共和党の勢力は鈍かった?
米国の調査機関によると、11月の中間選挙では共和党が躍進するはずだった。ところが、意外にも「赤い津波」は起きなかった。遠くの沖合で津波は見えたけど、岸にまで到達しなかった、といったところか。共和党支持者の中にでは、「バイデン政権への不満が爆発し、大勢の共和党候補者が当選するんじゃないか?」との期待感が満ちていたが、選挙開票が進むにつれて、その表情は暗くなった。共和党陣営が思ったほど伸びなかったのだ。なるほど、庶民の声が届きやすい連邦下院では共和党が多数派を占めた。しかし、肝心の上院選と州知事選では、やはり民衆党が強い。事前の世論調査では、「青い州が赤く反転するんじゃないか?」と予想されたが、投票箱を開けてみると、民衆党の知事や上院議員が居坐っていた。
こうした“予想外”の結果を目にしたアメリカ国民の中には、「今回の中間選挙でも、やはり例の不正操作が行われたんじゃないか !?」と怪しむ人が出てきた。何しろ、注目の的になっていたアリゾナ州のマリコパ郡では、投票機の故障により、地元の有権者が所定の場所で投票できないという事態が起こっていたのだ。(Yvonne Wingett Sanchez, Isaac Stanley-Becker, Reis Thebault and Josh Dawsey, 'Problems with voting machines in Arizona's Maricopa County trigger unfounded fraid claims', The Washington Post, November 8, 2022.) ここは前回の大統領選挙でも、投票結果に多くの疑問が残った危険地域で、今回の中間選挙でも州知事選の行方が全米の注目を集めている。
現在、選挙結果は来週まで判明しないというが、民衆党のケイティー・ホッブス(Katie Hobbs)候補と共和党のカリー・レイク(Kari Lake)候補が激しく競っている。レイク氏は元ニューズ・アンカーでトランプ前大統領が支援していることで有名だ。事前の調査ではレイク氏の勢いが凄まじく、「もしかすると共和党が勝利を得るのでは?」と予想されていた。
(左 : ケイティー・ホッブス / 中央 : カリー・レイク / 右 : ドナルド・トランプとレイク)
ところが、開票が進むとホッブス氏がやや有利で、当選しそうな雰囲気となっている。共和党支持者の中には「どうしてだ?」と怪しむ人が多く、「何らかの不正があるんじゃないか!?」と疑心暗鬼になっている。日本のリベラル派は「また、右翼どもの陰謀論が始まったぞ !」と小馬鹿にしているが、何らかの妨害工作が行われていても、おかしくはない。報道によると、他の州でもトラブルが発生している。だから、「なぜ、こんなにも投票機械の不具合が発生するのか?」と疑問を呈する人も多い。共和党員じゃなくても、「何か変だ !」と眉を顰める人は結構いるかもね。
こうした選挙結果に疑問を抱くのは一般有権者だけではない。プロの選挙アナリストも同様の戸惑いを見せている。普通なら、つまり昔のアメリカなら、経済政策の失敗を犯した民衆党はボロ負けになるはず。何しろ、庶民の暮らしを左右するガソリン価格が、選挙の趨勢を握る鍵となっているのだ。6月の全米平均価格は、1ガロン当たり5ドルくらいだった。10月になると価格が下がってきたが、それでも3ドル40セントから3ドル80セントくらいだ。この急激な価格高騰に対し、アメリカの中間層は怒っている。それゆえ、選挙アナリストが不穏な空気を察知し、「無党派層と一部の支持者が、民衆党を見限って共和党に寝返るんじゃないか?」と予測したのも無理はない。
ところが、上院選挙や州知事選挙では、民衆党の候補がそれほど落選しなかった。おそらく、バイデンの不人気ぶりを懸念した民衆党の重鎮達は、一応、胸をなで下ろしている。一方、共和党の保守派国民は納得できない。「どうして赤い津波が“細波(さざなみ)”程度なんだ?」と訝(いぶか)しがっている。確かに、従来のアメリカなら共和党の圧勝になるはずだ。レーガン大統領が当選した時を思い出せば解るけど、スタグフレーションと外政の失敗に激怒した国民が、時のカーター政権に叛旗を翻し、共和党の「地滑り的勝利」となった。ところが、2022年のトランプ旋風は微弱である。本当に不思議だ。もっとも、主流メディアは微笑んでいるようで、左翼のCNNやABC、NBCなどは共和党の苦戦に大喜び。反トランプ陣営の尖兵達も、不思議な「青い壁」に満足している。
「アメリカ国民」の民族的変質
たぶん、「赤い細波」の説明は、様々な評論家が口にするだろう。しかし、筆者はデモグラフィー(人口構成)の変化を重大な要因の一つと考えている。つまり、有権者たるアメリカ国民の「質(quality)」や「民族性(ethnicity)」に変化が起こった、ということだ。アメリカの教育界がユダヤ人やリベラル派に牛耳られていることは、皆様ご存じの通り。これに加え、非西歐系移民の激増が「変質」の原因となっている。
これは周知の事実だが、第二次世界大戦後、南米から大量の不法移民がやって来た。彼らは「背中の濡れた奴ら(wetback)」と呼ばれ、いかがわしい「侵入者」と蔑まれていた。今では信じられないが、大手メディアも、メキシコからの不法外人(illegal alien)を「ウェットバック」と呼んでいたのだ。実際、ニューヨーク・タイムズ紙でも「ウェットバック」という侮蔑語は頻繁に使われており、タイトルを観るだけでもギョッとする。例えば、「ウェットバックに関する警告(Warning on Wetbacks)」(May 9, 1955)とか、「記録的なウェットバックの流入(Wetback Influx Near the Record)」(November 22, 1953)といった記事が載っていたのだ。
( 上写真 / 「ウェットバック」と呼ばれた南米移民 )
1960年代以降になると有色移民の流入は更に増加し、「好ましくない移民」はヒスパニックだけじゃなく、アジア人やアフリカ人も当て嵌まる概念だった。「労働移民」とか「不法移民」、「経済難民」、「偽装難民」、「戦争難民」と多種多様だ。1965年にリンドン・ジョンソン大統領が新たな移民法に署名したが、これは西歐的アメリカに対する「止めの一撃」であった。1965年の悪法はユダヤ人の下院議員であるエマニュエル・セラー(Emanuel Celler)が音頭を取り、同胞のユダヤ移民を呼び寄せるために画策した制定法であった。彼はWASPの右翼どもが設定した民族枠を憎んでおり、この制限を撤廃すべく議会に働きかけていた。
(左 : エマニュエル・セラー / 中央 : フィリップ・ハート / 右 : リンドン・ジョンソン )
この不逞ユダヤ人と組んだのが、同じ民衆党に属するフィリップ・ハート(Philip A. Hart)上院議員である。彼は左翼陣営や主流メディアから「上院の良心(Conscience of Senate)」と呼ばれていた。(Michael O'Brien and Daniel Putman, 'Virtue and Politics : The Example of Philip Hart', Pblic Affairs Quarterly, Vol. 12, 1998, p.170.) 普通の日本人なら、「上院の極道じゃないかのか?」と言いたくなるけど、リベラル派には善人を演じる事で喜びを感じる極楽トンボが多い。
政党や立候補者が有権者の種族と結びつくと、政界の変動幅は狭くなる。フィラデルフィアやボルティモア、シカゴ、ロサンジェルス、サンフランシスコなどを観れば判るけど、黒人やヒスパニック、アジア人、左翼白人というのは、民衆党の大統領や上院議員が、どんなに外政や軍事、金融、福祉でヘマをやらかしても、けっして裏切るようなことはない。たとえ、予備選で常連議員を替えることがあっても、本戦では必ず民衆党の候補者に投票する。ペンシルヴァニアやミシガンの黒人でも同じで、経済不況や増税、物価高となっても、共和党の白人候補に入れることはない。バラク・オバマの大統領選挙でも判る通り、黒人の有権者は「黒人の候補者」だから投票するのだ。立候補者が口にする公約なんて二の次だ。軍事戦略とか金融政策も関係無い。そもそも、知識と知能が必要とされる難しい事は考えないし、日常生活から遠く懸け離れた外政なんて論外。
(左 : ラファエル・ワーノック / 右 : ヘルシェル・ウォーカー)
更に言うと、近年のアメリカ社会では、アングロ・サクソン文化を敵視する風潮が顕著だ。恐ろしいほど多民族主義や多文化主義が荒れ狂っている。連邦議員や州知事の選挙にも有色人種が現れ、白人の有権者でも気にしない人が多い。例えば、ジョージア州での上院議員選挙では、民衆・共和両党で黒人が担がれている。民衆党からはラファエル・ワーノック(Raphael Warnock)が出馬し、共和党からは元NFLのアメフト選手であったヘルシェル・ウォーカー(Herschel Walker)が出ている。
(左 : ステイシー・エイブラムズ / 右 : ブライアン・ケンプ)
しかし、両者とも過半数の得票に達しなかったので、12月6日の決選投票にもつれ込んだ。これまた懲りない黒人というか、ジョージア州の知事選挙では、例のステイシー・エイブラムズ(Stacey Abrams)が出馬した。案の定、共和党のブライアン・ケンプ(Brian Kemp)に敗れているが、いずれジョージア州でも黒人の知事が誕生するだろう。もはや、南部諸州は白人の支配地域じゃない。隔離政策と人種主義を支えた、嘗ての白い民衆党はとっくに消滅している。
1950年代のアメリカでは考えられないが、最近のアメリカでは黒人の進出が目覚ましい。例えば、1989年に黒人のダグラス・ウィルダー(Lawrence Douglas Wilder) がヴァージニア州の知事になったし、2006年にはデヴァル・パトリック(Deval L. Patrick)がマサチューセッツ州の知事になっている。今回行われたメリーランド州の知事選挙でも黒人が当選し、NBCやHBO、PBSで働いていたウェス・ムーア(Westley W. O. Moore)が勝利を収めた。白人の共和党知事、ラリー・ホーガン(Lawrence J. Hogan, Jr.)が去ると、彼の後釜は浅黒いムーア人となる。さらに、ムーア氏と組んだ副知事候補というのが、これまた非西歐系だ。相棒となったアルナ・ミラー(Aruna Miller / 旧姓 : Katragadda)は、元州の下院議員で、インドからやって来た移民である。
(左 : ダグラス・ウィルダー / デヴァル・パトリック / ウェス・ムーア / 右 : アルナ・ミラー)
民衆党がはびこる地盤というのは、コンクリート並の堅さで、どんなに州民を苦しめても上院議員や知事の顔ぶれは変わることがない。例えば、ニューヨーク州は民衆党のせいで南米からの不法移民で溢れかえっている。しかし、現職のキャシー・ホークル(Kathy Hochul)は、共和党の対抗馬であるリー・ゼディン(Lee Dedin)候補を破っていた。錆びついた斜陽地として知られるミシガン州も同様で、疫病のロックダウンを強行した左翼知事のグレッチェン・ホィットマー(Gretchen Whitmer)が再選された。共和党のチューダー・ディクソン(Tudor Dixon)は、同州の知事を目指したが、やはりミシガンの牙城は落とせなかった。
(左 : キャシー・ホークル / リー・ゼディン / グレッチェン・ホィットマー / 右 : チューダー・ディクソン )
ペンシルヴァニアの上院選では、トランプ前大統領がダグ・マストリアーノ(Douglas V. Mastriano)候補を支援していた。しかし、陸軍大佐でも左翼のユダヤ人には勝てない。民衆党のジョシュ・シャピーロ(Josh Shapiro)が上院の議席を確保した。ユダヤ人というのは互いに助け合うのか、若い頃のシャピロ氏は、ユダヤ人の有力上院議員であるカール・レヴィン(Carl Levin)に仕えていた。
( 左 : ジョシュ・シャピーロ / ダグ・マストリアーノ / クリス・パパス / 右 : キャロライン・レヴィット)
下院議員選挙でも民衆党は未だに強く、ニュー・ハンプシャー州では民衆党のクリス・パパス(Christpher C. Pappas)が勝利を収めた。ハパス氏の対抗馬は、25歳になったばかりの共和党員キャロライン・レヴィット(Karoline Leavitt)であった。共和党の勢いに乗じて当選を狙ったが、やはり実力不足なのか、あっさりと負けてしまった。ちなみに、当選したパパス議員はギリシア正教のキリスト教徒なんだけど、私生活ではゲイ。ヴァン・ベントリー(Vann Bentley)というパートナーと一緒に暮らしているそうだ。
レヴィット候補と同じく、民衆党からも若手の候補者が登場した。フロリダ州では25歳のマクスウェル・フロスト(Maxwell Frost)が下院議員選挙に出馬し、目出度く当選。彼はレバノン人の血を引くプエルト・リコ人の母親とハイチ人の父親との間に生まれたという。しかし、家庭内の暴力沙汰があったので、アメリカ人の養子になったそうだ。彼の養母はキューバ系アメリカ人で、養父の方はカンザス州の白人らしい。
( 左 : マクスウェル・フロスト / 中央 : マウラ・ヒーリー / 右 : ジェフリー・ディール )
民衆党では同性愛者や性転換の者でも候補者になれるそうで、マサチューセッツ州の州知事選挙では、民衆党のマウラ・ヒーリー(Maura Healey)と共和党のジェフリー・ディール(Geoffrey G. Diehl)の対決となった。その結果は、元州検事のヒーリー候補が当選。ただし、彼女は選挙前にレズビアンであることを公表していた。
民衆党には他にもLGBTQの候補者がいて、ゲイ候補のロバート・ガルシア(Robert Garcia)はカルフォルニア州で出馬し、連邦下院議員になった。ニューハンプシャー州ではトランスジェンダーのジェイムズ・ローズナー(James Roesener)が民衆党から出馬し、州議会の議員になっている。彼は色々な「差別」に反対し、マリファナの合法化にも熱心だ。コネティカット州でもLGBTQの民衆党員が当選し、エリック・ラッセル(Erick Russell)という黒人が州の財務長官になった。一応、「保守主義」を掲げている共和党にも、「時代の波」が押し寄せているそうで、LGBTのジョージ・サントス(George Santos)がニューヨーク州選出の下院議員になったそうだ。
(左 : ロバート・ガルシア / ジェイムズ・ローズナー / エリック・ラッセル / 右 : ジョージ・サントス)
地球上のあらゆる人種が集まったアメリカでは、「多様性(diversity)」という標語が持て囃されている。だが、人種や民族の多様性はアメリカ合衆国の「強さ」にはならない。むしろ国民を分断し、社会を混乱に導く悪魔の言葉になっている。本来、新大陸で建設された共和国では、イギリス文化とアングロ・サクソン人の繁栄が政治目的になっていたが、異民族の流入で滅茶苦茶になってしまった。
日本人は「移民(migrants)」と「入植者(settlers)」をごちゃ混ぜに考えている。イギリス人やスコット人の入植者というのは、宗教や商売の関係で新大陸の自治領に移住した人々で、元々は君主政を称讃する王国の公民であった。ただ、税金や哲学の違いで統治形態を変え、共和政体の国家に住んでいるだけだ。基本的にアメリカ共和国はイングランド王国の延長である。
これは、満洲國を考えてみれば日本人にも解る。例えば、日本の官僚や軍人が満洲国を建設し、そこへ東京や大阪の日本人が入植しても、その構成員は依然として「日本国民」のままである。気候や地形が変わっても、「日本人」は「日本文化」で暮らしてしまうだろう。日本人の入植者は、決して女真族や契丹人、間違っても図々しい支那人とはならない。朝鮮人の「移民」が「満洲へ雪崩れ込み、合法的に「満洲国民」となっても、彼らは日本人の同胞じゃないし、我々も「違う民族」と思うだろう。日本人は満洲国や蝦夷共和国に住んでも、皇室伝統と天皇陛下を尊ぶし、日本の風習を頑なに守る。
本来、アメリカ国民はアングロ・サクソン人を主流とする西歐種族の国家であったはず。しかし、あまりにも多くの異民族を受け容れてしまったために、その國體(constitution)が変質し、「別の国」となってしまった。コンスタンティノポリスに首都が移ったローマ帝国も、ローマ人の祖国ではなかったし、イングランド王国も嘗てのようなアングル人やザクセン人の郷土ではない。日本もやがてアジア諸国の一つとなってしまうだろう。あと30年も経てば、我が国は「日系の原住民」が生存する極東の島国となるんじゃないか。
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米国の調査機関によると、11月の中間選挙では共和党が躍進するはずだった。ところが、意外にも「赤い津波」は起きなかった。遠くの沖合で津波は見えたけど、岸にまで到達しなかった、といったところか。共和党支持者の中にでは、「バイデン政権への不満が爆発し、大勢の共和党候補者が当選するんじゃないか?」との期待感が満ちていたが、選挙開票が進むにつれて、その表情は暗くなった。共和党陣営が思ったほど伸びなかったのだ。なるほど、庶民の声が届きやすい連邦下院では共和党が多数派を占めた。しかし、肝心の上院選と州知事選では、やはり民衆党が強い。事前の世論調査では、「青い州が赤く反転するんじゃないか?」と予想されたが、投票箱を開けてみると、民衆党の知事や上院議員が居坐っていた。
こうした“予想外”の結果を目にしたアメリカ国民の中には、「今回の中間選挙でも、やはり例の不正操作が行われたんじゃないか !?」と怪しむ人が出てきた。何しろ、注目の的になっていたアリゾナ州のマリコパ郡では、投票機の故障により、地元の有権者が所定の場所で投票できないという事態が起こっていたのだ。(Yvonne Wingett Sanchez, Isaac Stanley-Becker, Reis Thebault and Josh Dawsey, 'Problems with voting machines in Arizona's Maricopa County trigger unfounded fraid claims', The Washington Post, November 8, 2022.) ここは前回の大統領選挙でも、投票結果に多くの疑問が残った危険地域で、今回の中間選挙でも州知事選の行方が全米の注目を集めている。
現在、選挙結果は来週まで判明しないというが、民衆党のケイティー・ホッブス(Katie Hobbs)候補と共和党のカリー・レイク(Kari Lake)候補が激しく競っている。レイク氏は元ニューズ・アンカーでトランプ前大統領が支援していることで有名だ。事前の調査ではレイク氏の勢いが凄まじく、「もしかすると共和党が勝利を得るのでは?」と予想されていた。
(左 : ケイティー・ホッブス / 中央 : カリー・レイク / 右 : ドナルド・トランプとレイク)
ところが、開票が進むとホッブス氏がやや有利で、当選しそうな雰囲気となっている。共和党支持者の中には「どうしてだ?」と怪しむ人が多く、「何らかの不正があるんじゃないか!?」と疑心暗鬼になっている。日本のリベラル派は「また、右翼どもの陰謀論が始まったぞ !」と小馬鹿にしているが、何らかの妨害工作が行われていても、おかしくはない。報道によると、他の州でもトラブルが発生している。だから、「なぜ、こんなにも投票機械の不具合が発生するのか?」と疑問を呈する人も多い。共和党員じゃなくても、「何か変だ !」と眉を顰める人は結構いるかもね。
こうした選挙結果に疑問を抱くのは一般有権者だけではない。プロの選挙アナリストも同様の戸惑いを見せている。普通なら、つまり昔のアメリカなら、経済政策の失敗を犯した民衆党はボロ負けになるはず。何しろ、庶民の暮らしを左右するガソリン価格が、選挙の趨勢を握る鍵となっているのだ。6月の全米平均価格は、1ガロン当たり5ドルくらいだった。10月になると価格が下がってきたが、それでも3ドル40セントから3ドル80セントくらいだ。この急激な価格高騰に対し、アメリカの中間層は怒っている。それゆえ、選挙アナリストが不穏な空気を察知し、「無党派層と一部の支持者が、民衆党を見限って共和党に寝返るんじゃないか?」と予測したのも無理はない。
ところが、上院選挙や州知事選挙では、民衆党の候補がそれほど落選しなかった。おそらく、バイデンの不人気ぶりを懸念した民衆党の重鎮達は、一応、胸をなで下ろしている。一方、共和党の保守派国民は納得できない。「どうして赤い津波が“細波(さざなみ)”程度なんだ?」と訝(いぶか)しがっている。確かに、従来のアメリカなら共和党の圧勝になるはずだ。レーガン大統領が当選した時を思い出せば解るけど、スタグフレーションと外政の失敗に激怒した国民が、時のカーター政権に叛旗を翻し、共和党の「地滑り的勝利」となった。ところが、2022年のトランプ旋風は微弱である。本当に不思議だ。もっとも、主流メディアは微笑んでいるようで、左翼のCNNやABC、NBCなどは共和党の苦戦に大喜び。反トランプ陣営の尖兵達も、不思議な「青い壁」に満足している。
「アメリカ国民」の民族的変質
たぶん、「赤い細波」の説明は、様々な評論家が口にするだろう。しかし、筆者はデモグラフィー(人口構成)の変化を重大な要因の一つと考えている。つまり、有権者たるアメリカ国民の「質(quality)」や「民族性(ethnicity)」に変化が起こった、ということだ。アメリカの教育界がユダヤ人やリベラル派に牛耳られていることは、皆様ご存じの通り。これに加え、非西歐系移民の激増が「変質」の原因となっている。
これは周知の事実だが、第二次世界大戦後、南米から大量の不法移民がやって来た。彼らは「背中の濡れた奴ら(wetback)」と呼ばれ、いかがわしい「侵入者」と蔑まれていた。今では信じられないが、大手メディアも、メキシコからの不法外人(illegal alien)を「ウェットバック」と呼んでいたのだ。実際、ニューヨーク・タイムズ紙でも「ウェットバック」という侮蔑語は頻繁に使われており、タイトルを観るだけでもギョッとする。例えば、「ウェットバックに関する警告(Warning on Wetbacks)」(May 9, 1955)とか、「記録的なウェットバックの流入(Wetback Influx Near the Record)」(November 22, 1953)といった記事が載っていたのだ。
( 上写真 / 「ウェットバック」と呼ばれた南米移民 )
1960年代以降になると有色移民の流入は更に増加し、「好ましくない移民」はヒスパニックだけじゃなく、アジア人やアフリカ人も当て嵌まる概念だった。「労働移民」とか「不法移民」、「経済難民」、「偽装難民」、「戦争難民」と多種多様だ。1965年にリンドン・ジョンソン大統領が新たな移民法に署名したが、これは西歐的アメリカに対する「止めの一撃」であった。1965年の悪法はユダヤ人の下院議員であるエマニュエル・セラー(Emanuel Celler)が音頭を取り、同胞のユダヤ移民を呼び寄せるために画策した制定法であった。彼はWASPの右翼どもが設定した民族枠を憎んでおり、この制限を撤廃すべく議会に働きかけていた。
(左 : エマニュエル・セラー / 中央 : フィリップ・ハート / 右 : リンドン・ジョンソン )
この不逞ユダヤ人と組んだのが、同じ民衆党に属するフィリップ・ハート(Philip A. Hart)上院議員である。彼は左翼陣営や主流メディアから「上院の良心(Conscience of Senate)」と呼ばれていた。(Michael O'Brien and Daniel Putman, 'Virtue and Politics : The Example of Philip Hart', Pblic Affairs Quarterly, Vol. 12, 1998, p.170.) 普通の日本人なら、「上院の極道じゃないかのか?」と言いたくなるけど、リベラル派には善人を演じる事で喜びを感じる極楽トンボが多い。
政党や立候補者が有権者の種族と結びつくと、政界の変動幅は狭くなる。フィラデルフィアやボルティモア、シカゴ、ロサンジェルス、サンフランシスコなどを観れば判るけど、黒人やヒスパニック、アジア人、左翼白人というのは、民衆党の大統領や上院議員が、どんなに外政や軍事、金融、福祉でヘマをやらかしても、けっして裏切るようなことはない。たとえ、予備選で常連議員を替えることがあっても、本戦では必ず民衆党の候補者に投票する。ペンシルヴァニアやミシガンの黒人でも同じで、経済不況や増税、物価高となっても、共和党の白人候補に入れることはない。バラク・オバマの大統領選挙でも判る通り、黒人の有権者は「黒人の候補者」だから投票するのだ。立候補者が口にする公約なんて二の次だ。軍事戦略とか金融政策も関係無い。そもそも、知識と知能が必要とされる難しい事は考えないし、日常生活から遠く懸け離れた外政なんて論外。
(左 : ラファエル・ワーノック / 右 : ヘルシェル・ウォーカー)
更に言うと、近年のアメリカ社会では、アングロ・サクソン文化を敵視する風潮が顕著だ。恐ろしいほど多民族主義や多文化主義が荒れ狂っている。連邦議員や州知事の選挙にも有色人種が現れ、白人の有権者でも気にしない人が多い。例えば、ジョージア州での上院議員選挙では、民衆・共和両党で黒人が担がれている。民衆党からはラファエル・ワーノック(Raphael Warnock)が出馬し、共和党からは元NFLのアメフト選手であったヘルシェル・ウォーカー(Herschel Walker)が出ている。
(左 : ステイシー・エイブラムズ / 右 : ブライアン・ケンプ)
しかし、両者とも過半数の得票に達しなかったので、12月6日の決選投票にもつれ込んだ。これまた懲りない黒人というか、ジョージア州の知事選挙では、例のステイシー・エイブラムズ(Stacey Abrams)が出馬した。案の定、共和党のブライアン・ケンプ(Brian Kemp)に敗れているが、いずれジョージア州でも黒人の知事が誕生するだろう。もはや、南部諸州は白人の支配地域じゃない。隔離政策と人種主義を支えた、嘗ての白い民衆党はとっくに消滅している。
1950年代のアメリカでは考えられないが、最近のアメリカでは黒人の進出が目覚ましい。例えば、1989年に黒人のダグラス・ウィルダー(Lawrence Douglas Wilder) がヴァージニア州の知事になったし、2006年にはデヴァル・パトリック(Deval L. Patrick)がマサチューセッツ州の知事になっている。今回行われたメリーランド州の知事選挙でも黒人が当選し、NBCやHBO、PBSで働いていたウェス・ムーア(Westley W. O. Moore)が勝利を収めた。白人の共和党知事、ラリー・ホーガン(Lawrence J. Hogan, Jr.)が去ると、彼の後釜は浅黒いムーア人となる。さらに、ムーア氏と組んだ副知事候補というのが、これまた非西歐系だ。相棒となったアルナ・ミラー(Aruna Miller / 旧姓 : Katragadda)は、元州の下院議員で、インドからやって来た移民である。
(左 : ダグラス・ウィルダー / デヴァル・パトリック / ウェス・ムーア / 右 : アルナ・ミラー)
民衆党がはびこる地盤というのは、コンクリート並の堅さで、どんなに州民を苦しめても上院議員や知事の顔ぶれは変わることがない。例えば、ニューヨーク州は民衆党のせいで南米からの不法移民で溢れかえっている。しかし、現職のキャシー・ホークル(Kathy Hochul)は、共和党の対抗馬であるリー・ゼディン(Lee Dedin)候補を破っていた。錆びついた斜陽地として知られるミシガン州も同様で、疫病のロックダウンを強行した左翼知事のグレッチェン・ホィットマー(Gretchen Whitmer)が再選された。共和党のチューダー・ディクソン(Tudor Dixon)は、同州の知事を目指したが、やはりミシガンの牙城は落とせなかった。
(左 : キャシー・ホークル / リー・ゼディン / グレッチェン・ホィットマー / 右 : チューダー・ディクソン )
ペンシルヴァニアの上院選では、トランプ前大統領がダグ・マストリアーノ(Douglas V. Mastriano)候補を支援していた。しかし、陸軍大佐でも左翼のユダヤ人には勝てない。民衆党のジョシュ・シャピーロ(Josh Shapiro)が上院の議席を確保した。ユダヤ人というのは互いに助け合うのか、若い頃のシャピロ氏は、ユダヤ人の有力上院議員であるカール・レヴィン(Carl Levin)に仕えていた。
( 左 : ジョシュ・シャピーロ / ダグ・マストリアーノ / クリス・パパス / 右 : キャロライン・レヴィット)
下院議員選挙でも民衆党は未だに強く、ニュー・ハンプシャー州では民衆党のクリス・パパス(Christpher C. Pappas)が勝利を収めた。ハパス氏の対抗馬は、25歳になったばかりの共和党員キャロライン・レヴィット(Karoline Leavitt)であった。共和党の勢いに乗じて当選を狙ったが、やはり実力不足なのか、あっさりと負けてしまった。ちなみに、当選したパパス議員はギリシア正教のキリスト教徒なんだけど、私生活ではゲイ。ヴァン・ベントリー(Vann Bentley)というパートナーと一緒に暮らしているそうだ。
レヴィット候補と同じく、民衆党からも若手の候補者が登場した。フロリダ州では25歳のマクスウェル・フロスト(Maxwell Frost)が下院議員選挙に出馬し、目出度く当選。彼はレバノン人の血を引くプエルト・リコ人の母親とハイチ人の父親との間に生まれたという。しかし、家庭内の暴力沙汰があったので、アメリカ人の養子になったそうだ。彼の養母はキューバ系アメリカ人で、養父の方はカンザス州の白人らしい。
( 左 : マクスウェル・フロスト / 中央 : マウラ・ヒーリー / 右 : ジェフリー・ディール )
民衆党では同性愛者や性転換の者でも候補者になれるそうで、マサチューセッツ州の州知事選挙では、民衆党のマウラ・ヒーリー(Maura Healey)と共和党のジェフリー・ディール(Geoffrey G. Diehl)の対決となった。その結果は、元州検事のヒーリー候補が当選。ただし、彼女は選挙前にレズビアンであることを公表していた。
民衆党には他にもLGBTQの候補者がいて、ゲイ候補のロバート・ガルシア(Robert Garcia)はカルフォルニア州で出馬し、連邦下院議員になった。ニューハンプシャー州ではトランスジェンダーのジェイムズ・ローズナー(James Roesener)が民衆党から出馬し、州議会の議員になっている。彼は色々な「差別」に反対し、マリファナの合法化にも熱心だ。コネティカット州でもLGBTQの民衆党員が当選し、エリック・ラッセル(Erick Russell)という黒人が州の財務長官になった。一応、「保守主義」を掲げている共和党にも、「時代の波」が押し寄せているそうで、LGBTのジョージ・サントス(George Santos)がニューヨーク州選出の下院議員になったそうだ。
(左 : ロバート・ガルシア / ジェイムズ・ローズナー / エリック・ラッセル / 右 : ジョージ・サントス)
地球上のあらゆる人種が集まったアメリカでは、「多様性(diversity)」という標語が持て囃されている。だが、人種や民族の多様性はアメリカ合衆国の「強さ」にはならない。むしろ国民を分断し、社会を混乱に導く悪魔の言葉になっている。本来、新大陸で建設された共和国では、イギリス文化とアングロ・サクソン人の繁栄が政治目的になっていたが、異民族の流入で滅茶苦茶になってしまった。
日本人は「移民(migrants)」と「入植者(settlers)」をごちゃ混ぜに考えている。イギリス人やスコット人の入植者というのは、宗教や商売の関係で新大陸の自治領に移住した人々で、元々は君主政を称讃する王国の公民であった。ただ、税金や哲学の違いで統治形態を変え、共和政体の国家に住んでいるだけだ。基本的にアメリカ共和国はイングランド王国の延長である。
これは、満洲國を考えてみれば日本人にも解る。例えば、日本の官僚や軍人が満洲国を建設し、そこへ東京や大阪の日本人が入植しても、その構成員は依然として「日本国民」のままである。気候や地形が変わっても、「日本人」は「日本文化」で暮らしてしまうだろう。日本人の入植者は、決して女真族や契丹人、間違っても図々しい支那人とはならない。朝鮮人の「移民」が「満洲へ雪崩れ込み、合法的に「満洲国民」となっても、彼らは日本人の同胞じゃないし、我々も「違う民族」と思うだろう。日本人は満洲国や蝦夷共和国に住んでも、皇室伝統と天皇陛下を尊ぶし、日本の風習を頑なに守る。
本来、アメリカ国民はアングロ・サクソン人を主流とする西歐種族の国家であったはず。しかし、あまりにも多くの異民族を受け容れてしまったために、その國體(constitution)が変質し、「別の国」となってしまった。コンスタンティノポリスに首都が移ったローマ帝国も、ローマ人の祖国ではなかったし、イングランド王国も嘗てのようなアングル人やザクセン人の郷土ではない。日本もやがてアジア諸国の一つとなってしまうだろう。あと30年も経てば、我が国は「日系の原住民」が生存する極東の島国となるんじゃないか。
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