無敵の太陽

主要マスメディアでは解説されない政治問題・文化・社会現象などを論評する。固定観念では分からない問題を黒木頼景が明確に論ずる。

ヨーロッパ

言論の自由と抵抗の勇気を持った東歐諸国

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黒木 頼景
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ナショナリズムが勃興したハンガリー

Victor Orban 2(左  /  ヴィクトール・オルバン)
  我々日本人はEUの政治を語る際、どうしてもドイツやフランスといった主要国を取り上げる事が多い。しかし、日本のマスコミがあまり言及しないハンガリーやチェコでは、庶民レベルで国家主義が台頭し、國體を守るべく移民・難民の排斥運動が盛んになっている。ハンガリーではナショナリストのヴィクトール・オルバン(Victor Mihály Orbán)が、1998年の選挙で勝利を摑み首相となった。2002年には下野することになったが、2010年の選挙で再び権力を恢復し、ハンガリーを率いる宰相の座に返り咲いた。彼は遠慮なく移民流入に反対し、アフリカや中東アジアからやって来る外人を「毒」と言い放ったから凄い。(Cynthia Kroet, "Victor Orban : Migrants are 'a Poison'", Politico, July 27, 2016) ドイツやフランスはもとより、オランダやブリテンの指導者が、こんな意見を口にしたら即刻、議員辞職か退陣である。

  オルバン首相の大胆な発言は過去にいくらでもある。例えば、彼は移民や難民に対して融和的な歐洲委員会に腹を立てており、ジャン・クロード・ユンケル委員長のプランを「狂気の沙汰」と酷評し、EU諸国に難民を振り分ける政策を「不公平」とも言い放った。(Willa Frej, "Here Are The European Countries That Want To Refuse Refguees", The Huffington Post , September 9, 2015と"Hungary's PM Orban calls EU refugee quota plan mad", EURACTIV.cm with AFP, May 9, 2015)  バラク・オバマ前大統領やアンゲラ・メルケル首相と違って、オルバン首相は“健全な”精神を持っているせいか、「不法移民は犯罪だ」と述べていた。アメリカでは不法移民を庇う「サンクチュアリ・シティー」があるので、不法入国者や違法滞在者を「犯罪者」と認識しない人が結構いる。こうした「リベラル・マインド」を有するアメリカ人からすれば、オルバンは極右分子、独裁者、権威主義者、非人道主義者に他ならない。でも、勝手に入ってくる外国人に「遵法精神」があるとは思えないから、「不埒な外国人」と規定してもあながち間違いじゃなかろう。

  オルバン首相には、もう一つ立派な意見があった。それは、ハンガリーがキリスト教に基づく国民国家である、と認識していたことだ。日本人が聞いても、こんな見解は当り前のように思えるが、左翼思想に染まった西歐諸国の政治家には勇気の要る発言である。もし、イスラム教徒のアフリカ黒人やシリア人、イラク人、アフガン人を前にして、「我が国は白人のキリスト教国だ!」と言えば、政治的自殺になってしまうだろう。たとえ、議員辞職にならずとも、マスコミからの集中攻撃は避けられまい。何しろ、テレビで放送される“問題”議員の弁解はせいぜい3分で、この「差別主義者」を糾弾する大学教授やゲスト・コメンテーターには、20分ないし40分、場合によってはCMを跨いで1時間も与えられたりするのだ。しかも、報道番組のディレクターや司会者がグルで、何食わぬ顔でレイシスト議員を吊し上げる手筈になっている。大抵の場合、予め「公開処刑」の台本が出来ていたりするから悪質だ。

Prague Czech 1Czech people 1








(左: チェコのプラハ  /  右: チェコ人の若者)

  オルバン首相は政権を発足させると、ハンガリーの国家的安全とキリスト教文化を護ると公言し、移民と外国からの干渉を排除することを政策に掲げたという。("PM Orban vows to preserve Hungary's Christian culture", Reuters, 7 May 2018) 彼の基本理念はまっとうで、オルバン政権はヨーロッパの伝統に深く根ざした、つまり昔から当然とされた「キリスト教に基づく民衆政国家」を建設すると謳ったのだ。オルバン首相曰わく、「キリスト教はヨーロッパにとって最後の希望」であるという。(Lucy Pasha-Robinson, "Europe is being overrun", The Independent, 21 February 2018) ハンガリーの宰相は、「ヨーロッパのイスラム教化」に対して闘うと誓い、大量移民、特にアフリカからの移民・難民に言及した。そして、彼は「我々にとっての悪夢が実現されてしまうぞ!」と警戒を呼びかけていた。

  「寛容」とか「人権」に弱い北米や西歐諸国だと、権力を持っているのに勇気が無く、「宦官」にされたような政治家がよくいる。とりわけ、ユダヤ人の大口献金者には刃向かえず、仔犬より従順で、ネズミよりも臆病な連中が多い。しかし、オルバン首相は祖国を守るべく、ユダヤ人の大富豪ジョージ・ソロス(George Soros)をハンガリーから追い出した。この米国に住みついたグローバリストは元々ハンガリー生まれで、ナチス・ドイツに仕える下っ端を経て、英国に渡ってきた移民である。彼は「イングランド銀行を破綻させた男」として名を轟かせ、英国ポンドを梃子にして10億ポンド以上を稼ぎ出した。しかし、「強欲なユダヤ人」という評判を消したいのか、慈善事業にも精を出し、「オープン・ソサエティー財団(Open Society Foundations)」を創り「善人」をアピールした。だが、その目的は大衆操作で、各種の左翼団体に資金を流し、国家乗っ取りを謀っている。ソロスが首都ブタペストに「セントラル・ヨーロッパ大学(Central Europe University)」を創設したのは、純粋に若者を育成するためではなく、自分の言いなりになる手下を養成するためだった。ユダヤ人は学校教育を牛耳って異教徒を「乾分(こぶん)」にしようとする。

George Soros 33George Soros billboards








(左: ジョージ・ソロス  /  右: ジョージ・ソロスを批判するビルボード)

  オルバン首相がソロスに牙を剝いたのは、このユダヤ人が持つドス黒い腹を判っていたからだろう。というのも、オルバン氏は1980年代、つまり共産主義に反対する青年運動「フィデス(Fidesz)」を創った学生時代に、ソロスから援助を受けていたからだ。(後に、この「フィデス」は大政党となる。) 彼はソロスと親密に付き合っていたからこそ、ソロスの手口を分かっていたのだろう。オルバン氏は「ストップ・ソロス」というスローガンを掲げ、不法移民を促進する団体を規制すべく、一連の法案を議会で通したそうだ。そして、ハンガリー議会は不法移民を支援するNGOに対し、25%の懲罰税を課す法律を作った。(Keno Verseck , "Viktor Orban's campaign against George Soros mercenaries", Deutsche Welle, 4 August 2018)
 
  ソロスのような金融資本家は、ターゲットにした国家に研究所とか大学を創ると、有望な若者を洗脳し、やがて彼らが国家の金融政策や財政を担う官僚や議員になるよう、様々な角度から支援する。また、リベラル思想に染まった馬鹿どもが、NGOを創れるよう資金を提供し、異民族が侵入しやすいよう下拵えをするのだ。グローバリストにとって、国家を最優先にする民族主義者は邪魔者で、国境を破壊する世界市民主義者が最大の味方となる。異民族が大量に混在すれば、ハンガリー国民の結束は難しくなるから、グローバリスト勢力はせっせと移民・難民を引き入れるんじゃないか。ハンガリーはソロスに狙われた獲物で、このユダヤ人は多民族・多文化主義を以てナショナリストを引き摺り降ろそうとした。つまり、ソロンは「分断して支配せよ」を目論んだことになる。

大胆な発言をするチェコの元大統領  

  普通の日本人がチェコ共和国と聞いたら、何を思い浮かべるのか? 高齢者だとチェコ製の機関銃とか、「ロボット」を最初に言い出した作家のカレル・チャペック(Karel Capek)、あるいは作曲家のベドルジハ・スメタナ(Bedrch Smetana)くらいだろう。若い女性だとスーパー・モデルのエヴァ・ヘルツィゴヴァ(Eva Herzigová)とかペトラ・ネムコヴァ(Petra Nemcova)、「ヴィクトリア・シークレット」専属モデルのハナ・ソークポヴァ(Hana Soukupova)なんかじゃないか。一般の大学生だと小説家のフランツ・カフカ(Franz Kafka)とか作曲家のグスタフ・マーラー(Gustav Mahler)を挙げてしまうけど、彼らはユダヤ人だから西スラブ系のチェコ人とは言いづらい。ついでに言うと、トランプ大統領の元第一夫人イヴァナ・トランプはチェコ系アメリカ人。(ただし、彼女の父親はオーストリア系だったという。)

Karel Capek 1Eva Herzigova 3Petra Nemcova 1Ivana Trump 1








(左: カレル・チャペク   / エヴァ・ヘルツィゴヴァ  / ペトラ・ネムコヴァ  /  右: イヴァナ・トランプ )

  歴史を振り返れば、チェコは大モラビア王国があった場所であるが、日本人にとったらボヘミア王国の方に馴染みがある。基本的にチェコ人はスラブ系民族とされているが、ルクセンブルク家やハプスブルクの支配を受けたせいか、肉体的・文化的にもゲルマン的色彩が強い。ヒトラーがズテーテン地方を併合しようとしたのも、そこにドイツ系住民が多く住んでいたからだ。1930年代だと、チェコスロバキアの全人口の内、約50%をチェコ人が占めていたが、25%くらいはドイツ人が占めており、スロヴァキア人はそれより少なく16%くらいだった。だから、ウィルソン大統領が述べたように「民族自決」を肯定すると、多数派住民の意向でドイツ帝国入りが賛成されてしまうのだ。(当時、ドイツを熱狂的に支持するドイツ系住民が沢山いたんだから。) しかし、大半の歴史家はミュンヘン協定を断罪し、ブリテンのチェンバレン首相とフランスのダラディエ首相を咎めている。これは戦後、ドイツを絶対悪にする風潮が蔓延したので致し方ないが、ドイツのと軍事対決を避けたかったブリテン国民も大勢いたので、一方的に両首脳を責めるわけには行くまい。

  脱線したので話を戻す。チェコは東歐圏にあるようでも、地理的にいえばドイツとオーストリアに挟まれ、ある意味、西歐圏に属しているとも考えられる。ただし、チェコには西歐的「リベラリズム」を拒否する率直な政治指導者がいた。第二代のチェコ大統領(2003~2013)を務めたヴァスラフ・クラウス(Václav Klaus)は、元々経済学者で、冷戦後に誕生したチェコ共和国で首相(1993~1998)を務めたこともある。彼はEU中心主義に懐疑的で、国家破壊となる移民の流入に反対していた。最近、この元大統領に、フランスのジャーナリストで「国民自由党(Parti National -Libéral)」の副党首を務めるグレゴワール・カンローブ(Grégoire Canlorbe)がインタビューを行った。彼はフランスの知識人としては珍しく、ケルト系白人が主体のフランスを真の祖国と考え、キリスト教の文化と遺産を重視する保守派である。もちろん、イスラム教徒の移民に対しても批判的で、人種議論でさえも避けることなく口にしているから、政治活動家としても立派だ。

Vaclav Klaus 22Václav Klaus Grégoire Canlorbe








(左: ヴァスラフ・クラウス  /  右: クラウスとグレゴワール・カンローブ)

  クラウス氏はインタビューを受けて、次の様に答えていた。

  私にとって、国民国家こそが民衆政治への唯一無二の道である。・・・・私の立ち位置は国民国家とその防衛、ヨーロッパ大陸との統合を阻止する闘いにある。(Grégoire Canlorbe, "Supply and Demand in Mass Migration : A Conversation with former Czech President Václav Klaus", Gatestone Institute, March 26, 2018)

  クラウス氏が言うように、デモクラシーは民族的同質性の高い国家でないと成り立たない。歴史を振り返ってみれば分かる通り、有名なアテナイは小さな都市国家で、市民権は男子の自由人が所有し、世襲によって継承される地位であった。古代ギリシアの市民権は出生地主義ではなく、血統主義で決定され、両親ともにアテナイ市民の生まれであることを条件としていたのである。哲学者のアリストテレスでも市民権を持たず、アテナイに居住するだけの在留外人だった。現在の日本人とは違って、古代ギリシア人は外人に対して厳しい制限を課し、参政権の付与など論外で、外人による土地所有も認められず、それどころか人頭税の支払いまで義務づけられていたという。(ポール・カートリッジ 『古代ギリシア人』 橋場弦訳、白水社、2001年 p. 189) 日本人がデモクラシーのお手本にするポリス市民は、見ず知らずの異民族と混在する生活ではなく、自分にとって最も近くて愛すべき人間、すなわち、自分と似た者(家族 / oikeioi)や友人(philoi)と一緒に満足の行く生活を送りたいと望んでいたのだ。

  クラウス氏は全面的な外人嫌いではなく、大量の異邦人が祖国に流入することに反対していたのである。彼はこう述べていた。個々人の移民に対する慈悲が湧き起こるのは、ある移民が個人的に苦しむ時であって、群れを成す移民に対してではない。つまり、仏心には限度があるということだ。例えば、一匹狼のシリア難民が近所で倒れていれば、その飢えと渇きを癒やしてやろうという気にもなるが、雲霞の如き大群で流れ込んでくれば嫌悪感しか生じず、いくら困っていても助ける気にはならない。クラウス氏もソマリアやシリアからやって来る貧民を「敵」とは見ないしてないという。ただ、そうした難民を計画的に引きずり込もうとするEU委員会のエリートに怒っているのだ。EUのエリートたちはイスラム教徒のテロリストを歓迎している訳じゃないが、異邦人を呼び込んで「新たなヨーロッパ人」を創ろうと目論んでいる。

Immigrant Muslims 1Immigrants to EU 1







(写真  /  ヨーロッパにやって来る移民や難民)

  日本の庶民ならクラウス氏に賛成するはずだ。だいたい、安全な高級住宅街に住むエリート達は、下界での人種混交や治安の悪化には無関心で、高給を食みながら綺麗事を楽しんでいる。彼らは自分の子供を荒れ果てた公立学校に通わせず、高額な授業料と寄付金を払って寄宿舎学校に送るし、結婚相手も上流階級から選んでいる。高級官僚の奥方になる御令嬢は、裸踊りを得意とするフィリピン人やタイ人の女じゃないぞ。彼らは生ゴミと小便の異臭が漂う地下鉄などとは無縁で、運転手附きのリムジンでオフィスに向かい、ディナーは黒人やアラブ人で溢れる大衆食堂を素通りして、ソムリエが待機する高級レストランに赴く。ヴァカンスを過ごす保養地だって、クルド人やアフガン人がうろつく地方都市じゃなく、透き通った湖が見えるスイスの片田舎とか、眩しい陽射しが降り注ぐエーゲ海なんだから。

  ハンガリーとかチェコの国民が移民に対して露骨な拒絶反応を示すのは、西歐人のような人権教育とか多文化教育を受けていないからだろう。西歐人は偽善を装うことが教養人の証しと思っているが、東歐人は「下らない見栄」と吐き捨てる。確かに、チェコやスロヴァキア、ハンガリーの近くにはクロアチアやユーゴスラビア、ボスニア・ヘルツェゴビア、ブルガリア、マケドニアといった民族の火薬庫があるから、「みんなで仲良く」という建前だけでは暮らせないのだ。これらの国々では民族対立が激しく、気取った啓蒙思想など愚の骨頂で、血みどろの民族闘争が「現実」である。日本人が移民や難民の流入に鈍感なのは、日々の生活で流血の民族摩擦が無いからだろう。もし、学校や職場で種族ごとのグループ対立が頻発し、殴り合いの憎悪が巻き起これば、多民族共存を訴える政治家は落選しかない。そもそも、日本人が外国からの留学生や旅行者に親切なのは、歴史的に異邦人の存在が稀有であったからだ。しかし、これからは違ってくる。大量のアジア人が近所に流入すれば、心遣いよりも憎しみの方が増えてくる。移民や難民に反対する議員が現れてくることは結構なことだが、それは取り返しの付かない状況になったことの証しでもある。これは死に至る病に冒されてから名医が現れても嬉しくないのと同じ事だ。医学では「予防」が重視されているのに、政治では「手遅れ」が普通なんだから頭が痛くなる。



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自らスパイになる「国民」 / 帰化人の子供は信用できるのか ?

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スリーパー二世を目指したソ連
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  先月、FXの人気TVドラマ『ジ・アメリカンズ(The Americans)』が第6シーズンを以て終了した。(このドラマについては、以前にも当ブログで述べたから、粗筋を知りたい方は別の記事を参照にしてください。) この作品の舞台は冷戦時代の1980年代で、ちょうどレーガン政権の真っ只中である。エリザベスとフィリップというジェニング夫妻は、若い頃にソ連のKGBから派遣されたロシア人スパイで、アメリカ社会で極秘任務を行っている、という設定だ。当初、彼らは恋人でもなかったが、潜伏先のアメリカ人から怪しまれないよう、“ごく普通”の夫婦を装って、KGBの指令通りちゃんと娘のペイジと息子のヘンリーをもうけていた。このカップルは表向き、旅行代理店に勤めるトラベル・エージェントになっているが、その裏では破壊工作や要人抹殺、盗聴、勧誘などを手掛けるスパイである。

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(左: ジェニングス一家  /  右: 「ペイジ」役のホリー・テイラー)

  このドラマは以外に面白く、視聴率も高かった。その理由の一つ上げられるのは、まだスパイが動きやすい時代であったという背景だ。1980年代だと、それほど街中に監視カメラが張り巡らされてはいなかったし、DNAを用いた科学捜査も無かったから、防諜機関のFBIがスパイの殺人や窃盗を調査するのは難しかった。ファイナルとなる第6シーズンで刮目すべきは、フィリップとエリザベスがある特殊任務を遂行した際に行った「証拠隠滅」である。彼らは同僚スパイのマリリンと組んでロシアの要人を奪還しようと試みた。しかし、車に乗って逃げ切ろうとした時、マリリンがFBI捜査官に撃たれて死んでしまうのだ。クルマを運転するフィリップは必死でFBIの追跡をかわし、薄暗い地下の駐車場に辿り着く。そこで、エリザベスとフィリップは別の車に乗り換えるのだが、マリリンの死体を運ぶわけには行かない。そこで、フィリップは駐車場内に設置されている斧を取り出し、マリリンの遺体を床に置くと、彼女の首と両手を切断してしまうのだ。(註 / 米国の建物にはよく、火災時に使う斧と消火器が常備されている。) 思わず「ギァァァ~」と叫んで目を逸らしたくなるが、彼女の死体をそのままにしてしまうと、顔や指紋で正体がバレる虞(おそれ)があるので、フィリップは生首と手首だけをバッグに詰め、新たな車で駐車場を後にした。いやぁぁ~、原始的だけど簡単な「遺体処理」である。ただ、ちょっとばかりショッキングだけどね。ちなみに、このエピソードの後半で、フィリップが川にこのバッグを捨てるラスト・シーンがあるのだが、河辺で流れてくる鞄を拾った人は、さぞかしビックリするだろうなぁ。桃じゃなくて血塗れの生首なんだから。ただし、この不運な人だけじゃなく、駐車場で首無し遺体を発見した人も腰を抜かして驚くはずだ。

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(左: KGBスパイのマリリン  /  右: ジェニングス夫妻の上司たるクラウディア)

  このドラマには様々な極秘任務が沢山あるけど、第5シーズンから第6シーズにかけて注目すべきは、フィリップ夫妻の娘であるペイジが「第二世代のスパイ」に仕立てられた事だ。物語の中では、ソ連のKGB本部が米国の下部組織に対し、潜入工作員の子供をスパイに養成しろ、という指令を下す。そこで、ジェニングス夫妻を監督する上司のクラウディアは、二人に対しペイジを第二世代のスパイにしてはと提案する。最初、彼らはためらうが、娘の意向を尊重しながら、徐々に言いくるめてスパイJr.に育ててしまうのだ。まぁ、普通のアメリカ人というのは元々薄いピンクのリベラル派というのが多いから、「世界平和のために米国の対外戦争を食い止めるんだ」と言い聞かせれば、何となく賛同してしまうものである。ただ、こうした諜報員養成が恐ろしいのは、ペイジが“生まれながら”の「アメリカ国民」という点である。エリザベスとフィリップは「移民」という記録があるから、公職に就くとき怪しまれてしまうが、ペイジなら生まれも育ちもアメリカだから大丈夫。地元の学校に通う生粋のアメリカ人だし、どこにでもいそうな“ごく普通”の白人娘にしか見えない。

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(左: 要人奪還の作戦を実行するエリザベスとマリリン  /  右: クルマで逃走を図るフイリップ)

  こうして、母親からスパイの手解きを受けたペイジは、両親に協力しながら一人前になり、国家機密にアクセスするため、国務省に勤めようとする。ドラマの方はペイジが本格的なスパイになる前に終焉を迎えるのだが、もし次のシーズンがあれば、第二世代のスパイ物語になっていたかも知れない。『ジ・アメリカンズ』はフィクションだけど、実際のところ、米国には本物と呼べる「忍び(草)」がいて、FBIやCIA、NSAなどにモグラが潜んでいた。例えば、KGBに属していたヴィタリー・S・ユルチェンコ(Vitaly Sergeyvich Yurchenko)が米国に亡命したことで、ロナルド・ペルトン(Ronald Pelton)とエドワード・ハワード(Edward L.V. Howard)がソ連のスパイであると判明したことがある。ペルトンは世界中の情報を傍受するNSAの職員で、摑んだ情報をモスクワに流していたそうだ。ハワードの方はCIAのケース・オフィサーで、裏切りが発覚して捕まる前にソ連へ逃げてしまった。日本でも有名なのは、CIA職員のオルドリッチ・エイムズ(Aldrich Hazen Ames)やFBIのロバート・ハンセン(Robert  Philip Hanssen)だろう。ハンセンの裏切行為は2007年に映画化され、『アメリカを売った男(Breach)』というタイトルで公開されている。名優クリス・クーパー(Chris Cooper)がハンセン役を演じたから、映画ファンなら覚えているはずだ。

Vitaly Sergeyvich Yurchenko 1Ronald Pelton 1Edward Howard 3Aldrich Ames 1








(左: ヴィタリー・ユルチェンコ / ロナルド・ペルトン /  エドワード・ハワード  /  右: オルドリッチ・エイムズ)

  また、NSAで「サイバー・エンジニア・アドヴァイザー」を務めていたハロルド・マーティン(Harold Thomas Martin III)がFBIに捕まった。しかし、彼が誰に情報を売っていたのかは明らかにされていないので、彼をロシアのスパイとは断定できない。もっと注目すべきは、イスラエルの手先となっていたジョナサン・ポラード(Jonathan Jay Pollard)の件だ。このユダヤ系アメリカ人は、ホロコースト物語を聞かされて強烈なユダヤ人意識に目覚め、合衆国海軍に属する職員なのに、米国の機密情報をイスラエルに漏らしていた。1984年、ポラードはNCIS(海軍捜査局)に逮捕され、翌年の1985年に終身刑を言い渡された。しかし、2015年、イスラエルに媚びたバラク・オバマ大統領は、ポラードの減刑を承諾し、早期釈放を実現させてやったのだ。米国におけるユダヤ人ロビー恐るべし。選挙を控える政治家は、ユダヤ人の組織票と巨額な資金を大切にするから、イスラエル政府の御機嫌を「忖度」するのだろう。

Jonathan Pollard 2Robert Hansen 1Chris Cooper in Breach








(左: ジョナサン・ポラード  /   中央 : ロバート・ハンセン  / 右: 「ハンセン」を演じるクリス・クーパー )

  だいたい、オバマを大統領にしたラーム・エマニュエル(Rahm Israel Emanuel)やデイヴィッド・アクセルロッド(David Axelrod)がリベラル派のシオニストなんだから、イスラエルの意向を尊重してもおかしくはない。シカゴ市長になったエマニュエルなんか、ミドルネームが「イスラエル」だし、父親のベンジャミンはイスラエル生まれで、元「イルグン(Irgn)」のメンバーときている。ということは、「筋金入りのテロリスト」ってことかなぁ。アクセルロッドの母親であるミリルも強烈な左翼系ユダヤ人。彼女は極左雑誌の『PM(Picture Magazine)』でジャーナリストを務めていた。しかも、彼女の同僚は“あの”真っ赤なイシドール・S・ストーン(Isidore Feinstein Stone)であるから、日本人でも天井を仰ぎたくなる。有名なヴェノナ文書によれば、このユダヤ人はソ連からカネをもらっていたそうだ。繰り返しになるけど、アメリカの政治を眺めていると目眩がしてくる。ちなみに、ポラードのハンドラー(監督者)は、モサドの対外工作を任されていたラファエル・イータン(Rafael Eitan)で、彼は後に政界へ進出し、年金や老人福祉を担当する厚生大臣になっていた。

Myril Bennett Axelrod 1Isidor Feinstein Stone 1Rafael Eitan 3








(左: ミリル・アクセルロッド   /  中央: イシドール・ストーン /   右: ラファエル・イータン)

ドイツの首相はロシアの手先?

  『ジ・アメリカンズ』を観ていると、ふとアンゲラ・メルケル首相の事を思い出す。というもの、TVドラマではKGBがアメリカの国家機密を盗もうと暗躍するが、もしかしたら、現在のロシアも似たような事をしているんしゃないか、と思えてくるからだ。プーチン率いるロシアが、今でも歐米諸国に政治工作を仕掛けているのは確かで、米国や歐洲の防諜組織に摘発されることもあるが、気付かれていないブラック・オペレーション(極秘作戦)も沢山あるはずだ。ちょっと前、アメリカのNSAがメルケルの携帯電話を盗聴していたことが話題になったけど、米国の諜報機関が異常なまでにドイツの首相に執着し、メルケルを特殊な「ターゲット」にしていたのは奇妙だ。どうしてNSAはあれほど熱心だったのか?

Willy Brand & Gunter GuillaumeGunter Guillaume & Christel







(左: ウィリー・ブラントとギュンター・ギユーム  / 右: ギュンター・ギユームと妻のクリステル )

  これは一部の評論家が囁いていたことだけど、「もしかすると、メルケルはロシアのエージェントなんじゃないか?」という噂があった。何しろ、メルケルは東ドイツ出身の政治家だから、ロシアが育てた「冬眠工作員(sleeper agent)」との容疑を掛けられても不思議じゃない。冷戦時代、ソ連と東独が西ドイツに政治工作を仕掛けていたことは有名で、意外な人物が裏切者になっていたことがある。例えば、ウィリー・ブラント(Willy Brandt)首相の補佐官を務めていたギュンター・ギユーム(Günter Guillaume)は、東ドイツから送り込まれたスパイだった。元々、彼はベルリン生まれで、戦時中はナチ党に所属していたが、大戦後は東ベルリンに住んでいた。ところが、東ドイツの秘密警察(シュタージ / Staatssicherheitsdienst)にスカウトされ、1956年、夫婦揃って西ドイツに派遣されたそうだ。左派の実力者であるブラントに接近したギユームは、まんまと彼の側近になるが、1974年に正体がバレて逮捕されてしまった。このスキャンダルでブラント首相は辞任。捕まったギユームは13年の懲役刑を言い渡され、女房のクリステルも懲役8年の有罪判決を受けた。しかし、スパイ交換のお陰で、二人は東ドイツに戻ることができたのだ。(後年、彼らはドイツのテレビ局「ZDF」のインタビューを受け、当時の様子を物語っていた。)

Gunter Guillaume 3Willy Brandt 1Bruno Kreisky 1









(左: 若い頃のギュンターとクリステル・ギユーム  / 中央: ウィリー・ブラント  /  右: ブルーノ・クライスキー)

  ちなみに、我々が知っている「ウィリー・ブラント」は亡命用の名前で、ブラント首相の本名は「ヘルベルト・エルンスト・カール・フラム(Herbert Ernst Karl Frahm)」という。左派の社会主義者であったブラントは、右派社会党のナチスが台頭したことで身の危険を感じ、迫害を免れるためノルウェーに逃れた。そして、ノルウェー国籍を取得するとジャーナリストの身分を看板にして、中立国であったスウェーデンに移り住み、亡命生活を送っていたそうだ。当時、滞在先のストックホルムで再会したのが、同じ社会主義者のブルーノ・クライスキー(Bruno Kreisky)で、このユダヤ人は後にオーストリアの首相となる。ホント、左翼には呆れるくらいユダヤ人が多い。一方、ブラントは敗戦後、祖国のドイツに戻り、古巣であった「ドイツ社会民衆党(SPD)」に返り咲いて、異例の出世を遂げることになる。ブラントは西ベルリン市長を経て外務大臣となり、ついにドイツ連邦共和国の首相となった。でも、側近がシュタージの手先であったし、酒と女に関する自分のスキャンダルも発覚したから、散々な末路であったことは間違いない。

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(左: 幼い頃のアンゲラ・カズナー  /  右: アンゲラの両親)

  脱線したので話を戻す。「スパイ」の容疑を掛けられたメルケルの過去は、意外と日本では知られていない。彼女は1954年7月17日、空襲で焼け焦げた港町ハンブルクで生まれた。彼女の本名はアンゲラ・カズナー(Angela Dorothea Kasner)で、この家族名はポーランド人の祖父「ルートウィッヒ・カツミエルツァク(Ludwig Kazmierczak)」から由来しているそうで、父親がドイツ風に「カズナー」と改めていた。アンゲラの父ホルスト(Horst Kasner)はルター派の牧師で、西ドイツのハイデルベルクで神学を修めたあと、妻子を連れて東ドイツのテンプリン(Templin / ブランデンブルク州の街)に移住したという。彼は教会の依頼で現地に神学院を創るのが使命だった。一方、アンゲラの母親であるヘーリンド(Herlind Jentzsch)は英語とラテン語の教師であったから、カズナー家は典型的なインテリ家庭である。

Angela Merkel & parents 2angela Merkel & parents 1








(左: 赤ん坊のアンゲラと両親  /  右: 両親と一緒のアンゲラ・メルケル)

  両親とも教養人であったから、幼いアンゲラが知的好奇心に目覚めたのもうなづけよう。小娘に過ぎない彼女が論理的な議論を展開できたり、相手の意見を聴いて鋭い反論ができたのも父親の影響で、学校の教師からではない。ドイツのみならず西歐社会全般に言えることだが、育った家庭環境や階級によって子供の知的レベルが格段に違うケースが多い。普通の日本人が知識人階級の子供に接すると、その知性と聡明さに驚いてしまう。日本人のサラリーマンがドイツ人の子供に論破されると、「この生意気なガキんちょめ !」と怒ってしまうが、ドイツ語のハンディキャップがあるからしょうがない。それでも、ちょっと癪(しゃく)である。論理学を勉強した子供だと、「なんで財布を忘れたサザエさんは、愉快になるの?」とか、「どうして日本人は頭を下げながら電話で話すの? 相手から見えないのに・・・」と尋ねたりする。こんな西歐人の子供に出逢うと、「ボクは将来スパイダーマンになるんだ !」と無邪気にはしゃぐ日本の子供が可愛くなるじゃないか。ただし、同じ日本人の子供でも、5歳の女の子になると違ってくる。父親の扱い方が上手い娘は、ホステス並に「ねぇ、パパぁ~」と甘えてくるし、オモチャを買ってもらうためなら、涙を浮かべて上目遣い。男の子みたいに直ぐ「ママ、買ってよぉぉ~」と駄々を捏ねず、「欲しいけど、パパのお小遣いがなくなっちゃうから、我慢するの !」と唇を噛みしめる。この“けなげ”な姿を目にした父親は、「そんなこと気にしなくてもいいんだよ !」と涙ぐみ、カミさんに内緒でレジに向かってしまうのだ。まったく、一般の父親は単純なんだから。それにしても、日本人の娘は幼い時から魔性の素質を備えている。こんな「おねだり」を見ると、何となく将来が恐ろしい。

Angela Merkel young 1Marie Curie 1








(左: 少女時代のメルケル  /  右: マリー・キュリー)

  脱線したので話を戻す。父親の家系から由来するのか、幼少時のアンゲラにとっての憧れは、ポーランドが生んだ偉大な科学者、マリー・キュリー(Marie Curie)夫人であった。若い頃のアンゲラを映した写真を見れば、彼女が知的分野に向いている少女であることが判る。彼女は物事を冷静に考察してから慎重に動くタイプだ。9歳の時のエピソードはアンゲラの性格をよく物語っている。小学生のアンゲラが水泳の授業を受けたときのこと。彼女は3mの飛び込み台からダイブすることになったが、あまりの恐怖心ゆえ、台の上で固まってしまい、45分間も立ち竦んでしまったそうだ。勇気を振り絞って飛び込んだのは、授業が終わる寸前であったという。(Alan Crawford and Tony Czuczka, "Angela Merkel's Years in East Germany Shaped Her Crisis Politics", Bloomberg, September 20, 2013)  (筆者もそうだけどアホな少年は、何の根拠も無く「オレにも出来るぞ」と鉄棒にしがみつき、見様見真似で大車輪に挑戦したりする。怪我の事は考えない。) やはり、体育の授業より理科の勉強に向いていたとみえ、アンゲラは化学の分野に進むことになった。

似て非なる二人の女宰相

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(左: 若い頃のマーガレット・サッチャー  /  右: 政治家となったマーガレット・サッチャー)

  科学者から一国の宰相に上り詰めたメルケルの人生は、英国のマーガレット・サッチャー首相と似ている。保守党の英国首相も理科系女子で、オックスフォードのソマヴィル・カレッジ(Sommerville College)で化学を専攻していた。彼女の父親であるアルバート・ロバーツ(Albert Roberts)は雑貨店を営んでいたが、時折、所属していたメソジスト教会で説教壇に立つ事もあったそうだ。娘のマーガレットが政治を志したのは、父親の後ろ姿を見ていたからかも知れない。アルバートは地元リンカシャーのグランサム(Grantham)で市議会議員を務めた後、市長に当選した人物だ。家庭環境は似ているが、メルケルとサッチャーは政治思想の面で異なっている。サッチャー首相は若いときにフリードリッヒ・フォン・ハイエック(Friedrich A. von Jayek)教授の『隷属への道(The Road to Serfdom)』を読んで感銘を受けていた。

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(左と中央 : 「科学者」のマーガレット・サッチャー   /  右: フリードリッヒ・フォン・ハイエック博士)

     一方、東ドイツでは社会主義が生活の隅々にまで及んでおり、そこで暮らすメルケルにドイツの國體を尊重する愛国心があったかどうかは不明だ。しかし、大量の移民や難民を受け容れたメルケルに、ドイツ民族を守ろうとする気持ちがあったとは思えない。もしかしたら、ポーランド人の血筋を意識するメルケルには、ゲルマン人の血と大地を蔑ろにする思考があるんじゃないのか。ドイツで出版された評伝によると、14歳のメルケルは興味本位で初めてタバコを吹かし、大学生になるとザ・ビードルズのアルバムを聴いていたそうだが、どんな政治思想を持っていたのかは明らかではない。(メルケルの表情を見ていると、心の奥に「何か」が秘められているんじゃないか、と思えてくる。絶対、他人に見せない「闇の部分」が。)

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(左: 若い頃のマーガレット・サッチャー  /  右 : 10代のアンゲラ・メルケル<写真の左側>と友人<中央と右側>)

  私生活の面でもメルケルは・マーガレットサッチャーと違っていた。「鉄の女」と呼ばれたマギー・サッチャー首相だが、家庭に入れば「情の女」で、夫のデニス(Denis Thatcher)とは50年以上も連れ添う良妻賢母であった。ただし、亭主のデニスにとっては再婚相手となっていた。一番目の妻に当たる「マギー夫人」とは、マーガレット・ドリス・ケンプソン(Margaret Doris Kempson)のことである。二人は1942年に結婚するが、夫のデニスは陸軍少尉となったので、家を空けることが多かった。彼は士官として戦場に向かい、最終的には大尉にまで昇進する。しかし、その代償は大きかった。亭主の不在期間が長かったせいか、新妻のマギーは愛想を尽かし、1948年に別れる決意をした。離婚で独身に戻ったデニスは、もう一人のマギー(ロバーツ)と出逢い、それほど美人とは思えなかったが、惚れてしまったので1951年に結婚したそうだ。そして、彼らの間にはキャロルとマークという双子が生まれた。

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(左: 新婚当時のデニスとマーガレット・サッチャー夫妻  /  右: アンゲラとウルリッヒ・メルケル)

  一方、化学者のアンゲラ・カズナーは1974年、学生仲間で物理学を専攻していたウルリッヒ・メルケル(Ulrich Merkel)と出逢い、三年後にテンプリン教会で結婚式を挙げることになった。ところが、この夫婦は1981年に破局を迎えてしまう。鋭い知性を持ち、漲る活力と野心を秘めたアンゲラは、何が原因なのかはっきりしないが、自ら進んでアパートの部屋を出て行ったそうだ。亭主のウルリッヒによれば、彼は洗濯機と家具をもらい受け、彼女は夫の名前を持って立ち去ったという。離婚したアンゲラ・メルケルは、ベルリンにある東ドイツ科学アカデミーで研究員のポストを得て、1986年に量子化学の論文で博士号を取得した。彼女はこの研究機関で二番目の夫となるヨアキム・ザウアー(Joachim Sauer)と出逢う。1981年に知り合ったヨアキムは独身の化学者だけど、彼には以前の結婚で二人の子供を持っていた。アンゲラとヨアキムの交際期間は結構長くて、彼らが結婚したのは1998年である。ごく内輪の質素な結婚式であったという。メルケル首相に何となく「寂しさ」が漂っているのは、こうした私生活のせいなのかも知れない。

Angela Merkel & Joachim Sauer 1Angela Merkel & Joachim Sauer 2









(左: 東ドイツに居た頃のヨアキム・ザウアーとアンゲラ・メルケル  /  右: 政治家となったメルケルと夫のヨアキム)

  共産圏に暮らす者なら、誰でも何らかの形で国家組織に属する。温和なメルケルも10代の時、「ドイツ自由青年団」のメンバーだった。やがてライプチヒ大学に進み、ベルリンで研究生活を送っていたメルケルは、「シュタージ」から勧誘を受けたという。シュタージで対外工作を担当するマーカス・ウォルフ(Markus Wolf)は、化学者の若い娘に目を附けた。彼はメルケルを西側に派遣し、最先端の情報を盗ませようとしたのだ。ところが、メルケルはこの誘いを断った。メルケル本人によれば、口数の少ない性格がエージェントの基本なのに、自分はお喋りで黙っていることができず、つい友達に話してしまうからスパイ失格なの、と語っていた。("Angela Merkel turned down job from Stasi", The Daily Telegraph, 20 May 2009) ただし、こうした拒絶の結果は深刻で、優秀なメルケルであったが、ついに大学のポストを得る事はできなかった。まったく、社会主義国の制裁は何とも陰湿だ。日本の学内政治とソックリ。

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  シュタージのリクルートを断ったメルケルだが、こうした拒絶行為が却って疑惑を深めてしまうこともある。というのも、諜報機関の世界では、本命をわざと「不合格」にして、有望な若者を「劣等生」や「失格者」に見せかけ、外国の目を欺こうとするからだ。ソ連から亡命した元諜報員が話していたけど、007のジェイムズ・ボンドなどは全くの虚構(フィクション)で、実際の諜報業界では有り得ないという。本当のスパイはもっと地味な人物で、みんなが「まさか、あいつがスパイだなんて・・・、本当なのか ?」と思うような者が送り込まれてくる。確かに、男前で頭が切れるプレイボーイの諜報員なんて、名札を附けたスパイのようなものだから直ぐバレる。

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(左: ウェイド・ウィリアムズ  / ジョー・モンテーニャ  / ジョニー・コイン  /  右: ジョン・グッドマン)

   有能なスパイというのは、何とも風采の上がらない、真面目だけが取り柄の“ダサ”い中年男が典型だ。周りの者から信頼されるが、ちょっと小馬鹿にされる昼行灯(ひるあんどん)を演じることが多い。映画俳優で言えば、『プリズン・ブレイク』で刑務官を演じたウェイド・ウィリアムズ(Wade Williams)とか、『クリミナル・マインド』でFBI捜査官を演じたジョー・マンテーニャ(Joe Mantegna)、『ブラックリスト』で警官を演じたジョニー・コイン(Jonny Coyne)、気さくなオっさん役がよく似合うジョン・グッドマン(John Goodman)などが、スパイの容姿に適している。ジェイムズ・ボンドを演じたピアース・ブロスナンとか、「ジェイソン・ボーン」を演じたマット・デイモン、CIAオフィサーを演じたブラッド・ピット、「イーサン・ハント」でお馴染みのトム・クルーズみたいな人物では絶対ダメだ。

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(左: ピアース・ブロスナン  / マット・デイモン  / ブラッド・ピット  / 右: トム・クルーズ )

  共産主義体制が崩壊したことで、日本人はロシアに対する警戒心を緩めてしまったが、ロシア人というのは謀略の天才である。なぜなら、日本人では想像もつかない裏工作を思いつくし、それを実行するだけの実力と素質を有しているからだ。もし、ロシアの諜報機関が東ドイツ人を使って政界工作を行っていたら、恐ろしい結果となっているだろう。訓練を施したドイツ人スパイを善良な国民としてドイツの政界に送り込み、ドイツ社会に潜伏する工作員が彼を陰で支援して、段々と政党の重要人物に育てて行くことも考えられる。仮にメルケルがロシアのスリーパーであったなら、ドイツ社会に溶け込んでいる「忍び」どもが、あらゆる方面で彼女を支援し、一人前の政治家に育てたはずだ。実際は違うんだろうが、メルケルは誠に運がいい。統一前の政界に飛び込んだメルケルは、東独のキリスト教民衆党(CDU)を率いるロタール・デメジュエール(Lothar de Maizière)の報道官を務めていた。彼女はこの役職を踏み台に、とんとん拍子の出世を果たす。ところが、ドイツ統一前に東独の首相になったデメジエールは、途中で失脚する。後にコール政権で無担当の特命国務大臣になるが、シュタージの協力者であることが発覚し、やむなく辞任に追い込まれてしまうのだ。だいたい、共産主義国の政治家なら、秘密警察と何らかの繋がりを持っているのは当然で、全くの潔白という方がむしろ怪しい。

Lothar de Maiziere 4Angela Merkel & Kohl 2








(左: ロタール・デメジュエール  /  右: ヘルムート・コールとアンゲラ・メルケル)

  東独出身のメルケルがロシアのスパイじゃないか、と疑われたとき、ドイツの有名誌「シュピーゲル」はその疑惑を打ち消す記事を載せていた。(Jan Fleischhauer, "Angela Merkel Is No KGB Sleeper Agent", Der Spiegel, May 16, 2013を参照。) 一般のドイツ人は「そうだよなぁ」と安心したが、メルケルがあまりにもプーチン大統領と親密なので、一部の人々は「もしかしたら、プーチンに過去の秘密を摑まれているんじゃないか?」と疑っていたそうだ。なるほど、元KGBの諜報員であるプーチンは、1980年代にドレスデンに赴任したから、東ドイツの諜報機関にもコネがある。プーチンはシュタージのホルスト・ベーム(Horst Boehm)少将と親しかったから、メルケルに関する何らかのファイルを閲覧した可能性は否定できない。関係無いけど、他人の秘密をのぞき見る時のプーチンって、獲物を狙う蛇のような目つきになるから、日本人からすると背筋が寒くなる。

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(左: 若い頃のウラジミール・プーチン  /  右: メルケル首相とプーチン大統領)

  研究員であったメルケルがどうして政治を志したのかは未だに謎だけど、1980年代に東独で台頭した「民主的覚醒(Demokratischer Aufbruch)」運動に加わっていたことは確かだ。このグループに属したことで、メルケルはデメジエールの報道官となり、ドイツ統一後、デメジエールがヘルムート・コール首相に彼女を紹介したそうだ。こうして切っ掛けを摑んだメルケルは異例の昇進を遂げ、ドイツの首相にまで上り詰めた。科学者らしく地道にコツコツと政務をこなすメルケルだからこそ、却って怪しく思えてしまう。政治における彼女の「情熱」は、一体どこから来るのか? 東独時代から左翼活動家であったなら解るが、地味な研究者が急に偉大な政治家に変貌するなんて、どうも腑に落ちない。それに、研究員のメルケルは1980年代の後半に、ハンブルクに出張することを許されていたのだ。シュタージから睨まれて冷や飯喰らいの存在だったのに、突如として憧れの西ドイツに旅行だなんて、俄に信じられない。だから、一部のドイツ人は、メルケルが「隠密だったのでは?」と勘ぐってしまうのだ。東側のスパイ組織がよく使う手口なので、疑われてもしょうがない。これは邪推になるが、メルケルは政治とは無関係な科学者を装い、西側の科学技術を盗んでくる密命を帯びていたんじゃないか

Angela Merkel as FDJ memberAngela Merkel in 1971










(左: 「自由ドイツ青年団」に属していた頃のメルケル  /  右: 1971年当時のメルケルを撮影した集合写真)

Putin 111(左  /  KGB時代のプーチン)
  メルケルが「ロシアのスパイ」という物的証拠は無いから、どれもこれも単なる憶測と噂話に過ぎない。ただ、ロシアがドイツの政界を操るため、息の掛かった東独人を政治家に仕立て上げることだってあるだろう。普通のドイツ人候補者は、教会とか労働組合、大中小の企業から支援を取りつけて出馬するが、ロシア仕込みの候補者には、どこからともなく「善意の支援者」が現れる。そんなに親しくもないのに気前よく献金してくれたり、熱心に選挙運動を手伝ってくれるなんて変だ。しかも、顔の広い「支援者」が政財界の有力者に紹介してくれ、普段は意地悪なジャーナリストも、好意的な紹介記事を書いてくれるから、瞬く間に下馬評で最有力候補となる。こうなれば、無名の新人でも当選する確率が高くなるだろう。

  日本人だと直ぐに、蓮舫を思い浮かべてしまうが、日本にもその危険が無いとは言い切れない。日本に潜む支那人や朝鮮人の工作員が、第二世代のスパイ青年を政治家に担ぎ上げ、将来の総理候補にすることだって有り得るのだ。事によったら、支那人や朝鮮人の工作員が、帰化人の子供を高校生の頃から育成し、官僚や藝人としてデビューさせてから、選挙に担ぎ出すこともあるだろう。スパイ議員の育成としては、以下の方法がある。

 ① 勉強が出来る子供には奨学金を与えて有名大学に進学させ、財務省や外務省の高級官僚にしてから、テレビに出演させる。国民党の古川元久みたいにテレビ番組で世間に顔が売れたら、退官して左翼政党から出馬すれば怪しまれない。ただし、本性を隠すために自民党から出馬しても、当選後にリベラル左派になればOK。

 ② 容姿が良ければ、藝が無くても「タレント」にして有名にする。朝鮮系の藝能事務所に入れれば、“ごり押し”で各テレビ局にネジ込めるから、一定の浮動票が期待できる。まぁ、蓮舫のように“がっかり”なボディーでも、テレ朝のワイドショーや日テレの娯楽番組に出演させれば、ある程度の商品になるだろう。たとえ女としての色気が無くても、饒舌なトークを披露すれば、世間のアホはすんなり騙されるから、参院選の比例区で当選できる。無党派層は面白半分で投票するので、政策よりも勝負服でアピールした方がいい。自民党の松島みどりは、名前が「みどり」でも服装は「赤」。タヌキのように他人を欺く小池百合子は、カップ麺みたいな「緑」で、腹黒い蓮舫になると、朝鮮人のチマチョゴリみたいな「白」。参院議員だった井脇ノブ子は「ピンク」を好んでいたが、顔の方が強烈なのでジャケットの方は忘れ去られている。アントニオ猪木は赤いタオルを首に巻いて、支援者をビンタすれば当選確実。「自民党に卍固め」と訳の解らぬ事を発言しても、「みなさん、元気ですかぁぁ!!」で会場は大受けだ。「元気があれば何でも出来る !」と宣うが、それなら法案の一つでも作ってくれ。門外漢の外国人記者が見れば、何のことやらさっぱり解らない。これなら、歌手の矢沢永吉も自身のロゴ入りタオルを配ってトップ当選だ。

 ③ 帰化鮮人や日鮮混血児の場合は素生がバレているので、庶民の詮索を受ける小選挙区では勝てない。いくら暢気な有権者とはいえ、白真勲みたいな候補者だと、一般人は躊躇(ためら)ってしまうだろう。だから、立憲民主党のような政党に所属させ、参院選の比例区に回した方が賢明である。パチンコ屋とか金融業者が支持母体となり、党に多額の献金を行えば、いくらでも比例名簿の買収は可能だろう。日本の国益を考えない朝鮮系議員は、支那人や朝鮮人を優遇する法案に力を入れるが、その一方で、支持者への「恩返し」を忘れないから、賭博関連の規制を緩めてやったりする。また、こうした連中は北朝鮮が市場を開放したら、日本の「経済援助」を流用しそうだ。日本の税金で巨大なカジノを平壌に建設し、在日鮮人達が儲かるよう便宜を謀ったりするので用心しなければならない。

 ④ 二世スパイを有効に活用したいと思えば、左翼政党の議員にするより保守派の議員や知識人、自衛官にした方がいい。日本の左翼分子は頼まれもしないのに北京政府や在日鮮人に協力するから、わざわざ資金を使う必要は無い。それよりも、二世スパイが保守派に潜入し、左翼政策に反対する日本人を懐柔・操作する方が遙かに効果的だ。保守的議員を装うスパイが女系天皇や女性宮家を推進すれば、いつかは皇室を抹殺できる日が訪れる。また、帰化鮮人二世を防衛大学校に入学させ、自衛隊に送り込めば、陸海空の将校という「スリーパー」を配置することもできる。有事の際は彼らが「攪乱分子」となって、侵略軍の尖兵となるから恐ろしい。雑誌の論壇でも、二世スパイが「保守派」とか「愛国派」の知識人になれば、輿論をリベラリズムに誘導できるし、保守派内部を分裂させて、一般国民をバラバラにさせることも可能だろう。

  日本人は戦闘機とかミサイルによる攻撃ばかり考えてしまうけど、ロシア人や支那人、朝鮮人といった悪党は、熱戦の前に武器を使わない戦争を仕掛けてくる。防諜組織を持たない日本は、心理戦とか謀略作戦に殊のほか弱い。間抜けな国会議員と比べたら、一般女性の方がよっぽど察知能力に秀でている。愛人とホテルで過ごした亭主は、体に附いた彼女の香水を消すために、シャワーを浴びてから帰宅するが、それが却って「臭い香り」を放つことになる。帰宅した亭主を迎える女房は、「あれっ、ウチの石鹸とは違う臭いがする!」と気付く。ホテルの浴槽で「証拠隠滅」を図ったはずの亭主は、迂闊にもホテルのボディー・ソープを使ってしまうから、新たな証拠を身につけてしまうのだ。日本のカミさんたちは、ちょっとした「異変」に敏感だから、亭主の浮気を一瞬で見抜く。女房の第六感、恐るべし。日本政府もスパイを摘発するオバはん探偵を持てばいいのに。外国の手先が首相になってからでは手遅れだぞ。



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