 「ホイスットニー」役のジュリア・ゴルダニ・テルズ)

  片や、サロウェイ家も平穏ではなかった。夫に未練があるヘレンも大変だが、イライラする長女のホイットニー (ジュリア・ゴルダニ・テルズ)が問題児になっていた。これだから父親のノアも頭が痛くなってくる。娘のホイットニーはまだ16歳前後なのに、大人ぶって矢鱈とませている。ロックハート家の牧場を訪れた時など、かなり年上のスコットに色目を使っていたんだから、ノアが心配するのも無理はない。だが、父親の不安は敵中するものである。何とスコットはホイットニーにちょっかいを出してしまうのだ。ノアが激怒して殺したくなるのも当然だ。スコットの事故死をめぐる裁判で、検事がノアに殺意があったかどうか、厳しく尋問を行ったのも合点が行く。娘を手込めにされたことを恨み、意図的な殺人を企てたんじゃないか、と警察に疑われたのである。ノアは裁判で有罪となったが、あくまでも過失による事故であったから出所が早かった。

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(左: ホイットニーと同棲するファーカット  /  右: ファーカットと対立するノア)

  離婚というのは夫婦だけの問題ではない。両親の離婚で子供は傷つく。これなら子供ががグレてもしょうがない。母親との離婚で腹を立てるホイットニーは、父がアリソンと暮らす別荘に突然現れ、彼らの前で嫌味を言い散らすし、癇癪を起こして困らせたりもした。怒りをぶつけても解決できないんだから、ホイットニーが憐れに思えてくる。ノアは娘がちゃんと学校で勉強し、大学に進学するものと思っていたが、ホイットニーは一人暮らしを始めて、ファッショ関係の職に就くと言い出した。もちろん、母親のヘレンも反対するが、家庭をメチャクチャにした両親の言うことを聞くはずがない。結局、家出同然の形でホイットニーは自宅を離れてしまうのだ。心配になったヘレンは同棲している医師のヴィクを連れて、ホイットニーが暮らす問題のロフトを訪れた。すると、10代の娘が中年の“いかつい”写真家と一緒に住んでいたのが判った。しかも、このファーカットなる「藝術家」は、卑猥な写真を撮って販売しており、ロフトには女性の性器をカメラに収めた巨大な写真が飾ってあったから、ヘレンは目眩がしてきたのである。ノアもこんなゲス野郎に娘を奪われてショックだった。まぁ、日本人の親だって、こんなクズと愛する娘が同棲していたら怒るよなぁ。どんな父親だって、この男が夜中にホイットニーのベッドに入り込んで、その神聖な肌に触れたかも、と考えてしまうじゃないか。

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(写真  /  母のヘレンに当たり散らすホイットニー)

  年端も行かない少女に手を出す「藝術家」には、碌な奴がいないと相場が決まっている。ファーカットはホイットニーを弄ぶが、段々とこの“小娘”に飽きてきた。ノアは偶然にもパリで愛娘に出逢う。というのも、彼は恋人のジュリエットに連れられてフランスに来ていたのだ。一方、ホイットニーはパリで個展を開くファーカットの「助手」になっていた。ノアは娘の同棲相手が主催する個展を訪れるが、そこで彼が目にしたのは、女給に変わり果てた娘の姿であった。ファーカットはホイットニーがシャンペンを渡しても、それを無視して客と話している。これにノアは激怒した。下女みたいに娘を扱う男が赦せなかったのである。喧嘩となったファーカットとノア、そして板挟みになるホイットニー。この騒ぎの中でファーカットはホイットニーの頬を殴ったので、二人は距離を置くこととなった。父親のノアにしたらその方が良い。傷心の少女は家に帰りたいと望むようになり、父親と共に帰国することになった。

離婚の余波と子供の心理

  『アフェアー』を観ていてつくづく考えてしまうのは、情熱的な不倫の末に支払う代償の大きさである。母親を捨てたことで、ノアは子供に対する「父の威厳」を完全に失ってしまうのだ。娘のホイットニーが碌でもない男と同棲するようになっても、それを咎める権利も無ければ、戻ってくるよう命ずるだけの権威も無い。反抗心で怒り狂う娘から、「パパだって好き勝手なことをしたじゃない!」と言われれば、いくらノアだってぐうの音も出ないだろう。家庭を壊した父親に説得力が無いのも当然だ。それにしても、愛する娘から侮蔑され、見下される父親ほど情けないものはない。厭になった女房と別れることは出来ても、自分の子供と別れることは出来ないから、三行半(みくだりはん)を突きつけられた父親は、胸が押し潰されるように辛くなる。娘がグレてもそれを叱る事ができないし、その原因を創ったのは自分だと判っているから、後悔の念に駆られてしまうのだ。

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(左: 娘のホイットニーと対話するヘレンとノア  /   右: カール・ピックハート博士)

  離婚家庭を調べたカール・ピックハート博士によると、両親が別れたことで子供は不安感に襲われることがあるそうだ。「これからどうなるのか?」「誰が自分の面倒を見てくれるんだろうか?」「両親が互いに愛想が尽きたということは、自分にも愛情が無くなっということか?」「パパがいなくなったけど、もしママがいなくなったら、ボクはどうなるの?」といった疑問が湧いてくるらしい。(Carl E. Pickhardt, "The Impact of Divorce on Young Children and Adolescents", Psychology Today, December 19, 2011) ある子供は就寝時間になると泣き出したり、夜中にトイレへ行けなくなってベッドを濡らしてしまうとか、すぐ弱音を吐いて泣き言を述べるし、依存的傾向が強くなったり、と様々な症状が出てくるという。中には両親の別居に激昂して攻撃的になったり、家庭の躾に反撥するようになるそうだ。これとは別に悲しいのは、「離婚したパパとママがいつかは仲直りするんじゃないか」、と空想する子供もいることである。こんな悲惨な状況だと、いくら離婚した父親が養育費を払っても無駄になるし、父親が居なくなった家庭を切り盛りする母親だって、子供たちをきちんと統率することができない。「ママって、いつもうるさい!」と反撥する子供にヒステリーを起こす母親では、とても躾なんか出来はしないだろう。

Sarah Treem 1(左  /  サラ・トリーム)
  『アフェアー』の原作者はアメリカ人ではなかった。この作品を書いたのは、ハガイ・レヴィ(Hagai Levi)というイスラエル出身のユダヤ人なのだ。彼を手助けした共同脚本家は、サラ・トリーム(Sarah Treem)という女性プロデューサーで、彼女はアメリカ生まれのユダヤ人である。ハリウッド映画の制作者にはユダヤ人が異常に多い。その中でもレヴィは異色の人物で、彼は若い頃イスラエルの「キブツ」で生活をしていたのだ。(Smadar Shiloni, Israeli creator of `The Affair' opens up to Ynet, Ynet News, 26 December 2014) この「キブツ」とは、社会主義に基づいた集団生活形態で、そこのユダヤ人は主に農業を営みながら共産主義的な共同体で暮らしていたのである。確か、女優のデボラ・ウィンガーもキブツの生活を体験したことのあるユダヤ人女性であった。イスラエルで特殊な生活を送っていたレヴィは、「あのままなら正統派のユダヤ教徒になっていたかも知れない」と語っていたが、刺戟的な藝能界に憧れてキブツを離れたという。

Hagai Levi 1(左  /  ハガイ・レヴィ)

  レヴィ自身も離婚経験者で、その後に再婚し子供をもうけたそうだ。彼は『アフェアー』を書いた動機や、ドラマの意味を語っていて、「裏切り」というのは「悪しき結婚」から生まれるものではないと述べていた。それは夫婦の関係において欠落している、何らかの場所から生じるものである、と説明していた。レヴィーの考えだと、「背信」はバラバラになり得る、おぞましい結婚からではなく、安定した良き家庭から起こるものであるらしい。彼自身まだ『アフェアー』の結末を明確に決めていないそうだ。アメリカの連続ドラマは、視聴率次第で伸ばしたり縮めたりするから、ストーリーが二転三転したり、奇妙な方向に進んだりするのは珍しくはない。ただ、不倫の末に起こる離婚を主題にした物語は、その先に発展が無くなって行き詰まりになりがちで、事実、シーズン3では迷走状態となってしまった。


Jews 9(左  /   ユダヤ教徒)
  『アフェアー』を書いたレヴィの話を聞いていると、何となく典型的なユダヤ人だなぁ、と思うことがある。ユダヤ人というのは、他国に住みついて現地人の風習や伝統にケチをつけ、それを分解・破壊するイデオロギーを思いつく。ユダヤ人が革命好きなのは、自分たちを“イジメ”る異教徒たちの生活や文化を毀損するのが楽しいからで、それを行う際、「自由」とか「人権」「平等」「進歩」といった理想で飾り立てるから、第三者の日本人はユダヤ人の本性を摑めないのだ。アメリカにいるユダヤ人が離婚や不貞をテーマにしたドラマを創る際、必ず幸せそうな西歐人家庭を設定し、淫乱な妻とか偽善的な夫、ひねくれた息子、生意気な娘といったキャラクターを描くことが多い。正常な夫婦だと、どこか“やましい”一面を秘めている仮面夫婦とか、心の闇を抱えている不健全なカップルにしたりするから、見ていて違和感を覚えてしまうのだ。ところが、同性愛者のカップルとか黒人家庭だと、夫婦仲が良く“温かい”関係になっている。特に、ユダヤ教徒の家庭を描く時は好意的で、家族の絆が固い立派な家族がほとんど。現実のユダヤ人社会だと、女は補助的な存在で、男やラビに対して逆らうことはなく、いつも従順で貞淑な態度を求められている。これとは対照的に、日本人の家庭は母親が中心だ。文化面でも非常に異なり、女流作家が輝く日本社会は驚異的である。古代から近世にかけてのユダヤ社会だと、紫式部のような貴婦人が有名になるなんて想像もできない。

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(左: 西歐人の家庭   /  右: アフリカ人の家族 )

  たとえ姦通相手との再婚でも、平穏で楽しい家庭になる場合もあるが、離婚訴訟で泥沼に陥り、熱愛だった関係も冷めてしまう不倫もある。不貞相手と別れる事になれば、浮気のプラス・マイナスがどうなるか、判定が難しいところだ。ただ、子育てを考えるなら夫婦関係を維持したほうがいい。オハイオ・ノース大学のブルース・フローネン教授が述べていたが、家族というものは良き関係ではなく、関係に根ざした制度であるという。我々が家族の価値を重視するのは、我々がそこから良き感情を得るからだ。徳(virtue)のある人物を調べてみると、大抵はしっかりとした家庭の出身者で、荒れ果てた離婚家庭から出てくるケースは稀である。フローネン教授は家族というのがどうして立派な社会の基礎になるのかを述べていた。答えは簡単で、子供が立派な大人になろうとすれば、そこで学ぶしかないからだ。子供を徳の備わった人間に育てようとすれば、それは家庭でしか出来ないことであって、その他の場所では出来ない。なぜなら、四六時中ずうっと熱心に見守られ、人格教育が成されるのは家庭でしかあり得ないからだ。(Bruce Frohnen, "Why Value Families?", Crisis Magazine, May 31, 2013)

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(左: ノアとアリソンとジョニー  / 右: 西歐系アメリカ人の家族 )

  現在のアメリカではフェミニズムが浸透しており、「厭になったら、サッサと別れろ」とか、「いがみ合う夫婦でいると子供の教育に良くないから、離婚して冷静になった方が良い」といった考えが主流である。まぁ、しょせん夫婦でも「男女の仲」だから、惚れてくっつくこともあれば、愛想が尽きて別れる場合もあるだろう。それに、恋愛至上主義が花盛りだから、結婚する者同士が、客観的な判断で相手を選べるとは限らない。しかも、亭主あるいは女房が、職場や酒場で浮気をする可能性もあるんだから、離婚の確率が高くなるのも当然だ。人生の倦怠期を迎えた亭主が、ふとしたことで魅力的な女性に出逢えば、「心のときめき」を覚えることもあるだろう。そんな時は、「よそ見をしても、気持ちを引き締める」ことが肝要だ。「女房と畳は新しい方がいい」という言い草もあるけれど、浮気が祟って畳の上で死ねないこともある。愛人が老後の面倒を見てくれる訳じゃないし、病気になった時に介護してくれるのも、やはりカミさんや子供たちだ。平凡なように見える家庭生活でも、失ってみれば宝石のように貴重だったりする。普通の中年男でアリソンみたいな若い女とつきあえる事は滅多にないぞ。

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(左: 現代のアメリカ人家族  / 左: 1950年代のアメリカ人家族 )

  新婚気分が無くなった家庭生活でも、女房子供を背負った亭主には、扶養の苦労と将来への責務もあるので何かと大変だが、それを忘れさせるほどの温かい喜びもある。何気ない日常だって、過ぎてみれば懐かしい思い出だ。例えば、週末に女房子供を連れてスーパー・マーケットへ買い物に出掛けるだけでも、家族の絆を実感できる。でも、恋人時代の女房と、子供が出来てからの女房では違いが出てくるからつらい。買い物を済ませて駐車場に戻ると、「あなた、もう一度お店に戻るわよ!」と言われることもある。旦那が「何で?」と尋ねると、醬油とサラダ油が特売で「お一人様1本」となっているから、「もう一度みんなで1本づつ持ってレジに並ぶのよ」と命令されてしまうのだ。そこで、面倒になった亭主が「えぇ~、また並ぶのぉ?」と文句を述べても、カミさんは息子と娘の手を引いて店に向かってしまうから抵抗できない。「あぁ~あ、こんな天気のいい日なんだから、ゴルフに行っておけば良かったなぁ」と愚痴をこぼしても手遅れである。女房から「何してんのよぉ~、早くして!」とせつかれると、カミさんの後ろ姿に哀愁を感じてしまう事もしばしば。「昔は桃尻だったのに、今じゃぁ洋ナシだよなぁ」と溜息が出る。「でも、俺が“用無し”になるよりマシかぁ」と駄洒落で自分を慰めたりしてね。これが日本経済を支えているお父さんたちなのだ。




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