無敵の太陽

主要マスメディアでは解説されない政治問題・文化・社会現象などを論評する。固定観念では分からない問題を黒木頼景が明確に論ずる。

テロリズム

BLMが暴力活動で「平和賞」をもらう? / 逆立ちの世界

過激な黒人運動

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(左 : 街に放火する黒人  /  右 : 商店を掠奪する黒人)

  今や日本と同じく、歐米諸国はジョージ・オーウェルが描いた『1984年』の世界になっているようだ。嘗ては経済的に豊かで言論の自由が保障された西歐でも、巨大企業が「ビッグ・ブラザー」となり、人々の「自由」を奪っている。さらに、それを補完するかのように、主流メディアが「真理省」と化して「新言語(Newspeak)」とやらを駆使するから、この弊害は益々悪化する。哀しいことだが、物事の判断力に欠け、情報の質を見極められない大衆は、新たな思考を植え付けられても、それに気づかない。たとえ、それに気づいて反抗する者がいたとしても、「右翼」とか「白人至上主義者」などのレッテルを貼られ、社会的に抹殺されてしまうのがオチだ。

  この新たな言語空間では、従来の価値観が逆さまになり、異常なフレーズが真となる。例えば「戦争は平和である(War is Peace.)」とか、「自由は隷属(Freedom is Slavery.)」なり、「無智は力なり(Ignorance is Strength.)」といった具合だ。もし、「こんなのは出鱈目だ !」と反論する奴がいれば、即「思想警察(Thought Police)」が現れて何処かへ連行され、闇から闇へと葬り去られる。それゆえ、人々は「ビッグ・ブラザー」の「監視」と「検閲」を恐れ、「幸せ」であるかのように振る舞い、羊のように「沈黙」を貫こうとする。もちろん、こんな社会は極端で非現実的だが、今の趨勢はこの方向に進んでいるようだ。

Petter Eide 5(左  / ピーター・イード )
  こうした“日常化した異常性”を示すのが、BLM(黒人の命も大切だ運動)を「ノーベル平和賞」の候補にしようとする動きである。普通の日本人が耳にすれば、「まさか、そんなアホな ! いくら何でも有り得ない !」と思ってしまうが、西歐社会には高学歴のクルクルパーがゴマンと居るので、“非常識”な提案を平気で行う者が少なくない。その一人が、ノルウェーの国会議員であるピーター・イード(Petter Eide)氏だ。この議員によれば、BLMの運動員は人種的不平等を撲滅すべく、白人社会に根強く残っている不正義と戦っているそうだ。そして、彼らはこうした運動を通して世界中の人々の意識を覚醒させ、人種主義に基づく不正を認識させたという。だから、こうした「功績」により、BLMは2021年の受賞に相応しいそうだ。(Martin Belam, "Black Lives Matter movement nominated for Nobel peace prize", The Guardian, 29 January 2021.)  

  正常な日本人なら、「おい、こいつ頭がおかしいんじゃねぇか?」と眉を顰めるが、イード氏は全然そう思ってはいない。彼は自分の発想に疑いを抱いておらず、むしろ「当然」といった考えの持ち主である。というのも、この御仁、左派社会党(SV)に属する筋金入りの極左で、黒人の暴動や掠奪なんて眼中に無い。日本的感覚だと、呆れてモノが言えないが、骨の髄までリベラル思想に染まっている人物というのは実に厄介だ。イード氏のやる事なす事、いかにも「左翼」といった感じである。例えば、彼は困っている人に食料や医薬品を配る「CARE(Cooperative for Assistance and Relief Everywhere)」という団体に属していたし、以前はノルウェーにある「アムネスティー・インターナショナル(Amnesty International)」の支局で総書記を務めていたのだ。

  こんな経歴なので、イード議員はゴリゴリの人権派である。彼は全人代の常務委員長である栗戦書(りつ・せんしょ)がノルウェーを公式訪問した際、黄色いTシャツを着込んで、議会の前で抗議活動を行ったという。そのシャツには「自由」という漢字が書かれていたから、おそらく香港で弾圧されている民主活動家を支援する意図があったんじゃないか。でも、それなら「テロリストのようなBLMの連中はどうなんだ?」と訊きたくなる。商店街のオッちゃんやオバちゃん達は、自分の店が滅茶苦茶になって困っているし、平穏な暮らしを望む白人は怯えながら家に閉じこもっていた。左翼活動家や人権派議員というのは、矢鱈と黒人に甘く、掠奪や放火、器物損壊よりも高邁な理想の方に目を向けようとする。

  それにしても、なぜ北歐諸国では、こうも左翼思想が蔓延しているのか? 一般的に教育水準が高いのに、矢鱈と馬鹿が多い。スウェーデンやデンマークでもリベラル派が優勢で、アフリカ人やアジア人の移民・難民を大歓迎。国内が人種で分裂し、社会秩序がズタズタになってもお構いなし。今やスカンジナヴィア半島はバルカン半島と瓜二つ。さすがに一部の国民は危機感を感じてリベラル主義の悪弊に声を上げている。でも、社会主義者やピンク左翼には馬耳東風で、差別主義者の戯言(たわごと)にしか思っていないのだ。豊かな社会では、高学歴の偽善者は「天使ごっこ」を趣味とするので、愚行の結果を真剣に考えることはない。たとえ、巷(ちまた)で殺人や強盗が増加しても、そんなのは貧乏庶民が暮らす地域での「問題」である。高級住宅地に住む上級国民(専門技術者、知識人、政治家、医者、弁護士など)にしたら、単なる「対岸の火事」に過ぎない。黒人暴徒は繁華街から数百マイル離れた田園地帯に行かないし、要塞の如き豪邸に近づくこともできないから、お偉方は高みの見物である。

碌でもない連中がもらう栄誉

  そもそも、「ノーベル平和賞」なんて代物は、左翼陣営が独占するアカデミー賞みたいなものだ。過去の受賞者を目にすれば判るけど、どいつもこいつも「碌でなし」ばかりだ。ちょっと思い出してみれば、“いかがわしい”連中が直ぐ思い浮かぶじゃないか。例えば、あのキング牧師。日本の中学や高校では、黒人指導者のマーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King, Jr.)を「立派な人物」と教えているが、私生活では二枚舌の「エロ親爺」であった。この黒人牧師は表の顔で“敬虔なキリスト教徒”を演じていたが、裏に廻ると“セックス・マニア”であったらしい。聖書によれば姦通は「罪」となるが、既婚者のキング牧師には40名もの愛人がいたそうだ。どうしてバレたかと言えば、当時、キング牧師を共産主義者と怪しんでいたFBIのフーヴァー長官が、腕利きの部下を動員してキングの盗聴を命じたからだ。そして、近年、FBIの情報が公開されてしまい、黒人が崇めてきた聖者の仮面が剝がれてしまったのである。(Bill Bostock, "Sealed FBIaudio tapes allege Martin Luther King Jr. had affairs with 40 women and watched while a friend raped a woman , a report claims", Business Insider, May 28, 2019.)

MLK 003(左  / マーティン・ルーサー・キング )
  日本の学校教師はアメリカ左翼のプロパガンダに酔っているのか、自分の生徒にキング牧師の英雄伝を語っている。暢気な教師だと、有名な演説となった「I Have a Dream」を子供に暗唱させたりするが、この偉人が実際に何をしていたのかを伝えることはない。1963年8月28日、キング牧師に率いられた約25万人の黒人は、かの有名な「ワシントン行進」に参加したが、その前日、キング牧師はセックス・パーティーを開こうとしていたのだ。司法長官のロバート・ケネディーよれば、キング牧師は女たちを集めて、乱交パーティー(orgy)を催したという。当時、ジャクリーヌ・ケネディー夫人は義弟のから、この忌まわしい話を聞いており、彼女はキング牧師の写真を見る度に破廉恥パーティーのことを思い出したそうだ。("Sex tapes, FBI smears and the trouble life of an all too human saint", Daily Mail, 30 August 2013.)  キング牧師の不貞行為とセックス中毒に関しては、彼の後継者であるラルフ・アバナシー(Ralph Abernathy)牧師も認めているから、本当のことなんだろう。

  さらに驚くのは、キング牧師の伝記作家であるテイラー・ブランチ(Taylor Branch)による暴露話だ。1964年、キング牧師は「ノーベル平和賞」を授与されるが、その賞をもらいにノルウェーのオスロへ行った時のこと。彼の取り巻き連中は、宿泊中のホテル内で半裸同然の売春婦を追いかけ回していた、というのだ。ブランチはまた、キング牧師がワシントンD.C.のホテルに泊まっていた時の情事にも言及していた。FBIが盗聴しているとも知らずに、キング牧師は浮気相手とセックスに夢中で、エロ行為の本番中に「俺は神のためにファックしているんだ !  今夜の俺は黒ん坊じゃないぞ! (I'm fucking for God ! I'm no a negro tonight !)」と叫んでいたという。これは日教組の教師のみならず、先生の話をジッと聞いていた生徒にも相当なショックだ。B級ポルノ映画じゃあるまいし、黒人のオッさんが愛人を相手に勇ましい言葉を投げかけるなんて、身内じゃなくても聞いていて恥ずかしい。

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(左 :  キング牧師  / 中央 : ネルソン・マンデラ / 右 : バラク・フセイン・オバマ  )

  しかし、他の黒人受賞者を目にすれば、「平和賞なんてタバコの吸い殻」程度と判るはず。何しろ、1993年にはKGBの手下であったネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)がもらっているし、2009年になると赤い黒人のバラク・フセイン・オバマがもらっているんだから。一般の日本人はオバマ大統領を平和主義者のように思っているが、この「ならず者」は白人を心底憎むマルキストであった。ただし、オバマは計画経済とかマルクス・レーニン主義の教義には関心が無い。オバマを始めとする黒人にとって魅力的なのは、既存の政治体制とか伝統的社会を根底から覆そうとする破壊精神だ。事実、オバマが目を輝かせるのは、人種問題が話題になった時だけで、小難しい金融取引や財政問題、エネルギー政策、軍事戦略になると急にトーンが落ちてくる。やはり、知識が無いことを自覚しているんだろう。

  黒人は自分の矛盾に気づかず、歪んだ精神を持っている。彼らは白人を嫌っているけど、意地でも白人社会にかじりつく。なぜなら、黒人は自ら素晴らしい社会を築くことが出来ない、と解っているからだ。それゆえ、あらゆる面で白人に頼ろうとする。もし、本当に白人が嫌いなら、白人国家で文句を垂れていないで、さっさと同胞が暮らすアフリカに戻り、楽しい同族国家を建設すればいいじゃないか。それなのに、どうしてアメリカの黒人はいつも白人に要求してばかりなのか? 「黒人奴隷の子孫」と称するアフロ・アメリカ人は、能力も無いくせに、「もっと黒人を要職につけろ !」と要求し、国務長官とか陸軍長官になったりする。しかし、その周りには白人の補佐官が存在し、彼らが実質的な業務を担当するのが一般的だ。だいたい、黒人ばかりの役所なんて信用ならず、どんな失敗が発生するか判らないし、適切な能力を有する職員が集まるとも限らない。

  「ノーベル平和賞」は黒人ばかりじゃなく、ユダヤ人にもしばしば与えられる。1973年には毛沢東の支那へ渡って密約を交わしたヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger)が受賞し、1978年にはテロ集団である「ハガナ(Haganah)」に属していたメナヘム・ベギン(Menachem Begin)元首相が貰っている。1994年には中東和平に貢献したとして、パレスチナ人のテロリストを率いていたヤセル・アラファト(Yasser Arafat)、そして同時に、イスラエルの国防大臣から首相となったイツァク・ラビン(Yitzak Rabin)、後にイスラエルの首相と大統領になったシモン・ペレス(Shimon Peres)が貰っていた。1995年11月に極右ユダヤ人のイガル・アミール(Yigal Amir)に暗殺されたラビンは、元々「ハガナ」の戦闘部隊である「パルマッハ(Palmach)」に属していたが、日本人で彼の経歴を知る者は少ない。ペレスも「ハガナ」出身の政治家で、この「ハガナ」はブリテンの委任統治に反対し、武装蜂起を起こしていたことで有名だ。イスラエルにはテロ活動に加わった経歴を持つ政治家が意外と多い。

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(左 : メナヘム・ベギン / ヤセル・アラファト / イツァク・ラビン / 右 : シモン・ペレス )

  ユダヤ人は民族的結束を以て不動の地位を築こうとする。ユダヤ人は「同胞愛」が人一倍強いのか、仲間同士で助け合いながら出世を果たす。最近、高名な弁護士でハーヴァード大学の教授を務めたアラン・ダーショウィッツ(Alan Dershowitz)が、ジャレッド・クシュナー(Jared Kushner)とアブラム・バーコウィッツ(Avrahm Berkowitz)を「ノーベル平和賞」に推薦した。(Dominick Mastrangelo, "Alan Dershowitz nominates Kushner, aid for Nobel Peace Prize", The Hill, February 1, 2021.) 皆様ご存じ、クシュナーはトランプ大統領の娘婿で、女房のイヴァンカをユダヤ教徒にしたアシュケナージ系のユダヤ人。バーコウィッツもユダヤ教徒で、トランプ政権に入る前は「クシュナー・カンパニーズ」に雇われていた弁護士だ。ダーショウィッツによれば、この二人はイスラエルとアラブ諸国の外交関係を改善したから、受賞に値する功績があるという。ホント、ユダヤ人は仲間を褒めるのがとても上手い。

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(左 : ヘンリー・キッシンジャー  / アラン・ダーショウィッツ  / アブラム・バーコウィッツ  / 右 : ジャレッド・クシュナー )

  日本の一般人は「ノーベル賞」を過大評価しているけど、それは自然科学の分野だけで、「平和賞」や「文学賞」なんて、見るからに胡散臭い。以前、大江健三郎が「文学賞」とやらを貰ったが、いったい誰がノーベル委員会に推薦したのか? もし、外国人であるとすれば、英語訳の小説で判断したはずだから、原書がどんなものか知らなかった可能性がある。それにしても、日本人が日本語で読んでも難解なのに、よく「素晴らしい」と分かったものだ。大江にとって大先輩にあたる小林秀雄は、しょうがないから大江の小説を読んでみたという。しかし、あまりにも酷いので「こんなのは小説じゃない !」と吐き捨てたそうだ。ところが、日本語を理解しない外国人はなぜか称讃する。筆者も高校生の頃、国語の先生が推薦するので大江の小説を読んだことがあるけど、何が何だか分からなかった。今でも分からない。かつて、渡部昇一先生も「よく分からない」と仰っていたから、一般人には相当な“忍耐”と“知力”が必要だ。ノーベル文学賞や平和賞の選考基準には、一般人の理解を超えた「何か」があるんだろう。



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ベイルートの悲劇は攻撃による爆発のか?

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偽装工作が得意なイスラエル
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(左 : 爆発現場から立ち上った煙  /  右 : 爆発後のベイルート港)

  日本人は根が正直というか生真面目なのか、他人を疑わず信用してしまうので、非常に騙されやすい。一方、日本以外の世界では、詐欺や陰謀なんて当たり前だから、“まとも”な大人は騙されないよう注意するし、騙されないだけの思考能力を備えている。ところが、我が国は常夏の「お花畑」といった状態だ。キャリア官僚になる優等生を含め、大半の日本人は教科書を暗記するだけの受験勉強で大人になる。国家の命運を左右する軍事・外政なんて受験科目に無いし、そもそも日本の安全保障に興味が無い。だから、諜報機関による極秘作戦とか謀略工作を理解できず、幼稚な判断で「そんなの有り得ない!」と否定するのか精一杯。政治家でさえ庶民レベルだから、ワイドショーに出てくる“専門家”とか“大学教授”の意見を鵜呑みにし、「知ったかぶり」で見栄を張っている。石破茂が“防衛族”なんて笑止千万。弘道会か山健組の若頭を招いて、防衛大臣になってもらった方がよっぽどマシである。

  8月4月、レバノンにあるベイルートの港で大規模な爆発事件が起きた。レバノンや歐米の報道機関によると、ベイルートの港に貯蔵されていた約2,750トンの硝酸アンモニウムが何らかの“切っ掛け”で爆発したというのだ。この爆発は周辺に大規模な衝撃を与え、少なくとも135名が亡くなり、5千人以上が負傷したという。しかも、約20万から25万名もの人々が家を失ったというから大変だ。爆発の“原因”は未だに明らかではなく、本格的な調査待ちだが、硝酸アンモニウムを6年間も放置していたというから呆れてしまう。なぜ、こんな事になっていたのか、ちょっと紹介したい。

  大量の硝酸アンモニウムがベイルートの港にもたらされたのは2013年の頃で、「MV ローサス(MV Rhosus)」というモルドヴァ船籍の貨物船が積載していたそうだ。(Mary Ilyushina, Katie Polglase and Ali Younes, "A Russian ship's cargo of dangerous ammonium nitrate was strande in Beirut port for years", CNN, August 6, 2020.) この船はグルジアのバトゥミを出港し、モザンビークに行く予定であったが、途中で資金不足となったので、この穴を埋めるため、追加の荷物を載せることにしたらしい。そこで立ち寄ったのがベイルートの港であったという訳。船長のボリス・プロコシェフは、この事情をロシア人とウクライナ人の乗組員に話したとうが、何となく腑に落ちない。だいたい、そんな杜撰な航海計画があるのか? この船は「テト運輸(Teto Shipping)」という会社が所有していたが、経営者はイゴール・グレッチュシュキン(Igor Grechushukin)というハバロフスクのビジネスマンであった。しかし、彼が住んでいるのはキプロス島であるらしい。

  航海費用を稼ぐためベイルート港に入った「MVローサス」号だが、運悪く過剰積載であったことが発覚し、ベイルートの港湾当局によって拘束されてしまった。しかも、罰金まで支払う破目になったから、さあ大変。何しろ、元々が資金不足で入港した訳だから、船長に余分な金は無い。だいいち、弁護士を雇う費用も無いくらいなので、船の燃料を売って弁護士費用に充てたそうだ。こんな塩梅とくれば、船員に対する手当なんて有るはずが無い。さらに、11ヶ月もの停泊が続き、物資の不足に苦しんでいたから、船員の不満は募る一方。ところが、船の所有者はこの現状を知ってか知らぬか、水や食料すら届けようとはせず、何処吹く風で音沙汰無し。補給どころか、給料さえ支払われないんだから、乗組員が船を去り、故郷へ戻ってしまうのも当然だ。

  貨物船の所有者が無責任なら、港湾当局の管理者も無責任だった。2,750トンもの危険物質があるというのに、安全な場所へ荷揚げもされず、かといって別の船に積まれることもなく、6年間も倉庫で放置状態となっていたのだ。こんなのは、不届き怠慢どころの話じゃない。海上輸送に詳しいミハイル・ヴォイテンコ氏は、2014年当時、この船を「海に浮かぶ爆弾」と呼んでいたそうだ。税関局長のバドリ・ダハー(Badri Daher)やその前任者は上層部に積荷の危険性を訴えていたらしいが、怠惰と腐敗にまみれた政府高官は厄介事を避けたので、硝酸アンモニウムは港の倉庫で眠ることになったらしい。もっと呆れてしまうのは、危険物質の管理状態である。硝酸アンモニウムはズタ袋に入れられ、それが詰め込まれている倉庫のドアには修理が必要であったという。事件後、レバノン政府は管理の杜撰さを反省したそうだが、そんなのは後の祭りである。そもそも、中東アジアの「お役所仕事」に厳格さを求め、末端の職員に義務感を持てと説教する方が間違っている。彼らが得意なのは賄賂を取ることだけ。下っ端のヒラ職員になれば「昼行灯(ひるあんどん)」が普通で、熱心になるのはサッカーの国際試合が開かれた時である。

「捏造動画」を制作した者の意図

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(左 : ミサイルの姿が挿入された映像  / 右 : 硝酸アンモニウムが爆発した映像 )

  日本のテレビ局もベイルートの爆発映像を流したから、日本人も事件の凄まじさに驚いた。報道では「事故」となってたが、歐米諸国の一部では「イスラエルの仕業じゃないのか?」と疑う者や、「ミサイル攻撃による大爆発だろう」と判断する者が少なくない。まさしく、こうした噂話が囁かれていた時、インターネットにある動画が投稿された。何と、そこにはミサイルが打ち込まれたシーンが映っていたのだ。CNNやBBCが流した映像と違うので、ネットの閲覧者は唖然としたらしい。主要メディアには登場しなかったが、この動画は“ちょっとの間”だけYouTubeやFaceBookに流れていた。しかし、「規約違反」との理由で直ちに削除されてしまったから、見逃した人も多いはずだ。こうした巨大メディアの規則では、扇動的な「捏造動画」は御法度らしい。

  それでも、「赤茶色の煙が上がっている倉庫にミサイルが打ち込まれる」という映像は、何人かのツイッターで拡散され、覗いた人々に大きな衝撃を与えたという。だが、これはCNNによって速やかに否定された。どうやら、ミサイルが着弾した映像は、CNNの現地記者であるメイセン・メフテフ(Mehsen Mekhtfe)が撮影した動画を元にした「作品」であるらしい。フェイク映像の制作者は、彼の投稿動画にミサイルの姿をそれとなく“挿入”したそうだ。(Paul P. Murphy, "Doctored Videos are already taking the cause of Beirut's explosion", CNN, August 7, 2020.) この「捏造動画」はよく出来ているので、「本当にミサイルが打ち込まれた !」と信じてしまう人がいたらしい。

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(左 :  メイセン・メフテフ  / 中央 : 捏造された映像   /  右 : 加工前のオリジナル動画  )

  筆者はこの映像の真偽を確かめる手段を持っていないので、「本物」なのか「偽物」なのかは判断できない。だが、このフェイク映像が“どのような”意図で制作されたか、そして誰が流したのかについて考える事は大切だと思う。なぜなら、もし話題性を狙っただけの捏造動画なら、「下らないデマ作品」として片付けることもできようが、そうでなかった場合は、実に巧妙な心理作戦と言えるからだ。何しろ、一部の歐米人は今回の爆発事故をイスラエルの「極秘作戦(covert operation)」と思っているし、前々から、イスラエルはレバノンと軍事衝突を繰り返しているので、ベイルートの大規模爆発が「事故」に見せかけた「攻撃」でもおかしくはない。もちろん、イスラエル政府はこれを否定し、偶発的な事故であると主張している。しかし、事件後に開かれたホワイトハウスの記者会見で、米国のトランプ大統領は、「軍部のある将軍から聞いた話」として、「何らか攻撃による爆発である」と発言していたのだ。しかも、レバノンの首相から大統領になったミシェル・アウン(Michel Naim Aoun)も、「ミサイル攻撃」と「外国人の介入」に言及していたのだ。こうした両首脳の発言により、益々「イスラエルの犯行説」が濃厚になってしまった。("Beirut explosion either due to negligence or missile, bomb", USA Today, August 7, 2020.)

Michel Aoun 002(左  / ミシェル・アウン )
  現在のところ、イスラエルによる「犯行(攻撃)」という確実な証拠は無い。でも、二国間の軋轢とユダヤ人の性質を考えれば、イスラエルの国防軍かモサド(諜報機関)が関与したという可能性は捨てきれないんじゃないか。一般の日本人はCNNの記事を読んで、「なぁ~んだ、捏造でガセネタかぁ~」と納得してしまうが、もしかしたら、イスラエルの工作員か協力者がこの陰謀動画を作って流したのかも知れないぞ。なぜなら、イスラエル政府は今回の大爆発を「事故」と見なし、関与を否定する態度を取っているので、レバノンへの報復とイランへの警告と思われては困るからだ。(レバノンのヒズボラとイランはシーア派のイスラム教で繋がっている同盟関係。) そこで、歐米各国の一般人にイスラエル政府の声明を信じさせるために、入念な心理作戦が必要になってくる。

  この作戦は二段階になっている。先ず、敢えて「イスラエルによる攻撃」という動画を制作し、それをインターネットサイトに載せて、「イスラエル犯行説」を世界中に流布させる。次に、信頼のある大手メディアに検証作業をやらせて、この衝撃映像が「捏造」であることを暴かせる。イスラエルは北米や歐洲のマスメディアにエージェントを送り込み、非ユダヤ人のテレビ局員も協力者にしているので、「特ダネ」を与えれば躊躇なく流す。それに、テレビ局や新聞の所有者と重役にもユダヤ人やその仲間達が多いので、イスラエル寄りの報道はすんなりOKされる。そもそも、捏造動画を作成した者が、テレビ局に「不審な点」を教え、元の映像を提供するんだから、協力者でない局員だって飛びつくはずだ。CNNのメフテフ記者がイスラエルのエージェントであるかどうかは不明だが、もし彼がイスラエルとの蜜月関係を持っているなら問題だ。それに、モサドの工作員は「操られている」と思っていないジャーナリストを操り、親切な友人(善意の第三者)として価値の高い情報を提供する場合もあるから、本当に油断できない。だいたい、買収された記者が「嘘」と分かって書く記事よりも、「スクープ記事になるぞ !」と喜んで書いた記事の方が断然いい。便利な馬鹿は真剣に訴えるから、暴露記事に迫力と情熱がある。

  日本人は心理戦や謀略工作に疎いから気づかないけど、普通の人間は一旦否定された物事を再びほじくり返して、詳しく検証しようとは思わない。だから、イスラエルの工作員は敢えて自ら陰謀説を流し、それが話題となった時点で、偽物と指摘する記事を第三者に公表させ、イスラエルへの疑惑を妄想にしようとする。こうすれば再び陰謀説が浮上しても、世間の一般人は「またヨタ話が出たぞ !」とせせら笑い、誰も相手にしないだろう。以前、漫画の『ゴルゴ13』に興味深いシーンがあった。ある時、デューク東郷(ゴルゴ13)がマフィアに追われる女性を助けたことがある。この女性を血眼になって探すギャングどもは、ゴルゴが泊まっているホテルの部屋にまで迫り、それを察知したゴルゴは彼女を連れて窓から逃げ出す。そして、二人は街中を駆け巡り、ギャングの追跡をかわそうとする。ところが、しばらくするとゴルゴは再び例のホテルへと戻ってしまう。ゴルゴの説明によれば、人間は一度自分で踏み込んだ場所に再び戻ることはないそうだ。確かに、ギャングの連中は腕っ節は強いが、頭(オツム)の方が弱いから、「まさか !」と考えてしまうのだろう。それにしても、逃げ回って遠く離れるよりも、ホテルの部屋に戻った方が一番安全とは・・・意外だ。

検証が不可能なアジアの国情

  今さら不平を述べても仕方がないが、日本の政治評論家や大学教授は対外工作とか軍事作戦に関しては素人以下だ。彼らは既成概念に囚われているので、国家ぐるみの詐欺や陰謀を見抜けない。今回のベイルート事件に関してもそうだ。我々は事件の映像を目にしたから、「やっぱり、硝酸アンモニウムによる爆発だったのか !」と思いがちだが、教養のある日本人は、「そもそも本当に積み荷が硝酸アンモニウムだったのか?」と疑わなくてはならない。もし、「前提」が嘘だったら、事件の全貌と評価が全く違ってしまうのだ。日本で起きた事件でもそうだが、中東アジアで起きた事件なら、尚更「本当かどうか」を確かめなければならない。例えば、ベイルートの港を破壊したのがミサイルで、それを隠すためのカヴァー・ストーリーが「危険物質の放置」というシナリオだってあるのだ。

  もしかしたら、硝酸アンモニウムを積んだ貨物船がイスラエルの偽装船で、船主もイスラエルのエージェントか協力者という場合だって考えられる。普通の日本人は「疑いすぎ!」と撥ねつけるが、もし、モザンビークへの航海自体が嘘で、資金不足という口実を用いてベイルートに寄港するという脚本だったのかも知れないぞ。グルジアみたいな“いかがわしい国”では、札束をチラつかせれば何でも手に入る。出港した時の書類なんか偽造するのは容易だし、積荷だって実際はどうなのか判らない。表面だけを硝酸アンモニウムの袋にしておき、下の方は石ころか土にしてベイルートに入港すればシメたもの。どうせ、レバノンの役人は積荷を全部調べないから、適当に検査を許して満足させ、堂々と船を港に停泊させればいい。後は資金繰りが難しいとかの言い訳をして、裁判沙汰にでもすれば積荷を長期的に放置できる。この「仕込み」が成功すれば、たとえ倉庫に爆弾を仕掛けたり、ミサイルを打ち込んでも、人々は硝酸アンモニウムが爆発したと考えるだろう。また、あれだけ悲惨な破壊となれば、誰も硝酸アンモニウムの痕跡を調べない。そんな事よりも、レバノン政府は被害者の救済や経済の立て直しに大忙しだ。只でさえ、レバノンという国は前々から経済危機が叫ばれ、実際に小麦の値段が跳ね上がっていた。となれば、「イスラエル犯行説」の検証に税金を注ぎ込んでいる余裕はない。

  極秘作戦というのは、1、2ヶ月で実行されることもあるが、長期的な計画に基づき、地道に“下拵え”する場合が多い。ミサイルとか時限爆弾による「破壊」を隠すために、前もって工作員や協力者をレバノンに潜入させることもあるし、現地の観察や調査に多くの時間を割く場合だってある。また、破壊工作を隠蔽するために、面倒な仕掛けを講じることもあるのだ。例えば、最初から貯蔵倉庫を狙わない事もある。第一の攻撃は倉庫の外を狙って小規模な爆発を起こす。こうすれば、驚いた地元のテレビ局や個人の野次馬が集まり、それぞれが撮影機材(テレビ・カメラとか携帯電話)を用いて現場の炎上を撮影すことになるだろう。逆にもし、第一の攻撃で倉庫を狙ってしまうと、誰も大爆発の場面を撮影できず、単に大きな爆音を耳にするだけなので、様々な憶測が疑惑を招き、却ってイスラエルへの疑惑が深まってしまうのだ。これでは偽装工作の意味が無い。あくまでも、「硝酸アンモニウムによる偶発的な爆破事故」でなきゃ。こう考えれば、騒ぎを聞きつけた人々が蝟集したところで、第二の攻撃を加えねばならない。赤茶色の煙を撮影していた人々は、“突然”の大爆発に驚愕するが、その迫力は映画を越えるスペクタクルである。決定的な瞬間を捉えた映像は世界中のマスメディアを駆け巡り、テレビ画面に釘付けとなった視聴者は、「計画的な攻撃」を「偶然の事故」と思ってしまう。こうなれば作戦は大成功。

  ついでに言えば、アジア、アフリカ、ラテン・アメリカなどの後進地域では、事件や事故の調査は非常に難しい。何しろ、政府と国民の両方が腐敗し、不正や横領が蔓延(はびこ)っているから、正確に「裏を取る」といった作業が困難を極める。役所が発行する公式文書だって偽造が簡単だし、政府高官までもが犯罪組織とツルんでいたりするから、嘘が堂々とまかり通る。会社の登記簿だっていい加減だし、経営実態の無い会社、外国のペーパー・カンパニーも珍しくなく、所有者が誰なのか判らないし、本当に存在するのかさえ怪しい。たとえ所有者の氏名を摑んでも、何処に住んでいるのか判らない場合がある。仮に関係者を探し出しても、「社長は外国に行ったきり帰ってこない」と言われれば、お手上げだ。さらに、問題の船会社がブラック企業であれば、「積荷」とされる硝酸アンモニウムを“どこ”で買ったのか分からないし、たとえ購入記録が見つかっても、取引先の販売会社が見つからないとか、倒産して跡形も無い、あるいはペーパー・カンパニーであったりするから、追跡取材は“足止め”となる。結局、歐米のマスメディアはプロコシェフ船長の話を鵜呑みにするしかない。

Benjamin Netanyahu 002( 左 / ベンジャミン・ネタニヤフ )
  米国や日本の一般国民は、大手メディアの報道を耳にして、「大爆発でレバノンは大変だなぁ~」で済むが、レバノンで勢力を誇るヒズボラ(Hezbollah)やイランの政治指導者、および革命護衛隊(Pasdaran)の幹部達は戦々恐々だ。一般的には「大災害」となっていても、あの映像を見たレバノンとイラクの大御所達は、ちゃんとイスラエルの“メッセージ”を受け取っている。つまり、ベンジャミン・ネタニヤフ首相の警告を理解しているというこだ。イスラエルの武闘派は本命のイランに向けて睨みを利かし、「今度、妙なマネをしたら、お前の国で“大事故”を起こしてやるからな !」と脅しているのだろう。おそらく、イスラエルの工作班は既にレバノンやイランで「下拵え」を済ませ、本部からの「GOサイン」を待っているのかも知れない。他にも、重要人物の暗殺とか軍事施設の破壊を目的とした準備が成されているのかも。

  これは筆者の勝手な憶測だけど、イスラエルは敵対するイランを恫喝するため、そのシーア派繋がりのレバノンに密かな「攻撃」を仕掛けたのかも知れない。もし、イスラエル国防軍があからさまに先制攻撃を宣言し、ガブリエル(Gabriel / 対艦ミサイル)やデライラ(Delilah / 巡航ミサイル)を港に打ち込んだら、アメリカやヨーロッパの世論が騒ぎ始めるから、大規模な破壊でも「偶然の事故」にした方が賢明だ。それに、こうしたテロ行為は一般人を巻き込んでしまうので、イスラエル政府としてはなるべく避けたい。最も望ましいのは、一般人が「事故」と錯覚し、レバノンとイランの支配者だけが「脅迫」と理解することである。

Gabriel missile 001Israel Air Force fighters








(左 : 「ガブリエル」ミサイル  /  右 : イスラエルの戦闘機)

  地上波テレビの報道番組は毎度のことなので論外だが、8月6日に放送された「虎ノ門ニュース」でも、ベイルートの爆発は「事故扱い」となっていたから、まさしく日本は“お花畑”状態である。何しろ、海外の重大事件よりも、「武漢ウイルスの感染者が増えたぞ!」という国内ニュースの方がトップ扱いなんだから。もう天を仰ぎたくなるじゃないか。まともな日本人であれば、「なぜ、トランプ大統領が“何らかの攻撃”かも」と発言したのかを考えるべきだ。アメリカは巨大な諜報組織と最強の軍隊を備えているので、外国の「極秘作戦」に関しても非常に詳しい。特に、“焦(きな)臭い”中東アジアの監視となれば、24時間の警戒体制となる。もしかすると、アメリカ軍がスパイ衛星でイスラエルの動きを察知していたのかも知れないぞ。日本人は軍事音痴だからピンとこないが、大統領の執務室に呼ばれる高級将校は、羨ましい程の機密情報を持っている。だから、最高司令官に助言する将軍達が、“いい加減な”意見を述べるとは考えづらい。たぶん、かなり精度の高い情報を握り、経験に基づく見解を述べた、と推測する方が妥当だ。もちろん、トランプ大統領は聞いた話を全部打ち明けることはなく、後で誤魔化せるよう「曖昧な形」で仄めかすだけである。

  今回の事件で不思議なのは、アメリカがイスラエルの声明を否定するような態度を取ったことだ。もしかしたら、イスラエル政府がホワイトハウスに内緒で、ベイルートの攻撃を仕掛けたのかも知れない。通常なら、事前にトランプ大統領の了承を得るはずなのに、今回の攻撃だけは別で、イスラエルが独自に行ったとも考えられるのだ。それゆえ、トランプは記者会見で疑惑を呈することで、暗にネタニヤフ首相を咎めたんじゃないか。ただし、現在、トランプ大統領は経済の立て直しと再選の準備で忙しいから、ベイルートの件はうやむやにし、「警告」処分くらいでイスラエルを赦すんだろう。

  ということで、今回の爆発事件は一件落着。御目出度いのは日本人だけとなる。もう情けなくなるが、八月は大東亜戦争の「反省会」と「不戦の誓い」という恒例行事があるから、安倍総理も大忙し。靖國神社には参拝しないが、ゴルフ場の予約だは取っていたりして・・・・。

 
  

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