無敵の太陽

主要マスメディアでは解説されない政治問題・文化・社会現象などを論評する。固定観念では分からない問題を黒木頼景が明確に論ずる。

アメリカ政治

戦争なら大歓迎 !! / 儲ける奴らと偏向メディア

平民の不幸と儲かる戦争

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(左 : ロッキード・マーティン社の戦闘機  /  左 : レイセオン社のミサイル)

  どこの国で勃発しても、「戦争」というのは悲惨な状態をもたらす。戦場に派遣される兵卒は、銃弾の嵐に曝され、精神を破壊される者もいるし、爆撃で手足を吹き飛ばされる者さえいる。硝煙が漂う大地には、黒焦げの遺体や人間の挽肉が散乱し、不運な将兵は鮮血の海に沈んで行く。戦争に巻き込まれた庶民も恐怖におののき、どうしていいのか判らない。憐れな民衆は命からがら逃げ惑うだけで、財産を失った平民は、悲嘆に暮れてディアスポラ(離散)の民となる。人間が難民になれば、ペットの猫ちゃんやワンちゃんも、住み慣れた我が家を離れる訳だから本当に可哀想だ。

  ところが、ごく一部の上流階級、つまり大御所となった政治家、回転ドアを通って高級官僚になる元政商、大口献金者として名を馳せる大富豪、財団を使って脱税に励む慈善家の偽善者、といった特権階級にとっては、痛くもかゆくもない単なるビジネス。ウクライナ人が何人死のうとも、ロシア人が極貧になろうとも、一向にお構いなし。彼らはエーゲ海でのクルージングや、山荘での狐狩りで忙しい。確かに、「虐殺された民間人」は酷い姿に変わっているが、そんなもんは電撃殺虫器で駆除された昆虫と同じだ。夏の時期、よく商店の入り口に殺虫灯が設置されるけど、青白く光る電灯の下には、無数の蛾や翅(は)アリが死んでいる。しかし、誰もその数を勘定しないだろう。翌朝になって、店の従業員が掃除するだけ。

  世界政治を動かすお金持ちにとって、平和な時代は退屈極まりないどころか、イライラするほど不愉快な状態だ。兵器会社には「在庫」が溜まる一方だし、新たな戦闘機やミサイルを開発する研究も進まなくなる。ところが、焦臭い紛争が勃発すれば万事OK。売れ残った兵器の在庫整理ができるし、大規模な戦争に発展すれば、部品メーカーやゼネコン、エネルギー会社といった関連産業も大喜びだ。米国における2022年度の防衛費は、連邦予算の10%を占める7千680億ドルである。一般のアメリカ人は「強いアメリカ」が大好きだから、膨大な軍事予算が計上されても反対する者は少ない。2020年の軍事費は7千780億ドルもあったし、2021年だって7千820億ドルもあったのだ。

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(左 : ドイツ陸軍の部隊   / 右 : アメリカ陸軍の兵士 )

  一方、日本人は貧弱な軍隊であれば平和が保てると思っている。1976年以来、日本政府は三木武夫の呪縛で雁字搦め。あの馬鹿げた「防衛費1%枠」とやらを守り続けてきたから、我が国の防衛産業は衰退の一途を辿り、ジリ貧の栄養失調で消滅寸前だ。SLBMを搭載した攻撃型原潜やステルス戦略爆撃機なんて、青空に浮かぶ飛行機雲と変わりがない。まるで、「ラ・フェラーリ」や「ランボルギーニ・アヴェンタドール」のプラモデルを作って、スーパーカーに乗る自分の姿を想像している少年のようだ。

  平和ボケの日本を尻目に、あのドイツでさえ防衛体制の梃子入れを決めたそうで、1千億ユーロの軍事費を使うそうだ。バイデン政権なんかは「ウクライナ支援」と称して64億ドルを使うそうだから、もう軍需産業はムーン・ウォークで欣喜雀躍。今年の中間選挙では、民衆党議員の勝手口に洗剤や缶詰じゃなく、ダンボール入りの札束が届けられるんじゃないか。ロシア軍がウクライナ侵攻を始めた2月24日以来、ロッキード・マーティン社(Lockheed Martin)やレイセオン社が買収したレイセオン・テクノロジーズ社(Raytheon Technologies)の株価は鰻登り。まぁ、携帯型ミサイルの「ジャヴェリ(Javelin)」が実戦配備され、あれだけ大々的に宣伝されたから、各国の政治指導者、とりわけアジアやアフリカの独裁者は興味津々だ。日本人もBSのTVショッピングで、電動ノコギリとか高圧洗浄器を目にすれば買いたくなるじゃないか。

  戦争で潤うのは軍需産業ばかりじゃない。兵器会社の経営者や株主、そこから献金をもらう政治家なども、美味しい蜜にありつける。ここでは、大手メーカーの株を持つ政治家を何人か紹介したい。(Kimberly Leonard, 'American-made Javelin and Stinger missiles are heading to Ukraine. At least 19 members of Congress personally invest in the defense contractors behind them', Business Insider, March 23, 2022.を参照。) 

<下院議員のリスト>

  <ジョン・ラザフォード(John Rutherford) 共和党 / フロリダ州選出>
  1,001ドルから15,000ドル相当のレイセオン社の株を保有。ラザフォード議員は下院調達委員会(House Appropriations Committee)に所属し、軍の建設部門や退役軍人業務に関する小委員会にも属している。彼は2月24日のツイートでこう述べた。「我々がウクライナで目にしているものは、攻撃的で邪悪な独裁者が引き起こした結果である」、「プーチンは正当な理由も無く主権国家を侵掠した。彼はその責任を取るべし。米国と我らの同盟国は最大限可能な制裁を加え、交渉のテーブルに一切何も置かないこと」と。

  <マジョリー・テイラー・グリーン(Majorie Taylor Greene)   共和党 / ジョージア州>
  1,001ドルから15,000ドル相当のロッキード・マーチン社の株を保有。彼女は2月22日のツイートで「戦争は我々のリーダーにとってビッグ・ビジネスだ」と述べた。

     <ダイアナ・ハーシュバーガー(Diana Harshbarger)   共和党 / テネシー州>
  亭主と共にレイセオン株15,000ドル相当を保有。

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(左 : ジョン・ラザフォード  / 中央 : マジョリー・テイラー・グリーン  / 右 : ダイアナ・ハーシュバーガー )

  <ロイス・フランケル(Lois Frankel) 民衆党 / フロリダ州> 
  15,000ドル相当のロッキード・マーティン株を保有。

  <シンディー・アクシン(Cynthia Axne)  民衆党 / アイオワ州>
  亭主のジョン・アクシン(John Axne)が1,001ドルから15,000ドル相当のロッキード・マーティン株を保有。

  <スティーヴ・コーエン(Steve Cohen) 民衆党 / テネシー州>
   15,001ドルから50,000ドル相当のレイセオン株

Lois Frankel 8Cynthia Axne 1Steve Cohen 1








(左 :  ロイス・フランケル   / 中央 : シンディー・アクシン   /  右 :  スティーヴ・コーエン)

  <ドワイト・エヴァンス(Dwight Evans) 民衆党 / ペンシルヴァニア州>
  15,001ドルから50,000ドル相当のユナイテッド・テクノロジーズ株を保有。

  <デイヴィッド・プライス(David Price) 民衆党 / ノース・カロライナ州>
 15,001ドルから50,000ドル相当のユナイテッド・テクノロジーズ株を保有。

  <アール・ブルメナウアー(Earl Blumenauer) 民衆党 / オレゴン州>
 夫人のマーガレット・カークパトリック(Margaret Kirkpatrick)が15,000相当のレイセオン株を保有。

  <ケヴィン・ハーン(Kevin Hern) 共和党 / オクラホマ州>
1,001ドルから15,000ドルに相当するレイセオンとロッキード・マーティン株を保有。

Dwight Evans 2David Price 01Earl Blumenauer 1Kevin Hern 2







( 左 : ドワイト・エヴァンス  / デイヴィッド・プライス  / アール・ブルメナウアー  /  右 : ケヴィン・ハーン )

<上院議員のリスト>

  <ジョン・ヒッケンルーパー(John Hickenlooper) 民衆党 / コロラド州>
  10万ドルから25万ドル相当のレイセオン株を保有。

  <シェルドン・ホワイトハウス(Sheldon Whitehouse) 民衆党 / ロード・アイランド州>
  1万5千ドルから5万ドル相当のロッキード・マーティン株、および5万ドルから10万ドル相当のレイセオン・テクノロジーズ株を保有。

  <スーザン・コリンズ 共和党 / メイン州>
  5万から10万ドル相当のユナイテッド・テクノロジー株。コリンズ議員は亭主のトマス・ダフロン(Thomas Daffron)と一緒に保有していたという。夫のトマスもワシントンD.C.で長年暮らしてきた政界の古株で、その経歴は華々しい。彼は「Jefferson Consulting Group」に属する政治コンサルタントであったし、アラスカ州選出の上院議員リサ・マーコウスキー(Lisa Murkowski)や、テネシー州選出のフレッド・トムプソン(Fred Thompson)上院議員、メイン州選出のウィリアム・コーエン(William Cohen)上院議員などの首席補佐官も務めていた。

  さらに、このベテラン・コンサルタントは、イリノイ州選出の上院議員チャールズ・パーシー(Charles Percy)のスピーチライターも務めていたし、ロバート・ドール(Robert Dole)上院議員の夫人で、サウス・カロライナ州選出の上院議員になったエリザベス・ドール(Elizabeth Dole)にも仕えていた。運輸長官や労働長官を歴任したエリザベスは、2000年の大統領選挙に出馬の意欲を示し、その知名度を利用して指名を狙ったが、資金不足に陥ってあえなく脱落。ダフロンはこの時、ドール夫人の選挙対策本部長を務めていた。

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(左 :  ジョン・ヒッケンルーパー /  シェルドン・ホワイトハウス /  スーザン・コリンズ  /  右 : トマス・ダフロン)

  <ロイ・ブラント(Roy Blunt) 共和党 / ミュズーリ州>
  ロビーストであるアビゲイル・パールマン(Abigail Perlman Blunt)夫人と共に、10万から25万相当のロッキード・マーティン株を保有。

  <シェリー・ムーア・キャピト(Shelley Moore Capito) 共和党 / ウェスト・ヴァージニア州>
  1,001ドルから15,000ドル相当のロッキード・マーティン株を保有。元金融業者で亭主のチャーリー・キャピト(Charlie Capito)は、1,001ドルから15,000ドル相当のユナイテッド・テクノロジー株を保有していた。

  <トム・カーパー(Thomas Richard Carper) 民衆党 / デラウェア州>
  彼は上院国土安全・政務委員会(Senate Committee on Homeland Security and Governmental Affairs)に所属している。夫人のマーサ・ステイシー(MarthaStacy)が1,001ドルから15,000ドル相当のロッキード・マーティ株を保有。

Roy Blunt 1Shelley Moore Capito  & Charlie Capito 1Tom Carper & Martha 1








(左  : ロイ・ブラント  / シェリー・ムーア・キャピト & チャーリー・キャピト / 右 : トム・カーパー  &マーサ・ステイシー)

    <ゲイリー・ピーターズ(Gary Peters) 民衆党 / ミシガン州>
  1,001ドルから15,000ドル相当のレイセオン株を保有。

  <トミー・テュバーヴィル(Thomas Tuberville) 共和党 / アラバマ州>
  彼は上院の軍事委員会に属する。以前持っていた軍事会社の株を売却したそうだが、その詳細を報告しておらず、「STOCK Act」法違反に問われてしまった。この法律は政治家や省庁に務める公務員が、非公開の情報を基に個人的利益を図ったり、インサイダー取引をしないよう取り締まると共に、金融取引を報告するよう義務づけている。民衆党のトム・スオジィ(Thomas Suozzi)下院議員と共和党のピート・セッションズ(Peter Sessions)下院議員も「STOCK Act」違反を問われているそうだ。

Gary Peters 1Tommy Tuberville 11Thomas Suozzi 03Pete Sessions 22







(左 : ゲイリー・ピーターズ  /  トミー・テュバーヴィル / トム・スオジィ  /  右 : ピート・セッションズ )

兵器産業とマスメディアを支配する巨大投資会社

  武器商人と昵懇の政治家は"いかがわしい"が、あの程度の株なら保有資産のごく一部だろう。連邦議員ともなれば、色々な業界と癒着するから、ロッキード・マーティン社やボーイング社と繋がっていても不思議じゃない。それよりも特筆すべきは、兵器会社の大株主になっている企業の方だ。先ず、極僅かの株しか持っていないが、社内の重役になっているインサイダーを紹介したい。

  2020年までCEOを務めていたマリリン・ヒューソン(Marillyn A. Hewson)。彼女は元々、電子システム部門で局長を務めていた人物で、「Systems Integration」の社長や「Global Sustainment for Lockheed Martin Aeronautics」の副社長を歴任している。

  元「ジェネラル・モータース」のCEOであったダニエル・アカーソン(Daniel F. Akerson)は、GMを辞めた2014年から、あの有名な「カーライル・グループ」に転職し、そこの副会長に就任した。また、彼は情報サービスを手掛ける「KrolLDiscovery」の会長も務めていた。

  ロッキード・マーティン社は、ミサイル・防衛システムを専門とする部門があり、この「Missile and Fire Control」で副社長を務めるのが、スコット・グリーン(Scott T. Greene)である。

Marillyn Hewson 2Daniel Akerson 2Scott Greene 4  









(左 :  マリリン・ヒューソン  / 中央 : ダニエル・アカーソン  / 右 : スコット・グリーン  )

  上記の三人よりも、遙かに重要なのは、資産運用を手掛ける投資会社の「ヴァンガード・グループ(Vanguard Group Inc.)」や「ブラック・ロック社(BlackRock Inc.)」の方である。前者はロッキード・マーティン社の大株主で、全体の7.9%を占める2千200万株を所有し、後者は6.2%に当たる1千720万株を所有しているそうだ。「ブラック・ロック」を率いる創設者のラリー・フィンクに関しては、以前、当ブログで紹介したので、過去記事の方を読んでもらいたい。(過去記事A

  この2社以外でロッキード・マーティンの大株主になっているのは、資産運用会社の「State Street Corp」で、全体の約15%を占める4千220万株を持っている。この企業はドイツ銀行の証券部門や「Investors Bank & Trust」を買収して勢力を増している。以前、ここの会長を務めていたジョセフ・フーリー(Joseph Hooley)は、元々、ボストン連邦準備銀行(FRB of Boston)出身の金融業者で、「ステート・ストリート」を辞めた後、石油会社大手の「エクソン・モービル(Exxon Mobil)」の重役に就任している。

  現在は元CEOのロナルド・オハンリー(Ronald O'Hanley)が、「ステイト・ストリート」の会長になっている。2018年、同社は資産運用や幅広い投資事業を行う大手企業、「Charles River Development」を26億ドルで買収した。会社の総帥となったオハンリーの経歴は華々しく、「Fidelity Investment」や「Bank of New York Mellon」、「マッキンゼー(McKinsey & Company)」を渡り歩き、著名な「ステイト・ストリート」にやって来たのだ。

  同じ「マッキンゼー」出身でも、自民党の茂木敏充とは大違いだ。いくら有名なコンサルティング会社に雇われたからといっても、どうせ日本からの下っ端社員だから、あの程度なんだろう。だいたい、茂木は他人様に助言出来る立場なのか? 元々は自民党員だったのに、新党ブームに目が眩んで細川護熙と小池百合子の「日本新党」から出馬した。当時は新党ブームで世間が沸いていたから、新人でもベテラン議員を破ることが出来た。しかし、日本新党が解散すると、無所属じゃ不安だから自民党に復党する。ただし、「出戻り」の身分だから、陣笠議員と同じく雑巾がけの毎日。それでも、ようやく平成研究会の会長になれたから幸せなのかも。ところが、肝心要の竹下派を束ねる親分になれない。人望と能力に欠ける奴は、いくら経歴が凄くても駄馬と同じだ。マッキンゼーの日本支社から、誰か有能なコンサルタントを呼んだ方がいいんじゃないか。

大手メディアを支配する金融業者

  この巨大企業2社が直接、戦争を企画して策略を実行したとは考えづらいが、今回のウクライナ戦争で大きな役割を果たしたのではないか、と思える節がある。なぜなら、この2社は主流メディアを牛耳っているからだ。「ブラック・ロック」と「ヴァンガード」は、「タイム・ワーナー(Time Warner)」、「コムキャスト(Comcast)」、「ディズニー(Disney)」、「ニューズ・コープ(News Corp)」の主要株主となっているから、実質的に米国メディアの90%以上を支配している計算になる。

Stephen Jay Ross 112(左  / スティーヴ・ジェイ・ロス )
  例えば、「タイム・ワーナー」はCNNやHBO、TNT、といったテレビ局に加え、世界的に有名な老舗雑誌の「Time」誌や 「Life」誌まで傘下に収めている。この巨大メディア・グループを創設したのは、テレビ業界でその名を轟かし、「Warner Communications」の社長や会長を務めていたスティーヴ・ジェイ・ロス(Steven Jay Ross / 本名 : Rechnitz)であった。元々、「ワーナー・ブラザーズ」は、ポーランドからやって来たユダヤ移民の息子達、つまり、ハリー、アルバート、サム、ジャックのワーナー(Wonskolaser / イギリス風に"Warner"と改名)兄弟が始めた会社だから当然だ。

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( 左 : ワーナー家の四兄弟 /  右 :  リース・ションフェルド)

  一般的に、CNNはジェーン・フォンダの亭主となったテッド・ターナー(Robert Edward Turner / 非ユダヤ人)が創設した、と思われているが、彼には力強い相棒がいて、ユダヤ人のリース・ションフェルド(Maurice Wolfe Reese Schonfeld)が共同創業者になっていた。「CNN Worldwide」の社長席には、偏向報道をコソコソ命じるジェフ・ザッカー(Jeffrey A. Zucker)がふんぞり返っているけど、このユダヤ人は「Warner Media News & Sports」の会長職も務めている。過去を振り返ってみても、CNNにはユダヤ人の重役や制作スタッフが多く、元社長のジョナサン・クライン(Jonathan Klein)やバートン・ラインハルト(Burton Reinhardt)もユダヤ人であった。

Jeff Zucker 5Burton Reinhardt 8Jonathan Klein 1








(左 : ジェフ・ザッカー /  中央 : バートン・ラインハルト  / 右 :  ジョナサン・クライン)

     「Viacom(ヴァイアコム)」もメディア界の巨人で、創業者はユダヤ人の大御所たるサムナー・レッドストーン(Sumner Redstone)、本名「サムナー・ロスシュタイン(Sumner Murray Rothstein)」だ。彼が築き上げた「ヴァイアコム帝國」は、「MTV」「Spike」「Commedy Central」「 BET」に加え、「パラマウント映画」まで傘下に収めていた。しかし、「Viacom」はCBSと合併し、「Viacom CBS」となった。さらに「Viacom CBS」は増資を行って巨大化すると、2022年に社名を「Paramount Global」と改名した。ただし、ここの親会社は、劇場経営を手掛ける「National Amusements」で、社長と会長を兼務するのは、亡くなったサムナー・レッドストーンの娘であるシャリ・レッドストーン(Shari Ellin Redstone)である。

Sumner Redstone 111Shari Redstone 5Robert Mark Bakish 2Philippe Dauman 199







(左 :サムナー・レッドストーン / シャリ・レッドストーン  / ボブ・バキッシュ  /  右 : フィリップ・ドーマン)

 この帝國にもユダヤ人がウジャウジャいて、「Viacome」にはブルガリア系ユダヤ人のCEOのボブ・バキッシュ(Robert Mark Bakish)がいたし、元CEOのフィリップ・ドーマン(Philippe Pierre Dauman)もユダヤ人であった。以前、パラマウント・ピクチャーズのCEOを務めていたブラッド・グレイ(Brad Grey)も、これまたユダヤ人。「Paramount Global」の傘下には、数多くの人気ドラマを輩出する「ショウタイム(Showtime Newtworks)」もあり、CEOを務めていたデイヴィッド・ネヴィンズ(David Nevins)もユダヤ人であった。「パラマウント・ピクチャーズ」のCEOを経て、有料チャンネルの「Nickelodeon」社長に就任したブライアン・ロビンズ(Brian Robbins)もユダヤ人である。ただし、彼のラストネームは藝名で、本名はユダヤ風の「レヴァイン(Levine)」だ。

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( 左 : ブラッド・グレイ  /  中央 : デイヴィッド・ネヴィンズ  / 右 : ブライアン・ロビンズ )

  日本ではあまり馴染みがないけど、「Comcast」も大手メディア・グループで、「NBC Universal」を傘下に収めている。それゆえ、三大ネットワークの「NBC」を始め、「USA Network」、「NBC Sports」、SFドラマを専門にする「Syfy」、アニメ映画で知られている「ドリーム・ワークス(Dream Works)」、映画会社の「ユニヴァーサル・スタジオ(Universal Studio)」が系列に入っている。

   米国のメディア界はユダヤ人の天下で、「コムキャスト」を成長させた創業者のラルフ・ロバーツ(Ralph J. Roberts)もユダヤ人であった。このラルフが亡くなると、息子のブライアン・ロバーツ(Brian Roberts)が親爺の後釜になっていた。ラルフの女房でブライアンの母親は、女優を経て慈善活動家になったスザンヌ・ロバーツ(Suzanne Roberts)だ。スザンヌの旧姓は「フレイシャー(Fleisher)」で、彼女もユダヤ人。ロバーツ夫人はNBCの冠番組『Seeking Solution with Suzanne』で司会を務めたが、大御所の女房ならどんな番組でも主役になれる。ところが、「女優」としては成功しなかった。やはり、人気はお金で買えないのかもねぇ~。 

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(左 : ラルフ・ロバーツ / スザンヌ・ロバーツ  /  右 : ブライアン・ロバーツ )

  ついでに言えば、NBCもユダヤ人が支配するメディアで、NBCの前身である「RCA(Radio Corporation of America)」は、帝政ロシア下のベラルーシから流れてきたユダヤ移民、アブラハム・サーノア(Abraham Sarnoff)の倅(せがれ)である、デイヴィッド・サーノフ(David Sarnoff)が築いたメディア帝国だ。「ワーナー・ブラザーズ」のCEOになったアン・マリー・サーノフ(Ann Marie Sarnoff)は、サーノフ家の一員であるリチャード・サーノフ(Richard Sarnoff)と結婚したから、社長になれたのかも知れない。リチャードはNBCじゃなく、大手出版社の「ランダム・ハウス(Random House)」の社長を務めていた。

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(左 :  デイヴィッド・サーノフ  / 中央 : リチャード・サーノフ  /  右 : アン・マリー・サーノフ )

  RCAは1965年に「ランダム・ハウス」を買収したが、1980年に「Advance Publicaions」へ売却してしまった。リチャードが総帥になれたのは、昔の誼(よしみ)があったからかも知れない。講談社と提携した「ランダム・ハウス」も、やはりユダヤ系企業で、創業者であるベネット・サーフ(Bennett Cerf)とドナルド・クロパー(Donald Simon Klopfer)は共にユダヤ人であった。ちなみに、リチャードサーノフと結婚したアン・マリーの旧姓は「Misiaszek」というから、たぶんポーランド系アメリカ人であろう。ちなみに、音楽部門の「RCA レコード(RCA Records)」は、1975年に「日本ビクター」と合併し、「RCA ビクター」になったけど、令和の高校生は知らないだろうなぁ~。今では「ドーナツ盤」や「LPレコード」すら触ったことがない子供がいるんだから。

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  話を戻す。「ウォルト・ディズニー社」もユダヤ人に乗っ取られた巨大企業である。創業者のウォルト・ディズニーが、現在のディズニー社を見たらビックリするどころか、怒りに震えて金属バットを振り回すぞ。子供に夢を与える西洋人のファンタジーなのに、LGBTや人種混淆のイデオロギーで汚染されているんだから。

  ディズニー・ワールドが醜い銭ゲバ・ワールドになってしまったのは、ユダヤ人が経営陣になってしまったからだ。会長のボブ・アイガー(Robert Allen Iger)は、前任者のマイケル・アイズナー(Michael Eisner)と同じくユダヤ人。彼が率いる牙城には、「ディズニー・チャンネル」や「ディズニー映画」はもちろんのこと、『スターウォーズ』の制作会社である「ルーカスフィルム(Lucasfilm)」や「マーヴェル・コミック」の映画を手掛ける「Marvel Entertainment」が連なっている。さらに、スポーツ中継でお馴染みの「ESPN」、『サンズ・オブ・アナーキー』や『ジ・アメリカンズ』を放送した「FX Network」、「A&E Networks」「ヒストリー・チャンネル」で有名な「History」、ドキュメンタリー番組が定評の「National Geographic TV」もグループ傘下に収まっている。

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(左 : ゲイ・カップルを歓迎するウォルト・ディズニー社  / 右 :「ヨーロッパ風」から「アフリカ風」に変貌したディズニー世界 )

  ルパード・マードックが築いた「ニューズ・コープ」は、FOXテレビが中核になっている。ここは「20世紀フォックス」だけじゃなく、活字業界にも食指を伸ばしていた。米国の新聞だと「Wall Street Journal」や「New York Post」、英国だと「The Times 」や「The Sun」が傘下となっている。出版業界大手の「Harper Collins」も抱えており、その他の資産としては、人気雑誌の「GQ」や「 Vogue」がグループの一員となっている。

  一般の日本人は、個別のテレビ局や新聞社に目を奪われているが、もしグループ企業のピラミッド構造を調査し、社長や会長、重役、株主の人脈を把握すれば、その全体像に驚いてしまうだろう。こんな仕組であれば、情報統制も楽なはずで、極少数の経営陣が談合すれば、大統領選挙の報道規制や、ワクチン接種の推進キャンペーン、戦争報道における世論誘導など造作もない。大衆は自分の判断力を持たないから、本能的に有名な会社や政府を信じることで"心の安らぎ"を得ようとする。彼らはテレビや新聞でしか情報を耳にしないから、CNNやBBCがどんなに偏向報道を繰り返しても疑問に感じることはない。もし、マスコミの論調に反する者を目にしたら、逆に奇人変人の類いか、低学歴の陰謀論者と思ってしまうのだ。

  軍需産業に投資する者が、直接、合衆国政府に働きかけ、戦争を画策するとは思えない。むしろ、株主になる者は、多額の利益が期待できるから投資をしただけで、ロッキード・マーティンやレイセオンは優良企業と思われただけだ。おそらく、国際金融業者と合衆国政府を繋ぐブローカーが存在するはずで、戦争で儲ける闇組織は有力な子分をホワイトハウスや国務省、財務省、CIA、NSA、ペンタゴン、シンクタンクに送っているのかも知れない。そして、この中に戦争を企画・立案して政府に売り込む民間の軍事会社があって、ここが戦争の脚本や傭兵を派遣する請負業者になっているのかも知れないぞ。

  傭兵会社は戦争で大儲けすれば、その一部を政治家に献金するし、キックバックをもらった議員は更なる見返りを求めて戦争を煽る。しかも、「強いアメリカ」と「正義の十字軍」を標榜すれば、共犯者のマスコミがスポット・ライトを当ててくれるから鬼に金棒だ。何しろ、無料で全米放送のTV宣伝となるわけだから、再選を控えた議員には追い風の旋風となる。あの老いぼれバイデンですら、支持率が上がったというから、ここでウクライナ戦争が終結したら大変だ。長期化しないと民衆党は選挙に勝てない。

  大統領になったら、戦争の一つや二つ起こさなきゃ損だ。レーガン大統領と違って、ジョージ・H・W・ブッシュは選挙に弱かったが、湾岸戦争を仕組んで支持率を伸ばした。彼のバカ息子であるジョージ・Wも、アル中の碌でなしだったが、9/11テロが起こって一躍ヒーローになった。アメリカ人は戦争となれば結束を強め、指導者を持ち上げるから、有事の大統領は何でも出来る。でも、ジョー・バイデンだと、人気は続かないだろう。物価高で怒り狂った国民が、生卵じゃなく茹卵を投げつけるかも知れないぞ。

  これからウクライナ情勢がどうなるのか判らないけど、もしかすると新たな冷戦構造が出来上がって、待ちに待った第三次世界大戦が勃発するかも知れない。11月にやって来るアメリカの中間選挙には、まだ相当長い時間があるから、別の事件(計画)が起きる可能性もある。だいたい、過去を振り返ると"おかしな事"ばかりだ。例えば、9/11事件は不可解な現象が多すぎるし、イラクには大量破壊兵器が無かった。でも、対テロ戦争は長期化し、戦場はアフガニスタンにまで拡大した。

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(左 :「謎」が満載の9/11テロ  /  右 : 中東アジアへ派遣されるアメリカ兵)

  その間、「ISIS」なるテロ集団が跋扈したが、なぜか憎いはずのイスラエルを攻撃せず、イスラム教国のシリアをターゲットにするんだから、実に奇妙だ。それに、自爆テロを得意とするムスリム戦士なのに、武漢ウイルスが流行すると急にテロ活動を停止した。本来なら、ワクチン接種を受けに集まる群衆を目がけてトラックで突っ込むとか、マスクを着用する人々の列に潜り込んで自爆するとか、色々な大量殺戮が考えられたのに、なぜか絶好のチャンスを逃していた。もしかすると、テロ組織は製薬会社に忖度したのかも知れない。もし、テロ資金をくれるスポンサーとワクチンを推進する勢力が同じ人々だったら笑ってしまうぞ。

  とにかく、大金を使ってジョー・バイデンを大統領にした連中は、既に経費を回収しているんじゃないか。後は、どのようにしてバイデンを"ポイ捨て"にするかだが、これも幾つかの台本が準備されているんだろうなぁ~。アメリカの闇組織には、人々をアッと言わせる奇術師がいるし、驚愕のストーリーを考案する脚本家、プロ棋士みたいに先の先を読む戦略家が雇われている。となれば、サスペンス・ドラマさながらの計画もあるんじゃないか。

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(左 :マンディーに指令を与えるマックス   /  右 : パーマー大統領と握手するマンディー)

  さすがに、Fox TVの『24』みたいなサスペンスにはないと思うけど、アメリカ人は劇的なフィナーレを好むから、意外な「ジョー・バイデンの最期」が企画されているのかも。そう言えば、『24』シーズン2の最終話で、デイヴッド・パーマー大統領は、一般人のフリをして近づいてきた「マンディー」(女優のMia Kirshner)と握手をし、その直後、崩れるように倒れてしまう。実は、この「マンディー」というのは、武器商人のマックスに雇われたプロの殺し屋で、彼女は透明な膜(サランラップみたいなゴム)を右手に貼り付け、その膜には猛毒の化学薬品が塗ってあった。彼女と握手をしたパーマー大統領は、急に目眩がして意識不明の重体となる。バイデンにどんな結末が訪れるのか判らないけど、彼のフィナーレは暗殺じゃなく、痴呆症による強制辞任かもね。
 


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大統領選挙は「不正」だった?

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  ジョー・バイデンが「ホワイトハウスの主人」、あるいは「養老院(介護施設)」と化した白亜館の入居者になってから、約5ヶ月が経とうとしている。しかし、彼の支持率は依然として低く、とても8千万票以上を獲得した「稀代の大統領」とは思えない。しかも、隠している痴呆症が悪化したのか、何かと物忘れが酷く、2月や3月になっても側近は記者会見を許さなかった。でも、さすがに「質疑応答無し」の蜜月期間とはいかないので、やむを得ず記者会見を開かせたが、バイデンの答えはシドロモドロ。痺れを切らした記者から普通の質問をされても、その趣旨が理解できず、豆鉄砲をくらった鳩みたいに「それ何?」と聞き返す始末。

  日本人でも呆れてしまうが、次々と大統領令にサインするバイデンは、自分が“何”に署名しているのか判らない。このお爺ちゃんは事態の把握ができず、ただ背後に控えるカマラ・ハリスから、「はい、これにサインして!」と催促されて筆を執るだけ。しかも、その「署名」すらホンモノかどうか怪しく、幾つかは「ジル夫人が代筆したんじゃないか」と思えるような「疑惑の署名」であった。とりわけ心配なのが、バイデンの独り言である。操り人形にしかみえないこの老人は、途方に暮れた表情で、「私はいったい何に署名しているんだ?」と呟いていた。

Joe Biden 62Kamala Harris 002








(左 : 痴呆症が進行するジョー・バイデン  / 右 : 大統領への昇格を待ち望むカマラ・ハリス )

  我々は外人なので“対岸の火事”を見るように楽しんでいるが、一連の報道を耳にするアメリカ国民は心配で堪らないだろう。多少なりとも“愛国心”を持ち合わせているアメリカ人なら、「おい、こいつヤバいんじゃなか?」と不安になるし、「こんな耄碌ジジイが四年間も大統領職にとどまるのか !」と天を仰いでしまうはずだ。在日米軍の将兵だって、CBSやCNNに惑わされず、インターネットで様々な情報を得ているから、「いくらなんでも、こんな奴が最高司令官なんて・・・・、そんな嘘だろう~」とぼやく。もしかすると、トランプに入れたはずの票が、ある“仕掛け”でバイデン票に移っていたかも知れないので、不満を募らせるアメリカ人は少なくない。

  こうした中、共和党系と思われる124名の退役軍人が、バイデンを批判する書簡を公開し、それを一部の保守派国民が取り上げたので、日本でも“静かな話題”となった。この公開書簡(Open Letter from Retired Generals and Admirals)を主導したのは、「Flag Officers 4 America」という団体で、主に高位高官の退役軍人で構成されているようだ。彼らは2020年の大統領選挙に強い疑念を抱き、「何らかの不正があったんじゃないか?」と怪しんでいる。合衆国憲法(Constitution)を守りたいと欲する元軍人は、民衆党による社会主義的政策に懸念を抱き、アメリカの國體(constitution)を浸蝕するマルクス主義思想に危機感を覚えている。書簡の中では「民衆党の議会と現政権のもとで、我が国は社会主義とマルキスト型の暴君政治へと左旋回している」と述べられていた。

Peter Feaver 1(左  / ピーター・フィーヴァー )
  ところが、この退役軍人達、しかも将校クラスの元高級軍人が連名で政治行動を起こした事に激しく異を唱えた学者がいた。それがデューク大学で政治学を教えるピーター・フィーヴァー(Peter Feaver)教授で、彼は「軍民関係(civil military relations)」の専門家である。フィーヴァー教授によれば、退役したとはいえ、将軍や提督クラスの軍人が大統領選挙の結果に疑問を投げかけ、その正統性に異議を唱えることは言語道断らしい。彼はジウィリアン・コントロールの原則を蔑ろにした、と署名者を批判している。フィーヴァー教授は、未だに鳴り止まない「陰謀論」に飽き飽きしているようだ。彼は「投票箱でトランプが負けたのは選挙不正によるもの」といった誤った主張を高名な政治家が堂々と表明し、退役軍人の一部もそれに同調し、「同じ神話」を信じ込んでいる、と嘆く。(Peter Feaver, "The military revolt against Joe Biden", Foreign Policy, May 12, 2021.)

  フィーヴァー教授によれば、この公開書簡はインターネットにある怪しげなサイトによく見られるもの、あるいは共和党にいる最悪な連中の戯言(たわごと)に過ぎず、党派的かつ誇張された、無茶苦茶な言いがかり(dog's breakfast)であるという。彼ら(署名した軍人)は2020年の大統領選挙が不正なもの、すなわち正統性の無い選挙とは明言していないが、それに近い見解を持っているそうだ。さらに、この退役軍人はバイデンの精神的および肉体的な状態に対しても危機感を持っている。この点については、外国人である日本人にも理解できるだろう。

  軍人の立場を弁えない署名者に怒りを覚えたフィーヴァー教授は、この書簡を“党派的”なものと見なしている。つまり、こんな書状は古参(高齢)の共和党員連中が叫ぶ愚論で、考慮に値しないものである、と。フィヴァー教授は原理原則を忘れた高齢軍人に疑問を抱き、「有権者が自由で公正な選挙でバイデンを選び、彼らが贔屓にするトランプじゃないから怒っているんじゃないか!?」、と推測した。軍民関係の専門家を自負するフィーヴァー教授は、特殊な軍人を非難する一方で、多数派の軍人を擁護している。確かに、ある種の軍人のは誤った見解を抱いているが、大多数の軍人は書簡に署名した軍人達よりも真摯で、名誉を大切にする人々である、と。要するに、『フォーリン・ポリシー』に投稿したフィーヴァー教授は、これらの軍人は合衆国憲法に忠誠を誓った人々なのに、彼らは自らの行動で自らを貶め、シヴィリアン・コントロールの原則を蹂躙している、と言いたいのだろう。

  日本では馬渕睦夫大使がYouTube番組でこの公開書簡を取り上げ、バイデン政権に対する批判が軍人の中でも起こっていると述べていた。一方、『アメリカ通信』を放送する奥山真司も、この書簡を話題にしていたが、彼はフィーヴァー教授の記事を紹介し、「とんでもない軍人が騒いでいる」と解説していた。奥山氏によると、書簡に共鳴した元軍人は、みんな高齢の白人男性ばかりであるらしい。「地政学者」を名乗る奥山氏は、軍人が政権批判を始め、軍民関係の原則を崩したら駄目だろう、という意見である。彼はこうした「80代のお爺ちゃん等」を「アホか !」と愚弄し、「軍人が自ら憲法の原則をぶち壊してどうするんだ ! こんなの有り得ない!」と叱っていたが、筆者は奥山氏に賛成できない。

  確かに、軍人が政治に容喙することは原則上、「禁止された行為」であり、立憲政治においては「御法度」である。「自分が嫌う政治家が最高司令官(大統領)になったから反対 !」というのは、軍人支配の独裁国と同じで承知できない。奥山氏は中南米の軍事独裁政権を引き合いに出し、正常で普通のアメリカ軍人は、あんな劣等国を蔑んでいるという。アメリカの軍人は政治に関わらないことを肝に銘じているから、奥山氏が知っている軍人の中には、選挙になっても中立性を守るため、敢えて投票しない軍人もいるそうだ。ただし、これはおかしな理屈で、軍人が「有権者」として特定の候補者に投票しても、シヴィリアン・コントロールの崩壊には繋がらないと筆者は思う。問題なのは、軍隊が「愛国心」や「国防」の大義名分で政治に介入し、軍人の意見で国家を動かしてしまうことだ。

  奥山氏は視聴者に向けて、「フィーヴァー教授は軍民関係専門家の中で著名な権威者ですよぉ~」と紹介し、それとなく自分の見解をみんなに刷り込もうとしているが、フィーヴァー教授の投稿記事を読めば、「なぁ~んだ、リベラル学者の原則論かよぉ~」と判るはず。しかし、大抵の日本人は専門家の“経歴”や“肩書”、学会での“評判”などに感服してしまうから、フィーヴァー教授がどんな立場で記事を書いたのか確かめない。YouTube番組をボケ~と観るだけで、一端の「知識人」や「教養人」になったつもりの一般人は、「軍民関係(civil military)」なんて勉強したこともないし、学校の先生から軍国主義や軍人支配の恐ろしさを叩き込まれ、「文民優位(civilian supremacy)」こそがデモクラシーの要諦とわめく。権威主義に凝り固まった日本人ほど、アメリカの学者にひれ伏し、「高学歴の著名人が言うことだから本当だ !」と鵜呑みにすることが多い。奥山氏のファンは「さぁ~すが、奥山先生は凄いなぁぁ~」と感心するが、彼らの中でフィーヴァー教授の『Armed Servants』(Harvard Univ. Press, 2003)を読んだ人や軍民関係論を勉強した人は、いったい何人いるんだ?

  筆者は地政学の素人だけど、奥山氏の「御意見」にひれ伏すことはない。なぜなら、学生時代にちょっとだけ軍民関係を勉強したことがあるので、デモクラシーにおける軍隊の位置づけなら理解できるし、シカゴ大学のモリス・ジャノウィッツ(Morris Janowitz)や、メリーランド大学のデイヴィッド・シーガル(David R. Segal)、ロヨラ大学のジョン・アレン・ウィリアムズ(John Allen Williams)、ノースウェスタン大学のチャールズ・モスコス(Charles Moskos)といった専門家は馴染みの学者である。一般人でも亡くなったサミュエル・ハンチントン(Samuel Huntington)は知っているだろう。彼も軍民関係の専門家で、若い頃には『The Soldier and the State』という本を書いている。この著作には日本語訳もあるので、図書館で見かけた人もいるんじゃないか。それでも、日本の大学生で軍事を勉強し、図書館で『Armed Forces and Society』といったミリタリー雑誌を読んでいる人は、相当なオタク族だけだ。普通の大学図書館だと購入すらしていないんだから、一般の日本人が目にすることは滅多にない。そう言えば、政治学者の小室直樹先生は生前、日本の大学で軍事学が欠如している惨状を嘆いていた。会津出身の元軍国少年にしたら、軍事音痴の学生を輩出する東大には嫌気が差していたんじゃないか。

Morris Janowitz 1David Segal 1John Allen Williams 2Samuel Huntington 1







(左 : モリス・ジャノウィッツ  /  デイヴィッド・シーガル / ジョン・アレン・ウィリアムズ  / 右 : サミュエル・ハンチントン )

  筆者も軍人が政治に容喙することには反対である。イスラエルを建国し、後に首相となったダビッド・ベン=グリオン(David Ben=Gurion)が述べたように、軍人(軍部)は行政府の腕に過ぎない。「シヴィリアン・コントロール(文民統制)」とか「シヴィリアン・スプレマシー(政治家の優位)」がなぜ大切なのかと言えば、それは政治家の方が大所高所からの判断を下せるからで、理論的には国家の命運を決定する立場にあるからだ。軍人は部隊の編成や派遣、兵站の手配、軍事作戦の立案から実行などに長けていれば良い。しかし、政治家は国家全体のバランスを考えねばならず、現実の経済を左右する財政や金融に通じ、微妙な駆け引きが必要とされる内政・外政に加え、国民感情への配慮とか戦争の後始末などを考慮して政治的判断を下さねばならないから、政治的責任を取らない軍人よりも大変だ。ドイツ帝国で名を馳せた参謀総長のヘルムート・モルトケと鉄血宰相と呼ばれたオットー・フォン・ビスマルクの関係を思い出せば判るだろう。

  それでは、なぜ「アホ」でもない高級軍人が現政権に叛旗を翻したのか? 簡単に言えば、「あまりにも酷すぎるから」だ。日本の庶民にもバレたように、去年の大統領選挙は稀にみる八百長選挙だった。ビックリするほど異常な事が多すぎて、「本当の出来事なのか?」と疑ってしまう程だ。まぁ、アメリカの選挙だから、多少のイカサマなら目を瞑(つむ)ってもいいけど、電子投票機器を使った組織的不正に加えて、幽霊が書いた郵送投票といったインチキが目立ちすぎたのだ。もし、「不正が無かった」のであれば、どうして民衆党は激戦州での再集計に異議を唱えるのか? ペンシルヴァニア州やミシガン州、ウィスコンシン州の民衆党員は、全ての投票用紙を揃え、一つ残らずデータを第三者機関に渡して、科学的な検査を許すべきだろう。それなのに、なぜ妨害するのか?

  例えば、アリゾナ州のマリコパ郡では共和党の要請により再集計が行われるようになったが、当初、民衆党は百人近い弁護士を投入して再検査の妨害を画策した。しかも、電子投票機器に“いかがわしい点”があるのか、必死でサーバーやデータ記録の消去に努め、意地でも見せないという態度を取っていた。日本人には信じられないけど、アリゾナ州の民衆党員は投票結果の再確認を恐れていたのか、投票機器の科学的検証を妨害したのだ。しかも、機械を審査会に引き渡す直前、「手違い」という口実で保存すべきデータを消去したというから前代未聞である。(Tom Pappert,  "Maricopa County Deleted Election Databases Before Equipment Was Delivered To Arizona Auditors", National File, May 13, 2021) 幸い、データの修復がなされたから良かったけど、不安な点は他にも色々とある。例えば、大統領選挙の時、各激戦州では不審なIT業者が奇妙なアップデートを行ったので、オリジナルのデータが全部残っているのかどうか分からない。さらに驚くのは、投票機器が検査業者によって秘密裏にルーターに接続されていたいうから、インターネットに繋がっていた可能性もあるのだ。一般国民は「まさか !」と思ってしまうけど、アメリカでは何でも起こり得る。

  もう一つの激戦州であるジョージア州は悪の巣窟で、信じられない「事件」の連続だった。例えば、投票用紙は選挙後22ヶ月間保存されねばならないのに、一部の投票用紙は選挙直後に「組織的な抹殺」に廻され、証拠隠滅にされたらしい。何と、不審な投票用紙は軍隊で使うシュレッダーにかけられ、「粉々」にされてしまったのだ。通常のシュレッダーなら細長い紙となり、時間を掛けて貼り合わせれば、オリジナルを復元できるが、紙吹雪みたいにされたら不可能である。この粉砕作業はかなり組織的で、2020年12月30日の夜10時頃、搬送業者が大量の投票用紙をトラックで運び出したというから凄い。佐川急便も真っ青だ。以前、当ブログで紹介した通り、印刷技術の専門家であるピュリッツァー氏の検査により、電子投票機器が外部と繋がっており、容易にハッキングされることが判明した。この衝撃的事実を耳にしたアメリカ国民は、共和党員じゃなくても愕然としたばずだ。

Harrison Deal & Lucy Kemp 01(左  / ハリソン・ディールと恋人のルーシー・ケンプ )
  もう一つ言えば、ケンプ州知事の娘と恋人関係にあったハリソン・ディールは、謎の交通事故で死亡した。この一件は厳密な捜査もなく有耶無耶にされてしまったけど、クルマの衝突で大爆発が起き、車体が黒焦げになるなんて前代未聞である。まるでイラクの戦場を匂わせる事故現場で、「榴弾砲でも撃ち込まれたのか?」と勘違いしそうな惨状だった。最近ではフルトン郡にある保管庫に何者かが侵入し、投票用紙が保管されている倉庫の扉が開けられたという。幸い、アラームが鳴り響いたから窃盗事件にはならなかったが、もしかすると、何からの破壊工作だったのかも知れない。(Mark Niesse, "Alarm triggers concerns about ballot security at Fulton warehouse", The Atlanta Journal-Constitution, June 1, 2021) また驚く事に、倉庫の扉は重さが75ポンドから100ポンドの鉄製であったらしいが、そこには鍵が掛かっておらず、保安官が2時間ほど留守にした隙を狙っての犯行であったという。裁判所の命令で保安官は24時間の監視を義務づけられていたが、「大丈夫だろう」と油断したため、犯人が侵入するという事態を招いてしまった。

  大統領選挙に関しては様々な疑問や問題点が見られるが、主流メディアはそれらを悉く「根拠無き陰謀論」と斥け、馬鹿にしながら否定していた。しかし、こんな選挙を目にすれば、軍人じゃなくても「おかしい、何か臭うぞ !」と思うはずだ。筆者は「軍人の公開書簡だから重要だ」とは主張しないが、彼らが立ち上がった動機については理解できる。確かに、政権に対する不満は共和党や民衆党を問わず、他の軍人や民間人にもたくさんあるから、トランプ支持者の退役軍人だけが「注目に値する」という訳じゃない。ただ、「高齢の退役軍人だから、敢えて職業軍人の立場を逸脱し、選挙の不正を訴えたんじゃないのか?」と思えてしまうのだ。

  体を張って祖国を守る軍人は、ダラ~と生きている一般人よりも、国家の命運に敏感となる。やはり、国家の背骨となる軍隊に生涯を捧げる者は、自分と国家を重ね合わせることが多いし、イカサマに対する反応も本能的に鋭い。もし、去年の大統領選挙が憲法通りに行われていたら、バイデンに反撥する退役軍人も素直に従っていただろう。しかし、2020年の選挙はあまりにも異常だ。これは異国で観察する日本人にも判る。おそらく、多くの若い士官や壮年の将校だって、舞台裏で不正が行われていたことに気づいているだろう。とりわけ、諜報機関や特殊部隊に所属する軍人なら、「国内でブラック・オペレーション(極秘作戦)かよぉ~」とぼやいたんじゃないか? 彼らは諸外国で謀略工作に携わっているから、水面下での八百長に詳しい。

  フィーヴァー教授や奥山氏は連帯署名の退役軍人を咎めるが、インチキ無しの選挙で選ばれた大統領なら、どんなに左翼的な人物でも、あるいは、憤慨するほどのリベラル政策を提案しても、「政治家の行為だからしょうがない」と諦め、沈黙を守って服従するだろう。しかし、不正選挙となれば話は別だ。老い先短い80歳前後の元軍人なら我慢できない。彼らは現役軍人とは違って、出世の野心や恩給の心配は無いから、批判されるのを覚悟で異議を表明できる。何しろ、片足を棺桶に突っ込んでいるオヤジ連中だから、「言いたいことを言って死にたい」と思ってもおかしくはない。

  奥山氏は「文民の優位」という原則があるので、不正があっても声を上げずに、軍人の名誉を守って死んで行くべきだ、と考えている。しかし、共和政の精神を考え、気骨のある軍人なら、あのバイデンに服従したまま「あの世行き」なんて“真っ平御免”だろう。死ぬ前に一矢報いて討ち死に、という選択肢だってあるはず。説明すると長くなるからここでは省略するが、軍人が政治に従属するのは、自国の制度が正常に動いていると信じているからだ。ここではジョン・トレンチャード(John Trenchard)やトマス・ゴードン(Thomas Gordon)の『Cato's Letters』、トマス・ジェファーソンの政治思想、ジェイムズ・ハリントン(James Harrington)に由来する新ハリントン主義者(Neo-Harrintonians)とか、ローマ人の統治や徳(virtù)については触れないが、共和国は常に腐敗の危機に曝されているから、誰がどのように徳を用いて共和政体を維持するのか、という問題が重要になってくる。

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(左 : 尊敬に値する建国の父祖  /  左 : 異常なほど子供を愛するジョー・バイデン )

  軍人支配は良くないが、英国や日本でも、昔は封建主義に基づく政治体制であった。イングランドでも国王が武家の棟梁みたいな元首で、ガーター騎士団の総長でもある。家臣の貴族だって、法務官だけじゃなく、軍官僚とか派遣軍司令官になっていたから、武人と役人の境目が曖昧だ。日本でも各地の大名が統治する武家社会で、行政と軍事が渾然一体となっていた。今から考えれば恐ろしい時代に見えるが、西歐や日本のデモクラシーは封建制が基盤となっていたから成功したのである。平民が寄り集まって法律を決めたからといって機能するものじゃない。(民衆政と封建制を論じたシドニー・ペインター<Sidney Painter>は注目すべき中世史家である。彼の『Feudalism and Liberty』は我々にとっても有益で、なかなか興味深い。) むしろ、デモクラシー(democracy)だと金権政治(plutocracy)に堕落する確率が高く、大富豪が黒幕となりやすいから何らかの防止策が必要だ。民衆が主体の政治制度だと、いくら腐敗が深刻になっても修正されることはなく、庶民は大切な祖国が自滅するのを見守るだけである。

  「戦略学者」を自称する奥山氏は、退役軍人の逸脱を咎め、お爺ちゃん達の愚行と笑っていたが、高齢の白人男性だかこそ、現在のアメリカに心底憤り、「一線を越える」と判っていながら署名したんじゃないか? 考えてもみよ。彼らが子供の頃のアメリカは、今とは随分違っており、意外な程“まとも”であった。ヨーロッパ系の白人が主体の「キリスト教国家」で、信仰と伝統に基づく倫理道徳が社会の根本規範となっていた。黒人や南米系の国民には不愉快な過去だろうが、どの州においても“ちゃんと”人種隔離がなされており、都会は別にして、白人女性が街中で気軽に強姦されることはほとんど無かった。路上で突然殴られる「ノックアウト・ゲーム」なんか有り得なかったし、不法入国者が堂々と福祉制度に与ることも無かった。ましてや、同性愛者が大手を振るって商店街を闊歩する事なんて論外。現在、多民族・多文化主義および政治的な圧力により、アメリカ軍の中には許認可を得たゲイやレズビアンが存在する。また、人種的配慮から黒人やヒスパニックの人材が上等な地位に配置されているから、不満に思う白人は少なくない。

  もちろん、こうした「時代の流れ」に不満だから軍人が政治に介入するというのは正当化されない。だが、ある程度の社会的地位を持つ人物が異を唱えないと、もっと酷い社会になってしまうだろう。原則上、軍人は国防に徹するべきだが、その国家が内部から腐敗したら、いったい誰が国家を修理すべきなのか? 肝心の政治家が大口献金者の子飼いとなり、外国勢力の手先になった奴もいるのだ。共和政体の国家には「核」となるべき貴族階級が欠落しているので、一旦、政治腐敗が進むと、それを阻止する人物はなかなか現れない。アメリカの場合、どんどん蛮族や異人種が流入するから、西歐系国民は危機感を覚えながらも、為す術が無い。彼らは「少数派」となり、有色人種や左翼の白人が「多数派」となる。建国の精神を引き継ぐ西歐国民は、“いつも”従う破目になるから苛立ちを隠せない。人種の坩堝と化したニューヨーク州やカルフォルニア州では、保守系の共和党員は上院議員になれず、いくら優秀な人物が出馬しても連戦連敗だ。「ヒスパニックの縄張り」と化したカルフォルニア州で、ロナルド・レーガンのような共和党員が知事に選ばれるのか?

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(左 : 米国の人種差別に抗議する黒人たち  /  右 : 2021年1月に議事堂に乱入した暴徒)

  日本でもそうだけど、アメリカの一般国民は政治に興味が無く、日々の仕事や家事で精一杯だ。国家が滅亡の道を歩んでいても、スーバーボウル(アメフトの試合)やリアリティー・ショウ(現実の生活を脚色した娯楽番組)の方が重要で、破滅の直前まで惨状に気づかない。一部の保守派国民だけが静かに崩壊するアメリカを予感している、というのが現実だ。もちろん、アメリカ合衆国が地上から消滅するという訳じゃなく、国民の質が徐々に変化し、「別の国」へと変質するから、「消えゆくアメリカ合衆国」なのである。かつて日本では保守派知識人が占領憲法の温存を嘆き、「憲法守って国滅ぶ」と述べていたが、アメリカ人も同じ運命にあるんじゃないか? 今は書簡に署名した軍人を「老害」と評し、巷で囁かれる選挙不正なんて「アホの陰謀論」と嗤っていられるが、100年後の未来になれば、別の評価になっているかも知れないぞ。


 

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